エシカルライフ

アシックスとサステナビリティ|人と地球の健やかな未来のために

アシックスがリリースしたスニーカー「GEL-LYTE III CM 1.95」が、温室効果ガスの排出量が世界最少であるとして話題を集めています。

ファッション・アパレル業界が排出する二酸化炭素(CO2)量の多さが問題視されるなか、アシックスはサステナビリティやSDGs・CSRに真摯に向き合い、業界をけん引してきました。

本記事では、「GEL-LYTE III CM 1.95」にちりばめられた数々の工夫をはじめ、アシックスが取り組むサステナビリティも詳しく解説します。

アシックス、温室効果ガス排出量が世界最少のスニーカーをリリース

画像引用:アシックス公式

2023年9月、アシックスは温室効果ガスの排出量が世界最少のスニーカー「GEL-LYTE III CM 1.95」をリリースしました。

「温室効果ガスの排出量が世界最少」とは、製品の4つの主要段階における温室効果ガス排出量(カーボンフットプリント)の合計が、1足あたり1.95kg<ということです。

  1. 材料調達と製造(1.33kg)
  2. 輸送(0.15kg)
  3. 使用(0.03kg)
  4. 廃棄(0.43kg)

アシックスは1.95という数字にも妥協せず、今後もCO2のさらなる削減に向けた努力をしていく姿勢を見せています。

また、同社は2023年12月5日、「令和5年度気候変動アクション環境大臣表彰」を受賞したと発表しています。

気候変動アクション環境大臣表彰は、気候変動適応への取り組みに関して優れた功績のあった個人や団体に贈られる賞です。

100件に及ぶ応募の中から25件が選定されました。

「GEL-LYTE III CM 1.95」の開発・発売は、受賞に大きく貢献したといえます。

「GEL-LYTE III CM 1.95」のサステナブルな点とは

「GEL-LYTE III CM 1.95」には温室効果ガスの排出を抑えるため、以下のような取り組みがなされています。

  1. カーボン・ネガティブ・フォーム
    ミッドソールと中敷には、サトウキビ由来のバイオポリマーを融合させたカーボン・ネガティブ・フォームを使用
  2. リサイクル素材の採用
    靴ひも・かかと部・ヒール部・補強部などにはリサイクルポリエステルを使用、外箱にはリサイクルシューズボックスを使い、紙資材を削減
  3. パーツ削減とパーツの最小化
    独自の構造を採用したことでより少ない材料で作れて、繊維の廃棄物量も削減
  4. 再生エネルギーやバイオ燃料を使った製造・輸送行程
    再生エネルギーを使った工場で製品を製造し、船による輸送の工程ではバイオ燃料を使うことでCO2排出量を削減

サステナビリティと品質を両立している画期的な商品である点がポイントです。

温室効果ガスの排出を抑える数々の工夫がちりばめられながらも、履き心地がよく、アシックスが誇る品質を損なわないスニーカーに仕上がっています。

参考:アシックス公式 (asics.com)
参考:Gel Lyte 詳細レポート (asics.com)

「GEL-LYTE III CM 1.95」が注目を浴びる理由

アシックスの「GEL-LYTE III CM 1.95」が注目を集めるのには、理由があります。

カーボンニュートラルの達成に向けたアクションが至るところにちりばめられている点です。

気候変動問題の解決は、地球規模の課題です。気候変動問題に対処すべく、カーボンニュートラルの達成に世界規模で取り組む必要があります。

カーボンニュートラルとは、CO2をはじめとする温室効果ガスの「排出量」から、植林・森林管理などによる「吸収量」を差し引き、合計を実質的にゼロにすることです。

カーボンニュートラルの関連用語として、脱炭素社会、ゼロカーボン、ネットゼロといった言葉があります。

細かいニュアンスは異なるものの、カーボンニュートラルとほぼ同じ意味で使われています。

私たちが便利な暮らしを追求していくなかで、温室効果ガスの排出量も増加の一途をたどってしまいました。

これからは脱炭素社会の実現に向けて、CO2をはじめとする温室効果ガスの排出量を減らす・吸収量を増やすといった努力をしなければなりません。

地球温暖化の現状と世界各国の取り組み、そして私たち一人ひとりにできるアクションについては、以下の記事でも取り上げています。

ぜひ併せてご覧ください。

関連記事:脱炭素社会とは?地球温暖化の現状と世界の取り組み、私たち一人ひとりにできること

参考:カーボンニュートラルとは – 脱炭素ポータル|環境省 (env.go.jp)

ファッション・アパレル業界のCO2排出量

ファッション・アパレル業界は、原材料の調達や製造・廃棄の過程で膨大な量のCO2を排出しており、環境に大きな負荷を与えるとして問題になっています。

環境省によると、世界の衣類によるCO2排出量は21億600万tで、うち日本に供給される衣類から排出されるCO2は9,500万tと推計されています(原材料調達から廃棄まで)。

9,500万tのCO2排出量は、世界のファッション産業から排出されるCO2の4.5%に相当します。

つまり、服1着を生産する過程では25.5kgものCO2が排出される計算になります。

日本のCO2排出量は世界的に見ると比較的多いと考えられます。

温室効果ガス削減に向けた取り組みの必要性と、私たち一人ひとりが今すぐに取れるアクションについては、以下の記事で紹介しています。

早速、今日からできることを始めてみましょう。

関連記事:【世界と日本】温室効果ガス削減の取り組みと個人でできること

水の大量消費や水質汚染などの問題も

服の製造過程でも、大量の水を必要とします。

日本に供給される衣類の生産には、83.8億m³(立方メートル)もの水が必要と推計されています。

83.8億m³とは、世界のファッション産業で消費される水の9.0%に相当します。

服1着を生産するには、2,368Lもの水が必要との計算です。思ったより多いと感じた人もいるのではないでしょうか。

さらに、繊維産業からの排水が適切に処理されておらず、水質汚染を引き起こしているのも問題です。

服などの生産工場は、発展途上国に多くあります。

発展途上国の繊維産業からの排水には、化学物質が大量に含まれている可能性が高く、海洋や河川の水質汚染はもちろん、生態系を脅かす危険性があります。

このように、ファッション・アパレル業界が環境に与える負荷は想像以上に大きく、業界をあげての早急な対応が求められています。

参考:環境省 令和2年度 ファッションと環境に関する調査業務

アシックスはどんな会社?

アシックスは1949年、「鬼塚株式会社」という社名で鬼塚喜八郎氏によって設立されました。

鬼塚氏は「スポーツによって青少年の育成を通じ、社会の発展に貢献したい」との思いで「鬼塚株式会社」を興しました。

現在のアシックスという社名は、ラテン語の「Anima Sana In Corpore Sano(もし神に祈るならば、健全な身体に健全な精神があれかしと祈るべきだ)」の頭文字をとったものです。創業者である鬼塚氏の願いを受け継いでいます。

アシックスはアスリート向けの製品開発だけでなく、高機能シューズの性能を一般向けのランニングシューズにも応用させることで、スポーツを愛する人々から支持されるスポーツブランドへと成長しました。

「健康」への関心がより一層高まる現代において、アシックスは、スポーツを通じて世界中の人々の健康を後押ししています。

参考:アシックス 会社情報 (asics.com)
参考:事業展開 | アシックス コーポレートサイト (asics.com)

アシックスの創業理念「健全な身体に健全な精神があれかし」

アシックスでは「健全な身体に健全な精神があれかし」の創業哲学に基づき、「Sound Mind, Sound Body」というブランドスローガンを掲げています。

世界中の人々がスポーツを通じて、心身の健康を豊かなものにしていくため、よりよい地球環境を目指しています。

健康な心身を築くためには、健やかな地球環境が欠かせません。

私たちがランニングを楽しむために、ランニングをする地球そのものを守るサステナブルな活動を積極的に行っているのが、アシックスです。

次項で、具体的な取り組みを解説します。

参考:アシックス コーポレートサイト (asics.com)

アシックスのサステナブルな取り組み

アシックスはよりよい地球環境を目指すためのサステナビリティビジョンとして、2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにすることを目標に掲げています。

その前段階として、2030年までに事業所とサプライチェーンのCO2排出量をそれぞれ63%削減(2015年対比)するという中期目標を打ち出しました。

アシックスのサステナビリティは、以下の2つの柱から成り立っています。

  1. 人と社会への貢献:事業活動を通じて人々の心と身体を健やかにする
  2. 環境への配慮:将来世代までスポーツができる地球環境を守る

具体的な取り組み事例として、2023年4月から約3週間にわたってアシックスが開催した「Run for Reforestation Challenge」を紹介します。

参加者がランニングまたはウォーキングを5kmするたびに、1本の植樹ができるプログラムです。

世界規模で実施されました。

参加者は、アシックスが提供するフィットネス・トラッキング・アプリ「ASICS Runkeeper」を使用することで、気軽にエントリーできます。

気候変動への対応が急務ななか、一人ひとりが高い意識を持ち自ら行動することで、CO2の削減に貢献できるようにと企画されました。

人々の健康と環境への配慮を融合させた、アシックスならではの取り組みです。

参考:事業活動 | アシックス コーポレートサイト (asics.com)
参考:OUR APPROACH TO SUSTAINABILITY | アシックス コーポレートサイト (asics.com)
参考:アシックス|Run for Reforestation Challenge

People – 人と社会への貢献

アシックスの事業活動は、SDGsの17の目標すべてに関わります。

「人と社会への貢献」は、特に以下の4つの目標達成に貢献しています。

  • 目標3:すべての人に健康と福祉を
  • 目標5:ジェンダー平等を実現しよう
  • 目標8:働きがいも経済成長も
  • 目標17:パートナーシップで目標を達成しよう

ポイントは、心身の健康公正で倫理的なサプライチェーンです。

アシックス製品に携わる人たち(従業員も含む)の心身の健康はSDGs目標3に、透明性の高い、公正で倫理的なパートナーシップはSDGs目標5と8に、そして両者はSDGs目標17に貢献しています。

参考:OUR APPROACH TO SUSTAINABILITY | アシックス コーポレートサイト (asics.com)

Planet – 環境への配慮

「環境への配慮」は、以下の4つの目標達成に貢献しています。

  • 目標6:安全な水とトイレを世界中に
  • 目標12:つくる責任、つかう責任
  • 目標13:気候変動に具体的な対策を
  • 目標17:パートナーシップで目標を達成しよう

ポイントとしているのは気候変動への対応循環型ビジネスです。

アシックス製品の環境配慮への追求や、廃棄物削減への取り組みとリサイクル、そしてエネルギー使用量の削減など、SDGsの各種目標達成に向けて多角的なアクションを取っています。

このように、アシックスはCSRの観点からも貢献しているといえるでしょう。

CSRとは「Corporate Social Responsibility」の略称で、日本語訳は「企業の社会的責任」です。企業は利益を追求するだけでなく、社会、そして環境にも責任を持つべきとの考え方です。

参考:OUR APPROACH TO SUSTAINABILITY | アシックス コーポレートサイト (asics.com)

まとめ

アシックスとはどのような企業なのか、同社が取り組むサステナビリティとともに紹介しました。

「GEL-LYTE III CM 1.95」のリリースは、アシックスが目指す2050年目標(温室効果ガスの排出を実質ゼロにする)に向けて重要なマイルストーンとなったことでしょう。

「GEL-LYTE III CM 1.95」の開発に満足することなく、温室効果ガス排出量のさらなる削減に取り組むとともに、今回用いた技術を他製品にも応用させていくとして、努力を惜しまない姿勢を見せています。

人々の健康と同じように地球の健康も考える、アシックスの動向には今後も目が離せません。

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