ジェンダー格差をなくそう!日本の現状と世界の国から学ぶジェンダー平等への取り組み
SDGsの目標にもなっている「ジェンダー平等の実現」ですが、日本をはじめ、まだまだジェンダー格差がはびこっています。
日本は先進国のなかでもジェンダー格差の大きい国です。女性が自分らしく活躍できる社会の実現には、何が必要なのでしょうか?
本記事では、ジェンダー格差の具体例にはじまり、ジェンダー平等の実現に向けた各国や日本企業の取り組みについて紹介します。
ジェンダー格差とは?
ジェンダーの本来の意味は、社会的・文化的性差のことで、生物学的な性の違いではありません。
「男性はこうあるべき」「女性はこうあるべき」のように、社会や文化において規定され、根付いたものです。
分かりやすい例だと、男性は出稼ぎに、女性は家にいて家庭を守るという考え方です。
このような考え方は、
- 女性は養ってもらっているのだから男性を敬うべき
- 女性は家から出ないのだから教育を受ける必要がない
- 女性は弱いもので力仕事には向かない
といった人々の意識・考え方にまで反映されます。
女性の社会進出が進み、男性と女性が分け隔てなく働くようになった現代でも、依然としてジェンダー格差が生じているのが現状です。
日本のジェンダーギャップ指数は125位!先進国の中でも最下位
世界経済フォーラムにより、2023年版の「Global Gender Gap Report(世界男女格差報告書)」が発表されました。
同報告書によると、ジェンダーギャップ指数が高い(=ジェンダー格差が少ない)ランキングの上位を占めたのは、アイスランドやノルウェー、フィンランドなど北欧の国々でした。
4位にはニュージーランドがランクインしています。
主要国の順位としては、ドイツ6位、イギリス15位、カナダ30位、フランス40位、アメリカ43位、韓国105位、中国107位となっています。
日本のジェンダーギャップ指数は146カ国中125位で、2006年の公表開始以来、最低の順位となりました。
特に「政治への参加」の項目は138位と、世界で最も低いレベルです。
先進国と比較して日本のジェンダー格差が大きい事実を受け止め、改善に向けた対策を講じる必要があります。
参考:世界経済フォーラム|「ジェンダーギャップ・レポート 2023」停滞するジェンダー平等 – 格差是正まで131年
SDGs目標5「ジェンダー平等を実現しよう」
ジェンダーの平等については、SDGs目標5の中で提唱されています。
世界経済フォーラムによれば、ジェンダーギャップの解消は持続可能な経済成長を確保するために極めて重要です。
企業などの組織レベルにおいても、ジェンダー戦略を行うことは優秀な人材を集め、長期的な経済パフォーマンスの確保に不可欠であると考えられています。
ジェンダー平等やその実現に向けた取り組み事例については、以下の記事でも詳しく紹介しています。
関連記事:【SDGs目標5】ジェンダー平等への取り組み~一人一人ができること~
関連記事:【取り組み事例6選】ジェンダー問題の現状とは?日本と世界の企業の取り組み
ジェンダー格差の例
ここからは、ジェンダー格差の具体的な例を3つ見ていきます。
日本国内で発生している問題と、日本では見られないものの世界規模で問題となっているものがあります。
教育格差
1つ目は教育格差の問題です。
日本では、男女ともに教育の機会が均等に与えられていますが、これが世界的な状況とは限りません。
世界的に見ると、6歳から11歳の子どものうち、生涯を通じて学校に通えない女児は男児の約2倍です。
国によっては、女性が学校教育を受ける期間が男性に比べて短く、限定的な範囲の教育や訓練しか受けられないことがあります。
こうした教育格差は、女性の雇用機会を狭める原因にもなりかねません。
また、児童婚(18歳未満の女性が結婚させられること)が世界中で問題となっています。
18歳未満で結婚した女性の数は世界中で6億5,000万人います。
毎年1,200万人もの少女が児童婚の被害者となり、その数は後を絶ちません。
エチオピアを例に挙げると、児童婚の女児たちが学校に通えない割合は、結婚していない同年代の女児たちと比較して3倍も高くなっています。
若くして結婚し、子どもを生むことで、教育の機会を奪われてしまう女性たちに目を向ける必要があります。
家事格差
2つ目は家事格差の問題です。
特に日本では、家事や育児を負担する割合が女性に偏っています。
令和5年版男女共同参画白書(内閣府発行)によると、2021年の調査では、6歳未満の子どもを持つ共働き世帯において、妻が担う家事時間は全体の77.4%を占めています。
共働き世帯の妻・夫が週平均で費やす家事時間を比べると、妻は6時間31分、夫は1時間54分です。
また、妻の就業形態に関係なく、夫の帰宅時刻は妻よりも遅い傾向があります。
そのため、夕方以降の家事・育児は主に妻が担っていることが分かります。
賃金格差・収入格差
3つ目は賃金格差・収入格差の問題です。
高い賃金や、社会的地位を持つ職業には主に男性が多数を占めています。
一方、女性は比較的低い賃金や地位で、決定権の少ない職業に従事しています。
女性の平均賃金が男性よりも低いという現象は世界共通です。
世界的に見て、女性の月収は男性と比べて平均で20%も低くなっています。
「イコール・ペイ・デイ」という指標があり、これは女性が男性と同じ金額を手にするまでに要する日数を示しています。
2023年の日本では、イコール・ペイ・デイは「4月28日」でした。
つまり、2022年1月1日に男女が働き始め、男性が1年間で手にできる金額を女性が稼ぐには、2023年4月28日まで働かなければなりません。
また、家事や育児に費やす時間が女性に偏っているため、フルタイムでの就業や正規社員としての勤務が難しくなるという問題もあります。
これが、女性の収入格差を生み出す大きな要因です。
内閣府の調査によると、35~44歳以上の女性は若い年代(25~34歳)と比べて非正規雇用割合が上昇しています。
2022年における25~34歳の非正規雇用割合は31.4%なのに対し、35~44歳では48.4%、45~54歳では54.9%でした。
同一価値労働同一賃金の確立や、家庭における家事育児の分担を平等にするなど、女性が不利益を被らないような社会の仕組みづくりが必要です。
参考:内閣府|令和5年版男女共同参画白書
参考:同一賃金国際連合
参考:日本BPW連合会|イコール・ペイ・デイ
ジェンダー格差をなくそう!世界各国の取り組み事例
ジェンダー格差の少ない国では、女性があらゆるシーンで活躍しています。
それらの国々では、ジェンダー平等実現のためにどのような取り組みをしているのでしょうか?
【アイスランド】男女の賃金格差を法律で禁止
アイスランドは、前述の2023年のジェンダーギャップ指数で第1位に輝きました。
驚くべきは、14年連続で首位に立っていることです。
2018年、アイスランドは、世界で初めて男女の賃金格差を法律で禁止しました。
アイスランドでは、男女の賃金が同一でないことを証明できない雇用主は、罰金(1日当たり約500ドル)を科せられることになっています。
参考:NHK|世界一ジェンダー平等の国=アイスランドのお話
参考:CNN|男女の同一賃金、アイスランドで証明義務付け 違反企業は罰金
【アメリカ】男性トイレにおむつ交換台の設置を義務化
アメリカのニューヨーク州では、公共の男性トイレにおむつ交換台の設置を義務付ける州法を2019年に発効しました。
この法案を提案した州議員は自身もLGBTQ+であり、おむつ替えは母親だけではなく父親も行うべきだと主張しました。
男性トイレにおむつ交換台がないのは、「おむつ替えは母親が行うもの」というジェンダーバイアス(男女の役割について固定的な観念を持つこと)の結果です。
身近な例として、以下の記事でもジェンダーバイアスについて取り上げています。
自身の言動に当てはまるものはないか、確認してみましょう。
関連記事:ジェンダーバイアスとは?意味や身近な例を紹介【あなたは大丈夫?】
参考:CNN|公共の男性トイレにおむつ交換台を義務化、米NY州
【フィンランド】世界最年少34歳の女性首相
2019年12月、フィンランドでは、サンナ・マリン氏(34歳)が世界最年少の首相に選出され、大きな話題を呼びました。
彼女は「世界最年少」「女性」という2点で注目を集めましたが、フィンランドでは以前から女性国会議員や女性首相が誕生しており、珍しいことではありません。
フィンランドの女性国会議員の割合は46.0%で、約半数を占めるのに対し、日本はわずか9.9%にとどまっています。
フィンランドは、ジェンダーギャップ指数が2022年は2位、2023年は3位にランクインしています。
年齢や性別に関係なく、能力を発揮できるのが当たり前の社会であることが、この順位にも反映されているのでしょう。
参考:FNNプライムオンライン|フィンランドで「世界最年少34歳の女性首相」が誕生…それでも“若さ”と“女性”が注目されないワケ
【ノルウェー】育児休業の父親割当「パパ・クオータ制」を導入
育児休業を父親に割り当てる「パパ・クオータ制」は、ヨーロッパを中心に各国で導入されています。
ノルウェーは、パパ・クオータ制を1993年に世界で初めて導入しました。
ノルウェーでは、最長で54週間(休業前賃金の80%を給付)の育児休業を取得できます。
もしくは、44週間(休業前賃金の100%を給付)のいずれかを選択可能です
また、54週間(または44週間)のうち6週間は、父親だけが取得できるようになっています。
制度導入前は、父親の育児休暇取得率は4%程度でしたが、2003年には父親の9割が育児休暇を取得しています。
復帰後は、法律で「同じポジションに戻さなければいけない」と決まっているため、育児休業を取得してもキャリアを断念する心配はありません。
こうした背景からも、ノルウェーでは父親の育児休業が当たり前となっています。
一方、日本の男性の2023年育児休暇取得率は約17%なので、ノルウェーでは父親の育児休暇取得率がどれだけ高いかがうかがえるでしょう。
【ニュージーランド】世界初、女性の参政権を認めた国
ニュージーランドは1893年、世界で初めて女性参政権を認めた国です。
2018年には、ニュージーランドのアーダーン首相に第1子が誕生し、首相は6週間の産休を取得しました。
首相の産休取得は初めてのことで、ニュージーランドの女性史において重要な出来事となりました。
2020年のニュージーランド議会総選挙では、当選者の半数近くを女性が占め、中にはLGBTQ+をはじめ、先住民族であるマオリや外国出身者も含まれています。
この議会は「史上最も多様性に富んだ議会」として注目を集めました。
日本企業のジェンダー格差取り組み事例
日本でも、ジェンダー格差をなくすべく努力している企業がたくさんあります。
今回は、OKIグループ・伊藤忠グループ・アイシングループの3社の取り組みを見てみましょう。
【OKI】育休サポート報奨金やBaby8休暇
通信機器や情報機器メーカーであるOKIは、2024年4月1日より「育休サポート報奨金」を新設しました。
育児休暇取得者を支援した社員に対し、10万円を支給するという制度です。
これにより、育児休暇を取得しやすい環境を整えることを目的としています。
また、OKIはほかにも、魅力的な制度を導入しています。
例えば、「Baby8(べびはち)休暇」は、子どもが2歳になるまでに最大40日の有給休暇を取得できる制度です。
さらに、不妊治療や家事代行サービス、認可外保育施設の利用に対する補助金、ベビーシッター割引券、満3歳まで延長可能な育児休業などの支援も行っています。
これらの取り組みにより、育児をしながら活躍できる会社を目指し、社員を長期的に支援しています。
参考:OKI|「育休サポート報奨金」など、育児と仕事の両立支援制度・施策を複数導入
【伊藤忠】男性社員の育児休業取得を必須化
総合商社の伊藤忠は、2024年4月より、男性社員の育児休業取得を「必須化」します。
配偶者の出産後より1年以内に、5日以上の育児休業取得(有給)を必須とするものです。
同社は総合商社である以上、男性女性社員問わず海外駐在が発生します。
社員が安心してキャリア形成のための海外駐在にチャレンジできるよう、下記の制度も2024年4月に導入します。
- 海外駐在期間中の卵子凍結保管費用を会社が負担
- 海外駐在中に発生する不妊治療費の一部を会社が負担
また、女性経営者の視点を重視し、全役員に占める女性比率の向上に向けて数値目標を定めました。
「2030年までに、全役員に占める女性比率(執行役員を含む)を30%以上」としています(2024年2月現在21%)。
同社は今後も、「地に足をつけた」働き方改革を実行していくと述べています。
【アイシン】女性社員が「自分らしく」働ける会社づくり
愛知県に本社を置く自動車部品メーカーのアイシンでは、仕事と家庭の『両立支援』ではなく、そこから一歩先の『活躍支援』を目指した制度の整備に取り組んでいます。
2014年に女性活躍推進プロジェクト「きらり」が発足しました。
各部署から選出された女性社員によって、現場の実態を踏まえた女性活躍のための提言が行われています。
このプロジェクトにより、数々の女性活躍支援策が誕生しました。
また、企業内託児所をはじめ、テレワークやフレックスなどフレキシブルな働き方が可能です。
子どもが小学校6年生まで時短勤務できる制度や、15分ごとに時短勤務を申請できるフレックス時短、出勤時間を自分の都合に合わせて調整できるなど、子育てしながらでも無理なく仕事が続けられます。
先輩女性管理職たちが、忙しい中でも家庭を大切にする姿を見てきた女性社員たちは、育児をしながらでも管理職へのチャレンジに不安を感じることは少ないと言います。
アイシンでは、「ライフステージごとに自分らしい働き方がある」のが当たり前なのでしょう。
参考:アイシンク|自分らしく働いて、自分らしく輝く人があふれる会社を目指して
参考:アイシン|社員インタビュー
参考:AISIN CROSS|ライフステージごとに、自分らしい働き方がある。それがアイシンの、「普通」の光景。
まとめ
ジェンダー格差の解消には、国や企業の積極的な取り組みが欠かせません。
夫婦間での家事育児の負担の均等化や、賃金・収入格差の是正など、包括的な対策が必要です。
ジェンダーギャップ指数の高い国々の成功事例を参考にしながら、ジェンダー平等を実現していくことが、国際社会の持続可能な発展へのカギとなるでしょう。
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