ESG

SDGsのスタートアップからユニコーン続出!?ASEANのSDGsに貢献する企業たち

今まさに時代は、利益重視の大量生産・使い捨て時代から、SDGsに基づいた新しいビジネスへと移行しています。

世界的な規模で、SDGs関連のスタートアップが続々と登場。

とくにASEAN(アセアン/東南アジア諸国連合)ではSDGs関連のスタートアップが急成長を遂げ注目されています。

その背景にあるのがSDGsの目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」という理念です。

ASEANはまだ経済成長の過程にあり、さまざまな分野の基盤である社会インフラ・システムへの国民ニーズが非常に高いのです。

今回は、地域の課題に対して、独自のアプローチで貢献するASEANのスタートアップやユニコーンを紹介します。

SDGsの目標9の概要や、スタートアップとユニコーンの違いもわかりやすく解説します。

SDGs関連で急成長したスタートアップが気になる方は、ぜひご一読下さい。

ASEANがSDGsのスタートアップで急成長

これから、ASEANのスタートアップについて知る前に、まずは、当記事のテーマの1つであるSDGsの目標9の概要を簡単に解説します。

SDGs目標9


SDGsの目標9は「産業と技術革新の基盤をつくろう」です。

原文(英文)は、「Industry, Innovation and Infrastracture」です。

目標9が指す産業と技術革新とは、

  • 安定した雇用・経済成長のための産業の基盤強化とイノベーションの促進
  • 持続的な社会を形成するための道路・交通・IT・エネルギーなどのインフラ構築
  • 自然災害や感染症など、緊急時でも安心できる強靭な生活基盤の構築

などを意味しています。

とくに2020年以降は、水害や新型コロナウイルス、戦争などによるダメージが相次ぎました。

ひとりも残さずすべての国において、突発的な事故や災害にも対応できる強靭な生活基盤(統括されたITネットワーク)などの早急な整備が求められています。

SDGs9とASEAN

人々が安定した収入を得るためには、産業や技術革新のイノーベーションが欠かせません。

同時に、便利に暮らしていくためには、バスや列車、IT・デジタル整備などの社会的インフラが必要です。

日本を含めた先進国では、電気や水道、インターネットを当たり前のように使える生活水準にあります。

世界の最先端技術の導入も早期で実施され、国際競争力も高く、平均して国民は安定した便利な暮らしを送っています。

しかし、アフリカやアジアなど、まだ開発段階にある途上国においては、インターネットや交通機関はおろか、電気や水道すらままならない地域も多くあります。

そこで、近年若者を中心にしたスタートアップらが、急スピードで自国の技術革新・インフラ構築に貢献しているのがASEANなのです。

※なお、SDGs(持続可能な開発目標)の17のゴールと169のターゲットは、下記サイトから詳しくご覧になれます。

持続可能な開発目標 – 国際連合広報センター

SDGsで注目のASEAN

ASEAN(アセアン)とは、「The Association of Southeast Asian Nations(東南アジア連合国)」の略称で、地域の平和と安定、経済の発展において各国が協業することを目的とした連合体です。1967年に、インドネシア・マレーシア・フィリピン・シンガポール・タイの5カ国で設立されました。

数年後に、ブルネイ・カンボジア・ラオス・ミャンマー・ベトナムが加わり、現在は10カ国で構成されています。

ASEANは地理的にちょうど日本・中国・ロシア・欧州・中東などの大国の中間にあるため、世界の貿易においても重要な役割を果たしています。

ASEANの開発途上国の課題

ASEANでは以前から、貧困格差やインフラ不足、気候変動、医療・教育・産業など、SDGsに関わるさまざまな対策が講じられてきました。

各課題は進展をみせていたものの、2020年の新型コロナウイルスの感染拡大によって、途上国が持つ脆弱さが浮彫りとなったのでした。

2020年に、ASEANは開発途上国が持つ弱さを補強するべく、新たな方策を宣言します。

コロナ禍から低迷する経済を支援する目的で、財政・税制・金融面において積極的な支援策が講じられていきます。

現金給付や低所得者手当、人材育成・事業者への助成金といった支援が、ASEANのスタートアップの活性化につながったと考えられるようです。

参照:コロナ禍におけるASEANでのSDGs – みずほ総合研究所

スタートアップからユニコーンに成長する企業も

かつてスタートアップといえば、米国・欧州・中国がそのほとんどを占めていました。

ASEAN諸国は、先進国に大きな遅れをとっている状況にあり、2018年あたりまで、ユニコーンを輩出する国はシンガポールのみでした。

しかし2020年以降、政府の支援策が進むとともに、ASEANスタートアップが急速に頭角を表し始めます。

スタートアップの調査統計を行うCB Insight(シービー・インサイツ)によると、2021年以降いわゆるユニコーンと呼ばれるスタートアップの数は、ASEANにおいて約2.8倍に増加しているとのことです。

参照:東南アジアのユニコーン企業 – JETRO

アジア圏におけるユニコーンの数(2022年)

 

2022年度のアジア圏ユニコーンのランキングでは中国がダントツ1位(世界ランキングでは1位米国、2位中国)。日本はインドや韓国に遅れて6位でした。CB Insightにユニコーン企業として認められている企業は、ASEAN諸国に32社あります(2023年4月時点)。

 

出典:The Complete List Of Unicorn Companies

スタートアップとユニコーンの違い

ここで、スタートアップとユニコーンの違いを解説します。

スタートアップとは

スタートアップとは、「斬新なアイデアや卓越したスキル」をもとに、まったく新しいタイプのビジネスモデルを提供する企業のことです。

創設して間もない新興企業を指し、基本的に前例がない事業であるのが特徴です。

ユニコーンとは

ユニコーンは、スタートアップから飛躍的な成長を遂げ、高く評価されている企業のことです。一般的な条件は以下の3つです。

  • 起業から10年以内
  • 評価額が10億ドル以上
  • 非上場である

参照:ユニコーン企業とは – 東大IPC

SDGs9に関わるスタートアップ・ユニコーン~ASEAN編

では、実際にどんなスタートアップがASEANで活躍しているのか、いくつかご紹介しましょう。

シンガポール:VFlow Tech(蓄電システム)

Vflow Techはエネルギー分野でシンガポールのインフラ構築に貢献するスタートアップです。

NTU(Nanyang Technology University)南洋理工大学におけるエネルギー研究開発を経て、2018年に設立されました。

おもに、蓄電システム(Energy Storage System)の開発・販売を行っています。

蓄電システムは電力を貯めておける、大型の電池のことです。

太陽光や風力、地力など地球資源から作られる再生可能エネルギーは、天候や自然環境に影響を受けやすく、不安定な電力供給が課題です。

蓄電システムに再エネ電力を貯めておけば再エネのキャパシティーが拡がり、災害などの非常時でも安定的に供給できます。

Vflow Techではレドックスフローと呼ばれる技術を使い、リーズナブルで大容量・高パフォーマンスの蓄電システムを提供。

蓄電容量は100kWh~250kWh、24時間体制でモニタリングを行い、同時に配送電設備・EVチャージ機・再エネ設備の販売も。

トータル的なサポートが同社の強みです。

また、女性の社会進出も支援しており、QuickHRが開催するThe Woman of Excellence Awardにて女性シニア・マネージャーが2023年に表彰されています。

多方面に渡り、Vflow TechはシンガポールのSDGsを先導しています。

2023年3月には日本のスタートアップ・リアルテックHDが出資

リアルテックHDは、ミドリムシの航空燃料で有名なユーグレナの代表執行役員CEO、永田暁彦氏と理工大系ベンチャーのリバネスの代表取締役CEO、丸幸弘氏が設立者であることから、今後の展開が期待されています。

参照:About US – VFlow Tech

参照:リアルテックファンド、VFlow Techに出資 -PR TIMES

マレーシア:CARSOME(中古車売買)

次に紹介するのは、2021年にマレーシアで初のユニコーンとなったCARSOME

同社はインドネシア・タイ・シンガポール・フィリピンで中古車売買サイトを運営する企業です。

CARSOMEは中古車卸売事業と自社調達の中古車販売、ユーザー同士で売買可能なプラットフォームを提供しています。

併せて、自動車ローンや保険、メンテナンスなど自動車関連の総合的なサービスが強みです。

中古車を選ぶことは、経済的な利点だけでなく、同じガソリン車の場合でも個人や企業のCO2削減に効果があります。

なぜなら、自動車の製造段階においても、大量のCO2が排出されているからです。

中古車を購入する人が増えれば、製造時のCO2削減につながるといえます。

さらに、自動車1台には貴重な鉱物資源も多く使われているため、資源の節約も同時に実現できます。

EVへの移行がグローバルに促進されていますが、実際はコスト面で戸惑う消費者が多いのが現状です。

CARSOMEの、個人でも売買可能な仕組みや安価な中古車の流通が、CO2削減の代替法としてASEANの消費者ニーズに応えています。

参照:Reducing Carbon Footprint in Malaysia – CARSOME

タイ:Ricult(農業プラットフォーム)

タイで活躍する米国のスタートアップRicult.同社は米マサチューセッツ工科大学のOBたちが立ちあげた農業系IT企業です。

創業者の出身地であるタイとパキスタンを拠点に、農業をサポートするデジタルソリューション・プラットフォームを提供しています。

Ricultでは、衛星画像・気象データを独自のAI分析で天候予測を行い、適切な収穫時期、農資材の推奨や各種農産物の売買価格の提供などを行っています。

異常気象や洪水リスクを低減し、収穫量の最大化と農業の効率化につなげるのが狙いです。

併せて、融資仲介や農作物の販売支援などで、農家の経営をサポート

顧客である農家全体のデータを収集分析し、さらにそれを農業関連業者に提供することで、東南アジア全体の農業活性化が期待されています。

2021年には、日本の大手総合商社である双日がRicultに出資を開始しました。

同社は、東南アジアにおける化成肥料事業の強化を進めており、Ricultとの提携によって、さらなる事業拡大と東南アジアの持続可能な農業の発展に貢献しています。

参照:The Digital Financial Solution – ricult

参照:双日、農業ITスタートアップRicult社に出資参賀

インドネシア:J&T Express(ロジスティック)

J&T Expressはインドネシアの国際物流サービスを提供する元ユニコーンです。

「顧客志向と効率主義」という理念のもと2015年に設立されました。

東南アジア・中国・中東・南アメリカでeコマースの普及拡大とともに急成長し、世界最大規模の物流企業へと発展。

設立から8年で、2023年10月に香港証券取引所に上場を果たしました。

CO2排出量がディーゼル車よりも少ない、天然ガスのトラックを採用。

日本のいすゞ自動車とも提携しています。

最終的な配達にはEVや電気スクーターを使い、宅配パッケージのリサイクルも行っています。

さらに、世界共通で使える電子領収書で紙資源を節約。

中国の物流拠点では太陽光発電で消費電力を賄うなど、徹底したSDGsへの取り組みがJ&T Expressの成長を後押ししたようです。

参照:J&T Expressが香港証取に上場 – PR Wire

参照:Sustainability – J&T Express

まとめ

スタートアップからユニコーン、グローバル大手へと成長した究極のケースが、米国のMicrosoftやApple、中国のアリババなどのITテクノロジーの先駆者たちです。

1970年代に小さなオフィスからスタートした先駆者たちは、持続可能な国際社会に向けて多大な貢献を果たしています。

今やITなしでは、日常生活は成り立ちません。それほどまでに私達の生活に浸透し、さまざまな難題を解決しています。

今は小さなスタートアップでも、数年後にはSDGsの目標達成において欠かせない巨大な企業となるかもしれません。

スタートアップの「これでたくさんの人が助かる」といった、純粋かつ熱い思いが、新たなSDGs時代へ導いていくでしょう。

この機会に、ASEANのスタートアップから、各自のSDGs戦略のヒントを探ってみてはいかがでしょうか。

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