グリーンインフラとは?意味・メリット・課題をわかりやすく解説|国内外の事例も紹介

近年、気候変動対策や防災、持続可能なまちづくりへの関心が高まるなか、「グリーンインフラ」という言葉を目にする機会が増えています。
自然の力を活かして社会課題の解決を目指すこの考え方は、環境負荷の低減だけでなく、地域社会の活性化や人々の暮らしの質向上にもつながる取り組みとしても注目されています。
一方で、その概念や費用、効果などについてはまだ課題があり、理解されていないのも現状です。
本記事では、グリーンインフラの基本的な考え方やメリット、導入における課題を整理するとともに、国内外の事例も紹介します。
グリーンインフラとは?

グリーンインフラとは、緑や水などの自然の力を活用して、防災や環境保全・快適なまちづくりなどの社会課題を多角的に解決していこうとするインフラ整備の考え方です。
グリーンインフラの語源は英語の「Green Infrastructure」で、「自然(green)」と「社会や産業の基盤となる施設、もしくは設備(infrastructure)」を意味する単語を組み合わせた造語で、1990年代後半頃から欧米を中心に広まりました。
「グリーン」は単に緑、植物という意味だけではなく、水や土、生物などの自然環境が持つ多様な機能を活かして、自然と共生した社会の整備や土地の活用を進めようとする考え方です。
また「インフラ」は、人工的な施設や設備といった建造物だけを指すのではなく、民間企業も含めた地域社会への取り組みも含まれています。
日本では2019年に「グリーンインフラ推進戦略」が策定され、その後「グリーンインフラ推進戦略2023」で、官民が連携してあらゆる分野・場面に組み込む方針が示されています。
グリーンインフラのメリット

グリーンインフラのメリットは自然環境の保全だけでなく、その機能を有効活用することで、防災や環境保全・生活の質向上を同時に実現できる点にあります。
ここでは主に、以下の3つについて解説します。
- 自然災害の防止
- 生態系や環境の保全
- 地域の活性化
自然災害の防止や減災
グリーンインフラは、雨水を一気に流さず「貯める・浸み込ませる・ゆっくり流す」、また「樹木などの植林でエネルギーを弱める」といった自然の仕組みを利用して、災害を抑える考え方です。
例えば、根を深く張る木々や自然の植生を守ることで、雨水をしっかりと地面にとどめ、土砂崩れなどの災害を防ぐ効果が期待できます。
さらに、都市部での公園や緑地の整備で、火災の広がりを抑えたり、住民の避難場所として活用したりすることも可能になります。
景観を整えるだけでなく、自然がもつ機能や特徴を上手に利用することで、災害の防止や減災が可能です。
生態系や環境の保全
グリーンインフラにより、自然の機能を活用して生物多様性を回復・維持させ、持続可能な環境を作り出すことが可能となります。
グリーンインフラの整備で、緑地や湿地・水辺などに生態系が生まれるため、動植物の生息や繁殖を促すからです。
これにより、都市部で失われた動植物の生息が再び息づくため、種の保存や個体数の増加にもつながります。
さらに自然環境が増えることで、光合成による二酸化炭素の吸収が強化されるため、地球温暖化対策などの気候変動にも役立ちます。
地域社会の活性化・復興
グリーンインフラは、地域の景観を高めたり、交流の場を創出したりするため、地域住民のつながりを高める効果があります。
緑地や公園・水辺の整備で、憩いの場やイベントスペースが生まれるため、地域住民の日常的な交流を促すためです。
このような交流により、人の動きが活発になるためコミュニティ意識も高まり、地域社会への愛着心も育てます。
また、人の交流が活発になることで、商品を販売するなどの経済活動も行われるようになるため、地域の発展や復興にもつながります。
グリーンインフラ導入の課題やデメリット

グリーンインフラには、持続可能な社会を実現するためのメリットも豊富ですが、一方で課題やデメリットもあります。
ここでは主に、以下の3つについて解説します。
- 初期費用がかかる
- 住民からの賛同が得られにくい
- 効果測定が難しい
初期費用がかかる
グリーンインフラは地域全体を俯瞰した設計・施工が必要なため、多額の資金が必要になるケースがあります。グリーンインフラの整備には、その地域や生態系を考慮した計画が求められるため、コストがかかるからです。
また、都市部では、用地の確保や地盤改良、植えた直後の植物の管理などに手間とコストがかかります。
さらに、日本特有の高温多湿な気候によって植物の成長が早まると、メンテナンスの時期も前倒しになります。
メンテナンスが必要
植物の成長に伴う剪定や間引き、水やり、枯れ木処理、堆肥管理、侵入種除去などの作業が発生します。
日本特有の温暖湿潤気候では成長が早いため、欧米事例をそのまま適用すると想定外の早期メンテナンスが必要になる場合があります。
グリーンインフラを導入する際は、地域の経済状況もふまえ、長期的かつ持続可能かどうかの視点での判断が不可欠です。
効果測定が難しい
グリーンインフラの課題は、効果を数値で測りにくい点にあります。
多機能で影響範囲が広いため、定量的な評価が複雑になり、専門家による長期的な観察が必要となります。
また、防災や生態系保全、健康増進などの効果が同時に現れることで、因果関係の特定も困難です。
加えて、効果が徐々に表れるため、短期的な数値化や客観的なデータの提示が難しくなります。
国内外のグリーンインフラの導入事例

ここまで、グリーンウォッシュのメリットと課題・デメリットをみてきましたが、実際どのような形で導入されているのでしょうか。
ここでは、グリーンインフラを導入した国内外の事例をご紹介します。
岐阜県飛騨高山市:高山西ICビオトープ
高山西ICビオトープ(岐阜県飛騨高山市)は、中部縦貫自動車道・高山西ICの用地を活用し、グリーンインフラを取り入れた取り組みです。
高速道路のIC内にビオトープ*を整備し、「飛騨の森再生」をテーマに、20年以上にわたって活動を続けています。
運営には、高山国道事務所、岐阜県立飛騨高山高等学校、建設環境研究所、環境アセスメントセンターなどが参画し、官民学が連携。
地元高校生が植栽やモニタリング、環境学習を担いながら、地域の自然再生と人材育成を両立させています。
具体的には、調整池周辺に飛騨にあった林を復元し、貴重な植物や生物多様性の回復に取り組んできました。
高校生は年4回、環境調査や維持管理を実施し、協定に基づいて継続的な活動を行っています。
こうした取り組みは高く評価され、数多くの受賞実績を獲得しています。
高山西ICビオトープの例は、グリーンインフラの長期的な効果と社会的意義を示す好例として、国土交通省からも積極的に発信されています。
*特定の生物群集が生息・生育できる均質な環境空間
静岡県三島市:境川・清住緑地
静岡県三島市の「境川・清住緑地」は、富士山麓の豊富な湧水と水辺環境を生かした、市民が主体で行われているグリーンインフラの好例です。
境川沿いの河川敷から清住緑地一帯にかけて、湧水が湧き出す水辺を守りながら、散策路や緑地として整備されています。
河川工事においても、単にコンクリートで固めるのではなく、湧水や水辺の生態系を守ることを前提に、計画・施工が行われてきました。
地域NPO「グラウンドワーク三島」をはじめ、三島市、静岡県沼津土木事務所、施工会社などが連携し、工事計画から維持管理まで一丸となって推進しています。
また、県内で初めて「ミチゲーション工法」を導入し、湧水を枯らさずに河川改修を実現。
自然本来の姿に近い水辺環境を維持しています。
その結果、野鳥や水生生物が戻る環境が整い、「野鳥の楽園」として紹介されるなど、生物多様性の回復にも大きく貢献しています。
アメリカ ニューヨーク市:グリーンインフラ計画
アメリカ・ニューヨーク市は、合流式下水道から発生する越流水問題の解決に向け、2010年に大規模なグリーンインフラ計画「NYC Green Infrastructure Plan」を策定しました。
2012年のハリケーン・サンディ以降、気候変動への適応策として取り組みを強化。
2030年までに約15億ドルを投資し、非浸透域からの雨水流出を10%抑制することを目標に、グリーンインフラの整備を進めています。
計画は環境保護局(DEP)が主導し、街路や公園、校庭などの公共用地に加え、民間の屋上緑化も組み合わせて展開されています。
主な施策は、以下の3つです。
- 屋上緑化:空調負荷の軽減と雨水貯留を両立
- グリーンストリート:道路空間を雨水管理に活用し、景観や歩行環境を向上
- 歩道レインガーデン(バイオスウェール):市内2,300カ所以上の歩道脇に植栽帯を設置し、雨水を地中へ浸透
このニューヨーク市の取り組みは、世界の都市型グリーンインフラの例としても非常に有名です。
まとめ
グリーンインフラは、専門的で難しい印象を受けるかもしれませんが、私たちの暮らしと深く結びついた考え方です。防災や環境保全、地域の活性化などの課題に対して、自然の力を活かして向き合うこの考え方は、これからの社会に欠かせない視点となるはずです。
本記事で紹介したメリットや課題、国内外の事例を通じて、グリーンインフラがもつ可能性と現実的な側面の両方を知ることで、より理解が深まります。
グリーンインフラへの理解を深め、地域や社会の動きに目を向けることが、持続可能なまちづくりの大きな力になるでしょう。
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