クリーンエネルギー|バイオマス発電のメリット・デメリットとは?
最近よく聞く「バイオマス発電」という言葉ですが、具体的に何?と聞かれると答えられない人も多いのではないでしょうか。
なんとなく聞いたことはあって、良いイメージはあるバイオマス発電ですが、具体的にどのようなものでしょうか。
この記事では、バイオマス発電についてご説明したうえで、メリット・デメリットの両方を詳しく解説していきます。
これからの日本のエネルギーを担うかもしれないバイオマス発電について、一早く理解を深めましょう。
バイオマス発電とは?
「バイオマス発電」という言葉は耳にするようになってきましたが、いったいどのような発電方法なのでしょうか。
具体的にチェックしていきましょう。
バイオマス発電の定義
「バイオマス」とは、動物や植物などから生まれる生物資源の総称を指します。
木材や生ごみなどが原料である「バイオマス」を、燃やしたり、発酵させることでエネルギーを生み出し、発電する仕組みのことを「バイオマス発電」と言います。
現在日本で主流となっている発電方法は、化石燃料を使い発電をするものですが、二酸化炭素の排出量が多いことや、原料が海外からの輸入頼みと問題を抱えています。
バイオマス発電は二酸化炭素排出量を増やすことなく発電できる「カーボンニュートラル」な発電方法として期待されています。
さらに木材や生ごみなどの廃棄物を減らすというメリットもあります。
地域それぞれで出る自然由来の廃棄物をバイオマス資源と活用することで、電気の地産地消にも繋がると期待されています。
バイオマス燃料の種類
バイオマス発電に必要な「バイオマス資源」とは、いったいどのようなものから採れるのでしょうか。
一般的には廃棄物と呼ばれて、いわゆるゴミとして処理されてしまうものが、実はバイオマス発電にとっては資源となるのです。
- 建築産業:建築廃材
- 食品産業:食品加工廃棄物
- 農水産業:農業廃材(トウモロコシのカスやもみ殻など)・家畜排せつ物・パーム油・糖やでんぷんなどなど
- 生活系:生ごみ・下水・食用油食用油
- 木材系:山や林の残材・製造廃材
物を作る過程で出てくるようなゴミから、生ごみや下水までもがバイオマス発電においては「資源」として活用できるとは驚きではありませんか。
これらのどの地域にでもある廃棄物を活用できれば、ゴミも減らせるし、電気も生み出せるしと、メリットは大きそうです。
バイオマス発電の種類
一言でバイオマス発電といっても、燃やす燃料や燃やす方法によって、大きく2つの種類に分かれています。
少し科学的で難しいポイントですが、一つ一つご説明していきます。
直接燃焼方式「混焼方式」「専焼方式」
直接燃料方法とは、バイオマス資材を文字通り直接燃やすことでエネルギーを発生させます。
木材などを燃やして水を沸騰させ、その水蒸気タービンがグルグルと回り、発電機を動かし、電気が出来上がります。
バイオマスと石炭を同時に燃焼させる場合は「混焼方式」、バイオマス資源のみを燃焼させる場合は「専焼方式」と呼ばれます。
ガス化方式「熱分解ガス化を活用した発電」「メタン発酵を活用した発電」
資源を直接燃やすのではなく、加工することによってガスを発生させるのがガス化式方法です。
「熱分解ガス化を活用した発電」では、木材などを熱処理した際に出てくるガスを使います。
「メタン発酵を活用した発電」では、発酵しやすい下水や家畜などの糞尿、生ごみなどを発酵し、ガスを発生させます。
出てきたガスを燃料にして、タービンを回すことで電気が発電するという仕組みです。
バイオマス発電のメリットとは?
バイオマス発電にはどのようなメリットがあるのでしょうか。
- 発電量の安定性が高い
- 二酸化炭素の排出量を樹木の光合成により相殺できる
- すでにある発電設備を活用できる
- 発電時の熱を有効活用できる
- 化学エネルギーとして蓄えられる
- FIT(固定価格買取制度)の対象である
これらのメリットを一つ一つ解説していきます。
発電量の安定性が高い
再生可能エネルギーとして注目されている方法はいくつかありますが、例えば風力発電や地熱発電などは、自然の風や太陽光を利用するため、その日にどれくらいの電気を生産できるかが「自然頼み」になってしまいます。
一方、バイオマス発電は現時点で使われている火力発電とほぼ同じ原理をしています。
よって、天候などに左右されることなく、毎日同量の電気を発電することが可能であり、供給量が安定するというメリットがあります。
燃料さえ用意できれば安定的に発電が可能
バイオマス発電は、人や家畜が暮らしている限り出てきてしまうゴミを活用するので、安定的に資源が確保できると期待されています。
これの反対が、現時点において日本で主流となっている化石燃料を使う火力発電です。燃料となる石炭やLNGガスなどは、基本的に海外からの輸入品に頼っています。
何らかの理由で、原産国が輸出を止めてしまったり、原油価格の高騰などで輸送費がかさんでしまったりすると、即座に影響が出てしまうというリスクがあります。
二酸化炭素の排出量を樹木の光合成により相殺できる
バイオマス資源を燃やすときに二酸化炭素は出てしまう一方、原料となる木材がすでに二酸化炭素を大気中から吸収しています。
時差はありますが、プラスマイナスでゼロになるということで、二酸化炭素の排出量が増えることはないという考えが適応できます。
このことを「カーボンニュートラル」と呼びます。
SDGs目標でも「カーボンニュートラル」な世界へ向けて取り組みを進めるよう掲げられています。
それもあり、日本は官民手を取り合いながら、バイオマス発電を始めとするクリーンエネルギーへの切り替えを積極的に取り入れています。
すでにある発電設備を活用できる
バイオマス発電を取り入れようとした場合、現在火力発電所として使われている設備を使うことができます。
もちろんバイオマス発電用の装備を導入する必要はありますが、新しく土地を探して、施設を作って…というプロセスが不要なので、時間的にもコスト的にもメリットがあると言えます。
発電時の熱を有効活用できる
バイオマス発電をする際に放出される熱を、別のものにも使うことが可能です。
ただ熱として無駄にしてしまうのでは勿体ないということで、発電所のある地域では、発生する熱を活用する取り組みが進んでいます。
たとえば、温室の栽培室を作ってきのこ栽培を始めたり、温泉施設を作るなどの実例が増えてきています。
バイオマスは化学エネルギーとして蓄えられる
産業廃棄物や木材から作られるバイオマス資源は保存が可能です。
木材は木くずにしたり、チップに加工し、他の産業廃棄物もペレット状などに加工することで、貯蔵や輸送が可能になります。
発電量が多く必要な場所へ輸送したり、必要な時に備えて保存ができるというのはメリットです。
FIT(固定価格買取制度)の対象である
生産した電気は、電力会社によって指定された価格で買い取ってもらえるというのもメリットです。
FITの対象となるのはバイオマスだけではなく、他の再生可能エネルギーも含まれています。
その中でも、木材をリサイクルして資源とする木質バイオマスの場合は、価格面での優遇がされています。
バイオマス発電のデメリットとは?
たくさんのメリットがあり、積極的に推進していきたいバイオマス発電ですが、当然デメリットもあります。
- コストがかかる
- 燃料の調達が大変
- 発電効率は低い
それでは、具体的に一つ一つ見ていきましょう。
コスト問題
現時点ではまだまだ小規模な設備であることが多く、資源の収集や運搬にかかる手間やコストがかかりすぎてしまうという点が課題です。
バイオマス発電をするためのボイラーを導入するには、初期費用が掛かりますが、投資コストを回収するまでの年数がかかりすぎる点が、事業化へのネックとなっています。
しっかりと収益をあげて、少しでも早く投資コストを回収するには、それなりの規模感で事業展開する必要がありますが、それには投資規模がかさんでしまいます。
燃料の調達が大変
バイオマス発電の原料となる木材や廃材、廃棄物などの入手ルートも、まだしっかりと確立されていません。
山間部から木材を運ぶための運送費やその手間だけでも、規模が少ない今はコストがかさんでしまいます。
バイオマス発電がまだ新しい発電方法ということもあり課題となっていますが、より多くの発電所がバイオマス発電に切り替えることで、供給レベルも追いついてくることが期待されます。
発電効率は低い
バイオマス発電の発電効率は最大20~25%ほどと、かなり低い発電率です。
せっかくエネルギーがあっても、75%はロスしてしまっているということ。
燃料を燃やすときの温度が上がりきらないというのがネックですが、より効率よく発電できるような仕組みの開発が必要不可欠です。
併せて、この熱を別のものに利用する取り組みとのタッグを組むことで、この点は解消ができるかもしれません。
バイオマス発電の今後の展望
「一般木質・農作物廃棄物」分野における設備導入容量は、むこう10年間で2倍以上に増やしていく見込みだと、BPAバイオマス発電事業者協会は発表しています。
2021年:198万kW
2025年:411万kW
2028年:455万kW
2030年:484万kW
かなり背伸びをしたターゲットのように見えますが、現時点で懸念となっている高コストである点については、以下の点から解消されていくと考えられています。
まず、バイオマス資源のマーケットが成熟することで価格競争が生まれて、中長期的に見て価格が下がる見込み。
加えて、国内燃料材増加政策を推進することで、林業の産業化が加速して、木材が安定して調達できるようになる点も、バイオマス発電の規模拡大に大きな貢献をすると想定されています。
まとめ
国連サミットで採択されたSDGs目標の7番では「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」というタイトルで、「すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する」とあります。
意外とすぐそこまで迫ってきている2030年までに、環境負荷の低いクリーンエネルギー技術への投資を促進することを、各国が掲げている現状です。
そんな後押しもあって、注目されているバイオマス発電。現時点ではいくつかの乗り越えなければいけない課題もありますが、規模が拡大していけば解消される点も多いといえます。
二酸化炭素をできるだけ排出しないためにも、また日本のエネルギー自給率を高めるためにも、今後の積極的な開発と導入が期待されています。
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