地産地消とは?消費者と生産者のメリット・デメリットや取り組み事例を解説
持続可能性が重視される中、地産地消がさらに注目を集めています。
とはいえ、
「具体的にどのようなメリットや取り組みがあるの?」
「個人として何ができるの?」
と疑問に思うかもしれません。
この記事では、地産地消のメリットやデメリットを分かりやすく解説します。
さらに、自治体や企業の成功事例もまとめました。
自分が住む地域の魅力に気づくきっかけになるかもしれません。
地産地消とは?
地産地消とは、その地域で生産されたものを、その地域で消費することです。
地域内で生産と消費を行うことで、消費者と生産者が互いに距離を縮められます。
最近では、各地域で給食や直売所、飲食店などで地元の食材を食べる機会が設けられるようになりました。
農産物や食品を購入する機会が増えることは、地域の農業や産業の活性化にもつながります。
消費者は購入を通して、地元の生産者を応援できるのです。
地産地消と聞くと、野菜や果物、畜産物や海鮮物をイメージする方も多いのではないでしょうか。
しかし、食べものだけではありません。
- 木材
- 再生可能エネルギー
など、食以外の地産地消も増えているのです。
どうして、地産地消が注目されているのか?
どうして地産地消は注目されているのでしょうか。
それは、持続可能な社会の実現に欠かせないからです。
食の地産地消は、地方にある地場農業や産業の活性化が期待できます。
各生産者の売上をあげるとともに、地域の食文化や伝統を守れるのです。
またエネルギーの地産地消は、災害に強いまちづくりにつながります。
とくに、太陽光発電が地域内で普及すれば、燃料が高騰したり地震などで火力発電所が止まったりしても、安定して電力をまちへ供給できるのです。
地産地消は、地域住民が安心して働きながら住み続けられるまちづくりに必要不可欠です。
持続可能性が求められる今だからこそ、地産地消が注目されているといえるでしょう。
関連記事:防災と地方創生で持続可能に|SDGs目標11「住み続けられるまちづくりを」
地産地消のメリット
地産地消には、どのようなメリットがあるのでしょうか。
消費者、生産者、地域にとってメリットが大きいといえます。
以下に、食の地産地消についての内容を具体的にまとめました。
消費者のメリット
消費者のメリットといえば、新鮮な食材が買えることでしょう。
生産地と販売所が近ければ近いほど、より採れたてが店頭に並ぶからです。
さらに顔が見えるから安心であることです。
地産地消の場合、生産者の名前や顔が明記されていることが多いです。
そのため、自分が口にする食材が「どこで、だれが、どのように作ったのか」が明確なので、安心して購入できます。
三つ目は、地域の生産者を応援できることです。
道の駅をよく利用する友人も「地元の野菜を買うことで、農家の方の力になれた気がする」と話していました。
実際に会うことはできないかもしれませんが、食材を通して生産者と消費者がコミュニケーションをとれるのが、地産地消の魅力といえるでしょう。
生産者のメリット
生産者のメリットといえば、コスト削減です。
地産地消は、輸送距離が短いため、輸送費を最低限に抑えられます。
また、仲介業者が複数かかわることもないので、手数料も減らせるのです。
二つ目は、顧客のニーズを把握しやすいことです。
消費者との距離が近いことで、相手が何をどのように求めているのかをリサーチしやすくなります。
より消費者目線で生産ができるのがメリットといえるでしょう。
三つ目は、安定した売上が得られることです。
地元の給食や飲食店、直売所と契約することで、地方の農業や畜産業を営む方でも安定した収入を確保できます。
地域のメリット
地域メリットとしては、まちの独自性をアピールできることでしょう。
地元の食材を使った商品やメニューを開発することで、伝統的な食文化をアピールできます。
企業や自治体が連携することで、人気商品やブランド牛などが誕生した例もあるのです。
まちの独自性をうまくアピールできれば、地域経済の活性化にもつながるといえるでしょう。
また、地産地消が普及することは環境を守ることにもつながります。
輸送距離が短いほど、二酸化炭素の排出量や資源の使用量をへらせるからです。
このように、地産地消はまち全体を元気にしながら、環境も保護できる経済の形といえるでしょう。
地産地消のデメリット
では、地産地消にはどのようなデメリットがあるのでしょうか。
理解を深めるために、問題点もみていきましょう。
消費者のデメリット
地産地消は、新鮮な野菜をお手頃価格で買えることもありますが、場合によっては割高になる可能性もあります。
大量生産ではないので、常に低価格で販売することは難しいといえるでしょう。
しかし、その分、新鮮で安心なのは間違いありません。
生産者のデメリット
販売エリアが特定の地域に限定されるため、販売や広告が難しいことがあげられます。
地元の生産者と消費者が売り買いを気軽にできる環境を、自治体や地元企業がサポートする必要があるといえるでしょう。
地産地消の取り組み事例
続いては、地産地消の事例をみていきましょう。
自治体や企業などが積極的に取り組んでいます。
給食で子どもの心を育む「滑川市学校給食共同調理場」
富山県滑川市の学校給食共同調理場では、2009年から給食の地産地消をはじめました。
調理場と生産者のバイブ役として、こまめに生産者をまわり、コミュニケーションを密にとっているそうです。
開始当初は地元の野菜使用率は6.6%でしたが、今では50%を維持しています。
さらに、以下の食育活動にも力を入れています。
- 学校農園の収穫体験
- 生産者との交流会
- 郷土料理の実習
- 地場産物の授業
- 直売所の見学や購入体験
- 料理教室
- メニューコンテスト
このようなイベントを通して、生産者への感謝や命を尊重できる子どもたちを育てているのです。
地産地消の給食やイベントを通して、未来を担う子どもたちも地域への愛が高まるのではないでしょうか。
参照:https://www.maff.go.jp/chushi/
ピーナッツで地域連携「株式会社おくや」
福島県にあるおくやは、豆菓子専門店です。
会津の産業における活性化を目指しています。
地元産のピーナッツを原料とする自社製品の開発をするため、生産者との連携を図る「会津豆倶楽部」を2010年に立ち上げました。
現在、80名の生産者と契約栽培や定額買取をすることで、農家の安定した収入に貢献しています。
さらに、新商品を販売することで、会津のピーナッツの付加価値を高めることに成功しました。
さらに直売所「おくやピーナッツ工場」、会津落花生の洗浄、選別、乾燥、焙煎が出来る「会津落花生センター」を立て続けに開設しました。
生産から加工までを一括管理するとともに、ピーナッツのほか、地元のお菓子屋や味噌屋、納豆屋などとのコラボ商品を開発し、地産地消の普及に努めています。
ピーナッツを通して、地域連携が生まれ、未来を豊かにする新たな産業創出を実現したのです。
参照:おくや
参照:地域発!地産地消優良事例
地元に愛されるブランド牛が誕生「長谷川農場」
栃木県足利市にある長谷川農場は、「足利マール牛」ブランドを発足しました。
マールとは、地元のワイナリーで廃棄されたぶどうを絞った後の大量の果皮や種のこと。
マールを乳酸発酵させて、牛の飼料にしたところ、牛肉の味も色も格段になったのです。
また、マールのほかにである稲わらを地元生産者から仕入れ、堆肥を畑に還元する取組も実施しています。
よりブランド牛を広めるために
- 「足利マール牛ゴロゴロカレー」「足利マール牛ローストビーフ」などの商品開発と販売
- 小学校や幼稚園の農業経験や農場の視察
- 食育のイベント
など、地域交流も積極的に行っています。
地産地消と循環型ビジネスが融合した成功事例といえるでしょう。
これからはブランド牛を軸とした新事業の展開が期待されています。
参照:長谷川農場
参照:地域発!地産地消優良事例
大人気ピザで地元に貢献「森山ナポリ」
森山ナポリとは、石川県金沢市で生まれた本格窯焼きの冷凍ピザ専門店です。
自然豊かな金沢の食材をふんだんに使ったピザが人気を集めています。
冷凍ピザのため、地元住民だけではなく、日本全国で楽しめるのが魅力といえるでしょう。
筆者自身も地産地消のピザを購入。
お店で焼いたような本格的な味に驚きました。
ピザを通して、金沢の旨味を堪能できるため、人気なのも納得できます。
- 加賀レンコン
- 吾郎金時
- 打木赤が皮カボチャ
- 能登豚
- 老舗味噌蔵の塩麹
など、地元ならではの食材を贅沢に使ったピザを取り揃えています。
人気のピザ屋と地元の生産者がパートナーシップを結んだことで、地元の価値をアピールすることに成功しました。
参照:森山ナポリ
無印良品がプロデュース!「みんなみの里」
みんなみの里は、千葉県鴨川市にある総合交流ターミナルです。
地域住民や観光客が買い物や体験を楽しめる場をつくろうと、無印良品がプロデュースしました。
- 農産物の直売所
- 物産品の販売所
- 開発工房
- 無印良品の販売
- Cafe & Meal MUJI
などを運営しています。
里山の豊かな自然や食と触れ合える、新しい交流の場が実現しました。
大手企業のブランディング力やマネジメント力によって、地方の価値が再発掘された成功事例といえるのではないでしょうか。
参照:無印良品|みんなみの里
電力の地産地消を実現「ふかやeパワー株式会社」
埼玉県深谷市にある電力事業者「ふかやeパワー株式会社」は、「ふっかちゃんでんき」の愛称で地域に広がりはじめています。
自治体と地元企業が連携し、地域が抱える電力の課題を解決できるよう努めています。
地域の太陽光パネルによって発電された電力を買い取り、地域内に供給するサービスを実現させました。
まさに、電力の地産地消です。
この事業の誕生背景には、2019年に発生した台風による大規模な停電が関係しています。
災害によって生活インフラに大きな影響が出たことで、地域内で安定した電力供給ができる仕組みへの関心が高まったのです。
災害に備える危機管理の意識が高まった結果、電力の地産地消に向けた動きが加速化。
地域活性化のために協力する自治体や地域事業者が増えました。
今後は、電力サービスだけでなく、そこから生み出される利益を地域内で循環させる仕組みづくりを展開していくそうです。
私たちにできること
地域貢献ができるよう各地でさまざま地産地消が実践されていることが分かりました。
では、私たちにできることはどのようなことなのでしょうか。
簡単にできる4つのアクションをまとめました。
道の駅や直売所へいく
一つ目は、地元の食材が多く取り揃えられている道の駅や直売所にいくことです。
おでかけがてら、訪れるのもいいでしょう。
自分の住む地域で採れた野菜や果物、畜産物や海鮮物などを実際にみることで、地元のよさを再確認できるはずです。
とはいえ、どこにあるか分からない方は「地域名 直売所」「地域名 道の駅」などと、検索してみてください。
地産地消の食材を買う
二つ目は、地元で採れた新鮮な食材を買うことです。
購入することで、生産者の売上だけではなく応援にもつながります。
食を通して、地域で働く生産者とのつながりを感じてみてはいかがでしょうか。
もし近所に地元の食材を買える場がないという方は、インターネットでの購入がおすすめです。
生産範囲が県内へと広がってしまうかもしれませんが、生産者から直接購入できるサイトが増えています。
などは、契約している生産者が多いのでおすすめです。
地産地消のメニューを注文する
三つ目は、飲食店で地産地消のメニューを注文することです。
最近では、地域貢献や新鮮な食材を提供するために、地産地消に力を入れているレストランや居酒屋が増えました。
もし、地元の野菜やブランド肉などを使ったメニューを見つけたら、ぜひ注文してみてください。
自分で料理せず、簡単に地域貢献できます。
地産地消の取り組みをシェアする
最後は、自分が実践した地産地消をシェアしましょう。
地産地消という言葉は知っている割合は高いものの、積極的に実践している人はまだ少数派ではないでしょうか。
そのため、「どこで買えるのか」「どこに行けばいいのか」を知りたい人がいるはずです。
最近は、消費者や利用者の口コミやSNSの発信の影響が大きい時代といえます。
そのため、自分がやってよかったことはどんどん広めていきましょう。
下記記事で、地産地消に貢献できるスイーツを紹介しています。
地産地消で持続可能なまちづくりを!
地産地消とは、その地域で生産されたものを、その地域で消費することです。
地域の活性化や環境保護につながる地産地消は、持続可能な社会の実現に欠かせないビジネスモデルといえます。
最後にもう一度、地産地消を理解するための要点5つをおさらいしましょう。
- 食の地産地消は地域の活性化に貢献
- エネルギーの地産地消は災害に強いまちづくりに貢献
- 消費者にとっては、割高になる可能性もあるが新鮮な食材を安心して買える
- 生産者にとっては、サポート体制が整っていない場合、営業や広報が難しくなる場合もあるが、コストカットや安定した収入が得られるのがメリット
- 自治体や地元企業が連携した成功事例は全国で増えている
以上が地産地消を理解する上で大切なポイントです。
一人ひとりが地産地消のよさを知り、地元の食材や電力などを利用することで、地産地消の価値がさらに高まるといえます。
今回紹介した魅力を思い出しながら、ぜひ地産地消に協力してみてはいかがでしょうか。
まだ知らない地元の魅力に出会えるかもしれません。
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