カネテツ「ほぼカニ」が大ヒットした5つの理由!開発ストーリー・買える場所
本物のカニそっくりの見た目と味が話題の「ほぼカニ」。
「カニカマ」とは思えない美味しさや、ユニークなパッケージがSNSや口コミで話題になっているほか、人気特番の企画で提供されたことがきっかけで売り切れが続出するなど、度々大きな話題を呼んでいます。
本記事では、そんなカネテツの「ほぼカニ」の開発ストーリーや、大ヒットの理由を独自の観点からまとめました。
「ほぼカニ」が買える場所や、ほぼシリーズの新商品などの最新情報も併せて紹介するので、是非最後まで読んでください。
カネテツ「ほぼカニ」とは?
「ほぼカニ」を製造・販売するのは、関西の水産練り物メーカーのカネテツデリカフーズ株式会社。
1926年創業の老舗食品メーカーで、イメージキャラクターのはちまきをした男の子の「てっちゃん」は、特に関西では大きな知名度を誇ります。
カネテツの「ほぼカニ」は、本物のズワイガニそっくりにつくられた「カニのかまぼこ」で、原料は一般的なかまぼこと同じ「タラのすり身」です。
カネテツが開発に注力している“ほぼシリーズ”商品の第一号で、同シリーズの人気を牽引する看板商品です。
1パックあたり10本入りで、和食料理人が監修した「ほぼカニ」のための専用の「黒酢入和だしカニ酢」も付属しています。
ほぼカニは、2014年に販売が開始されてから、SNSやテレビ番組などがきっかけで幾度となく話題になり、手軽に家庭でカニ気分を楽しめる、“新しいカニカマ”として人気を呼んでいます。
「カニの代替品」を目指した究極の第三世代
出典:『格付けチェック』でも誤答者続出 本格派カニかま「ほぼカニ」はこうして生まれた
ほぼカニは、従来のカニカマとは一線を画す、“新世代のカニカマ”として評価されています。
カニカマ業界では、以下の3つの世代があるといいます。
■第二世代:大ぶりで身がほぐれるタイプのカニカマ
■第三世代:本物のカニを再現することを目指したカニカマ
一般的に消費者が「カニカマ」と聞いて思い浮かべるのが、第一世代です。
スティックタイプで縦に裂ける特徴があります。
第一世代のカニカマは、カニに寄せるのではなく、「あくまでも、“カニカマ”という商品として、美味しいものをつくろう」という意図で開発されているといいます。
引用:理化学分析を行い本物に味を近づけた「ほぼカニ」が作られた理由とカネテツの開発者の思い【カニかま第三世代】
次に出てきたのが「ほぐれるタイプ」のカニカマ。
第一世代と比較すると大ぶりで身がほぐれやすく、料理に使いやすいのが特徴です。
そして「ほぼカニ」のように、本物のカニの代替品を目指した商品が、第三世代です。
見た目や味、食感など、すべての要素において、本物のカニに寄せてつくられたのが第三世代、ということになります。
「夏場に売れる商品を」開発の背景
では、そもそもカネテツでは、何がきっかけで「本物のカニに代わるような究極のカニカマをつくろう」という話になったのでしょうか。
そこには、練物メーカーならではの“季節性の悩み”がありました。
カネテツによると、ほぼカニの開発のきっかけは、夏場に売れる商品をつくりたかったからだといいます。
練物商品といえば、秋冬の「おでんの具」や、お正月の「かまぼこ」が年間需要のほとんどを占めています。
季節変動の影響を受けない商品を検討するなかで、同社では、夏場でも冷やし中華のトッピングやサラダと一緒に食べてもらえる「カニカマ」に着目。
当時の魚介類の価格高騰や、カネテツとしてはカニカマは後発だった背景も相まって、手頃な価格で毎日食べられるような、“本物のカニに近いカニカマ”をつくろうと、商品開発が始まったといいます。
引用:理化学分析を行い本物に味を近づけた「ほぼカニ」が作られた理由とカネテツの開発者の思い【カニかま第三世代】
人の頭の中にある「おいしいカニ」を再現
ほぼカニの主な特徴を簡潔にまとめると、以下の通りです。
- カニの理化学分析を行って本物のアミノ酸値に近づけた
- 本物のカニのように斜めで短い繊維になっている
- カニ特有のクサみがない
ほぼカニの最大のこだわりは、その「風味」と「食感」です。
本物のカニに限りなく近づけるために、開発スタッフは一生分のズワイガニを食べて、その味を自分の味覚に刷り込ませたといいます。
さらに、理化学分析によってカニのアミノ酸の研究を行い、100通り近くの試作を経て、本物のカニと同じバランスの「うま味成分」を再現した試作品を作成。ところがこれが、「おいしくなかった」といいます。
そこで開発部長の宮本氏は、アプローチ方法をチェンジ。
改めて本物のカニを何十杯も食べながら、頭の中にその味を叩き込み、「頭の中にある美味しいカニのイメージ」を再現する方法を模索しました。
そこが開発のスタート地点だったといいます。
宮本氏によると、「どのうま味成分を強くすると、人はカニと感じるのか」というテーマで試作を続けながら、最終的に一部の成分を誇張することで、本物そっくりの美味しい風味を実現したといいます。
また、「食感」の再現度も、ほぼカニの美味しさの秘密です。
断面図を比較すると、第一世代・第二世代のカニカマは繊維が縦に並んでいますが、ほぼカニは本物のカニと同じように、斜めになっているといいます。
こうすることで、本物のカニのような身のほぐれ方を再現。
噛んだときにホロホロと崩れていく食感や、その瞬間に鼻を抜ける風味を細かく実現したといいます。
さらに、繊維の幅や、螺旋状に丸める際の直径もこだわって調整したといい、細部にわたる研究と開発によって、繊細な味わいと食感を実現しました。
このような試行錯誤を繰り返した「ほぼカニ」の開発には、約2年の歳月がかかったといいます。
引用:理化学分析を行い本物に味を近づけた「ほぼカニ」が作られた理由とカネテツの開発者の思い【カニかま第三世代】
進化し続ける“ほぼシリーズ”は15種類以上
2014年の「ほぼカニ」の発売をきっかけに、約10年間にわたって、これまで15種類以上のほぼシリーズの商品が開発・発売されています(期間限定商品含む)。
毎年新商品が発売されており、ものすごいスピードでほぼブランドの商品が増えていることがわかります。
2014年:ほぼカニ
2015年:ほぼホタテ
2016年:ほぼエビフライ
2017年:ほぼカキフライ
2018年:ほぼうなぎ、ほぼタラバガニ
2019年:大粒ほぼホタテ浜焼き風、すごいほぼカニ
2020年:サラダプラス ほぼホタテ/ほぼタラバガニ
2021年:大粒ほぼカキフライ、万福ほぼズワイガニ
2022年:ほぼいくら、ほぼシリーズ だいたいイカ、期間限定ほぼ毛ガニ
ほぼシリーズの開発の根底には、「お客様のお困りごとを解決する」というテーマがあるといいます。
ほぼカニやほぼホタテは、魚介類の価格高騰が主な背景としてありましたが、例えば、「ほぼエビフライ」はエビアレルギーの人でもエビフライを楽しんでほしいという願いから。
「ほぼカキフライ」は食中毒が気になる人でも安心して食べられるようにと、食に関するさまざまな悩みに応えるべく、開発の幅を広げていったといいます。
そのほか「ほぼうなぎ」は、うなぎが絶滅危惧種になっていることが起因しているといい、海洋産物に配慮する取り組みとしての一面も伺えます。
甲殻類アレルギーに対応した「のんカニ」も新発売
2023年4月には、甲殻類アレルギーに対応した新しいカニカマが発売されました。
商品名は「のんカニ MSC」。
特徴は以下の通りです。
- 甲殻類エキスをはじめとしたカニ・エビ由来の原料不使用
- MSC認証のスケソウダラのすり身を100%使用
- 「フィッシュプロテインマーク」つき
甲殻類アレルギーは、大人になってから発症する後発性の割合も高いとされていて、その食の不安や悩みを解決したい、という想いから開発が始まったといいます。
「のんカニ」は、カネテツの従来のカニカマ商品に含まれる甲殻類エキスをはじめ、カニ・エビ由来の原料を一切使用していない商品です。
本物のカニの味に近づけるために、アミノ酸分析のデータを用いながら、さまざまな調味料の配合を試しながら開発したといいます。
また本商品では、持続可能な漁業で獲られた天然の水産物の証である「MSC認証」のスケソウダラのすり身を100%使用。
サステナブルフードとしての意義も持ち合わせている商品です。
さらに、良質な魚肉たんぱく質商品の証である「フィッシュプロテインマーク」がついた商品となっており、手軽にたんぱく質を摂りたい人にもおすすめできる商品といえます。
ただし、「のんカニ」の生産設備ではエビ、カニを含む製品を作っているため、「アレルゲンフリー」の商品として名乗ることはできません。
とはいえ、大人になってからカニが食べれなくなってしまった人や、甲殻類アレルギーの家族と一緒に食卓を囲むときの“救世主”となることは間違いないでしょう。
「ほぼカニ」が人気になった理由
カネテツの「ほぼカニ」が人気になった理由として、以下の5つが考えられます。
- 「安くて美味しい」代替食品としての高い評価
- 本物のカニよりも食べやすい
- サステナブルフードとしての評価
- ユニークなネーミングセンスがSNSで話題に
- テレビ番組がきっかけで大バズり!
では、順番に詳しく解説していきましょう。
「安くて美味しい」代替食品としての高い評価
「ほぼカニ」が人気になった最大の理由は、その再現性の高さです。
見た目だけでなく、味や食感も本物のズワイガニそっくりにつくられており、代替食品としてのクオリティの高さを確立しています。
また値段の安さも人気の理由の一つ。
公式オンラインストアでは、一つ350円で販売されています。
参考までに、本物のズワイガニの価格と比較すると、以下の通りです。
・ほぼカニ(10本入り/約81g):350円
モノが違うので一概には比較できませんが、値段だけを考えると、圧倒的に「ほぼカニ」の方が安く、日常的にも食べやすい商品といえるでしょう。
本物のカニよりも食べやすい
さらに、本物のカニと比べると、「ほぼカニ」は殻を剥く手間がないので、食べる際に手が汚れたり、痒くなったりすることもありません。
子どもでも食べやすく、手が臭くなることもありません。
また本物のカニ(冷凍)の場合、解凍に時間がかかりますが、ほぼカニはカニカマなので調理もしやすく、「すぐ食べれる」のがメリットです。
もちろん、食べ終わった後の面倒な殻の後片付けもありません。
ほぼカニのパッケージには、「お皿に移し替えて、電子レンジ(500W)で1分ほど温めるとさらに美味しくなる」という旨の内容が記載されています。
専用のカニ酢つきで、レンジで温めるだけでおつまみ感覚で食べれるので、若い人たちからの人気も高いです。
時間をかけずにおいしく食べれる点は、現代のライフスタイルにマッチしていると言えます。
なお、ほぼカニを使ったおすすめの料理レシピは、公式サイトでもいくつか紹介されています。
チャーハンやそうめん、天津飯、ほぼカニトーストなどの作り方・アレンジレシピが載っているので、気になる人は是非参考にしてください。
サステナブルフードとしての評価
期間限定で販売されている「ほぼうなぎ」や、MSC認証のスケソウダラのすり身を使用した「のんカニ MSC」の例のように、絶滅危惧種や海洋資源に配慮している点も、ほぼシリーズが評価されているポイントの一つです。
このような「環境や社会に配慮した持続可能な食品」は「サステナブルフード」と呼ばれ、近年は国内企業の間でも開発や販売が盛んになっているほか、消費者の間でも認知度が高まってきています。
関連記事:サステナブルフードの定義とは?種類や企業の取り組み事例を紹介
さらにカネテツでは、練り物業界初のプラントベース商品「Vegesh」シリーズを開発・販売しています。
現在販売されている「Vegeshカレーフライ」は、肉や魚を使用せずに、大豆や野菜のたんぱく質など、植物性の原材料だけを使用したプラントベースのフライ商品です。
カネテツは、「老舗の水産練り物メーカー」という枠だけに収まることなく、持続可能な資源の活用に向けた新しい取り組みや、多様化が進む「食」のニーズに合わせた商品開発を進めていることがわかります。
ユニークなネーミングセンスがSNSで話題に
約2年間の試行錯誤の上に発売された「ほぼカニ」ですが、開発期間がギリギリまで伸びていたこともあり、発売当初はバイヤーに実物を試食してもらうことができず、チラシのみで告知を行っていた結果、発売当初はなかなか注文が入らず苦戦したといいます。
そんな状況を打ち砕いたのが、SNSでの口コミの拡散です。「ほぼカニ」という商品名や、パッケージに記載された「※カニではありません」といったキャッチコピーが「おもしろい」と話題になり、大反響を呼んだといいます。
このように予期せずバズった「ほぼカニ」は、3月の発売以降、夏を迎える頃には品薄状態となり、在庫が確保できない状態となったため、9月から放送予定だったテレビCMもほとんど放送されることがなかったといいます。
商品名の候補には、「ZY(ズワイ)」や「でもカニ」、「なんかカニ」、「カニゴールド」などの名前があったといいます。そのなかでも、「ほぼカニ」を選んだのは、会長の村上健氏でした。
村上氏によると、こうしたネーミングの背景について、「関西人なのでボケが入ったネーミングセンスに。『なんだこれは』とツッコミが入れられる商品にしている」といいます。
公式サイトの「ほぼカニ」の特集ページを見ても、トップには「ほぼか、ほぼ以外か」という某著名人の名言をオマージュしたかのようなコピーが存在感を放っており、思わずクスリと笑ってしまうような秀逸な表現が目立ちます。
このようにカネテツは、競合他社よりも「カニに近いカニカマをつくる」という徹底した商品開発のこだわりを見せる一方で、商品の見せ方については、競合他社と一線を画す“独自のユーモア”を発信しています。
なお、「ほぼカニ」は、2022年にネーミング大賞を受賞しています。
引用:「『ほぼカニ』個性的な名前を決めたのは社長だった カニカマ界でナンバー1の理由とは」
テレビ番組がきっかけで大バズり!
ほぼカニは、人気特番「芸能人格付けチェック」(テレビ朝日系)への提供でも一躍話題になりました。
芸能人が目隠しをして高級食材を当てるコーナーで、ほぼカニは「絶対アカン食材」として提供され、数々の大物芸能人を欺いてきました。
「ほぼカニ」以外にも、これまで「サラダプラス ほぼホタテ」や、「ほぼうなぎ」なども同企画で提供され、放送と同時にSNSなどで話題を呼んでいました。
また「ほぼシリーズ だいたいイカ」は、同番組での提供がきっかけで商品化されました。
人気番組への出演・商品提供に加えて、“数々の大物芸能人をだます”という大きな結果を残したことで、「あの食材はなんだ?」「食べてみたい」と、お茶の間に大きなインパクトを残したほぼシリーズ。
SNSだけでなく、リアルタイムで一緒にテレビを見ていた家族同士のコミュニケーションのなかでも、「今後みんなで食べてみようか」という会話につながり、大きなアプローチを与えることができたといえます。
実際に、日本の伝統食品である練り物は、業界全体としての売り上げが右肩下がりの傾向にあるといいます。
しかし「ほぼカニ」シリーズは、20代や子どもをはじめ、新しい世代のユーザーに刺さったことで売り上げが年々増え続け、2022年12月時点では発売当初の5倍の売上を記録しました。
日本での展開
「そこまで言うなら実際に食べてみたい」と誰もが思ってしまう「ほぼカニ」ですが、「どこで売っているのか?」気になる人も多いと思います。
「ほぼカニ」は公式オンラインショップのほか、スーパーやコンビニでも購入できます。
スーパーやコンビニで探すときは、冷蔵コーナーの練物やカニカマ商品が置いてある場所をチェックしてみてください。
スーパーでの価格相場は、おおよそ300円前後です。
例として、ほぼカニが売っている主な店舗を以下にまとめましたので、参考にしてください。
(なお、店舗により取り扱いがない場合もございますのでご了承ください)
・イオン
・イトーヨーカドー
・マルエツ
・西友
・東急ストア
・コープ
・ライフ
・マックスバリュ
・サミットなど【コンビニ】
・ローソン
・ファミリーマート
・セブンイレブン【通販サイト】
・カネテツ公式オンラインショップ
・楽天市場(カネテツ公式ストア)
上記の通販サイトでは、通常の冷蔵パックやセット商品のほか、“冷凍”の「業務用ほぼカニ1kg」が購入できます。
海外での展開
出典:英語版カネテツ公式サイト
カネテツでは、ほぼシリーズ商品の海外進出を目指しています。
アメリカでは、2018年からほぼカニの販売を開始。
ニューヨークにある日本食材の専門スーパー「サンライズマート」などで販売され、一般消費者でも気軽に購入できるようになっています。
なお、アメリカでは冷凍された状態で販売されています。
2023年3月には、アメリカ・ボストンで行われた北米最大のシーフード見本市に出展。
「ほぼ毛ガニ」と「ほぼいくら」の試食を用意して、「Almost=カネテツ」をアピールしたといいます。
現地バイヤーからの感触もよく、3日間で60人以上と連絡先を交換し、今後の取引を検討していくといいます。
引用:本物そっくりで大ヒット!〜「ほぼカニ」はこうして生まれた:読んで分かるカンブリア宮殿
環境意識の高い海外では、ほぼシリーズは「サステナブルフード」としての人気が高まると考えられます。
また、食の多様性に合わせた「代替品」としての存在感もアピールできるでしょう。
つづく日本食ブームの波に乗りながら、今後ほぼシリーズが海外でどのような展開を見せていくのか、期待が高まります。
まとめ
本記事では、カネテツの「ほぼカニ」の大ヒットの理由について、独自の観点でまとめて紹介しました。
「ほぼカニ」の開発では、あえて一部のうまみ成分を誇張したことで「人が美味しい」と感じる商品がつくれた、という話が印象的でした。
それと同時に、アミノ酸解析によって本物のカニと同じうまみ成分を再現しようとしてもできない、自然のバイオリズムの複雑さと尊さを感じました。
確かな開発力と、ユニークな表現力で、人々を惹きつけているカネテツのほぼシリーズ。
次は、どんな「ほぼ」が生まれるのか、楽しみでなりません。
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