ESG

【2023年】日本のSDGs達成度は21位|現状と課題解決のための事例を紹介

SDGs(持続可能な開発目標)は、2030年までに貧困、格差、気候変動などの世界のさまざまな問題を根本的に解決し、すべての人々にとってより良い世界をつくるために設定された世界共通の17の目標です。

「SDGs達成度ランキング」では、毎年各国のランキングと目標ごとの達成度が発表されます。

今回は、日本の順位から見る現状と課題、そして解決に向けた取り組み事例をご紹介します。

【2023年】日本のSDGs達成度|現状と課題

「持続可能な開発ソリューション・ネットワーク」と「ベルステルマン財団」は、毎年各国のSDGs達成状況を示す「SDGs達成度ランキング」を発表しています。

2023年の日本の順位と現状、課題は以下のとおりです。

日本のSDGs達成度は21位

2023年度の日本の達成度ランキングは、166カ国中21位でした。

1 フィンランド
2 スウェーデン
3 デンマーク
4 ドイツ
5 オーストリア
6 フランス
7 ノルウェー
8 チェコ
9 ポーランド
10 エストニア
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21 日本
22 ハンガリー
23 スロバキア共和国
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31 韓国
39 アメリカ
49 ロシア
63 中国
112 インド

トップは3年連続でフィンランドです。

1〜20位を欧州の国が占め、次に続いたのが日本でした。

経済大国のアメリカ(39位)や中国(63位)は日本より下に位置しています。

ランキングは2016年から発表され、日本は2017年の11位を機に年々順位を下げています。

日本のランキングの推移は次のとおりです。

2016年:18位
2017年:11位
2018年:15位
2019年:15位
2020年:17位
2021年:18位
2022年:19位
2023年:21位

日本が順位を落としている原因を見ていきましょう。

参考:Sustainable Development Report 2023

順位を落とした原因

日本が昨年より順位を下げた理由は、2つの目標の到達度が下がったためだと想定されます。

ランキングを発表している2つの団体は、各国の取り組みを17の目標ごとに、「達成済み」「課題が残る」「重要な課題がある」「深刻な課題がある」の4段階で評価しています。

日本は、目標16「平和と公正をすべての人に」が「達成済み」から「課題が残る」に下げられました。

このなかで、「報道の自由度」において課題が指摘されています。

また、目標8「働きがいも経済成長も」が、「課題が残る」から「重要な課題がある」に下げられました。

経済成長率がマイナスになり、強制労働に関係した輸入品が多いことが指摘されています。

日本の課題と解決のための取り組み事例

日本の17の目標のなかで、5つの目標が「深刻な課題がある」と評価されています。

これらの現状と解決に向けた取り組み事例を見ていきましょう。

目標5「ジェンダー平等を実現しよう」

日本には、男女間の格差が存在しています。

世界経済フォーラム(WEF)が発表している、世界各国の男女格差を数値で表した「ジェンダーギャップ指数」では、日本は146カ国中125位であり、主要7カ国(G7)のなかでは最下位です。

ジェンダーギャップ指数は、教育・経済・保健・政治の4分野で構成され、日本では政治と経済で特に改善が必要です。

政治分野では、女性の首相が誕生していないこと、衆議院における女性議員の比率がわずか9.7%と1割にも満たないことなどの課題が残されています。

経済分野では、企業での管理職に占める女性の割合は平均9.4%と低い水準です。

ジェンダーギャップ是正に向けた取り組みとして、日本政府は、「2030年までに社会のあらゆる分野で指導的地位に女性が占める割合を30%にする」という目標を掲げ、下記の具体的な取り組みを進めています。

〈政治分野〉

  • 衆議院議員の候補者に占める女性の割合を、現状17.8%(2017年)から2025年までに35%に引き上げる
  • 参議院議員の候補者に占める女性の割合を、現状28.1%(2019年)から2025年までに35%に引き上げる

〈経済分野〉

  • 係長相当職に占める女性の割合を、現状18.9%(2019年)から2025年までに30%に引き上げる
  • 課長相当職に占める女性の割合を、現状11.4%(2019年)から2025年までに18%に引き上げる
  • 部長相当職に占める女性の割合を、現状6.9%(2019年)から2025年までに12%に引き上げる

参考:Global Gender Gap Report 2023|WORLD ECONOMIC FORUM(p.11)
参考:衆議院議員総選挙における候補者、当選者に占める女性の割合の推移|男女共同参画局
参考:女性登用に対する企業の意識調査(2022年)|帝国データバンク(p.9)
参考:第5次男女共同参画基本計画|第5次男女共同参画基本計画(p.1,4)

目標12「つくる責任つかう責任」

日本は、電子廃棄物やプラスチック廃棄物の輸出において低評価を受けています。

特にプラスチックごみの廃棄量は世界で2番目に多く、環境に大きな負担をかけています。

日本の年間プラスチック廃棄量は824万トンです。

そのうち107万トンが有効利用されずに、焼却処理や埋立処理されています。

焼却処理の際には当然ながら二酸化炭素が発生するため、地球温暖化につながります。

また、日本で処理しきれないプラスチックごみは主に東南アジアに輸出され、なかには再利用されずに放置されて環境汚染や現地の人々の健康被害を引き起こしているケースもあるのです。

多くの企業が、プラスチック削減に向けて取り組みを開始しています。

全国に店舗を展開しているスターバックスコーヒージャパン株式会社は、2020年1月より段階的にプラスチックストローから、「FSC® 認証紙ストロー」への切り替えを始めました。

この取り組みにより、年間約2億本のプラスチックストローの削減が実現しています。

また、ネスレ日本株式会社は、外袋をプラスチックから紙パッケージに変更し、年間約380トンのプラスチック削減に貢献しています。

参考:一般社団法人プラスチック循環利用協会「2022年12月掲載 2021年廃プラスチック総排出量は824万t、有効利用率は87% プラスチック製品の生産・廃棄・再資源化・処理処分の状況(マテリアルフロー図)を公表」
参考:スターバックスコーヒージャパン株式会社プレスリリース
参考:ネスレ日本株式会社プレスリリース

目標13「気候変動に具体的な対策を」

日本は依然として、化石燃料に大きく依存しています。

すべてのエネルギー供給のうち83.2%が化石燃料から生み出されている状況です。

これにより、化石燃料は火力発電の原料として使われ、二酸化炭素を多く排出することで地球温暖化を進行させています。

日本政府は、2030年までに温室効果ガスの排出量を2013年と比較して、46.0%削減することを正式に決定しました。

また、地球温暖化対策計画では、2050年までに温室効果ガスをゼロにすることを目標としています。

具体的な対策として、佐川急便株式会社は保有する約2万6千台の車両のうち、約1万6千台(2023年3月末時点)の環境対応車(ハイブリッド車、電気自動車、クリーンディーゼル車など)を導入しています。

鉄道や船舶を使った輸送にも順次切り替え、トラックと比較すると鉄道は10分の1、船舶は5分の1の二酸化炭素排出量の抑制につながっています。

参考:経済産業省資源エネルギー庁「2022—日本が抱えているエネルギー問題(前編)」
参考:環境省「地球温暖化対策計画(令和3年10月22日閣議決定)」
参考:環境省 脱炭素ポータル「カーボンニュートラルとは」
参考:佐川急便株式会社「SDGsへの取り組み」

目標14「海の豊かさを守ろう」

毎年、日本から流出しているプラスチックごみの量は、2〜6万トンです。

これにより、魚や海洋哺乳動物がプラスチックなどで傷を負ったり、ポリ袋を餌と間違えて食べてしまったりするなど、深刻な被害をもたらしています。

また、水産資源の減少も深刻な問題です。私たちが普段食べている魚や貝などの水産資源は、海洋汚染や乱獲によって減少しています。

そのため、日本周辺の水産資源の49%が枯渇している状況です。

将来的には、私たちに馴染みのある魚が食べられなくなる日が来るかもしれません。

海の豊かさを守るため、MSC認証ASC認証という2つの認証が存在します。

MSC認証は、海の環境に配慮した魚の獲り方を行っている水産物に与えられる認証です。

また、ASC認証は、環境や地域社会に配慮した養殖業で生産された水産物に与えられる認証です。

パナソニックホールディングス株式会社は、本社を含む2拠点の社員食堂でMSC及びASC認証を取得した持続可能な水産物(サステナブル・シーフード)を提供しています。

参考:環境省「海洋ごみをめぐる最近の動向」
参考:WWFジャパン「持続可能な漁業の推進」
参考:パナソニックホールディングス株式会社「サステナブル・シーフードを社員食堂から拡げる」

目標15「陸の豊かさも守ろう」

近年、日本では生物多様性が悪化しています。

生物多様性とは、人間や動植物などさまざまな生物で構成された生態系の豊かさのことです。

生物多様性がもたらす利益や恩恵を「生態系サービス」と呼び、水や食物の供給、安定した気候や気温などが含まれます。

生物多様性が悪化すると、生態系サービスを受け取れなくなる可能性があります。

生物多様性が悪化する原因は、開発や乱獲などの人間活動により生物や生息地が減少していることや、外来種の持ち込みによって生態系が変化していることなどです。

また、陸の豊かさも守るために、東京ガス株式会社は長野県御代田町に「長野・東京ガスの森」をつくり、豊かな森づくりを推進しています。

この森は広さが東京ドーム約40個分あり、10年間で約30万本の苗木を植樹し、400種類以上の動植物が生息しています。

世界各国のSDGs達成度のために行われている取り組み

SDGs達成度ランキングで上位を占めている、フィンランドとスウェーデンの取り組みを見ていきましょう。

〈フィンランド〉充実した福祉と化石燃料を使用しないエネルギー供給に向けた取り組み

フィンランドは、消費税が24%と高くなっている一方で、医療や教育などの福祉が充実しているのが特徴です。

具体的な福祉措置としては、以下のような点が挙げられます。

  • 出産や手術の医療費が無料
  • 義務教育費と学校給食が無料
  • 学生向けの住居手当や勉学手当

税金が国民にしっかり還元され、国民は平等に医療や教育を受けられます。

国連の持続可能開発ソリューション・ネットワーク(SDSN)が発表する「世界幸福度ランキング」では、フィンランドが6年間にわたりトップになっていることから、国民が福祉を十分に享受しているのがわかります。

また、環境に負荷をかけないエネルギー供給にも力を入れており、総エネルギー供給のうち再生可能エネルギーが40%、化石燃料が36%です。

これにより、二酸化炭素排出量は減少傾向にあります。

フィンランドは化石燃料からの脱却を目指し、2020年代には石炭発電の全廃を掲げています。

参考:the Sustainable Development Solutions Network「World Happiness Report 2023」
参考:在フィンランド日本国大使館『環境・サーキュラーエコノミー』

〈スウェーデン〉家庭ごみのリサイクル率99%を実現

スウェーデンでは、家庭ごみのリサイクル率が驚くべき99%に達しています。

住宅地には分別リサイクルボックスが設置され、紙類、ビン類、缶類、プラスチック類などに分類するのが一般的です。

細かく分別することで、回収後のスムーズなリサイクルにつながっています。

また、空き缶やペットボトルのリサイクルにはデポジット制度「パント・システム」が導入されています。

特定のマークが印字された飲料を購入する際に料金が徴収され、ボトルが回収されると料金が返金される仕組みです。

参考:一般社団法人産業環境管理協会資源・リサイクル促進センター「スウェーデンのリサイクルのようす」

まとめ

SDGs達成度についてご紹介しました。

日本は、SDGs達成度ランキングで年々順位を落としています。

具体的には、目標16「平和と公正をすべての人に」と、目標8「働きがいも経済成長も」の到達度が引き下げられたことが影響しています。

また、4つの目標では「深刻な課題がある」と最低評価を受けました。

特に、目標5「ジェンダー平等を実現しよう」においては、日本ではジェンダーの格差が依然として根強く残っています。

「ジェンダーギャップ指数」では日本は146カ国中125位と低水準です。

政府や企業が取り組みを始めていますが、個人でもできることはあります。

たとえば、家庭内で家事や育児の役割分担について話し合ったり、ジェンダー問題に取り組む団体に寄付したりすることから始めてみてはいかがでしょうか。

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