アニマルライツとは?その意味や問題、日本や海外の事例についても紹介
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アニマルライツという言葉をご存知でしょうか。
「ライツ(=rights)」とは権利を意味する単語で、人間同様動物にも権利があるという考え方です。
日本ではまだ馴染みが薄い言葉かもしれませんが、世界ではアニマルライツに対する取り組みが進んでいます。
世界的にも徐々に広がりを見せており、日本においても、動物たちの権利を考え、動物由来から植物由来に切り替える動きが始まっています。
この記事では、アニマルライツの概念やそれを巡る問題、日本や世界での取り組み事例を紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
アニマルライツとは
感情や欲求・知覚・記憶などがある動物には、私たち同様、苦痛を感じる能力があります。
アニマルライツは「動物の権利」と訳され、できるだけ自然のままに生きる権利や人間に危害を加えられない権利があるという考え方です。
アニマルライツと似た言葉にアニマルウェルフェアがありますが、アニマルウェルフェアは動物の生活を改善することを目標としており、私たちの生活において動物の利用は否定していません。
一方で、アニマルライツは動物の利用をやめようとする究極の考え方です。
世界にはアニマルライツに対する多くの問題が山積みです。
しかし、動物にやさしいライフスタイルを提案して、動物の権利を守っていく動きが徐々に広まっています。
参考:アニマルライツセンター「アニマルライツ(動物の権利)とは?」
アニマルウェルフェアについてはこちらの記事も参考にしてください。
関連記事:アニマルウェルフェアとは何かを簡単に説明!日本が遅れている理由は?
アニマルライツの起源と背景
道徳哲学における功利主義*の創始者であるジェレミー・ベンサムは、生存権を決定する時に問うべきこととして、「動物は苦しみを感じるのか」が動物を扱う際の基準になるべきだと主張しました。
また、オーストラリアの哲学者ピーター・シンガーは著書「動物の解放」の中で、「平等の基本原則は、全員が『同じ扱い』を受けることを求めるのではありません。重要なのは、全員が『同じように尊重』されることです。これは、動物の権利を考える際に特に大切な区別です」と記しています。
動物たちも人間と同じく、苦しみや搾取されることなく、それぞれの一生を生きる資格があることに違いありません。
アニマルライツの考え方は時代とともに変化し、現在では動物の苦しみを減らし、動物の解放を目指す具体的な運動へと発展しています。
多くの団体が動物のさまざまな問題に向き合い、動物の権利を考えたやさしいライフスタイルの提案に取り組んでいます。
参考:アニマルウェルフェア推進ネットワーク「なぜアニマルライツなのか?」
参考:ハチドリ電力「すべての動物に思いやりを」
アニマルライツを巡る問題
アニマルライツを巡る問題は多岐にわたります。
特に日本における馬の利用や動物実験などの動物を利用している場面を思い浮かべる方も多いでしょう。
ここでは主にこれら2つの問題について紹介します。
日本における馬の利用
アニマルライツの観点から見た日本における馬の利用には、以下のような問題があります。
- 競馬産業における問題
- 食用馬の問題
- ばんえい競馬の問題
日本では、馬の飼育頭数の半分以上が競馬産業のために飼育されています。
競走馬になるためには、鞭打ちや過酷な訓練を強いられることがあり、海外から動物虐待として批判されるケースもあります。
競走馬として活躍できなかった馬たちは、乗用馬や食用馬に転用されますが、日本にいる馬の約8割が元競走馬です。
強い競走馬を育成するため、名馬との交配によって生まれた仔馬も、競走馬として結果を残せなければ同じ運命を辿ります。
さらに、娯楽目的で行われるばんえい競馬も問題視されています。
北海道帯広市でのみ開催されているこのレースは、体重1トンを超える馬が重りを載せた鉄製のそりを引き、スピードを競う過酷なものです。
過去には、レース中に座り込んだ馬の顔面を騎手が蹴り上げたことが批判されるケースもありました。
ばんえい競馬では競走馬ではない農耕馬が出走しますが、過酷なレースの内容や動物虐待の観点からも「廃止すべき」という声も上がっています。
参考:ANAMAL RIGHTS CENTER「競馬と日本における馬の利用とその問題点」
参考:帯広市HP「世界で唯一のばんえい競馬」
参考:J CAST「ばんえい競馬は「廃止」すべきなのか 「馬の顔蹴り」問題が波紋、騎手に戒告処分も議論続く」
動物実験の問題
動物実験には以下のような問題点があります。
- 倫理的観点
- 種差の観点
- データの信頼性
アニマルライツの観点からみても、一番の問題点は倫理的な観点ではないでしょうか。
動物実験では多くの動物に苦痛を与えており、動物の権利が無視されています。
そもそも動物と人間には種の違いがあるため、データの信頼性という部分においても問題視されています。
また、ストレスに晒されている動物を実験台にしてデータを取得しても、正しいデータが取れるとは限りません。
動物たちは檻やケージに監禁され、恐怖におびえながら動物実験の日を迎えているのです。
アニマルライツのために私たちができること
アニマルライツのために、私たちには何ができるでしょうか。
まずは、アニマルライツについての知識や理解を深め、日常生活に落とし込んでみるもの1つの方法です。
ここではアニマルライツについて知識を深める方法や買うものを見直す方法を紹介します。
アニマルライツについての知識を深める
1975年に出版されたオーストラリア出身の哲学者、ピーター・シンガーの『動物の解放』という書籍は、動物の権利や種差別、ベジタリアニズムなどについて哲学的に記されている名著です。
この本は「アニマルライツのバイブル」として高く評価されており、その後のアニマルライツ運動に大きな影響を与えました。
また、イギリス人のアニマルライツ活動家で環境保護論者、生物学者でもあるベン・イザキャットの「動物の権利の実践」もおすすめの書籍の1つです。
この著書では、人間が引き起こしている動物の問題やアニマルライツの根底にある道徳哲学などを、地球温暖化や気候変動などといった問題も踏まえながら綴られています。
ぜひこの機会に、アニマルライツについての知識を深めてみてはいかがでしょうか。
参考:Merzbow Official Site「アニマルライツ運動について」
参考:ANAMAL RIGHTS CENTER「「動物の権利の実践」書籍ご案内」
買うものを見直す
アニマルライツのために、アニマルフリーのものを選ぶのも1つの方法です。
アニマルフリーとは、動物由来の素材を使わない製品、また、商品開発をする過程で動物実験を行わない製品を指します。
例えば、肉の代替品として注目されている大豆ミートの購入やヴィーガンレザーや非動物由来の商品、オーツミルクや大豆ヨーグルトなどのヴィーガン製品の購入も1つの方法かもしれません。
また、動物由来の成分を使用せず、動物実験も行われていないヴィーガン化粧品も登場しています。
世界的にも少しずつアニマルフリーの製品が増えつつあるため、まずはできることから始めてみてはいかがでしょうか。
参考:中央クリエイト:健康食品事業部「ガチャゴールド アニマルフリー」
参考:朝日新聞デジタル「ヴィーガンレザーとは?他のレザーとの違いや種類・問題点などを紹介」
参考:株式会社OEM「ヴィーガン化粧品OEMのメリット・デメリットと製造開発のポイントを解説」
アニマルフリーについてはこちらの記事も参考にしてください。
関連記事:【ブランド5選】アニマルフリーとは?意味や意義、取り組み事例も紹介
アニマルフリーに取り組む日本や海外の事例
世界だけでなく、日本においてもアニマルフリーに取り組む企業が増えています。
日本と海外における事例について紹介します。
日本での取り組み事例
日本でもアニマルフリーのエシカルな食材が増えています。
エシカルフード株式会社は、新しいライフスタイルや価値観を提唱するために2021年6月に発足しました。
エシカルフードでは「食生活が、地球環境を守る」をテーマに、肉食を使用せず大豆ミートなどで代用されたハンバーグやソーセージ、カレーなどを提供しています。
また、創業100年以上を誇る永井撚糸株式会社はもともと縫製糸を生産する企業ですが、ヴィーガンレザー事業へ進出しました。
ヴィーガンレザーは海外製が多く、輸入や仕入れのハードルが高いという背景を受け、自社で生産することにしたそうです。
国内での植物由来原料をアップサイクルしてヴィーガンレザーを作れないかと模索した結果、りんごや竹、ヒノキ木粉を使用した「バイオヴィーガンレザー」の開発に成功しました。
多くの顧客から「ヴィーガンレザーが身近に感じられる」との声もあり、非常に好評だそうです。
参考:エシカルフード株式会社「これからの食のスタンダードを創り出し、よりよい未来を次の世代へ紡いでいく。」
参考:FASION TECH NEWS「りんごも竹もヒノキもレザーに:永井撚糸が提案するバイオヴィーガンレザーシリーズ」
海外での取り組み事例
世界的企業のロレアルでは、40年以上前に化粧品成分や製品が人の皮膚でどのように作用するかを評価できるヒト再構築皮膚(ヒト皮膚モデル)を開発しました。
この開発により、30年以上前から動物を利用しない試験方法を採用しています。
現在は、フランスや中国、ブラジルにあるラボラトリーでさまざまな種類のヒト再構築皮膚を製造しています。
そして、それらの皮膚をモデルに、動物実験の撤廃を呼びかけています。
また、海外の有名アパレルブランドではファーフリーの取り組みも加速させ、リアルファーを使用せず、エコファーなどの代替品を採用しています。
有名アパレルブランドの中では「Fur Free Retailerプログラム」という国際的な認証を受けているブランドも多く存在します。
「Fur Free Retailerプログラム」とは、毛皮に反対する国際連盟Fur Free Alliance(FFA)が推進している毛皮を扱わないブランド承認プログラムです。
「Fur Free Retailerプログラム」を受けているブランドは、2022年3月時点で1,500を超えています。
この認証を受けたブランドの中には、ドルチェ・アンド・ガッバーナやグッチ、プラダなど世界的な有名アパレルブランドも含まれており、リアルファーを使用しない動きが高まっています。
参考:ロレアル パリの安全性への取り組み
参考:VEGAN FASION「FUR FREE Retailer認証 受付募集!」
参考:ELEMINIST「ファーフリー(Fur Free)とは エコファーとの違いや宣言をしたブランドを解説」
参考:ELLE「「リアルファーは使いません!」 ファーフリーを宣言したファッションブランド16」
まとめ
アニマルライツは「動物の権利」と訳され、動物にも人間と同等の権利があるという考えです。
動物たちもまた、人間と同じように、苦しみや搾取から解放され、それぞれの一生を生きる権利を持っているはずです。
日本ではまだ馴染みが薄い言葉ですが、世界では動物たちの権利を守る動きが広まっています。
そのためには、企業や消費者がアニマルライツについての理解を深め、正しい消費行動をすることが大切です。
ぜひ、この機会に動物の権利について考えてみましょう。
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