レジ袋の有料化で話題のバイオマスプラスチック|本当に環境に良い?
日本において使い放題というイメージのあったレジ袋が有料化されたのは、少し前のニュースです。
ある程度私たちのの生活に「レジ袋=有料」というイメージが定着したころではないでしょうか。
レジ袋の有料化に伴って「バイオマスを使ったプラスチック」が話題になることが増えました。
バイオマスと呼ばれる原料を使ったレジ袋は有料化の対象でなく、地球環境に優しいという噂です。
実際にはどのようなメリットがあるのでしょうか?
この記事ではバイオマスプラスチックのレジ袋について徹底解説します。
環境に優しいレジ袋があるって本当?
ビニール袋はどれも同じと思っていませんか。
一言でビニール袋と言っても、実は素材や厚みなどに違いがあるんです。
そんな中でも「より環境に良い素材」を使ったビニール袋が登場しつつあります。
2020年7月から始まったレジ袋の有料化
日本では2020年7月からレジ袋の有料化が始まりました。
始まるまではメディアでも騒がれることが多かった「レジ袋有料化」。
導入から数年が経った今、レジで当たり前のように貰えていたビニール袋がなくなったことは、日常の一部となってきたといえるのではないでしょうか。
無料配布が許されている袋は3種類
基本的にレジ袋は有料と切り替わりましたが、そのタイミングで法令の対象外となったプラスチック袋もあります。
プラスチックのフィルムの暑さが50マイクロメートル以上のもの:厚みのあるプラスチック袋は、繰り返し使用することができるため対象外。
海洋生分解性プラスチックの配合率100%のもの:海洋環境下で分解すると認定・認証を受けているものは、特定環境下で分解するため対象外
バイオマス素材の配合率が25%以上:生ごみなどのを原料とするバイオマス素材を使っていると認定を受けているものは対象外
この3種類のビニール袋においては、環境に配慮した袋ということで、レジにて有料にしなくても良いというルールが設けられています。
バイオマス配合レジ袋はどこで使われている?
「バイオマス配合」と聞くと、なんだか特別なビニール袋のように聞こえますが、既に私たちの生活の中に溶け込んでいます。
- スーパーなどで無料レジ袋として提供されている
- 日用品や文房具、玩具などのパッケージ
- 衣料品を入れる袋 など
意識してチェックをしないと気づかないかもしれませんが、レジ袋有料化に伴い「バイオマス配合」のビニール袋には指定のマークの取り付けが義務化されています。
あまり意識してみていないかもしれませんが、一般社団法人日本有機資源協会の認定を受けたものは、四葉と地球を掛け合わせたマークが付いています。
ぜひ手元にあるビニール袋をチェックしてみてください。
参照:バイオマスマークについて
レジ袋に使われているバイオマス素材とは?
昨今耳にする機会が増えた「バイオマス」とは何なのでしょうか。
バイオマス配合のビニール袋とは、いったい何からできているからこそ、エコな商品なのか考えたことはありますか。
バイオマス素材は何から作られている?
バイオマスとは、植物由来の有機性資源のことです。
具体的には下記3つのカテゴリーに分けることができます。
資源作物:さとうきびなどの糖質資源、イモや米などのでんぷん資源、なたねや大豆などの油脂資源など
こんなものからプラスチックが作れるの!?という驚きではないでしょうか。
今までは産業廃棄物として捨てられていたようなものが、ものを作る際の資源となるのだからびっくりです。
食べ物が原料って食料問題とは逆行しないの?
バイオマス素材の3つ目は「資源作物」です。
並んでいる項目をみると、さとうきびやイモや米、大豆などの食べ物が原料となっていることが分かります。
植物性という点ではわかりやすいのですが、これって世界を騒がせている食糧問題とは逆行しないのでしょうか。
具体的には、イモなどはそのまま食料として食べた方が食糧危機という観点からは、環境のために良いのでは?と気になる方もいらっしゃるかもしれません。
この点ですが、バイオマス素材に使うのは「廃棄物」とされる箇所をうまく活用するので問題ありません。
イモや米などを作る際にごみとして残ってしまうもみ殻などを活用します。
日本でバイオマスレジ袋として多く使われているものは、砂糖を作るためにサトウキビをしぼった後に残る、搾りかすを活用していることが多いです。
もともと捨てられる場所を、うまく素材として活用しているだけなので、食料問題とのバッティングの心配はありません。
バイオマス素材をレジ袋などに使うメリット
法令にて有料化されたレジ袋ですが、バイオマス素材を25%以上含む場合は無料でもOKというルールが設けられています。
バイオマス素材が優秀とされ、法令の対象外となる理由はなぜなのでしょうか。
サステナブルな原料
バイオマス素材の欄でもご紹介しましたが、バイオマスプラスチックを作るために必要な原料は「廃棄物」として本来ならゴミとなるようなものを活用しています。
人間が生活を営んでいれば出てくるごみを原料とすることで、半永久的に原料が手に入るということを意味します。
また、本来のビニール袋は海外から輸入してくる石油資源を原料としていました。
石油は無尽蔵にある訳でもありませんし、輸入に頼っているという点で脆弱な原料です。
環境のためにも、そして安定供給のためにも、バイオマス素材を活用することはサステナブルであるといえるでしょう。
カーボンニュートラルへの一歩
「カーボンニュートラル」という言葉をご存知でしょうか。
大気中に出てしまう二酸化炭素の量と、吸収したり除去する量をプラスマイナスゼロにするという意味で使われます。
このバイオマス素材も、まさにカーボンニュートラルへの一歩に貢献しています。
バイオマス素材の原料である、植物は大気中の二酸化炭素を吸収しながら成長します。
その後二酸化炭素の「マイナス」に貢献した植物を原料として、ビニール袋に加工してます。
そんなバイオマスレジ袋が、焼却される際には二酸化炭素が発生するので、大気中の二酸化炭素量は「プラス」になってしまいます。
ただし、既に「マイナス」の作業をした素材と言えるので、トータルで見ると「プラスマイナスゼロ=相殺されている」という考え方です。
バイオマス素材をレジ袋などに使うデメリット
コンビニなどでは有料のレジ袋であっても、バイオマス素材を使ったものへの切り替えが着々と進んでいます。
ビニール袋の下の方に「バイオマスマーク」がついているのを見たことがありますか?
着々と進んでいるレジ袋のバイオマス素材への切り替えですが、デメリットはあるのでしょうか。
従来のプラスチックと比べると高コスト
従来の石油由来のレジ袋と比べると、まだ新しい製造方法であるバイオマス素材のレジ袋は製造コストが上がってしまいます。
メーカーにもよりますが、場合によっては3倍以上の製造コストになってしまうことも。
ただし、この点に関しては、バイオマス素材のレジ袋が当たり前になればなるほど、作る量が増えると共に、コストを下げていくことは可能です。
できるだけ多くの企業が、石油由来のビニール袋をやめて、バイオマス素材のものへ変えていくことが求められています。
バイオマス素材だからといって自然分解はしないことも
植物由来の素材と聞くと、なんとなく落ち葉が土に還っていくようなイメージから、ビニール袋だけど自然に帰っていくのではないかと勘違いしてしまいがちです。
でも「バイオマス配合」だからといって、必ずしも自然分解するという訳ではありません。
あくまでも、原料の一部が植物性由来というだけです。
また、現時点でバイオマス素材のレジ袋として流通しているものは、原材料の25%~30%ほどがバイオマス素材であり、残りの6,7割は従来の石油由来のビニール袋となっています。
この時点で、自然分解することはなく、破棄方法は従来のレジ袋と変わらないというのが正直なところです。
世界のレジ袋問題|私たちにできることとは?
レジ袋の有料化に伴って、自分の生活においてどれだけビニール袋を使っていたかに気付かされた方も多いのではないでしょうか。
少しずつビニール袋の使用量に意識がいくようになり、実際に過去と比べると使っている量は減っているという数年間を過ごした方もいるはずです。
より環境に配慮したビニール袋への切り替えが進む中で、私たちが個人としてできることはどのようなことがあるのでしょうか。
レジ袋はできるだけ減らした方が良い
結論から言うと、どれだけ環境に良いといわれるビニール袋が開発されようとも「レジ袋は減らした方が良い」というのは間違いありません。
バイオマス素材のビニール袋は、従来の石油由来のものと比較すると、二酸化炭素排出量が下げられていたり、カーボンニュートラルであるといえますが、それでもやはり完璧ではありません。
さらに「生分解性プラスチック」という自然に還りやすい素材の開発も着々と進んでいますが、現時点では自然に還るには特別な環境下でなければいけなかったり、すごく時間がかかったりと、決して簡単な話ではありません。
私たちの暮らしの中で、ビニール袋の消費量が少しずつ減ってきている昨今。
これから先も、できるだけ使用量を減らす取り組みが求められています。
レジ袋を使うならリユースを意識すべし
レジ袋が有料化されたからと言って、生活の中からビニール袋をゼロにするのは正直難しいということが、この数年間の取り組みでもわかっています。
だからこそ、使わなければいけない場合は、できるだけエコな素材のものを選ぶこと。
そんな時にバイオマス素材のビニール袋に目を向けましょう。
また、たった一度モノを入れただけでゴミにしてしまうのでは勿体ない。
一度使ったレジ袋を、次の買い物の際にもリユースしたり、別の用途として使ったり…と、できるだけ長く使うように意識しましょう。
まとめ:バイオマスプラスチックでもレジ袋の使い捨てはNG!
2020年にレジ袋の有料化が導入されてから、人々の生活の中でレジ袋の使用方法は少しずつ変わってきました。
今までは無尽蔵にあるように感じていたレジ袋が有料化されたことで、どれだけ自分が使っていたのかを意識するキッカケを得たり、よりエコな買い物方法に切り替えたりと、意識改革が進んだ方も多いのではないでしょうか。
そんな中で、バイオマス素材のレジ袋など、従来の石油由来のものよりもエコなビニール袋の開発は着々と進んでいます。
とはいえ、バイオマス素材だから沢山使っても大丈夫という訳ではありません。
ビニール袋が必要な場合はより環境に配慮したタイプを選ぶべきですが、あくまでもレジ袋・ビニール袋は使わないに越したことがありません。
これからもできる限りマイバッグを持ち歩いたり、一度使ったレジ袋をリユースするなどの工夫は続けていきましょう。
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