ダイバーシティ

SOGIとは?LGBTQ+との違いやSOGIハラスメントについて考えよう

すべての人の性的指向・性自認を包括する概念「SOGI」が、「LGBTQ+」に代わり注目を集めています。

本記事では「SOGIって何?」にはじまり、SOGIとLGBTQ+との違い、SOGIに関するハラスメントと関連用語、SOGIハラスメント対策に取り組む3つの企業の具体例を紹介します。

SDGsにも関係するジェンダーや平等にまつわるトピックです。一緒に学んでいきましょう。

SOGI(ソジ/ソギ)とは

SOGI(ソジ/ソギ)とは、「Sexual Orientation and Gender Identity」の頭文字をとったものです。

Sexual Orientation(性的指向:好きになる性別)とGender Identity(性自認:自分の性別をどのように認識しているか)のことをいいます。

SOGIは「人の属性」を表す言葉で、LGBTQ+はもちろんのこと、異性愛者(自分の性とは異なる性別の相手を好きになる人)も含めたすべてのセクシュアリティを包括する概念です。

つまり、私たち全員がこのSOGIを持っていることになります。

LGBTQ+についておさらい

SOGIと混乱されることの多いLGBTQ+についても、おさらいしておきましょう。

LGBTQ+は以下の単語の頭文字をとったもので、性的少数者(セクシュアル・マイノリティ)」の総称を表す言葉です。

  • レズビアン(Lesbian):女性同性愛者
  • ゲイ(Gay):男性同性愛者
  • バイセクシュアル(Bisexual):両性愛者
  • トランスジェンダー(Transgender):心と出生時の性別が一致しない人 (性同一性障がい者を含む)
  • クエスチョニング/クィア(Questioning/Queer):性自認や性的指向が定まっていない、または定めていない人
  • プラスアルファ(+):そのほかのセクシュアリティ全般

かつては「LGBT 」「LGBTQ」の呼称が一般的でしたが、これらの枠にとらわれない、さまざまなセクシュアリティを認めるために「LGBTQ+」が誕生しました。

ネオマーケティングが2022年11月に実施した、全国の20歳以上の男女を対象に行った調査に注目してみます。

「ジェンダー」をテーマにしたインターネットリサーチによると、LGBTQ+(LGBT、LGBTQ)という言葉の理解度合いについて、全体の89.6%が「LGBTQ+(LGBT、LGBTQ)」の言葉の意味まで知っているとの結果が出ました。

参考:ネオマーケティング|ジェンダーに関するインターネットリサーチ結果

日本におけるLGBTQ+の現状は、以下の記事でも取り上げています。

関連記事:LGBTQ+は日本人口の10%!認知度は高いが理解が低い原因は?

SOGIとLGBTQ+との違い

先述のとおり、SOGIは「人の属性」を表す言葉である一方、LGBTQ+は「性的マイノリティの人」そのものを指す言葉です。

こうして見ると、LGBTQ+には差別的要素が含まれていることが分かるでしょう。

シスジェンダー(身体的性と性自認が一致しているセクシュアリティ)を多数派とし、LGBTQ+を少数派として扱っている点が人権の観点から問題視されています。そのため、SOGIという言葉が主流になってきました。

ジェンダーに関するテーマはSDGsとも関係があり、目標5「ジェンダー平等を実現しよう」や目標10「人や国の不平等をなくそう」が該当します。

SDGsには大前提のテーマとして、「No one left behind(誰一人取り残さない)」という共通理念があります。

SDGsの視点から見たLGBTQ+の現状や課題は、以下の記事で取り上げているので、ぜひ併せてご一読ください。

関連記事:【SDGsとLGBTQ+】その関係と国内外の取り組み

ジェンダーの多様性は、LGBTQ+当事者など特定の人だけの課題ではなく、すべての人の人権尊重に根ざした課題として捉えるべきとの考えこそがSOGIなのです。

SOGIハラスメントとは

性的指向や性自認に関するハラスメント防止のことをSOGIハラスメント(SOGIハラ)といいます。

2020年6月1日にパワハラ防止法が施行され、大企業に対して義務化されたのち、2022年4月1日より中小企業も対象となりました。

パワーハラスメントの中にはもちろん、SOGIハラスメントも含まれており、「知らなかった」では済まされません。

従業員の性的指向や性自認に関する侮蔑的な言動は、SOGIハラスメントに該当します。

SOGIハラスメントの具体例

具体的にどのような言動がSOGIハラスメントに該当するのか見てみましょう。

  1. 「男のくせにナヨナヨして気色悪い」「女なんだから化粧ぐらいしなさい」という発言
    ・・・「男(女)らしさ」など、「男性(女性)はこうあるべき」といった規範を押し付ける
  2. 「彼氏いるの?」といった質問を女性にする
    ・・・女性は男性の恋人がいる(女性は男性を好きになる)という思い込み
  3. 制服など、学校や職場で見た目の性別による服装での区別
    ・・・身体上の性が心の性(性自認)と一致しているとの思い込みで性表現の侵害をする
  4. 「○○さんって”こっち”らしいよ」などと陰口を言う
    ・・・本人に直接言わなくても、当事者の性表現を否定するような発言をする

身の回りでも一度は、見聞きしたようなものばかりではないでしょうか?自分ではそのつもりがなくても、受け手によっては立派なハラスメントになります。

SOGIハラスメントの問題点と関連用語

職場などで、LGBTQ+当事者を見かけたことがある人はごくわずかでしょう。

しかし、電通グループが2023年6月に行った「LGBTQ+調査2023」によると、LGBTQ+当事者層の割合は9.7%でした。

これは、左利きの人の割合に近い数字で、決して少なくはありません。

匿名のアンケートであっても性自認や性的指向を表明しない(したくない)回答者もいるため、実際はもっと多くのLGBTQ+が存在するでしょう。

次項では、SOGIハラスメントを語るうえで知っておきたい関連用語を3つ紹介します。

「カミングアウト」「アウティング」「アライ」です。

参考:電通グループ|「LGBTQ+調査2023」

カミングアウトできないことによる苦難

自らをLGBTQ+だと思っている、またはLGBTQ+であることにより受けた被害について、他人に打ち明けることを「カミングアウト」といいます。

カミングアウトによって一層の差別や偏見を受けることが懸念されるため、ほとんどの人がカミングアウトできずにいます。

一般社団法人社会的包摂サポートセンターによる報告書によると、学校や職場において自らが「LGBT」であると明かしている人は15%に過ぎません。

職場の人間関係に悩む、一人で抱え込んだ結果メンタルヘルスに問題が生じる、といった問題があります。

参考:日本労働組合総連合会|SOGIに関する 差別禁止に向けた取り組みガイドライン

アウティングは生命にかかわるほど大きなハラスメント

本人の承諾なく、SOGI のあり方を他者が暴露することを「アウティング」といいます。

アウティングは「プライバシー侵害であると同時に生命に関わるほど」のハラスメントであるとされ、過去にはアウティングによる転落死事件も起きています。

アウティングは故意でなくとも、善意や意図せず起こってしまうこともあります。

同僚や友人からSOGIに関する話をカミングアウトされたり見聞きしたりした際は、決して軽視せず、本人の同意なしに公言することのないようにしましょう。

参考:日本労働組合総連合会|SOGIに関する 差別禁止に向けた取り組みガイドライン

SOGIやLGBTQ+を理解しサポートするアライ

自分自身が性的マイノリティであるかどうかによらず、LGBTQ+やさまざまな性的マイノリティに理解を示し、サポートする人を「アライ」といいます。

アライは、「同盟」「味方」を意味する英語「ally」が語源となっています。

性的指向・性自認の正しい知識を身に付け、悩んでいる当事者がいたら話を聞き、受け止めてあげることが何よりも大切です。

差別的な言動を見聞きしたときには、見て見ないふりをせず指摘する勇気ある行動が必要です。

「アライ」についてはこちらの記事もおすすめです。
関連記事:アライ(ally)とは?LGBTQ+の差別をなくすためにアライができることを紹介

SOGIハラスメント対策に取り組む企業例

SOGIやSOGIハラスメントの認知が広がっていくにつれ、相談窓口にSOGIハラスメントやアウティングの被害が報告されていくことでしょう。

被害を受けた当事者が労働基準監督署へ通報する、企業や加害者を訴える、といったことも予想されます。

企業は、SOGIハラスメント対策を早急に講じる必要があります。

次項では、SOGIハラスメント対策に取り組む企業とその具体例を紹介します。

日本郵政

大手の海運会社である日本郵船は、LGBT/SOGIを人権への取り組みのひとつとして取り上げ、LGBT/SOGIへの理解を推し進めています。
同社の具体的な取り組みは、以下のとおりです。

  • 外部講師によるLGBT研修を実施(人事担当役員・人事関係者向け)
  • LGBTをテーマにしたダイバーシティ&インクルージョン研修を実施(新入社員向け)
  • グループ会社を含む全社員へのeラーニングを通じた啓発活動
  • LGBT相談窓口の設置
  • グループ従業員を対象とした無記名アンケート調査
  • LGBT有識者を招いての講演会の実施

また、日本郵船は「PRIDE指標(*)」の表彰制度>「PRIDE指標2021」「PRIDE指標2022」において「ブロンズ」を受賞、「PRIDE指標2023」では「シルバー」を受賞しました。

PRIDE指標(*):任意団体work with Prideにより策定された、職場におけるLGBTQなどのセクシュアル・マイノリティへの取り組みの評価指標

参考:人権への取り組み | 日本郵船

野村ホールディングス

野村ホールディングスでは、SOGIという明確な言葉こそ言及していないものの、DEI(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)の中でSOGIについて触れています。

野村グループ行動規範には、性別・性自認・性指向を理由とする一切の差別を行わないと定められています。

同社は、LGBTQ+当事者が安心してやりがいを持って働ける環境を整えることが、ひいては企業価値の向上へつながると考えています。

そのための具体的な取り組みは、以下のとおりです。

  • LGBTQ+に関する差別を禁止した規程の整備
  • 新卒・キャリア採用時や管理職研修でのDEI研修の実施
  • 無意識のバイアスを学ぶ管理職向けダイバーシティ・マネジメントに関する研修の実施
  • LGBTQ+勉強会の実施
  • 同性パートナーでも利用できる福利厚生制度の整備
  • トランスジェンダー社員へ対応するガイドラインの整備
  • DEI社員ネットワークによる理解促進の活動
  • アライズ・イン・ノムラ(ALLIES)

最後のアライズ・イン・ノムラは、性的マイノリティへの理解を呼びかける活動です。

アライ(LGBTの理解者)を増やすことによりLGBT当事者にとって働きやすい職場作りを目指すとともに、国籍・人種・性別・性自認・性指向・障がいの有無などの違いに着目し理解を深めることで、一人ひとりの強みが発揮できる環境づくりを支援するものです。

また、野村ホールディングスもPRIDE指標での表彰歴があります。

2016年より8年連続でゴールドを受賞、2016年・2017年はベストプラクティス企業に選定、さらに2021年より3年連続でレインボーも受賞しています。

レインボーは、ゴールドを受賞した企業の中から特に大きな貢献をした企業に贈られるものです。

参考:NOMURA|ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DEI)

日本コカ・コーラ

日本コカ・コーラの代表取締役社長(2024年3月時点)であるホルヘ・ガルドゥニョは、グローバルに展開するコカ・コーラの事業において、多様性を尊重し受け入れることは最も基本的な姿勢であり、DNAだと明言しています。

同社では、以下のような取り組みをしています。

  • 同性パートナーにも対応した福利厚生および就業規則の整備
  • LGBTQ当事者への理解促進と支援の表明を目的とした社内啓発イベントを継続的に実施
  • Business for Marriage Equality(BME)(*1)への賛同
  • Equality Act Japan-日本にもLGBT平等法を(*2)への賛同
  • プライドハウス東京(*3)へ協賛
  • LGBTQ+アライのためのハンドブックの策定

Business for Marriage Equality(BME)(*1):日本国内における同性婚の法制化(婚姻の平等)に賛同する企業を可視化するキャンペーン
Equality Act Japan-日本にもLGBT平等法を(*2):日本でのLGBT平等法の制定を目指すキャンペーン
プライドハウス東京(*3):東京オリンピック・パラリンピックが開催されるタイミングを契機と捉え、LGBTQなどのセクシュアル・マイノリティに関する情報発信を行い、多様性に関するさまざまなイベントやコンテンツの提供を目指すプロジェクト

LGBTQ+アライのためのハンドブックは性に関する基本的な情報から、LGBTQ+に関するデータ、「カミングアウトされたらどうする?」といった実践的な内容まで包括しています。

同社従業員に配布されるほか、企業ウェブサイトでも全内容を公開・無償ダウンロードが可能です。

企業の枠を超えて多くの組織で閲覧・活用され、ダウンロード回数は800回以上を記録しています。

もちろん、コカ・コーラもPRIDE指標での受賞歴があります。

2021年にはコカ・コーラボトラーズジャパンと日本コカ・コーラがゴールドを受賞、2022年にはレインボーを受賞しました。

参考:PRIDE指標2022レポート_20221111.indd (workwithpride.jp)
参考:コカ・コーラシステム|「多様性の尊重」に関する取り組み
参考: 日本コカ・・コーラ|LGBTQ | サスティナビリティー |

まとめ

ジェンダーに関するトピックはLGBTQ+当事者だけのものではなく、人権を守るため誰もが一緒に向き合っていくべきトピックです。

SOGIそのものやSOGIハラスメント対策の必要性を理解し、正しい知識を身に付けましょう。

誰一人取り残さない社会の実現に向け、「自分にできることはなんなのか」を考え、行動に移していきましょう。

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