企業利益と社会問題解決の両立を目指すゼブラ企業とは|各社の取り組みを紹介
ゼブラ企業とは、白と黒の対になるカラーをもつゼブラ(シマウマ)のように、異なる2つの要素の両立を目指す企業です。
SDGsの達成に必要な、持続可能な社会を目指すうえでもゼブラ企業は不可欠な存在であり、近年注目度を高めています。
今回は、ゼブラ企業が生まれた背景や今注目を浴びているゼブラ企業について、事業内容や取り組みとともに紹介します。
日本や世界の社会課題解決のためにも、日々奮闘するゼブラ企業の取り組みを知り、積極的にサポートしていきましょう。
ゼブラ企業とはどんな企業?
ゼブラ企業は、事業における経済性(企業利益)と社会性(社会貢献)という、2つの要素を同時に追求する企業を指します。
ゼブラ企業の概念は、独占・競争・個といった企業体系ではなく、群れで行動するシマウマのように、協力・共生・持続可能といった、他者とのつながりや協力関係を大切にすることです。
また、社会課題解決のために、短期的ではなく長期的な目線で取り組んでいる点も大きな特徴といえます。
社会貢献を前提とした事業運営という点では、ソーシャルイノベーションの概念に似ているといえるでしょう。
ソーシャルイノベーションについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
関連記事:ソーシャルイノベーションを日本・海外の企業事例とあわせて解説
ゼブラ企業と対比されるユニコーン企業
ユニコーン企業とは資本主義を象徴する概念で「評価額が1,000億円を超える、未上場の企業」を指します。
短期・独占・株主至上主義を特徴としているため、ゼブラ企業とは対にある概念といえるでしょう。
ユニコーン企業の代表例として多いのはテック企業で、GoogleやFacebookもかつてはユニコーン企業でした。
これらはベンチャーキャピタルによる資金出資を受け、短期間で成果を出した企業です。
しかし、短期間で期待される成果をあげられる企業はほんの少数で、継続的な資金調達に苦しむ企業は後を絶ちません。
このような風潮を打破すべく2017年にアメリカで生まれた概念が、ゼブラ企業です。
ゼブラ企業の提唱者である、アメリカの女性起業家たちが創設したZebras Uniteは、世界中に賛同者を増やしています。
ミレニアル世代やZ世代から支持されるゼブラ企業
ゼブラ企業に対し強い共感や関心を示す年齢層は、ミレニアル世代※1やZ世代※2などの若者です。
ミレニアル世代やZ世代は、幼少期から高度経済成長がもたらした恩恵を享受するのと同時に、環境破壊や気候変動といった負の部分も目の当たりにしてきました。
自身の生活において、負の部分がもたらす影響をきちんと認識しており、「なにか改善のためのアクションを起こさないといけない」と痛感しているのではないでしょうか。
こうした意識から、社会課題の解決に寄与する仕事に就きたいと考える若者や、社会貢献を企業理念や事業内容にしている企業へ感心を寄せる若者が多いと考えられます。
※2 Z世代:1997年~2010年頃に生まれた人を指します
いずれも明確な定義はありません。
国内外のゼブラ企業とその取り組み事例
国内外のゼブラ企業とその取り組みを紹介します。
ユニコーン企業には評価額1,000億円超えのような判断軸が存在しますが、ゼブラ企業と名乗るうえで、厳格な定義や判断基準のようなものはありません。
第三者により定義されるユニコーン企業とは対照的に、ゼブラ企業かどうかを定義するのは自分たち自身なのです。
株式会社陽と人(ひとびと)
2017年に福島県伊達郡国見町で誕生した「陽と人」は、ゼブラアンドカンパニーが最初に出資をしたことで知られるゼブラ企業です。
ゼブラアンドカンパニーとは、ゼブラ企業の普及や支援を目的として設立された日本の会社です。
先述のZebras Uniteに賛同し、日本にもゼブラ企業を波及させるべく活動しています。
陽と人の事業内容は、これまで規格外となり廃棄されていた国見町の特産品である桃を、低価格で東京に卸す事業から始まりました。
さらに2020年には、同じく国見町の特産物である柿に着目し、使いみちのなかった柿の皮を利用したスキンケアブランド「明日 わたしは柿の木にのぼる」を立ち上げました。
これは、女性のデリケートゾーンケアに特化したブランドです。
創業者の小林味愛(こばやし・みあい)さん自身がサラリーマン時代に激務を経験したこともあり、「働く女性一人ひとりがもっと自分の心と体を労わりながら、イキイキと輝いてほしい」という思いから誕生しました。
これまで「利用できない」「価値がない」と廃棄されていた地方の農産物に着目し、新たな価値を付加して生まれ変わらせようと奮闘するゼブラ企業です。
参考:陽と人 公式サイト
参考:ゼブラアンドカンパニー公式サイト
株式会社Nature Innovation Group
雨の日に駅などで大量に回収され、持ち主が現れず破棄されるものといえば、ビニール傘ですよね。
日本は傘の廃棄量世界ワースト1位との報告もあり、なかでも愛着の薄いビニール傘は数回の使用で壊れたり、置き忘れたりして簡単に廃棄されてしまいます。
このような問題を解決するのが、Nature Innovation Group社の傘シェアリングサービス「アイカサ」です。
アイカサは傘を格安で借りられるサービスで、利用料は24時間あたり140円。月額280円を支払えば、置き傘1本を自宅で保管することもできます。
外出時の急な雨の際には街中でも1本レンタルすることができ、返却時は借りたスポットまで戻る必要はなく、最寄りの加盟店で返却できるため、利用しやすいでしょう。
貸出スポットは駅構内や駅周辺の店舗、大学構内など950箇所にものぼり、北は北海道から南は福岡県・佐賀県までと、全国に拡大中です。
「大量生産・大量消費・大量廃棄」が当たり前だった傘が、持続可能なシェアリングに移行する日もそう遠くないかもしれません。
アイカサによって、折り畳み傘を持ち歩いたり、急な雨の日にコンビニでビニール傘を買ったりしていたこれまでのライフスタイルが一変するでしょう。
参考:Nature Innovation Group | 傘のシェアリングサービス 、アイカサ
参考:専修大学|【SDGs】傘のシェアリングサービス「アイカサ」導入
Rennovater株式会社
Rennovater社が取り組んでいるのは、空き家を取得し簡単なリフォームを施したうえで再生させ、保証人や初期費用不要の低家賃の賃貸物件を提供する事業です。
その対象は単身高齢者・外国人・低所得者・シングルマザーといった住宅確保困難者。
空き家問題の解決と組み合わせた画期的なビジネスモデルです。
代表の松本知之(まつもと・ともゆき)さんはサラリーマンとして勤務する傍ら、この事業を個人事業として運営しており、2018年に会社を設立。
設立の背景には、幼少期に父親の会社が倒産し、母親も父親の事業を手伝う中でケガをして障害を持つといった、辛い経験が影響しているといいます。
空き家はこの先も増加の一途を辿るとされていますが、同社を通じて、住まいを確保することが難しい人々でも安心して暮らせる社会が実現することでしょう。
Allbirds, Inc.
Allbirdsは、アメリカ サンフランシスコ発のサステナブルアパレル企業です。
日本では2020年1月に第1号店が原宿にオープンしました。
Allbirdsの大きな特徴は、従来の合成素材よりもエネルギー消費を60%削減できるウールを使用していることです。
ほかにも、リサイクルしたペットボトルからつくる靴ひもや、リサイクル段ボールを使用した梱包材など、環境負荷を抑える取り組みを行っています。
2020年度の「サステナビリティレポート」で同社が目標に掲げたのは、2025年までに全製品のカーボンフットプリントを「一般的なスニーカー」との比較で半減すること、2030年までに全製品の平均カーボンフットプリントを限りなくゼロまで減らすことです。
2022年時点では既に目標の60%以上を達成したと発表しています。
化石燃料由来の合成素材の使用を控え、再生可能素材を活用、また、全製品タグへカーボンフットプリントの明記を開始するなど、気候変動へのアクションに取り組んでいます。
さらに、こうしたアクションをファッション業界全体へ浸透させるべく奮闘しています。
Allbirdsの取り組みについては以下の記事でも詳しく紹介しています。ぜひ併せてご覧ください。
まとめ
ゼブラ企業の代表例として、陽と人・Nature Innovation Group・Rennovater・Allbirdsの4社を紹介しました。
気になる企業の製品やサービスなどがあったら、ぜひ利用してみてください。
ゼブラアンドカンパニーのようにゼブラ企業をサポートする存在もあることから、ゼブラ企業は続々と誕生しています。
私たち一人ひとりのサポートが、ゼブラ企業のさらなる成長に貢献します。
社会問題の解決と持続可能な社会の実現のためにみんなで力を合わせ、できることから始めましょう。
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