人的資本経営とは?注目される背景とメリットをわかりやすく解説!
最近では、投資家からの要望や海外での開示義務化などの動向か、「人的資本経営」という概念が注目を集めています。
この動きは世界的な広がりを見せており、日本においても人的資本への注目度が高まっています。
今や人的資本経営は、企業経営においても重要視すべきキーワードです。
しかし、人的資本経営を意識している方の中にも、まだその概要を完全に理解しきれていないと感じている方は多いのではないでしょうか。
この記事では、人的資本経営に注目が集まる理由や取り組むメリット、実践する上でのポイントを紹介しています。
これからの企業経営に不可欠な「人的資本経営」について、この機会に理解を深めてみましょう。
人的資本経営とは何か?
人的資本経営とは、人材を「資本」として位置付け、その価値を最大限に活用する経営手法です。
これは、持続可能な企業の価値向上を目的としています。
日本では、2023年3月期の決算から、上場企業などに対して情報開示が義務付けられるようになった新しい概念です。
参考:経済産業省「人的資本経営 ~人材の価値を最大限に引き出す~」
人的資本経営は従来の人材戦略とどう違うのか?
人的資本経営では、人材を「投資によって価値を高められる資本」と位置付けています。
つまり、人材という資本を最大限活用し、持続可能な企業価値の向上経営手法です。
従来の人材戦略では、人材は設備やツールと同様に「あらかじめ持っている価値しか提供できず、消耗していく資源」として扱われてきました。
「ヒト・モノ・カネ」という表現にあるように、資源はコストとして消費されるものであり、「できる限り効率的かつ少なく利用すべき」と見なされてきたのです。
その結果、人材にかかる費用もできるだけ抑える経営が理想とされてきました。
人的資本経営に注目が集まっている背景
なぜ今、人的資本経営が注目を集めているのでしょうか。
その背景には、主に次の4つの要因があります。
- 多様な人材と働き方への移行
- 投資家からの開示要請
- 経営に対する世界的評価の高まり
- DX化時代における経営戦略
これらの背景について、1つずつ解説します。
多様な人材と働き方への移行
人的資本経営に注目が集まっている背景の1つ目は、多様な人材と働き方への移行です。
日本では労働人口の減少が続く中、新卒一括採用や終身雇用を前提とした画一的な人材管理はすでに限界と言われています。
また、少子高齢化が進んでいるため、多様な働き方のニーズに応えながら、一人ひとりの人材を活用する経営手法が求められています。
さらに、企業がグローバルに成長するには、異なる文化や価値観を受け入れた組織作りも不可欠です。
このように、日本の労働人口構造の変化と、多様な価値観を持つ人材の活躍が重視されつつあるため、人的資本経営への移行に注目が集まっています。
投資家からの開示要請
人的資本経営に注目が集まっている背景の2つ目は、投資家からの開示要請があったためです。
投資家たちは金融資産や土地・建物・機械などの有形資産だけでなく、人材や特許・ブランドなどの無形資産も考慮して、企業価値を評価するようになりました。
無形資産の中でも、特に大きな割合を占める人的資本への取り組みを評価する投資家が増えたため、人的資本経営への注目も高まっています。
参考:マーサー・インベストメンツ株式会社「人的資本経営とは?取り組む意義や人的資本の情報開示の進め方を解説 」
経営に対する世界的評価の高まり
人的資本経営に注目が集まっている背景の3つ目は、経営に対する世界的評価の高まりです。
持続可能な社会を目指す取り組みは、世界中で注目を集めています。
例えば、SDGsの目標8「働きがいも経済成長も」では、すべての人々のために持続可能な経済成長・生産的な完全雇用・働きがいのある人間らしい仕事の推進が掲げられています。
このように、人材への投資が企業の成長性や将来性を評価するための重要な指標となっているのです。
世界的な潮流変化の中でも、人的資本経営は重要な位置を占めていると考えられています。
参考:三井住友銀行「人的資本経営とは?目的やメリット、情報開示内容をわかりやすく解説」
DX化時代における経営戦略
人的資本経営に注目が集まっている背景の4つ目は、DX化時代における経営戦略手法の1つであるためです。
最近の経営戦略において重要視されている要素の1つに、「DX(デジタルトランスフォーメーション)」があります。
企業が激変するビジネス環境に適応し、競争力を高めながら中長期的に企業価値を向上させるには、DXの活用も不可欠です。
DXの活用のためには、顧客や社会のニーズに応じて製品やサービス・ビジネスモデルをスピーディーに変革させなくてはいけません。
さらに、DXの活用には、業務や組織・プロセス・企業文化を変革することも重要です。
経営戦略の重要な要素としてDXを導入する企業において、自社のDX戦略と連動した人材戦略の構築と実践が求められているのです。
人的資本経営に取り組むメリット
人的資本経営を推進することにより、事業戦略の実現性が高まり、企業の持続的な成長に繋がります。
主なメリットは、以下の5つです。
- 生産性の向上が期待できる
- 企業ブランディングの向上が期待できる
- 従業員の能力が可視化できる
- 従業員のエンゲージメントが向上する
- 投資家からの評価が高まる
1つずつ解説します。
参考:三井住友銀行「人的資本経営とは?目的やメリット、情報開示内容をわかりやすく解説」
生産性の向上が期待できる
人的資本経営に取り組むメリット1つ目は、生産性の向上が期待できることです。
人的資本経営における人材への投資は、従業員のスキルアップと成長を促進し、業務の生産性も向上するものとされています。
それぞれの従業員がこれまで以上にパフォーマンスを発揮すれば、企業全体の増収が期待できるためです。
増収によって得られた利益をさらに人的資本に再投資することで、従業員と企業が共に成長する好循環が生まれ、生産性も期待できるようになります。
企業ブランディングの向上が期待できる
人的資本経営に取り組むメリット2つ目は、企業ブランディングの向上が期待できることです。
人材を「資産」と捉え積極的に投資する企業は魅力的に映るため、優秀な人材が集まります。
多くの人が「ここで働きたい」と思う企業になると、企業のブランディング向上にも繋がります。
さらに、企業のブランディングが向上すると、新たな顧客や求職者を惹きつけることもでき、企業イメージの向上にも繋がる連鎖が生まれるでしょう。
従業員の能力が可視化できる
人的資本経営に取り組むメリット3つ目は、従業員の能力が可視化できることです。
企業が人材育成に注力し、能力を可視化し一元管理すると、従業員一人ひとりの強みを活かせる業務が見えてきます。
従業員一人ひとりの情報を一元管理することで、適材適所の人員配置が実現しやすくなります。
各従業員が得意分野や能力を発揮できる場で活躍すれば、業績の向上や利益の拡大にも繋がるでしょう。
従業員のエンゲージメントが向上する
人的資本経営に取り組むメリット4つ目は、従業員のエンゲージメントが向上することが挙げられます。
「エンゲージメント」とは、従業員の会社に対する愛着心や思い入れといった意味です。
企業が人材への投資に注力すると、従業員への成長機会を提供しやすくなるのです。
従業員へ成長機会を与えると、企業に対して「私たちの成長に投資を惜しまない職場」と認識しやすくなるため、モチベーションが高まり企業への帰属意識の向上が期待できます。
結果として従業員のエンゲージメントが向上し、企業への帰属意識の向上や離職率の低減に繋がるでしょう。
投資家からの評価が高まる
人的資本経営に取り組むメリット5つ目は、投資家からの評価が高まることが挙げられます。
人的資本経営に率先して取り組む企業は、社会的価値の高い企業として投資家から高く評価されます。
多くの投資家にとって魅力的な投資対象の企業となれば、投資額が増えることも十分に期待できるでしょう。
投資額が増えると、人材への投資がさらに強化できるため、人的資本経営が一層充実し、企業価値が高まる好循環をもたらします。
人的資本経営の実践におけるポイント3選
人的資本経営を実践していく際には、注意すべきポイントが3つあります。
- 情報の開示だけを目的としない
- 経営戦略との紐づけを徹底させる
- 全社的な目標を大切にする
1つずつ解説します。
情報の開示だけを目的としない
人的資本経営を実践する上でのポイント1つ目は、情報の開示を目的としないようにすることです。
人的資本経営に関する情報開示は、上場企業にとって果たすべき重要な責任の1つです。
しかし、情報開示のためだけにデータの集計や情報収集をしてしまうと、人的資本経営の本来の目的から逸脱してしまいます。
従業員にとって働きやすい環境を整え、人材という資本の価値を最大限に引き出す施策を実行した上で、開示すべき情報を選定するようにしましょう。
参考:三井住友銀行「人的資本経営とは?目的やメリット、情報開示内容をわかりやすく解説」
経営戦略との紐づけを徹底させる
人的資本経営を実践する上でのポイント2つ目は、経営戦略との紐づけを徹底させることです。
人的資本経営を進める際には、経営戦略と人材戦略を緊密に連携させることが最も重要です。
経営戦略は組織の目標や方向性を明確にし、人材戦略はその目標を実現するために従業員の採用・育成・評価・報酬を設計しなければなりません。
目的と手段が一致して初めて、活動の効果が発揮されるのです。
全社的な目標を大切にする
人的資本経営を実践する上でのポイント3つ目は、全社的な目標を大切にすることです。
人的資本経営を浸透・実現するためには、経営層や管理職がその重要性や方向性を理解し、従業員にも共有することが不可欠です。
経営層や管理職だけでなく、従業員も一丸となって、全社的な目標やビジョンに向かってこそ会社の真価が発揮されます。
全社的な目標を大切にするためには、部署ごとなどの小さな範囲ではなく、大きな枠組みで捉えるようにしましょう。
まとめ
本記事では、人的資本経営について紹介しました。
人的資本経営とは、人材を「資本」として捉え、人材を最大限に活用しながら持続的な企業価値向上を目指す手法です。
企業のビジネスを支えているのは人材です。
人材を上手に活用することで、変化の激しい現代においても、生き残るための強い企業基盤を築けるでしょう。
強い経営基盤の構築のためにも、人的資本経営に向き合い、将来を見据えた経営を全社一丸となって進めていくことが重要です。
ぜひ、この機会に人的資本経営について考えてみてはいかがでしょうか。
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