ESG

サステナブルファッションで世界から注目を集める「ステラマッカートニー」の取り組み

STELLAMcCARTNEY(ステラマッカートニー)は、2001年の創業から現在まで動物愛護と環境保全を第一に考え、レザーや毛皮などの動物由来の素材を一切使用せず、サステナブルを貫いてきたブランドです。

サステナブルファッションの先駆者とも呼ばれているステラ・マッカートニー氏は、世界から注目されています。

本記事では、ステラマッカートニーのブランドの沿革や、サステナブルに取り組む理由、環境に配慮したサステナブル素材の商品などを紹介します。

ステラマッカートニーとは?



有名なブランドの中で、サステナブルに高いレベルで取り組んでいる、ステラマッカートニー。ステラマッカートニーの会社名は、サステナブルで動物実験はもちろん、動物由来の素材を使用しないファッションのパイオニアである、設立者のステラ・マッカートニー氏の名前からきています。

設立当初からサステナブルファッションを貫き、衣服の生産から着用、廃棄に至るプロセスにおいて将来にわたり持続可能にしてきました。

取り組みは、素材の調達を始め、環境保全やテクノロジーの探求、ファッション業界の変革まで及びます。

参考:Sustainability timeline|ステラマッカートニー
参考:新しいフェーズへと向かうパリコレクションに見るサステナビリティ

ステラマッカートニーの沿革


ファッション界をけん引するトップクリエイターのステラ・マッカートニー氏は、1971年にイギリスのロンドンで生まれました。

ステラ・マッカートニーの父は、世界的スター「ビートルズ」のメンバーとして活躍したポール・マッカートニー。

母は写真家・ミュージシャン・料理研究家のリンダ・マッカートニーです。

ポール・マッカートニーは動物愛護・環境活動家としても知られており、両親ともに厳格な菜食主義者でした。

そのような家庭で育ったステラ・マッカートニーにとって、持続可能なファッションを取り入れることはごく自然に身に付いた価値観だったといえます。

12歳でデザインを始め、15歳でクリスチャン・ラクロワの最初のクチュールコレクションの仕事をした後、1995年にロンドン芸術大学のセントラル・セント・マーチンズ校の卒業コレクションで注目を浴びます。

1997年にファッションブランド「クロエ」のクリエイティブ・ディレクターに抜てき。

2001年10月にジョイントベンチャーとしてステラマッカートニーを設立しました。

2004年にアディダスと長期パートナーシップを締結して、飛躍的な革新を遂げながら、2018年に50:50の出資比率で会社を設立したケリング(KERING)から株式を買い戻して独立しました。

2019年にはフランス・パリを拠点とする世界最大級の「LVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン」との提携も。

2023年にはステラ・マッカートニー氏自身のファッション業界への長年の貢献とサステナブルへの取り組みが評価され、イギリスのチャールズ3世国王より大英帝国勲章コマンダー(CBE)を受勲しました。

参考:ステラ・マッカートニー|ウィキペディア(Wikipedia)
参考:エシカルファッションのパイオニア、ステラ・マッカートニーをもっと知る50のこと
参考:ステラ・マッカートニーがLVMHグループ入り、ライバルのケリングと昨年決別、サステイナビリティを推進
参考:【ステラ・マッカートニー】が大英帝国勲章コマンダーを受勲! 業界への貢献とサステイナビリティへの取り組みが認められる

ステラマッカートニーがサステナブルに取り組む理由


ベジタリアン・ラグジュアリーブランドともいえるステラマッカートニー。

本来「ラグジュアリー」とは、ファッションブランドや宝飾品などの最高グレードの言葉として、高級でぜいたくなものを指します。

ステラマッカートニーがサステナブルに取り組む理由は、生態系を含む地球環境や関わる人・社会の配慮を第一に考えているからです。

  • ステラマッカートニーの信念
  • サステナブルファッションとラグジュアリーの共存

ここでは、上記の2つに焦点を当てて解説します。

ステラマッカートニーの信念

ステラマッカートニーの信念は「責任を持ち、誠実で、現代的な会社であること」

ステラマッカートニーでは、服の素材作りから店舗やオフィスの開設や運営に至るまで、可能な限り地球環境に配慮した取り組みを行っています。

イギリス全土のステラマッカートニーの店舗とオフィスには、世界初となるヴィーガンでの電力供給を開始したEcotricity社供給の風力エネルギーを使用しています。

同社の電力は、動物の体やその副産物などを一切使用しません。

設立当初からファッションのために動物や環境を犠牲にしない信念を貫き、サステナブルを目指してきたステラマッカートニーにとって必然といえます。

サステナビリティは、以下の3つの柱が基本です。

  • 環境保護
  • 社会開発
  • 経済発展

ステラマッカートニーの信念は、3つの柱からぶれずに現在まで持続しています。

参考:サステナビリティ|ステラマッカトニー
参考:ファッションも環境に優しい時代へ。エシカルファッションを牽引するSTELLA McCARTNEY
参考:動物がファッションの犠牲になってはいけない──ブランド設立20周年を迎えたステラ・マッカートニーの次なる挑戦。
参考:エシカルファッションのパイオニア、ステラ・マッカートニーをもっと知る50のこと
参考:世界初、エネルギーもヴィーガンに。イギリス生まれの電力供給
参考:サステナビリティとは?SDGsとの違いや企業の取り組み事例を解説

サステナブルファッションとラグジュアリーの共存

ステラマッカートニーは、動物や環境を犠牲にしない信念から最先端のサステナブル素材をいち早く取り入れてきました。

例として、菌糸体からできた代替レザー、バイオ素材の代替ファー、発酵を用いたシルク、サステナブルな管理が行われ森を守るための方法で作られたビスコースを使った衣服などがあげられます。

これらの素材を使って、見た目が変わらないラグジュアリーブランドを実現。

現在、国際的にサステナブルやSDGs(持続可能な開発目標)が注目を集め、多くの企業がそれらを意識した活動を行っています。

しかし、そのような言葉が生まれていなかった設立当初から、ステラマッカートニーが持続可能性とファッションの両立をブランドの信念としてファッション業界の先頭を走り続けてきたのはすごいことです。

最新のニュースとして、パリコレ2023~2024年秋冬シーズンでは、バッグに新開発のヴィーガンレザーを使用し、総ルックに環境負荷を軽減した素材の使用割合が92%という驚きの数字をたたき出しています。

また、地球の資源を守るため、持続可能な生産と消費のバランスの形成を示した目標であるSDGsの、目標12「つくる責任、つかう責任」を見事に実現しています。

参考:馬たちと心を通わせる、愛情溢れるコレクション「ステラ マッカートニー」23年ウィンター
参考:サステナビリティ|ステラマッカトニー
参考:12.つくる責任、つかう責任|日本ユニセフ協会(ユニセフ日本委員会)

ファッション業界のパイオニアとしての歩み


ステラマッカートニーが設立された当時は、国際的に経済発展の最中でした。

大量の生産・消費・廃棄により、製造にかかる資源やエネルギー使用の増加、環境負荷が非常に大きい業界で、サステナブルを押し通すことは容易ではなかったでしょう。

サステナビリティ分野において、ファッション業界のパイオニアといわれるゆえんは、消費した後に廃棄することが当たり前だったファッション業界の常識を覆してきたからです。

消費者庁の調べによると、世界全体で毎秒トラック1台分の衣服が埋め立てや焼却処分がされています。

また、人間活動の炭素排出量の約10%が衣服の生産段階で排出されているといわれています。

これは、国際航空・海運分野の排出量の合計よりも大きいのです。

また、衣服にかかる毎年の水の使用量は930億立法メートルにのぼります。これは、500万人分の生活に必要な水の量に相当します。

さらに衣服から出るマイクロ・プラスチックは毎年50万トンも海洋に放出されています。ペットボトルに換算すると500億本分にあたります。

そのため、サステナブルを考える上で、モノを長く使うことはとても重要です。

ステラマッカートニーが生み出すファッションは、モノを長く使うために循環と再生を強く意識していることがわかります。

地球環境と生物への影響に焦点を当て、ラグジュアリーでありつつ責任ある製品を作ることを追求しているのです。

参考:サステナブルファッション習慣のすすめ|消費者庁
参考:バッドビジネスをクリーンなビジネスに──。ステラ・マッカートニーが見つめるファッション業界の未来

環境に配慮したサステナブル素材の商品

ステラマッカートニーが製品を作る際には、徹底的なリサーチを行い、レザーやファーだけでなく地球環境や動物に影響を与える素材と距離を置いています。

環境に配慮したサステナブル素材であるオーガニックコットンや再生カシミヤ、金属などあらゆる素材において極限まで環境負荷削減に挑戦しています。

その中からバッグ、シューズ、服を取り上げて紹介します。

参考:持続可能なファッションのパイオニア。ステラ マッカートニーが描く未来図

バッグ

主に「ベジタリアンレザー」と呼ばれる皮革以外の素材を使用しています。

これは地球環境保全や動物由来の素材の使用削減など、環境問題への解決につながっています。

「ファラベラ」
ファラベラは、ヴィーガン素材を使用したステラマッカートニーの代表的なラグジュアリートートバッグです。

ファラベラは、プラスチックや化石燃料・水を一切使用しない動物皮革に代わる植物由来のプラスチックフリー循環素材「ミラム」を使用しています。

「フレイムマイロ」
キノコの根から作られた代替レザー「マイロ」を使ったバッグ。

「マイロ」は無限に再生可能な菌類の根を張る菌糸体マイセリウムから作られる素材でできています。

他の動物性レザーの代替素材と比較して、より耐久性に優れ、より洗練された印象を与えます。

菌糸体は泡状の層として採取され、コラーゲンの微細構造を模倣しているため、合成素材にはないあたたかみとやわらかさのある感触が得られます。

「Sウェーブ」
ヴィーガンレザー「ヴェジェア」を採用したバック。

ヴェジェアは動物皮革に代わるブドウベースのヴィーガン代替品で、イタリア北部のワイナリーの農業廃棄物であるブドウのしぼりかすを原材料としています。
柔らかく、厚さ、仕上げ、質感などの技術的および美的特性において用途は多様。

ヴェジェアは、世界リサイクル基準 (GRS)認定のリサイクルポリエステルの裏地で生産されており、水ベースのポリウレタンが含まれています。

70%以上が再生可能製品で作られています。

製造プロセスに溶剤や金属が含まれていないため、人間や環境に有害な危険物質や有毒物質も含まれていません。

参考:アイコニック ファラベラ|ステラマッカートニー
参考:フレイム マイロ™|ステラマッカートニー
参考:ブドウの搾りかすが原材料に。環境に優しいステラ マッカートニーの新作バッグ【発見!お仕事相棒アイテム】
参考:サステナビリティ|ステラマッカトニー

シューズ

シューズに皮革素材は一切使わず、人間が使用する商品の開発段階において動物実験・殺傷を行わないクルエルティフリーのサステナブル素材で作られています。

「エリス」
エリスは、厚底プラットフォームスニーカー。魅力的な木目調の厚底プラットフォームとシャークソールが特徴です。

動物皮革に代わる高級ヴィーガン代替品であるオルターマットやFSC認定の木製ウェッジヒールを使用しています。

環境に優しく持続可能なものであり、ステラマッカートニーのブランドの中でも重要な素材です。

「テラ」
ステラマッカートニー2024年春夏ショーで披露された、アッパーがターバンのようにツイストされたお洒落な新作パンプスです。

ブドウ由来のヴィーガンレザー「ヴェジェア」を使用しています。

「エアスライド」
ふっくらとした丸みのあるソールとクッションソールが特徴的なヴィーガンサンダル。

ヴィーガンのアルターマット素材を使用しています。

工場生産時の廃棄物をリサイクルして作られた画期的な一足です。

「ループ」
有害な溶剤である接着剤を使用せずにデザインされたスニーカー。

動物皮革に代わる滑らかなヴィーガンオルターマットやクルエルティフリーの素材で作られています。

参考:Stella McCartney ELYSE(ステラマッカートニー エリス)はサステナブルな魅力の厚底シューズ
エリス プラットフォーム|ステラマッカートニー
参考:ブランド史上最もサステナブルなコレクション 「ステラマッカートニー」2024年春夏
参考:【STELLA McCARTNEY(ステラマッカートニー)】 エアスライドサンダル
参考:ループ レースアップ スニーカーズ|ステラマッカートニー

ステラマッカトニーの服は、以下のような再生可能で循環がしやすい素材を使用しています。

再生カシミア
ニットウェアコレクションは、再生カシミア「Re.Verso ™」を使用。

繊維クズという「廃棄物」のカシミアを新たな素材として再定義しています。

ヤギから作られるバージンカシミアと同じ柔らかさと保温性を備えながら環境への影響は7分の1です。

2016年よりバージンカシミアの使用を中止し、カシミア関連の環境への影響を92%削減しています。
※EP&L(環境損益計算)を使用して計算

ビスコース(森が生み出す繊維)
ビスコースはステラマッカートニーで最もよく使用される素材の1つです。

古代林や絶滅危惧種の森林から材料を調達しないように、太古の森を守るための方法で調達。

2017年以来、すべてのビスコースはFSC認証木材パルプとキャノピー承認のサプライヤーから供給しています。

オーガニックコットン
オーガニックコットンを使用し、水と有毒化学物質の使用を削減しながら環境を改善する方法で製品作りを実施。

現在使用しているコットン全体の約73%がオーガニックで、2025年までにオーガニックコットンまたはリサイクル コットンを100%使用することを目指しています。

再生ナイロンとポリエステル
使用している合成素材は、リサイクルされた資源から作られています。

ステラマッカートニーは、現在のナイロンをすべてECONYL® 再生ナイロンに切り替えることに取り組んでいます。

ECONYL® は、海から回収されたカーペットや廃布地・漁網からリサイクルされた、石油から作られるバージンナイロンと同じ品質の新しいナイロン糸です。

また、ポリエステルは水ボトルをリサイクルして作られた生地を使用。

ステラマッカートニーのコレクション全体で可能な限りリサイクルポリエステルを使っています。

シルク
ステラマッカートニーでは、全く新しいシルクの作り方を研究しています。

先駆的なテクノロジーの革新を通じて、崇高な素材を再創造する全く新しい方法を模索した結果、合成クモの糸に辿り着きました。

テクノロジーのイノベーターであるBolt Threadsとのパートナーシップにより実現しました。

Bolt Threadsの「b-silk」はクモの糸に着想を得た主力製品で、時間が経っても劣化せず、バイオベースで生分解できるといった特徴があります。

・ベジタリアンレザー
ブランド設立以来、革、羽毛、毛皮、皮を一切使用禁止しています。

ステラマッカートニーの代替皮革は見た目だけでなく環境にも配慮しています。

たとえば、ブラジル産カーフレザー(牛革)の代わりに合成皮革を使用すれば、環境損益 (EP&L)上、環境への影響が最大24分の1になります。

ブランド史上最もサステナブルなコレクション「ステラマッカートニー2024年春夏ショー」では、ヴィーガンレザーや海藻由来のファブリック「ケルサン」など全体の95%が環境に配慮された素材から成るコレクションが登場しました。

参考:サステナビリティ|ステラマッカートニー
参考:ブランド史上最もサステナブルなコレクション 「ステラマッカートニー」2024年春夏
参考:EP&L(環境損益計算)
参考:「人工クモの糸」でアパレル業界を革新するBolt Threadsの野望

まとめ

本記事では、サステナブルの先駆者とも呼ばれているステラマッカートニーがサステナブルファッションに取り組む理由を紹介しました。

ブランド設立当初から、サステナブルとラグジュアリーを両立するファッションを生み出すことに、常に取り組んできたステラマッカートニー。

すでにサステナブル素材の使用率を90%以上超えているので100%になる日も近いかもしれません。

ステラマッカートニーは、環境負荷を最小限に抑えても品質は劣らない最高の商品作りを、革新的な技術や素材を常に探し求めながら、これからも躍進し続けるでしょう。

気になる方は、今後の動向をチェックしてみてください。

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