ESG

【SDGs会社見学】象印マホービン株式会社のSDGsの取り組みを紹介|前編

象印マホービン株式会社は、水筒や炊飯ジャーなどの家庭用品の開発・製造・販売を行っている日本を代表する企業です。

「暮らしをつくる」という企業理念に基づき、創業以来、お客様の生活に密着した企業活動を展開し、SDGsの取り組みにも力を入れています。

今回は、GREEN NOTEアンバサダーの難波遥さんと象印マホービン株式会社の本社へ訪問し、SDGsの取り組みについてお話を伺いました。

その内容を前編と後編に分けてお届けします。

象印マホービン株式会社の概要

出典:https://www.zojirushi.co.jp/

ガラスマホービンの中びん製造からスタートした象印マホービン株式会社(以下、象印)は、水筒や炊飯ジャー、電気ポットなど調理家電製品を中心に、生活家電製品、リビング製品などの製造・販売を行っています。

その品質は国内外で高く評価されており、お客様のニーズへ柔軟に対応する新たな商品開発や既存製品の改良を進めています。

SDGsへの取り組みとして、「責任を果たす」「期待に応える」の2つのCSR基本方針を設定し、企業として必要不可欠な活動を遂行しつつ、象印らしさを発揮し、社会から必要とされる企業であることを目指しています。

そこで象印では、

・環境(サステナブルな社会の実現と環境負荷低減に向けた行動)

・食と健康(食文化の大切さや食べることの楽しさの発信)

・教育(未来を担う子どもたちに学びを提供)

を軸とした社会貢献活動を行っています。

象印マホービン株式会社を訪問

左から難波遥さん、栗栖美和さん、美馬本紘子さん

GREEN NOTEアンバサダー難波遥さんと大阪市北区天満にある象印本社を訪問。

新事業開発室長の岩本雄平さん

新事業開発室の栗栖美和さん

広報部の美馬本紘子さん

のお三方に、象印の「環境・食と健康・教育」を軸とした、下記SDGsの取り組みについての概要、課題や想い、今後の展望などを伺いました。

・ごはんで作った除菌ウエットティッシュ【環境】

・ずっと、マイボトルと。【環境】

・ライスマイル【食と健康】

・ZOJIRUSHIユメセンサーキット【教育】

・OSKと踊ろう!Dream on a Dance【教育】

本編では、【環境】を軸とした2つの取り組みについて紹介します。

【食と健康】【教育】を軸とした取り組みについては後編で紹介しています。

後編記事:【SDGs会社見学】象印マホービン株式会社のSDGsの取り組みを紹介|後編

ごはんで作った除菌ウエットティッシュ【環境】

出典:https://www.zojirushi.co.jp/corp/stories/008/

難波遥さん(以下、難波さん):「ごはんで作った除菌ウエットティッシュ」は、どのような取り組みですか?

栗栖美和さん(以下、栗栖さん):弊社は炊飯ジャーを開発する際に、よりおいしいごはんを作るために加熱方法を変えたり、機能をつくったりして何度も炊飯試験を行います。開発者が炊き上がったごはんを一日に何杯も食べ、ほんの少しの味の違いや、風味、香りなどを確認し、まさに体を張って炊飯ジャーを作っています。

しかし、その過程で生まれてしまうのが、試食時の食品ロスです。これまで余ってしまったごはんは、堆肥化という形でリサイクルしていました。しかし、おいしいごはんを作る開発の中で生まれたものを、他の生ごみと一緒に処理することはもったいないと数年前から思っていました。

そんなタイミングで、食材から高品質のアルコールを精製する技術を持った株式会社ファーメンステーションというスタートアップ企業とのご縁があり、そのアルコールを使って何か作ることができないか?ごはんをアップサイクルできないか?と考えました。

そして、受け取って嬉しいもの、備品にしたいものとして、除菌ウエットティッシュを作ることにしました。それが、2021年から始めた取り組みの「ごはんで作った除菌ウエットティッシュ」です。

難波さん:このウエットティッシュは、どのように使われているのでしょうか?

栗栖さん:商品販売も行っていますが、単価が1個187円(税込)と少し高めです。高いものを押し売りして、またごみになってはいけないので、どうすればサステナブルになるのかを考えました。

そこで、企業様のノベルティ、サステナブルなアクションとして使っていただけないか?と考え、象印の社名を入れず、企業様がノベルティとして使う際にアレンジしやすいデザインにしています。

ある企業様は周年パーティの記念品、保険会社様はお客様への手土産として使っていただいています。また、WeWork様での周年行事では、弊社から提供し配布いただきました。

写真:実際のノベルティ事例

難波さん:一般的に販売されているものと、どう違うのでしょうか?

栗栖さん:大きな違いは、余ってしまったごはんを発酵させて精製したアルコールを配合した、99%天然由来成分であることです。

そして、国内生産であること。また、アルコール精製後にできる「発酵粕」は、発酵所のある岩手県の肥育牛の飼料として利用し、将来的にはこの飼料により生育した肥育牛の糞を水田や畑の肥料に活用していくなど、食品ロスと廃棄物ゼロのサーキュラーエコノミーの実現を目指した除菌ウエットティッシュであることです。

栗栖さん:表面のQRコードを読み取っていただくと、「ごはんで作った除菌ウエットティッシュ」が完成するまでの流れを1分半くらいの動画で見ていただくことができるので、ぜひご覧ください。

左:岩本さん、右:栗栖さん

難波さん:どんな販路をイメージしていますか?

栗栖さん:現在は、象印食堂と象印のECサイトで販売しています。小売店で大きく販売することはまだ難しく、取り扱ってくださるところを探しています。販売だけでなく、自社のノベルティとして扱ってくださる企業があれば嬉しいです。

難波さん:この取り組みを通して、社内での変化はありましたか?

栗栖さん:開発部の新入社員から、「炊飯試験で余ってしまったごはんはどうなるのですか?」という質問があったとき、アップサイクルしていると伝えることができました。また、この活動に共感し応援してくれる他部署の社員がたくさんおり、これまであまり話す機会がなかった部署の人とも話すことができています。

難波さん:社内広報的な動きですね。環境に対する活動は社外的にも社内的にも必要なことですが、資金が掛かると思います。環境と資金、長期的に考えればメリットだと思うのですが、その2つの両立はどのように考えていらっしゃいますか?

栗栖さん:SDGsの活動に積極的な企業を選ぶ学生が増えているので、採用活動に良い影響があると思っています。

また、社会的な意義がある活動として、テレビで紹介していただきました。

ただ、それに留まらず、さまざまな方法でより多くの方に知っていただき、お客様に価値を感じていただける物にしていくこと。環境と資金の両立は、そこがスタートだと考えています。

難波さん:この取り組みの課題についてお聞かせください。

栗栖さん:課題は、炊飯試験は常に行われているので、ごはんをもっとアップサイクルし「ごはんで作った除菌ウエットティッシュ」を作りたいのですが、使い道が決まらないと作れないことです。作ったものを余らせることは絶対にしたくないからです。

余ってしまったごはんをどうするかについて、社内で第二弾である別プロジェクトも進めています。

難波さん:第二弾のプロジェクトも進めているのですね。そのプロジェクトについてと、今後の展望についてお聞かせください。

栗栖さん:ごはんのアップサイクルプロジェクトの第二弾として、ごはんをアップサイクルしたビール「ハレと穂」を商品化しました。

出典:https://www.zojirushi.co.jp/corp/news/2023/230620/beer.html

栗栖さん:三重県拠点の実力派醸造所「伊勢角屋」と、食品ロスのアップサイクル事業のシンガポール発スタートアップ企業「CRUST」とのコラボ商品です。

「一滴への想い、一粒への想い」をコンセプトに、ごはんの良さを活かした食事に合わせやすいビールを目指し、1年半の歳月をかけ商品開発をしました。

さっぱりドライな後味の中に、フルーティな味わいも楽しめるビールになっています。

象印食堂での提供や、伊勢角屋のECサイト・楽天ページで販売していますので、ぜひお手に取って味わっていただきたいです。

また今後は、まだまだ余ってしまったごはんがあるので、第三弾、第四弾、とプロジェクトを続けていきたいです。

すでに発売しているウエットティッシュやビールのように、他社企業と連携をしていきながら、ごはんをアップサイクルし、お客様に喜ばれる商品、サービスの提供を進めていくと同時に、根本的にもったいないごはんが出ないよう工夫も進めていきたいと考えています。

ずっと、マイボトルと。【環境】

出典:https://www.zojirushi.co.jp/cafe/action/

難波さん:「ずっと、マイボトルと。」について教えてください。

美馬本紘子さん(以下、美馬本さん):2006年から始めた「少しでも多くの方にマイボトルのある暮らしを楽しんでいただきたい」という取り組みです。

国内の水筒(ステンレスボトル)の業界出荷数の推移をみると、2000年頃に急に減少しました。(下記グラフ参照)

この時期はペットボトルが出始めたころで、水筒の代わりにペットボトルを持つ人が増えたことが影響しています。

出典:全国魔法瓶工業組合の国内ステンレスボトル出荷実績(1~12月計)を元に作成

美馬本さん:子どもは通園や通学、クラブ活動などで水筒を使用しますが、大人になるとペットボトルに移行しがちでしたので、大人の方に水筒をもっと使っていただくために何が必要かを考えました。当時、エコやロハスという言葉が流行り始めており、「マイボトル・マイ箸・マイバッグ」が三種の神器と言われていました。また、当時のペットボトル飲料には糖分が入っているものが多かったこともあり、マイボトルを持つことによる環境への貢献と健康的なライフスタイルを大人向けに提案しました。

岩本雄平さん(以下、岩本さん):当時の「エコ」は、エコロジー(環境)のエコとエコノミー(節約)のエコの両方の意味合いがありました。

難波さん:今後はSDGsの観点からも、マイボトルを持つという意識が高まっていくように感じます。
では、「給茶スポット」について教えてください。

美馬本さん:空になった水筒に有料で飲み物を入れてくださるお店を「給茶スポット」として、弊社のサイトで紹介しています。水筒を持ち歩くときの問題である、「中身がなくなると荷物になるが捨てられない」という部分を解決するための取り組みです。

主旨に賛同してくださったカフェや日本茶専門店などの給茶スポットは、現在全国に約100店舗あります。

弊社のWebサイトで地域や飲み物の種類から検索できるようになっていますので、ぜひご覧いただきたいです。

この給茶スポットでは、象印以外のメーカーの水筒もご利用いただけます。

給茶スポット:https://www.zojirushi.co.jp/cafe/spot/

難波さん:この取り組みで、伝えていきたいことは何でしょうか?

栗栖さん:水筒を持っている方は多いと思うので、まずは週1回でも水筒を使ってもらうことです。毎日じゃなくても、それが日常に溶け込んでいくと良いなと思っています。

弊社の開発陣はパッキンをなくすなど、より使いやすい水筒を日々考えています。また、商品以外の部分で自社でもできること、企業様との協業でできることを探しつつ、水筒を使ってもらう文化をどう作っていくかを考え、伝えていきたいと考えています。

難波さん:この取り組みにおける課題はなんですか?

美馬本さん:弊社はメーカーですので、自分たちだけでできることには限界があります。給茶スポットが既存のお店と協業しているように、外部との連携を含めて、積極的に取り組んでいきたいと考えています。

難波さん: 2022年からスタートした「ZOJIRUSHI MY BOTTLE CLOAK(象印マイボトルクローク)」とは、どう違うのでしょうか?

岩本さん:「ZOJIRUSHI MY BOTTLE CLOAK」は、新事業開発室で立ち上げた新しいサービスで、飲み物を入れるだけでなく、お店に水筒(マイボトル)を預けることができます。

例えば、前日に水筒を預ければ、お店の方が洗って保管してくれます。そして、次の日などにLINEで注文を入れると、注文した飲み物が入った状態で受け取ることができます。水筒には、「持ち歩く・洗う・飲み物をいれる」の3つの課題があり、それらを全て解決するサービスです。

出典:https://www.zojirushi.co.jp/corp/news/2022/220208/mbc.html

難波さん:今後の展開や、課題がありましたら教えてください。

岩本さん:現在、5店舗での実証実験中です。そこで利用しやすい方法、適正価格などを検証し、多くの方に使っていただきやすいサービスにするための方法を模索しています。

「環境に良いから水筒を持とうね」と言われても難しいと思います。水筒は、温かいものや冷たいものの温度を保ったまま飲むことができます。使ってみると良い点が見えてくるので、実感していただきたいです。

面倒なところがあれば、弊社が水筒の構造を変えたり、サービスを開発したりして、取り除いていき、自然に誰もが使いたい、使っているという流れを作り、結果的にエコに繋がっていけばと思っています。

 

【食と健康】【教育】を軸とした3つの取り組みについては、後編でご紹介しています。

後編はこちら:【SDGs会社見学】象印マホービン株式会社のSDGsの取り組みを紹介|後編

提供:象印マホービン株式会社

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