ハイブランドも注目!エコファーとは?意味や企業事例を解説
「毛皮」と聞くと、オシャレや高級なイメージをもつ方も多いかもしれません。
近年、動物愛護やエシカル消費の意識が高まる中、リアルファーが問題視され「エコファー」が注目を集めています。
世界で人気のハイブランドも続々とリアルファーの使用を廃止し、エコファーへと切り替えています。
この記事では、エコファーについて分かりやすく解説するとともに、残酷なリアルファーの真実を紹介します。
また、エコファーの現状が明確になるように、国内外の動向や企業事例もまとめました。
動物の命を守るエコファーの魅力を知れば、ファッションの楽しみ方も広がるでしょう。
エコファーとは
エコファーとは、「リアルファー」と呼ばれる動物の毛皮の代替素材です。
化学繊維、ペットボトルや海洋廃棄プラスチックをリサイクル利用した原料、バイオマス原料などを使用して、動物の毛皮のような見た目や風合いを再現しています。
リアルファーは、古くから防寒アイテムとして使用されてきました。
一般的にリアルファーを生産するためには、ミンク・ウサギ・タヌキ・キツネなどの動物の命が犠牲になっています。
近年、動物愛護やエシカル消費の動きが高まるとともに、動物由来の素材を一切使用しないエコファーが注目されるようになりました。
また、エコファーは化学繊維であるため、リアルファーでは表現できないカラーや柄を再現できます。
クリーニングやお手入れの手間やコストがあまりかからないのも、エコファーを使用するメリットといえます。
エコファーと動物愛護
毛皮の生産と聞くと、羊毛のように動物の毛を刈り取っているだけではないのかと思う方もいるのではないでしょうか。
しかし、リアルファーの生産過程は残酷です。
リアルファーの動物は食肉用ではなくファーのためだけに養殖されています。
多くは檻の中に閉じ込められ、毛の部分が汚れないよう感電や窒息など人の手によって殺されているのです。
アニマルウェルフェアの啓発に取り組む非営利団体「フォー・パウズ・インターナショナル」によると、世界では年間約1億匹もの動物の命が犠牲になっているといわれています。
リアルファーと世界の動き
ヨーロッパでは、毛皮工場を禁止する動きが拡大しています。
1990年代以降、オーストリアやスコットランド、イギリスで禁止されました。
またアメリカのカリフォルニア州では、2023年1月1日より、リアルファーの生産と販売を禁止する法律が施行されました。
リアルファーは、残酷な動物虐待の上に成り立っています。
一方のエコファーは、アニマルフリーで動物由来の原料を一切使用しません。
動物の権利であるアニマルライツを保証するものといえます。
アニアルフリーについて詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。
関連記事:【ブランド5選】アニマルフリーとは?意味や意義、取り組み事例も紹介
脱毛皮を宣言するハイブランド
これまでリアルファーは、おしゃれなファッションアイテムとして人気でした。
多くのハイブランドでも、リアルファーを使ったコートやバッグ、靴などを販売したのです。
しかし、現在では、動物愛護の観点からリアルファーを使用しないと宣言するハイブランドが増えています。
サステナブルファッションブランドの代表格であるステラマッカートニーは、2001年の設立以降、動物由来の原料を一切使用していません。
「サビアン」という、100%植物由来でプラスチックフリーのエコファーを開発しました。
プラスチックや遺伝子組み換え作物も使用していないため、動物だけではなく環境にも配慮した素材といえます。
ステラマッカートニーの取り組みについてはこちらでも詳しく解説していますので、併せてお読みください。
関連記事:サステナブルファッションで世界から注目を集める「ステラマッカートニー」の取り組み
他にも、カルバンクライン、アルマーニ、グッチ、プラダ、ヴィヴィアン・ウエストウッド、メゾン・マルジェラ、ルイヴィトンなどが続々と脱毛皮を宣言しました。
日本では、SNIDELやgelato piqueを手掛けるマッシュグループが、リアルファーを使用しないことを公言しています。
参考:福井新聞|それでも毛皮着ますか、動物が毛皮に処理されるまでの真実
参考:ステラマッカトニー
参考:東洋経済|高級ブランドが続々「脱毛皮」宣言をする理由
エコファーに取り組む!企業事例
日本では、リアルファーの生産や販売を禁止していません。
しかし、エコファーの生産が高く評価されている日本企業もあります。
国内外でエコファーの生産に尽力する企業を紹介します。
ECOPEL(エコペル)
エコペルは、2005年にフランス人のジェラルド・サルファティが立ち上げたエコファーのブランドです。
エコペルには、以下4つのカテゴリーがあります。
- ORIGINAL:リアルファーの美しさを再現したラグジュアリーなエコファー
- RECYCLE:ペットボトルや海洋廃棄プラスチックをリサイクル利用したエコファー
- KOBA:バイオマス原料を使用したエコファー
- VEGAN WOOL FUR:わずかな水分だけで短期間に成長するヘンプを使用したウールタッチのエコファー
リアルファーの使用をやめた300以上のトップファッションブランドのために、環境や社会に配慮した高品質なファーを生産しています。
参考:ECOPEL
exterial(エクステリアル)
フェイクファー改め「クラフトファー」という呼称で高品質のファー生地素材を提供しています。
エクステリアルがある和歌山県橋本市高野口町は、古くからパイル産業が盛んな地域です。
中でもフェイクファーは国内のシェア100%を占めています。
「MADE In KOYAGUCHI」のエコファーが、世界のファッション業界を変えるかもしれません。
参考:exterial
岡田織物
岡田織物も、和歌山県橋本市高野口町にあるエコファー生地専門メーカーです。
伝統的な技術力と最新技術を駆使して、リアルファーの風合いに限りなく近づけたエコファーを生産しています。
高い完成度とデザイン性が高く評価され、ルイヴィトンをはじめ、さまざまなハイブランドへエコファーを提供しています。
参考:https://okadatx.shop-pro.jp/
三菱ケミカル
三菱ケミカルは、セーターや肌着、靴下などに使用するアクリル繊維を使用したエコファー「プロパール」を開発しました。
これは先ほど紹介した岡田織物と共同開発したものです。
これまで動物の毛のような太い根元と細い先端を再現することは難しいとされてきました。
しかし、三菱ケミカルは毛先をY字型にして3つに割ることで、軽い毛先を実現させました。
Y字型の構造は空気層を多く含むため保温にも適していて、染色や加工が容易です。
リアルファーには表現できないカラーも表現できます。
参考:三菱ケミカルホールディングス|Y字型アクリル繊維 『プロパール』
カネカ
カネカは「カネカロン®」を使用したエコファーを開発しました。
カネカロン®とは、アクリロニトリルと塩化ビニルの共重合によりできた化学繊維です。
50年以上動物の毛皮を研究し、動物それぞれの特性に合う繊維の研究開発をした末に生まれました。
バリエーションも多く、すべて合わせると約200種にのぼります。
多様なデザインを表現できるのも魅力でしょう。
エコファーで動物が傷つかない未来を
エコファーは、リアルファーの色合いや風合いを再現したフェイクファーです。
動物愛護の観点から、社会や環境に配慮した素材として注目を集めています。
これまでリアルファーは、防寒衣料やオシャレなアイテムとして重宝されてきました。
しかし、その華やかな裏では、多くの動物が劣悪な環境で養殖され、殺害されている事実があったのです。
現在は、世界的に有名なハイブランドからファストファッションまで多くのブランドが、リアルファーを使用しないと宣言しています。また、国や自治体でも、リアルファーを禁止する動きが活発化しています。
今後は、エコファーの市場はさらに拡大するのではないでしょうか。
リサイクル原料やバイオマス原料といったサステナブルな原料を使用するエコファーが増えれば、より環境への配慮が高まるといえます。
消費者としても「リアルファーを買わない」「エコファーのアイテムでファッションを楽しむ」などのアクションを起こすことが大切です。
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