エシカルライフ

住み続けられるまちづくりを!関係人口がつなぐ地方創生の希望

みなさんは、関係人口という言葉を聞いたことがありますか?

地方創生やSDGsの観点からも注目を浴びている関係人口。

ビジネスマンなら知っておきたい言葉です。

コロナ禍を経て、私たちの生活がいかに東京に集中していたか明らかになりました。

改めて、暮らしを見つめ直すきっかけにもなったのではないでしょうか。

今回は、関係人口の定義や各地の取り組み事例について、地方創生やSDGsの目標11「住み続けられるまちづくりを」とも絡めながら紹介します。

この記事を読んで、ぜひ知識をアップデートしてください。

関係人口とは

まずは「そもそも関係人口って何?」というところからお話しましょう。

関係人口とは特定の地域に継続的かつ、多様な形で関わっている人々のことです。

一般的に、主に以下の人々を指します。

  1. 行き来する者:その地域が好きで定期的に訪れているなど
  2. 地域内にルーツがある者(近居/遠居):その地域で生まれ育ったが今は住んでいないなど
  3. 何らかの関わりがある者:過去にその地域で働いていた、住んでいたなど

わかりやすく一言で説明するなら観光客以上・移住者未満といったところでしょう。

具体的には、仕事や趣味などの兼ね合いで一時的に居住している人々や、季節ごとの祭りや行事に継続的に参加している人々のことです。

参考:関係人口とは|『関係人口』ポータルサイト (soumu.go.jp)

関係人口と何が違う?定住人口とは

関係人口を語るうえで知っておきたい言葉があります。

それが定住人口です。

「定住」という言葉からも察しがつくように、定住人口とはその地域に(一時的でなく恒久的に)住んでいる人々のこと。

昔からその地域に住んでいる人々はもちろん、地域外から移住してきた人も定住人口に該当します。

定住人口は、主にその地域で生計を立て、日常的な生活を営んでいる人々です。

その地域への想いや現状の関わりが強く、地域社会に深く根付いている人々ですが、関係人口には含まれません。

関係人口と何が違う?交流人口とは

定住人口と並んで、もう1つ知っておきたい言葉があります。

それが交流人口です。

交流人口は、一時的にその地域を訪れる人々のことで、出張で訪れるビジネスマンや観光客などを指します。

出張や観光といった目的を果たすと元の生活(拠点)に戻ってしまうことから、地域への思い入れや関わりは薄いといえます。

なぜ関係人口を増やす必要があるのか

では、なぜ関係人口を増やす必要があるのでしょうか。

地方創生とSDGsの2つの観点から説明します。

関係人口と地方創生

地方創生とは、地域の特性を活かして住みよい環境にし、人口減少や過疎化に歯止めをかけて活力ある豊かな日本社会を築くことです。

参考:地方創生とは?:財務省北陸財務局 (mof.go.jp)

地方の若者が東京へ流入することにより、東京への一極集中と地方の過疎化が深刻化しています。

総務省が実施した「過疎地域における集落の状況に関する現況把握調査」によると、全集落のうち、住民の半数以上が65歳以上である集落の割合は32.2%にものぼると報告されています。

参考:過疎地域における集落の状況に関する現況把握調査最終報告

関係人口が積極的に地域社会に関わることで、地域を活気づけることができます。

そして、地域が活気づけば、新たにその地域に関心を寄せる人々が形成されていきます。

このように、関係人口は地域の魅力を向上させ、住み続けたくなるような地域づくりに貢献します。

関係人口とSDGs

全部で17ある「SDGs(Sustainable Development Goals):持続可能な開発目標」のうち、11番目が「住み続けられるまちづくりを」です。

目標11は10のターゲットに分かれており、どのターゲットに重点的に取り組むのかは国によって異なります。

たとえば、地域創生を目指している日本の場合は、都市・地方ともに、誰もが安心して暮らせる持続可能なまちをつくる取り組みに重点が置かれるでしょう。

これを実現するための具体的な対策には、都心への人口集中やゴミ問題の改善、災害リスクの分散、緑地や輸送システムの整備などが挙げられます。

過疎化が進んだ地域には若者がほとんどおらず、高齢者が安心して快適な暮らしを送るのは難しいといわざるを得ません。

移住とまではいかなくても、関係人口が積極的に地域を訪れサポートをすることも、大きな希望となるはずです。

働き盛りの年代の新しいアイデアや活力が加わることで、想像もしていなかった化学反応が起こることもあるでしょう。

以下に、一例を紹介します。

【新潟県央地域在住:増井和之さんの例】
関わる地域:新潟県内村上市山北地区

増井さんは新潟県内村上市の関係人口となり、「さんぽく暮らし実践プログラム 百姓やってみ隊」に参加しています。

同県内に住んでいるにもかかわらず、関係人口となる前は新潟県内村上市について知らないことばかりだったとか。

畑作業やそば打ち・修繕作業などを通じて地域と関わるなかで、次第に村上市山北地区への愛着が増したそうです。

現在の目標は、友人にこの地域の魅力を届けることと、エンジニアの経験や知識を生かし、貢献できることを見つけることだそうです。

【京都府京都市在住:松井優さんの例】
関わる地域:兵庫県洲本市

松井さんは学生団体である「京都大学エスノ3ジョウ(S³)」に所属し、洲本市において、観光や教育の分野を中心に活動しています。

過疎化が進む地域で生まれ育った松井さんは、「幼少期に体験した地域での活動やイベントに関わりたい」という強い思いを持っており、S³に入会しました。

松井さんは大学生ながらも、兵庫県洲本市の計画策定に携わっているそうです。

縁もゆかりもなかった兵庫県洲本市の人々の温かさに触れ、オンラインツールやSNSといった「今時」のツールを活用しつつ、地域活性化に向けて奮闘しています。

参考:関係人口となった方の声|『関係人口』ポータルサイト (soumu.go.jp)

このように、関係人口と地方創生、そしてSDGsは切っても切れない関係であるといえます。

以下の記事では、地方創生の目的や現状を、夕張市の財政破綻や都心部への一極集中の事例を用いて説明しています。

また、自治体や企業が取り組んでいる地方創生への具体例についても触れていますので、ぜひ併せてご覧ください。

【地方創生×SDGs】自治体や企業の取り組みを知ろう – GREEN NOTE(グリーンノート)|SDGsがすぐわかるニュースメディア (green-note.life)

各地域における関係人口取り組み事例

ここで、各地域における関係人口の創出・拡大に向けた具体的な取り組みについて紹介します。

今回は北海道・青森県・島根県の3つをピックアップしました。

北海道

北海道では、関係人口に関する情報を以下3つの媒体で発信しています。

  1. 北の大地への移住情報メールマガジン
    北海道移住関連情報やイベント情報を隔週木曜日に配信
  2. 北海道とつながるカフェSNS
    Facebook・LINE・Instagramから北海道移住関連情報やイベント情報を定期的に発信
  3. DOORS,hokkaido
    北海道の関係人口情報を幅広く発信

参考:関係人口 – 総合政策部地域創生局地域政策課 (hokkaido.lg.jp)

なかでも今回は、3番目に挙げたDOORS,hokkaidoを紹介します。

北海道総合政策部地域創生局地域政策課は「DOORS,hokkaido」という、関係人口専用ポータルサイトを立ち上げました。

DOORS,hokkaidoでは、北海道内の各地域に関する関係人口情報を発信しています。

Zoomなどを活用したオンラインでのミートアップや移住ツアー・移住相談などが各地域ごとに開催されています。

驚きなのは、開催頻度。

ほぼ毎日、少なくとも2日に1回は何かしらのイベントが開催されています。

もちろん、オンラインだけでなく対面での実施もあります。

対面の場合は道内だけでなく、東京近郊などアクセスしやすいエリアで開催されています。

直近では、2023年12月2日~3日に横浜市と大宮市で「北海道mini移住・交流フェア」が開催されました。

また、移住後の大きな懸念点である「職」についても、農業就業相談会や就農フェア、企業説明会などが定期的に開催されています。

先輩移住者の生の声が聴けるほか、コーディネーターによる就業支援や合同面接会も行われているので、移住前に不安を払拭できそうですね。

参考:DOORS.hokkaido(北海道総合政策部地域政策課)|note

青森県

青森県ではあおもり暮らしという青森県移住・交流ポータルサイトを開設し、関係人口に関するイベントを発信しています。

たとえば、2023年8月には「青森に関わりたい方大募集in東京」と題し、青森県関係人口のオフライン交流会(ミートアップ)を東京都港区赤坂にて開催しました。

もちろん、オフラインでの交流会も盛んに行われています。

また、少子化の影響から、2019年3月に惜しまれながらも閉校した「きれいすぎる廃校」でおなじみの外ヶ浜町平舘小・中学校の利活用プロジェクトチームも発足しました。

築後20年しか経っておらずまだまだきれいな校舎をなんとか活用したいと、地域住民とプロジェクトチームが一丸となって2022年に再生プロジェクトを開始。

このプロジェクトチームには東京都や兵庫県など、青森県在住者以外のメンバーも含まれているそうです。

2023年3月5日に行われた報告会の様子は、NHKにも取り上げられました。

ポータルサイトでは関係人口となった人へのインタビューも掲載されているので、先輩たちがどのように青森県と関わっているのか参考にしてみると良いでしょう。

参考:関係人口|あおもり暮らし|青森県移住・交流ポータルサイト (aomori-life.jp)

島根県

島根県では、しまね関係人口マッチング・交流サイト「しまっち!」を運営しています。

オンライン・オフライン共にプログラムが充実しているので、気軽に参加することができます。

また、SNSのような感覚でいいね!を送ってオーナー(開催者)を応援したり、コメント機能を通じてオーナーや他のサポーターと交流したりすることも可能です。

以下は、2023年に実施されたプログラムの一例です。

  • フルーツ(いちじく)の収穫(出雲市)
  • フルーツ(ゆず)の収穫(益田市)
  • 稲刈り(出雲市)
  • 草刈り(雲南市)
  • 寺子屋~小中学生の宿題サポート~(松江市)
  • 古民家改修・竹林整備・竹炭づくり(奥出雲町)
  • 手掘りの井戸掘り体験(出雲市)
  • 400年以上踊り継がれた殿町盆踊り大会「津和野踊り」のお手伝い(津和野町)
  • 伝統芸能と光の祭典~竹灯籠等の設置・点灯サポート~(三郷町)
  • その他、県内で実施される各種イベントのサポート

交通費や宿泊費の一部を支援してもらえるしまサポ助成金も用意しています。

助成を受ける条件は、しまっち!にサポーターとして登録し、助成対象のプログラムに申し込み、参加することです。

交通費は片道分、宿泊費は半額負担してもらえるため、費用の面で関係人口に懸念を抱いている人にもおすすめです。

なお、この助成金には限度があり、1回につき上限10,000円で1人2回まで受けられます。

助成対象のプログラムは公式サイトから確認できますが、ほとんどのプログラムが対象となっています。

参考:しまっち!ー島根関係人口マッチング・交流サイト (shi-match.jp)

まとめ

関係人口とは何か?に始まり、関係人口と地方創生、そしてSDGsとの関わりについて解説しました。

これからますます求められる地域創生のイメージは膨らみましたか?

一人ができることは、小さなことかもしれません。

しかし、関係人口が何十人、何百人と集まれば、地域を再生することは十分に可能です。

今回紹介したのは北海道・青森県・島根県の3つだけですが、関係人口の取り組みは日本各地で行われています。

気になる方はぜひ調べてみてください。

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