地方創生

農業とSDGsはどう結びつく?関係性・現状・SDGsへの取り組みを解説

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SDGs(持続可能な達成目標)は、世界中のさまざまな社会課題の解決に向けた指針のひとつとして注目されています。

農業における課題解決につながる目標は5つあり、目標を達成するためには国内外を問わず包括的な取り組みが必要です。

今回は「SDGsと農業の関わり」をテーマに、日本や世界の農業における課題や、農業課題解決につながるSDGsの5つの目標と具体的な取り組み例について紹介します。

【日本・世界】農業の現状と課題を知ろう

農業において世界規模では、地球温暖化や災害などの自然的な要因、紛争や感染症などの地域的な要因と深い関わりがあります。

日本においては、高齢化による人手不足といった産業的な特徴も課題のひとつです。

世界の現状と課題

世界全体における農業の課題は、主に以下の7つがあげられます。

  • 気候変動や自然災害による農地へのダメージ
  • 紛争や感染症拡大による飢餓の発生
  • 先進国での過剰分配と途上国での食糧不足
  • 森林伐採による生態系への影響
  • 農薬による生態系への影響
  • 輸送や余剰廃棄によるCO2排出
  • 世界的な水不足の中で農業用水の責任ある利用

世界の一部地域では、気候変動や干ばつ、洪水などによって土壌が安定せず、農業活動の維持が困難になっています。

特に、雨水や川などに依存した生活を送っているアジア内陸部、西アジア、アフリカ北部地域では、干ばつが起こると生産力が著しく低下します。

このような自然的要因により農業活動を脅かされているのは、約10億人にものぼるといわれています。

https://youtube.com/watch?v=NAn0w-tjFIk%3Fstart%3D3

引用:「マダガスカルで深刻な食糧不足 干ばつにコロナ追い打ち」(毎日新聞)

また、紛争地域では、住民は避難をすることが最優先となるほか、安定した耕作地が得られないため、農産業を確立することが難しい状況です。

これらの地域では、飢餓問題も深刻化しています。

食品ロスの問題

また、生産面だけではなく、分配面での構造的な課題も存在します。

貿易制限によって先進国へ食糧が集中し、飽和状態による食品ロスが発生している一方、発展途上国では食糧不足に陥っています。

世界の食糧援助量は年間約420万トンにも及びますが、日本だけでもその約1.4倍(570万トン)が食品ロスとして廃棄されています。

世界人口は2050年に92億人を超えると言われており、食品としてではなくバイオ燃料としての農作物(トウモロコシなど)の需要が高まっていくと言われていく中、このような供給面での不均衡も解消していく必要があります。

出典:「我が国における食料問題の現状と課題」(農林水産省)

出典:「~食品ロス量(令和元年度推計値)を公表~」(農林水産省)

森林伐採による環境破壊

森林伐採をおこなうと、大気汚染や地球温暖化の深刻化に伴って、生物多様性に影響を与えます。

森林には全生物の約5~9割が生息しているため、彼らの生息地や生活環境を奪うことになってしまうためです。

さらに、野菜や水稲、花の栽培でよく使用されるネオニコチノイド系の農薬は神経毒性があり、農作地での生物を死滅させるほか、排水が河川に流れることで水域の生物にも悪影響を与えてしまいます。

農作物を守るための農薬ですが、そのメリットは人間にしかありません。

生物多様性へ悪影響を与えることは知っておくべきでしょう。

フードマイレージについて

環境問題に関しては、「フードマイレージ」を考慮する必要があります。

農作物の重さ×輸送距離で算出され、数値が大きいほど環境負荷のリスクが高まります。

農業用水を利用するには、持続可能性も考慮すべきです。

人間が利用できる水資源は地球全体のわずか0.01%といわれており、人口増加とともに水需要も高くなっていきます。

環境問題に配慮しつつ、ダム開発などの新たな水資源の確保に取り組む必要があります。

日本の現状と課題

日本の農業における最大の課題は、新たな農業の担い手が不足し、農業を営む人材の高齢化や減少による知識の継承が途絶える懸念があることです。

担い手不足の原因のひとつに、収入の不安定さがあげられるでしょう。

不作によって利益を得られないほか、豊作であっても単価が下がってしまうなどの問題があり、農業だけで生活することができず離農する人もいます。

また、日本の食糧自給率は戦後(昭和40年度)では73%でしたが、近年40%程度にまで下落しています。

これは先進国のなかでも最低水準といわれ、今後の人口増大や気候変動、感染症の流行にも耐えうる農業の基盤が必要です。

また、1人あたりの食品廃棄量も多いことから、消費者側で食物の「規格」「期限」に関する正しい理解も重要でしょう。

日本の食品ロスの現状について下記ページで解説しています。

【日本】深刻なフードロスの現状とは?削減に必要な3つの取り組み

農業×SDGs!日本での取り組み事例5選を紹介

SDGsは17の目標によって構成された、全世界共通の目標です。

ここでは、農業に関連するSDGsの目標を5つ紹介し、それぞれの実現に向けて日本ではどのような取り組みがされているか解説します。

大きく、「食糧の供給」「雇用の創出」「環境問題の解決」に分けられます。

食糧の供給:【目標2】飢餓をゼロに

SDGsの目標2では「飢餓をゼロに」と題し、世界規模で課題となっている飢餓をなくすための食糧の安定確保や栄養状態の改善、持続可能な農業を推進することが掲げられています。

日本においては、令和12年までにカロリーベース総合食糧自給率を45%、生産額ベース総合食糧自給率を75%とすることを目標にしています。

また、日本では食品ロスも問題視されており、私たち一人ひとりの尽力が欠かせない身近な問題です。

食品ロスとは、「まだ食べられるのに捨てられる食品」を指し、規格によって販売できなかった野菜や、家庭・飲食店での食べ残しなどが当てはまります。

日本全体の食品廃棄物は1,535万トンで、そのうち食品ロスは612万トンといわれています。

出典:「食品廃棄物等の利用状況等(平成29年度推計)」(農林水産省)

私たちが食品を無駄なく消費することは、過剰供給を減らして食糧不足に瀕している国や地域への再分配に向けた取り組みを支援することにつながります。

関連記事:フードロスからSDGsを考える!自分たちができる取り組みを知ろう

【日本の取り組み事例】栄養改善事業推進プラットフォーム

栄養改善事業推進プラットフォーム(NJPPP)は、途上国に向けた栄養改善事業の取り組みを支援する「行政と民間の連携による枠組み」として活動しています。

海外の関係機関と連携し、途上国への食品供給事業を展開するビジネスモデルとして、慈善事業ではなく営利目的による持続可能な支援を推進することが目的です。

多くの企業や団体が協力することで、食糧問題解決に向けた活動を力強く押し進めています。

雇用の創出:【目標8】働きがいも経済成長も

持続可能な農業活動の推進は、SDGsの目標8と深く関連しています。

目標8「働きがいも経済成長も」は、生産的な完全雇用や「ディーセント・ワーク」の推進を目的に掲げられています。

ディーセントワークとは「権利が保護され、十分な収入を得られ、適切や社会保護が与えられている生産的仕事」を指します。

ディーセントワークの実現を目指す企業では、労働環境において例えば以下のような要素を取り入れています。

  • 評価制度の公平、平等性
  • ワークライフバランス
  • 労働組合への自由加入、脱退
  • 長時間労働の是正
  • 育成、教育機会の提供

農業の生産性が向上すれば、新たな雇用が生まれて経済の活性化にもつながるでしょう。

【日本の取り組み事例】農業の6次産業化

農業の6次産業化も、国を挙げて推進されている取り組みのひとつです。

6次産業化とは、1次産業(農林漁業)、2次産業(工業)、3次産業(商業)のかけ合わせによって、新たな価値や雇用の創出につなげることを指します。

地域複合アグリビジネス、次世代ツーリズム、ふるさと回帰産業「農泊」と連携した観光消費の促進、農業と福祉の連携などが取り組み例です。

6次産業化法が公布された2010年と、農業生産、漁業生産における総販売金額を比べると、以下のようになっています。

2010年 2019年
農業生産関連事業 1.64兆円 2.07兆円
漁業生産関連事業 0.16兆円 0.23兆円

出典:「6次産業化総合調査」(農林水産省)

農業の6次産業化を推進することによって、若年層の雇用や所得向上も期待できます。

環境問題の解決:【目標12】つくる責任つかう責任

目標12では「つくる責任つかう責任」と題し、持続可能な生産と消費のサイクルパターンを確保することが目標とされています。

農地開拓のための森林伐採や農薬の不適切な使用、農業機械の使用は、環境負荷や健康被害のリスクがあります。

例えば、以下のような作業方法は、無駄なエネルギーや温室効果ガスを発生させるといわれています。

【米農家の事例】

    • トラクターを必要以上のエンジン回転で動かす
    • トラクターのエンジン出力に見合わない作業機を利用している
    • コンバインのエンジン回転をフルスロットルにしている
    • 穀物乾燥機での作業を早朝や降雨後に行っている

農業分野における環境負荷が今以上に深刻化すれば、継続的な農業活動が困難になるでしょう。

そのため、農業を含むあらゆる産業の生産活動に責任をもち、効率的な消費を推進することが大切です。

【日本の取り組み事例】省エネ設備の導入

温室効果ガスの排出量削減を目指して行われている取り組みが、省エネ設備の導入に対する支援です。

施設園芸における加温栽培は石油燃料を多く消費することから、温室効果ガスの排出量の多さが問題視されてきました。

国は対策として、省エネルギー化を図る農業者団体などを支援するため、施設園芸における燃油価格高騰緊急対策事業を展開しています。

事業内容は、ヒートポンプや木質バイオマス利用加温設備のほか、多張多重化・内張多層化設備、加温のために使用する燃油量の節減効果が認められる設備のリース料金に対して、1/2を国が補助するものです。

補助対象となる油種は、施設園芸用のA重油及び灯油が指定されています。

環境問題の解決:【目標13】気候変動に具体的な対策を

目標13では「気候変動に具体的な対策を」という目標が掲げられています。

気候変動やその影響に立ち向かうための防災対策の強化、必要な緊急対策の整備などが目的です。

気候変動による影響は、農業にとっても深刻な問題です。

たとえば、地球温暖化による高温障害、豪雨、台風などの発生、干ばつなどにより、農地が広範囲で被害を受けています。

日本では、水稲の高温障害(胴割れ米の発生)や、みかんの浮皮症、ぶどうの着色不良などの農作物への影響のほか、豪雨災害によってビニールハウスが倒壊したり、田畑が冠水するなどの被害が発生しています。

2015~2020年までの5年間で、農地・農業用施設の被害額は約7900億円にのぼるそうです。

出典:「農地・施設被害9割 豪雨、台風が原因 5年間で7900億円」(日本農業新聞)

また、自然環境の変化による野生動物からの農作物被害も問題視されており、気候変動への具体的な対策は、結果的に持続可能な農業にもつながります。

【日本の取り組み事例】農業の省エネ化

国では、2020年までに1990年度の温室効果ガス排出量(1261万t)を25%削減するという中期目標を掲げ、省エネ施設や機械の導入、カーボンフットプリント制度(※)など営農活動の普及を進めていくための施策を実行してきました。

国内では、以下のような取り組みがされています。

・省エネ効果が高いヒートポンプや、保温性に優れた高断熱被覆設備を導入する

・ハウスの暖房設備に、木質バイオマス利用加温機を導入する

・地元の木材を利用した店舗を建設して環境負荷を軽減する

(※)カーボンフットプリント制度…製品の調達から廃棄に至るライフサイクル全体において、どれだけの温室効果ガスが排出されているかを表示する制度

環境問題の解決:【目標15】陸の豊かさも守ろう

目標15「陸の豊かさも守ろう」は、陸上生態系の保護や森林の持続可能な管理、土地劣化の阻止などを目的としています。

農業は陸の環境変化に影響を受けるため、目標15は農業と関連性の高い課題解決目標のひとつです。

陸の豊かさを守るには、農業による環境負荷についても対策を講じる必要があります。

そのためには、森林伐採などによる環境への負荷が深刻な発展途上国に対し、森林保護などへの取り組みにインセンティブを提供する仕組みの確立が重要とされています。

日本においては、人工林の割合の多さが課題となっています。

日本は国土面積の約67%が森林ですが、そのうち40%は人工林(スギやヒノキを植樹したもの)です。

これらは管理が不十分だと災害を防止するための水源涵養機能などが十分に発揮されず、台風や豪雨などの自然災害によって各地に被害を及ぼしてしまいます。

近年は海外から安価や資材が輸入されている影響で、この影響を大きく受けています。

また、間伐などを行わないために地面まで日光が届かず、植物の生育に影響を与えるなどして生物多様性にも影響を及ぼしています。

【日本の取り組み事例】農業改良資金の特例措置

農業改良資金の特例措置は、日本政策金融公庫が行っている取り組みで、環境に配慮しながら農業を行う事業者に「農業改良資金」として融資を行っています。

対象となるのは、エコファーマーや、農商工等連携促進法の認定を受けた農業者などです。

資金は、農地利用権や農業用施設、機械の賃借料などの一括支払い、品種の転換など、さまざまな用途で活用可能です。

返済期間は12年以内かつ無利子で借りられることも特徴で、融資限度額は個人で5,000万円、法人や団体は1億5,000万円となっています。

まとめ

SDGsと農業は密接に関連しているものであり、私たちの生活に直結する課題でもあります。

SDGsの目標達成に貢献するには、取り組みを行っている企業について知り、サービスや商品を購入し、支援につなげていくことが大切です。

食品ロスを削減する取り組みを普段の生活の中で意識する、SDGsについての理解を深めるなど、私たち一人ひとりにできることからはじめていきましょう。

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GREEN NOTE編集部

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