ぺスカタリアンに見るサステナブルな食生活!ヴィーガンとの違いも解説
画像:iStock | Rimma_Bondarenko
ヴィーガンが日本でもすっかり定着してきましたが、ぺスカタリアンという言葉を耳にしたことはありますか?
ヴィーガンともベジタリアンとも異なるぺスカタリアンの食事内容は、一体どのようなものなのでしょうか。
本記事では、ぺスカタリアンの基本からメリットやデメリット、ヴィーガンとの違い、そしてSDGsとの関連性を解説します。
さらに、限りある資源を持続可能な方法で消費するサステナブルフードについても取り上げます。
ぺスカタリアンとは何か
ぺスカタリアンとは、主に魚介類や野菜や果物・豆類・穀物を食べる人たちや、その食事スタイルのことで、ペスコ・ベジタリアンとも呼ばれます。
「ペスコ」はラテン語で「魚」を意味する言葉で、そこからも分かるように魚を食べるベジタリアンと理解できます。
ぺスカタリアンは、肉類は一切口にしません。
動物の肉や動物由来の食品を避ける一方でペスカタリアンが魚を食べる理由には、以下のようなものがあります。
- 魚介類は痛覚があまり発達していないため、痛みを感じにくいとされているから
- 漁業は比較的二酸化炭素の排出量が少ないため、畜産業に比べて環境に配慮できているから
- 動物性由来の食品を一切食べないヴィーガンは、栄養面が偏ってしまうから
ぺスカタリアンは、健康維持や病気予防に効果的で、かつ環境保護や動物愛護の観点からも近年注目を浴びている食事スタイルです。
健康的で持続可能な食生活を求める人々にとって、ぺスカタリアンは魅力的な選択肢といえるでしょう。
ぺスカタリアンの基本的な食事内容
ぺスカタリアンの基本的な食事内容は、魚介類を中心に、野菜・果物・豆類・穀物などの植物性食品を豊富に取り入れたものです。
ぺスカタリアンは肉類こそ口にしないものの、動物由来である卵や乳製品に関しては人によって食べる・食べないを決めることができ、選択の柔軟さがあります。
魚介類からはオメガ3脂肪酸やタンパク質・ビタミンDなどが、野菜や果物からはビタミンやミネラル・食物繊維を摂ることができます。
豆類や穀物は、肉類を摂取しないぺスカタリアンにとって重要なエネルギー源です。
ぺスカタリアンとヴィーガンとの違い
ぺスカタリアンとヴィーガンの違いは、主に摂取する動物性食品の範囲にあります。
ぺスカタリアンは魚介類に加え、人によっては卵や乳製品なども摂取するので、食事の幅があります。
ヴィーガンは一切の動物性食品を避けるため、植物性食品のみしか食べません。
はちみつやゼラチン・白砂糖など、製造過程で動物や動物由来の成分が使用された食品も避けます。
さらに動物愛護の観点から、食べ物だけでなく革製品や羽毛など、動物を使ったあらゆる製品の使用もしません。
このようにぺスカタリアンとヴィーガンには、動物性食品や製品に対する厳格な制限の範囲の違いがあります。
ぺスカタリアンのメリット
いろいろな食事のスタイルがある中で、ぺスカタリアンを選択するメリットはなんでしょうか。
ぺスカタリアンのメリットは、主に健康面と環境面の両方にあります。
具体的には、以下3つが考えられます。
- 厳しい食事制限が不要
- 動物・環境保護の観点
- 健康リスクの回避
それぞれ詳しく見てみましょう。
厳しい食事制限をしなくて良い
ぺスカタリアンはヴィーガンやベジタリアンに比べて厳しい食事制限をしなくても済むため、実践・継続しやすい食事法である点がメリットです。
ヴィーガンの食事はたんぱく質やビタミン類(B12・D)・カルシウム・オメガ3脂肪酸・鉄・亜鉛などが不足しやすいといわれています。
ヴィーガンはこれらをサプリメントなどで補わないといけません。
ぺスカタリアンは魚介類からたんぱく質・オメガ3脂肪酸・ビタミンB12・Dといった栄養を摂取できます。
外食や食事の選択肢も広がるため、生活の中で無理なく実践できます。
参考:明治安田新宿健診センター|Vol.19 魚を食べよう!週何回食べると良い?
動物・環境保護につながる
ぺスカタリアンの2つ目のメリットは、肉類の消費を避けることで、動物保護や環境保護に貢献できる点です。
家畜の飼育による温室効果ガスの排出や、水資源の消費が問題視されています。
国連食糧農業機関(FAO)の報告書によると、人類が排出している温室効果ガスのうち、14.5%が畜産業に由来しています。
中でも牛肉の生産に関わる温室効果ガス排出量は、畜産業のうち65%を占めています。
これは、同じ量の豚肉の4倍ほどに上るといいます。
天然魚を対象とした漁業の温室効果ガス排出量の調査では、1kgの漁獲が排出する二酸化炭素の量は1〜5kgであることが明らかになりました。
赤身肉の生産では排出量が肉1kgあたり50〜750kgと推定されていることを踏まえると、いかに魚が低炭素な食品であるかが分かります。
参考:Anti Additive Association|ソーセージにサヨナラ? ドイツが世界No.1ヴィーガン大国へ
参考:Marine Stewardship Council|気候変動と漁業
参考:日本経済新聞社|畜産由来の温暖化ガスとは 全排出の14.5%占める
参考:東京新聞|バカにできない?肉の生産で出る温室効果ガス
健康リスクを減らせる
ぺスカタリアンの3つ目のメリットは、健康リスクを減らす効果がある点です。
魚介類から得られるオメガ3脂肪酸は、動脈硬化や血栓の形成を防ぎ、心筋梗塞などの心疾患リスクを低減する効果があります。
肉類には血中コレステロールを上げる作用のある飽和脂肪酸が多く含まれます。
肉類の摂取を避けることは、肥満や生活習慣病の予防に効果的です。
これらのメリットから、健康と環境を考慮した食生活を求める人々にとって、ぺスカタリアンは理想的な選択肢といえるでしょう。
ぺスカタリアンのデメリット
続いて、ぺスカタリアンのデメリットを見てみましょう。
ぺスカタリアンのメリットを3つ紹介しましたが、何事にもいい面と悪い面があるものです。
ぺスカタリアンのデメリットとしては、主に漁業や養殖業への負荷と有害物質の摂取による健康リスクの2つが挙げられます。
詳しく掘り下げてみましょう。
漁業・養殖業への負荷が大きい
ぺスカタリアンの食生活は魚介類を多く消費するため、海洋生態系に悪影響を及ぼす可能性があります。
過剰な漁獲や乱獲は、魚種の減少や海洋生態系のバランスを崩す原因となります。
養殖業もまた、周辺の海洋環境の汚染や生態系を変質させるといった懸念があります。
後述するサステナブルフードのような、持続可能な方法で生産された魚介類を選ぶことが重要です。
有害物質の過剰摂取による健康被害
魚介類にはメチル水銀やポリ塩化ビフェニル(PCB)・ダイオキシンなどの有害物質が含まれている場合があります。
特に大型魚は食物連鎖によりこれらの物質が蓄積しやすく、過剰に摂取すると健康に悪影響を及ぼすリスクがあります。
魚介類を選ぶ際には種類や摂取量に注意し、適切なバランスを保つようにしましょう。
特に妊娠中や授乳中の女性や子どもは、摂取する魚の種類に気を付けることが大切です。
ぺスカタリアンが取り入れるべきサステナブルフードとは
サステナブルフードとは、自然環境や社会問題に配慮した食品です。
言い換えれば、環境への負荷が少なく、持続可能な方法で生産された食材です。
サステナブルフードには、海や土壌などの自然環境に配慮した食品や、生産者の人権・生活に配慮した食品などがあります。
サステナブルフードを選ぶことで、持続的な環境保全や生産者の生活を保障しつつ、ぺスカタリアンの食生活を維持できます。
サステナブルフードを選ぶポイント
環境に配慮したサステナブルフードを選ぶための具体的なポイントや、ぺスカタリアンが意識すべきことを解説します。
サステナブルフードを選ぶ際には、認証ラベルやマークを目印にしましょう。
具体的には、有機JASマーク・MSC認証・ 国際フェアトレード認証などがあります。
こうした認証を受けているものは、環境に配慮した製品や、持続可能な漁業・養殖業からの製品である証です。
これらの認証マークは以下の記事で詳しく解説しています。
具体的な食品例も挙げているので、ぜひ併せてご覧ください。
関連記事:サステナブルフードの定義とは?種類や企業の取り組み事例を紹介
関連記事:エコラベルのメリットとは?エコラベルの種類や商品を解説!
ぺスカタリアンとSDGs目標3「すべての人に健康と福祉を」
SDGsの目標3には「すべての人に健康と福祉を」が掲げられています。
この目標は、世界中のあらゆる年齢の人々が健康的な生活を送ることを促進し、福祉を確保することを目指しています。
ぺスカタリアンの食生活やサステナブルフードの選択は、この目標3に貢献するといえるでしょう。
ぺスカタリアンの食生活とSDGs目標3の関連性
肉を食べず、魚介類を中心としたバランスの取れたぺスカタリアンの食事は、心筋梗塞や動脈硬化といった生活習慣病などの健康リスクを低減します。
また、肉類の摂取をしないことで食用牛の飼育や生産が減少すれば、限りある食料を適切に消費し、同時に二酸化炭素の排出量も抑えることができます。
SDGs目標3のターゲット3-9に「2030年までに、有害化学物質、並びに大気、水質及び土壌の汚染による死亡及び疾病の件数を大幅に減少させる。」があります。
農薬や化学肥料といった化学物質を使用していない食品に付与される有機JASマークや、水産資源の持続可能性が保証されたMSC認証のついたサステナブルフードの選択は、ターゲット3-9にも大きく貢献するでしょう。
参考:国連広報センター
まとめ
ぺスカタリアンとしての生活は個々の健康はもちろん、環境保護にも貢献する意義深い選択です。
ヴィーガンやベジタリアンと比較して、大がかりな食事の制限を必要としない点も魅力のひとつでしょう。
今回の記事が「限りある資源を持続可能な形で消費するにはどうしたらいいのか」について考えるきっかけになれば幸いです。
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