世界的に問題”コスメロス” 世界と日本の化粧品メーカーの取り組み紹介
本来食べられる食品を廃棄することを「フードロス」といいますが、いらなくなった化粧品を廃棄する「コスメロス」という言葉をご存じでしょうか。
現在、化粧品の廃棄が世界的にも問題になっています。
実際、使いきれない化粧品を86%以上の人が捨てているのです。(株式会社モーンガータ独自調査)
今回は、世界的にも問題になっているコスメロスについて、詳しく解説していきます。
参考:毎年約2万トン以上のコスメが捨てられる時代に私たちができること | COLOR Again開発秘話|株式会社モーンガータのストーリー|PR TIMES STORY
化粧品の廃棄ロス(コスメロス)とは?
コスメロスとは、まだ使えるにもかかわらず廃棄処分される化粧品のことを指します。
コスメロスの原因としては、肌に合わない、新しい化粧品に買い替えた、トレンドが変わったなどが挙げられます。
このような消費行動は、せっかく化粧品を作ってもすぐに捨ててしまうので非常にもったいないことです。
また、大量の化粧品が廃棄されることで、環境にも甚大な影響を与えます。
化粧品の容器には、プラスチック製の容器が多く、処分の際に焼却すると温室効果ガスが排出されます。
プラスチックの処分には大量のエネルギーを必要とするので、処分の際は環境に悪影響を及ぼしてしまうのです。
そのような背景があるにもかかわらず、世界中で化粧品の消費者が「肌に合わない」「使いきれない」「新しく購入したからもういらなくなった」などの理由から、化粧品を捨ててしまっています。
そんな状況の中で今後私たちにできることは、コスメロスの拡大を問題視し、廃棄を減らすことです。
コスメロス削減に向けた新たな取り組み
世界的に問題になっているコスメロスですが、最近ではコスメロス削減に向けた新たな取り組みが広がっています。
コスメロス削減のための取り組み事例は、以下の2つです。
- カラーコスメをクレヨンなどの絵具へ変えて再利用する
- 化粧品の容器を専用ボックスで回収して再利用するオンラインショップで需要に見合った生産を行う
カラーコスメを絵具やクレヨンに変えて再利用
アイシャドウ、アイライン、チークといった化粧品は、色とりどりの種類があり、購入する時はとても楽しいものです。
しかし、「世間的なメイクのトレンドが変わった」「色の好みが変わった」などの理由から、使い切らずに捨ててしまう人も少なくありません。
そのようななか、カラーコスメを集めて再利用し、絵具やクレヨンに生まれ変わらせる取り組みが行われています。
カラーコスメを再利用して作る絵具やクレヨンは、微妙に異なる色が組み合わさるため、全て同じ色にならないのが特徴です。
唯一無二の色を作れるので、コスメやアート好きの人たちから支持されています。
容器を専用回収ボックスで回収
化粧品にはさまざまなプラスチックが使われています。
通常は、分別と分離の作業を経てリサイクル商品が生まれますが、化粧品はさまざまな種類のプラスチックが利用されているため、リサイクルが難しいのが現状です。
そのため、通常のゴミと一緒に捨てるとリサイクルされません。
そこで、化粧品の容器を回収するための専用ボックスを設置し、そこで集まった化粧品を、別の化粧品の容器に再利用する取り組みが行われています。
オンラインショップで予約販売を行い需要に応じた生産
これまで、化粧品の販売は店頭販売が主流でしたが、現在はオンラインショップでの販売も増えてきています。
注文があれば準備して発送することができるオンラインショップでは、売れ残りが少ないという特徴があります。
従来の店頭販売では製造から日数が経つと、品質の劣化や使用期限が切れて廃棄処分になっていました。
しかし、オンラインショップでは売れ残りの概念に縛られにくくなるため、廃棄される化粧品も少なくて済みます。
海外のコスメロス削減への新しい取り組み
海外でもコスメロス削減のための取り組みが進んでいます。
そのなかから、特に注目すべき3つの取り組みをご紹介します。
海外のコスメロス削減の取り組み3つ
- ラボテの化粧品容器のリサイクル
- レン・クリーン・スキンケアのゼロウェイスト宣言
- ディオールの梱包資材の節約と環境に優しいボトル容器の採用
参考:人気コスメブランドのサステナブルな取り組みを調査!地球にやさしいコスメ|ハーパーズ バザー(Harper’s BAZAAR)公式 (harpersbazaar.com)
使いかけ化粧品容器のリサイクル「ラボテ」
オーダーメイドコスメを販売しているラボテでは、使いかけの化粧品容器のリサイクルを実施しています。
容器のブランドは、自社はもちろん、他社のものでも回収でき、回収したプラスチック容器は、消毒・殺菌処理をした後に、別の化粧品を充填して商品として再利用が可能です。
この取り組みは、2015年9月に国連サミットで採択された持続可能でより良い世界を目指す国際目標である「SDGs(持続可能な開発目標)」にも関連しています。
SDGsの中には、「つくる責任 つかう責任」という目標が定められており、これは「作る人も使う人も地球の環境を考え、責任を持って行動することが大事」という意味です。
このようにラボテでは、コスメロスの削減に向けて環境を考慮した取り組みを行っています。
レン・クリーン・スキンケアの「ゼロウェイスト」宣言
イギリスの化粧品ブランドであるレン・クリーン・スキンケアは、ゴミの排出量をできる限りゼロにする活動「ゼロウェイスト」を行っています。
この活動では、「そもそものゴミを生み出さないようにしましょう」という考え方のもと、多くの人へ無駄や浪費をやめましょうと呼びかけているのが特徴です。
レン・クリーン・スキンケアは競合他社と協力し、再利用素材やリサイクル可能な素材を利用して環境に優しいパッケージで販売しています。
ディオールの梱包資材の節約とリサイクル可能ボトルの採用
フランスのファッションブランドを展開するディオール(Dior)は、化粧品も販売しており、梱包資材や化粧品ボトルによって環境を壊さないように工夫しています。
従来は、梱包資材に能書や内箱、箱を包むセロファンを使用していましたが、数年前から廃止しました。
また、化粧品に使用するボトルをリサイクル可能なボトルを使って販売しています。
ディオールは、これ以上環境を壊さないように、化粧品の製造に工夫をしています。
日本のコスメロス削減への新しい取り組み
日本の化粧品メーカーもコスメロス対策を実施しており、その具体的な取り組みをご紹介していきます。
日本の化粧品メーカーのコスメロス削減の取り組み3つ
- COSME no IPPOHelloyon(ハロヨン)
- スミンクアート
- ecosme ink®
COSME no IPPO(コスメノイッポ)「Helloyon(ハロヨン)」
美容業界での経験が豊富な大澤美保さんは、不用になったカラーコスメを回収し、エシカルなクレヨンへアップサイクルする活動「Helloyon(ハロヨン)」を展開しています。
アイシャドウやチークといったカラーコスメは、購入者の好みやトレンドの変化により、多くの人が頻繁に製品を買い替える傾向があります。
その結果、古い製品は使用されずに放置され、最終的には廃棄されることが一般的です。
Helloyonプロジェクトでは、これらの廃棄されるカラーコスメを回収し、クレヨンに再利用することで、新たな価値を生み出しています。
参考:cosmenoippo(コスメノイッポ)|役目を終えたカラーコスメから生まれたクレヨン
スミンクアート
スミンクアートでは、アイシャドウやチークなどのカラーコスメを化粧品ユーザー・化粧品企業・化粧品小売店舗より回収し、絵具に再加工する取り組みを行っています。
SminkArtキットでは、自分が使わなくなったカラーコスメを家庭内で絵具に変換する体験を提供、またSminkArtときめくペイントでは、粉末状の絵具として新たな価値を提供しています。
割れて使用しなくなったアイシャドウやチークなどの製品だけでなく、化粧品企業において製品化しなかった化粧品バルク(中身)を回収し、SminkArt製品に再度加工することで、コスメの製造者と利用者双方が責任を持って扱う意識を高めています。
参考:化粧品から絵具をDIY!(コスメのアップサイクル )- SminkArt(スミンクアート)
ecosme ink®
ecosme ink®(エコスメインキ)は、TOPPAN株式会社がSminkArtの株式会社モーンガータと共同開発した事業です。
エコスメインキは、やむを得ず廃棄処分される化粧品の中身である「バルク」を、印刷物のインクの材料にすることで廃棄ロスを削減する取り組みです。
化粧品メーカーは、常に廃棄ロスを最小限にする工夫を行っていますが、どうしても廃棄ロスが発生してしまいます。
このような廃棄ロスを印刷物のインクの材料として再利用することで、コスメロス削減に貢献しています。
参考:商材紹介|ecosme ink®(エコスメインキ)| TOPPAN株式会社
参考:モーンガータ、廃棄化粧品を印刷用技術へ応用する 新たなアップサイクルの取り組みを開始 | 株式会社モーンガータのプレスリリース (prtimes.jp)
まとめ
このように世界的にも深刻な問題となっているコスメロスは、一人ひとりが意識することで解決できます。
現在使わなくなった化粧品がある場合は、捨てずにアップサイクルを試してみることを検討してみてはいかがでしょうか。
また、近年では、「エシカルコスメ」と呼ばれる環境や社会、そして個々の健康に配慮したコスメが注目されています。
これらの製品は、リサイクル可能な容器を使用したり、植物由来の原料を使用したりしているため、環境に優しいのが特徴です。
こうした取り組みがコスメロスの削減に貢献しています。エシカルコスメもぜひ一度手に取ってみてください。
詳しくご紹介している記事はこちらです。
【エシカルコスメ8選】選び方のコツおすすめの世界と日本のコスメブランドをご紹介 – GREEN NOTE(グリーンノート)|SDGsがすぐわかるニュースメディア (green-note.life)
コスメロスの削減に向けて私たちができるところから始めてみましょう。
『GREEN NOTE(グリーンノート)』は環境・社会課題をわかりやすく伝え、もっと身近に、そしてアクションに繋げていくメディアです。SDGs・サステナブル・ESG・エシカルなどについての情報や私たちにできるアクションを発信していきます!