環境負荷の見える化する「環境フットプリント」その必要性や種類、取り組み事例
環境フットプリントという言葉を聞いたことはありませんか。
カーボンフットプリントをはじめとする環境フットプリントは、「環境負荷を計算して見える化」する方法です。
この記事では環境フットプリントの意味や種類、環境負荷低減がなぜ必要なのかまで詳しく解説し、さらに具体的な企業の取組事例まで紹介します。
環境フットプリントの意味や概要を紹介
フットプリントという言葉自体耳慣れない方が多いのではないでしょうか。
まずはフットプリントの言葉の意味から解説します。
そもそもフットプリントとは?
フットプリントは英語で「footprint」と書き、IT分野でも使用されている言葉です。
意味は「足跡」や「占有領域」で、もっと具体的にいうと「活動の足跡」や「活動の及ぶ範囲」という意味になります。
環境フットプリントの概要
つまり環境フットプリントは、「環境の足跡」ということです。
人間の消費活動が環境に対してどれくらいの負荷をかけているのか、調べて計測する方法になります。
環境フットプリントはなぜ必要か
では環境フットプリントはなぜ必要なのでしょうか。
人間の経済活動はさまざまな資源やエネルギーを消費し環境に負荷を与えています。
特にエネルギーは化石燃料がメインのため、地球温暖化に影響する温室効果ガスを大量に発生させます。
2019年度の世界のエネルギー起源による二酸化炭素の排出量は336億トン、そのうちG20諸国における排出は270億トンで全体の80%にも及んでいます。
私達は早急に環境負荷軽減に取り組まなくてはなりません。
温室効果ガスだけではなく、他にも環境に対して悪影響を与える物資は多くあります。
これらを環境フットプリントによって算出し、可視化することで環境負荷軽減への対策を講じることが可能です。
SDGs目標12「つくる責任 つかう責任」にも深く関係
環境フットプリントはSDGsにも深く関係しています。
SDGs目標12「つくる責任つかう責任」では「持続可能な生産・消費」を目指しています。
企業における経済活動のライフサイクルを通して、環境や人間に害を及ぼす物質の排出を管理し、人の健康や環境への影響を少なくする努力を行わなくてはいけません。
環境フットプリントはSDGsの目標を達成するためにも必要な手段です。
環境に関するフットプリントの種類を紹介
ここからは環境におけるフットプリントの種類とその内容を具体的にご紹介します。
エコロジカルフットプリント
環境フットプリントのはじまりは、エコロジカルフットプリント( Ecological footprint)です。
「地球一個分の暮らしの指標」とも呼ばれ、人の消費活動が地球にどれだけの負荷を与えるかを測る方法を指します。
バイオキャパシティと呼ばれる地球が生産・吸収できる生態系サービスの供給量と、人間の経済活動を比較することで負荷を可視化します。
わかりやすく言うと、人間の経済活動の規模を地球の表面積に換算して、どれだけ自然環境に負荷を与えているかを理解する方法です。
- バイオキャパシティ計算方法:「面積×生物生産効率」
- エコロジカルフットプリント計算方法:「人口×1人あたりの消費×生産・廃棄効率」
世界の消費活動を支えるには、地球1.7個分が必要と言われており、いかに人間の生活が環境に負荷をかけているかがわかります。
引用:WWF
大気汚染物質フットプリント
大気汚染物質フットプリントとは、主に大気汚染にかかわるフットプリントです。
近年PM2.5 などによる大気汚染の問題が起きていますが、生産のライフサイクルにおける大気への影響や汚染に関して計測する方法です。
カーボンフットプリント
カーボンフットプリント(Carbon Footprint)とは、製品の製造において原材料調達から消費、再生産に至るまでの間に排出される温室効果ガスを二酸化炭素(CO2)に換算し、数値化して可視化したものです。
製品にカーボンフットプリントを可視化することで、消費者は企業の取り組みが見えやすくなり、双方の意識も高まります。
地球温暖化の低減に貢献できるとして、多くの企業が注目し取り組んでいる環境フットプリントです。
ウォーターフットプリント
ウォーターフットプリント(Water footprint)とは、言葉通り水に関するフットプリントです。
原材料の調達、消費やリサイクルの過程において、直接間接的に関わらず使用された水や汚染された水の量を定量的に算定する方法のことを言います。
ウォーターフットプリントにはWater Footprint Network(WFT)が提唱する以下の3つの種類があります。
- グリーン・ウォーターフットプリント(雨水や土壌水の消費量)
- ブルー・ウォーターフットプリント(河川水と地下水の消費量)
- グレー・ウォーターフットプリント(環境に排出された汚染物質濃度が許容水準になるのに必要な水の量)
引用:Water Footprint Network(WFT)
マテリアルフットプリント
各国の需要を満たすために採掘された天然資源量を表すのが、マテリアルフットプリント(Material footprint)です。
化石燃料、金属鉱石や非金属鉱石などが挙げられ、近年開発途上国での消費が向上しています。
SDGs目標12のターゲット2では「2030年までに天然資源の持続可能な管理及び効率的な利用を達成する」ことが掲げられています。
生物多様性フットプリント
海や森などの自然資源を人間の経済活動で生産・消費した場合、生物多様性にどれほどの影響を与えるかを数値化したものが生物多様性フットプリント(Biodiversity Footprint)になります。
人間の消費活動が「周辺の生き物の絶滅する確率をどれくらい上げるか」の影響を知ることが大きな目的です。
LCA(ライフサイクルアセスメント)との違いを解説
LCAと環境フットプリントはどこが違うのかよくわからないという方も多いのではないでしょうか。
LCAとは「ライフサイクルアセスメント(Life Cycle Assessment)」のことで、製品の一生(ライフサイクル)における環境への影響を評価(アセスメント)するものなので、環境フットプリントはLCAのひとつと言えます。
しかし現状LCAで評価されるのは二酸化炭素のみです。
環境フットプリントは、二酸化炭素以外にも環境に影響を与える可能性のある物質すべてが指標となります。
環境フットプリントに関する様々な事例紹介
ここからは環境フットプリントに取り組む企業の事例をご紹介していきます。
カーボンフットプリントの企業事例
まずはカーボンフットプリントの表示に取り組んでいる国内と海外の企業をご紹介します。
日本企業:シャチハタ
ハンコで有名なシャチハタは文房具で初めてCO2の可視化を行い、カーボンフットプリントを表示したペンを販売しています。
消費者にとって身近な商品のCO2の見える化を行うことで環境問題への関心を高めることを目指しています。
日本企業:日本ハム
日本ハムは、「森の薫り®」シリーズのベーコンやソーセージの商品にカーボンフットプリント・マークを表示しています。
その他の商品に対してもCO2削減や環境負荷軽減への取り組みを積極的に行っています。
海外企業:Allbirds(オールバーズ)
Allbirdsはアメリカのシューズメーカーです。
すべての製品にカーボンフットプリントを表示しています。
また専門家と開発したカーボンフットプリントを算出できるツールを公式サイトで公開しており、多くの企業と意識を共有する活動を行っています。
海外企業:カジノ社
フランスを代表するスーパーマーケットのカジノ社では、食品のヨーグルト、炭酸飲料、生地類などの多くの品目にカーボンフットプリントラベルを表示しています。
ウォーターフットプリントの事例
次にウォーターフットプリントに取り組んでいる海外と国内の企業をご紹介しましょう。
日本企業:富士フィルム
富士フィルムは製品のライフサイクル全体で、水資源に対する環境負荷軽減に2014年から取り組んでいます。
ウォーターフットプリントの算出方法のガイドラインを制定し、その評価や情報を積極的に開示しています。
日本企業:アサヒグループ
水を原料とする飲料メーカーとして、常に水資源にこだわりを持ち続けてきたアサヒグループは、原料を生産する海外59地域でのウォーターフットプリント調査を行いました。
水資源に対してのさまざまなリスクを考慮することで、健全な水資源の循環や持続可能な社会構築を目指しています。
海外企業:コカ・コーラ
コカ・コーラ社はコーラ一本分のウォーターフットプリントの結果を公表しています。
WFNが提唱している3つの方法、ブルーウォーター、グリーンウォーター、グレイウォーターのそれぞれでウォーターフットプリントを算出した合計の数値を公開しました。
まとめ:環境フットプリントを学び、環境負荷軽減に貢献しよう
環境フットプリントの意味や必要性、種類について徹底的に解説しました。
あらゆる面で環境への負荷を軽減する努力が必要となっています。
環境フットプリントについて学ぶことは、環境問題に貢献する手立てを学ぶことです。
ぜひ自分のできることをひとつでもいいので考えて実行に移してみてください。
下記ではSDGsの事業アイデアを紹介しています。
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