フェミニズムをわかりやすく!おすすめの書籍や映画についても紹介
フェミニズムとは、女性の権利を主張し、男女平等を目指す思想や運動を指します。
19世紀末から現代に至るまで、社会・経済・政治のさまざまな分野で女性が男性と対等な権利や自由を獲得するための活動が続けられてきました。
フェミニズムの歴史は、4つの主要な「波」に分けられ、それぞれの時代ごとに問題として提起された課題に取り組んできました。
現代では、ダイバーシティやインクルージョンの視点からも注目され、社会の多様性を反映した新たな形で展開が進んでいます。
この記事では、フェミニズムの歴史的な流れ、現代日本におけるフェミニズムの現状や課題、そしてフェミニズムを深く理解するためにおすすめの書籍や映画を紹介します。
フェミニズムの歴史
フェミニズムの歴史は、主に4つの「波」に分けられます。
- 第一波フェミニズム:女性の参政権獲得
- 第二波フェミニズム:女性解放運動
- 第三波フェミニズム:ダイバーシティの高まり
- 第四波フェミニズム:オンラインを活用した発信
1つずつ解説します。
第一波フェミニズム:女性の参政権獲得
第一波フェミニズムは、19世紀にアメリカやイギリスで起こった、男女平等の市民権を求める運動です。
奴隷解放運動に携わった女性の間から生まれ、1848年にアメリカ東部のセネカ・フォールズで開かれた集会で、女性の参政権を求める宣言が発表されました。
この宣言は「女性の独立宣言」と呼ばれ、後にイギリスをはじめとして、日本やその他の国々でも女性の参政権や財産権の獲得につながりました。
第二波フェミニズム:女性解放運動
第二波フェミニズムは、1960年代以降にヨーロッパやアメリカで展開され、公民権運動などとともにウーマン・リブ運動(女性解放運動)につながっていきます。
ウーマン・リブ運動とは、女性が男性と平等な権利を求め、対等な地位を確立し、自分で職業や生き方を選ぶ自由を得ようとする社会運動です。
この時期に始まったフェミニズム運動は、性の違いに基づくあらゆる差別をなくすことを目指していました。
参考:朝日新聞SDGs ACTION!「フェミニズムとは? 意味や歴史、事例、課題をわかりやすく解説」
参考:Meiji.net「ポストフェミニズムと言い切って良いの?」
第三波フェミニズム:ダイバーシティの高まり
第三波フェミニズムは、1980年代後半から1990年代にかけて起こりました。
第三波は、これまでの「集団」に目を向けた変革から、「個人」に目を向けた変化が特徴です。
第二波フェミニズムの成果を引き継ぎつつも、「男らしさ」「女らしさ」といった性別に基づいた固定概念を見直し、「自分らしさ」を重視する性的指向や、ダイバーシティの重要性が主張されるようになりました。
参考:Sports for Social「【3分解説】フェミニズムとは~その意味をわかりやすく解説!」
参考:Meiji.net「ポストフェミニズムと言い切って良いの?」
第四波フェミニズム:オンラインを活用した発信
第四波フェミニズムは、2010年代後半から現代まで続いています。
主な特徴は、スマートフォンやSNS・インターネットを活用した運動が中心となっている点です。
特に、「#MeToo運動」では、多くの女性がSNS上でセクハラや性的暴行の経験を告白し、性犯罪への訴えが世界中で広がりました。この運動は、多くの賛同を得て、ネット上での連帯を生み出しました。
第四波フェミニズムはデジタル技術を活用することで、より広範囲かつスピーディーにメッセージを届け、フェミニズムの新たな展開をもたらしています。
日本のフェミニズムの現状と課題
日本では、1986年に男女雇用機会均等法が施行され、この時期を境に女性の権利獲得や男女平等がある程度達成したとされています。
しかし、日本のフェミニズムにはまだ多くの課題が残っています。主な問題は以下のとおりです。
- 男女間の賃金格差
- 女性の社会進出の遅れや社会的地位の低さ
- 育児は女性の役割という固定観念
- シングルマザーの貧困問題
- 職場でのハラスメント(セクハラ、パワハラ、マタハラ)
特に、男女間の賃金格差が依然としてあり、女性の社会進出や社会的地位などの観点でも、日本は世界的にも遅れを取っています。
2022年に発表された「ジェンダー・ギャップ指数」では、日本は146か国中116位と低い順位にあり、特に労働所得や政治・経済分野で課題が山積みです。
また、育児は女性が担うものという考え方が根強く、キャリアを諦めなくてはいけない場面や、待機児童問題なども解消されていません。
さらに、子育てをしているシングルマザーが困窮に陥りやすい状況に置かれている点も問題です。
他にも、職場でのセクハラやパワハラ、マタハラなどのハラスメント問題も依然として深刻です。
日本のフェミニズムは、法制度面での進展はあるものの、実質的な男女平等の実現にはまだ多くの課題が残されています。
今後も複雑化する問題に対しては、より多様な視点を取り入れながら、社会全体で意識改革を進めていくことが重要です。
参考:Meiji.net「ポストフェミニズムと言い切って良いの?」
参考:WAVE・SDGs研究室「声を上げることが時流を動かす。 ~ジェンダー平等社会の実現に向けて~」
フェミニズムをこれから勉強したい方におすすめの書籍や映画4選
フェミニズムへの理解を深めたい方に向けて、おすすめの書籍や映画を4つ紹介します。
山口真由 著『世界一やさしいフェミニズム入門 早わかり200年史』
東京大学法学部卒業後、ハーバード大学ロースクールで家族法を学んだ経歴を持つ弁護士、山口真由さんの著書です。
この本では、フェミニズムの200年にわたる歴史を簡潔に解説しており、第一波から第四波までのフェミニズムの流れを時系列で説明しています。
「世界一やさしい」といったタイトルどおり、難しい用語や概念を読みやすい表現で綴られており、フェミニズムに馴染みのない方でも理解しやすい内容です。
また、日本のフェミニズムの歴史や現状についても言及しているため、基本的な知識を得たい方やその歴史的な流れを簡単に理解したい方に特におすすめです。
参考: Rakutenブックス「世界一やさしいフェミニズム入門 早わかり200年史」
上野千鶴子 著『上野先生、フェミニズムについてゼロから教えてください!』
フェミニズムの第一人者、上野千鶴子さんによる初の総合的なフェミニズム入門書です。
フェミニズムの歴史における4つの波をわかりやすくコンパクトに整理しています。
上野さんは「フェミニズムとは、弱者の権利を尊重する思想であり、強者になることを目指すものではありません。
また、人は弱者として生まれ、弱者として死んでいきます。
強者である期間は人生において一時的なものであり、弱者に強者になれと要求したり、抑圧したりする権利はないのです。」と語ります。
この本は、上野さんの経験や洞察に基づいた見解を知りたい方におすすめです。
参考: PRTIMES「上野千鶴子氏初・総合的なフェミニズムの入門書! 『フェミニズムがひらいた道』が発売。」
映画『プロミシング・ヤング・ウーマン』
『プロミシング・ヤング・ウーマン』は、フェミニズムをテーマに作られた映画です。
主人公カサンドラは、将来有望な医学生でしたが、ある事件をきっかけにその夢を断念します。
親友のニーナが性的暴行を受けて自殺したのをきっかけに、カサンドラは復讐の決意を固めました。
カサンドラは夜になるとクラブに出かけ、泥酔したふりをして男性に近づき、彼らの行動を暴いていきます。
やがて、親友を死に追いやった加害者たちに対して本格的な復讐を開始するという物語です。
この映画は、性暴力などの現実問題に深く切り込む内容が特徴です。
制作は若手の女性陣によるもので、2021年のアカデミー賞では脚本賞を受賞するなど、高い評価を受けています。
参考: Cinemavista「映画『プロミシング・ヤング・ウーマン』のネタバレ・あらすじ・考察・解説」
参考: GLOBIS「直視できるか?最新フェミニズムの解説書 映画「プロミシング・ヤング・ウーマン」ー海外ポップカルチャーから学ぶ世界の価値観#6」
映画『ドリーム』
『ドリーム』は、1960年代初頭のアメリカを舞台に、NASAの研究所で働く3人の黒人女性エンジニアの実話に基づいた内容です。
彼女たちはさまざまなシーンで差別を受け、白人たちと同じキャリアを望むことが難しい環境で働いていました。
NASAの白人スタッフは、決して明確な悪意を持って彼女たちを差別していたわけではありません。
「今までそうしてきたから」などの単純な理由で差別を続けていただけだったのです。
それでも、この3人は非常に粘り強く、それぞれのやり方で障壁を乗り越え、キャリアアップを実現します。
最終的に、彼女たちは人種差別や性差別の壁に直面しながらも、NASAの宇宙開発に貢献していくというストーリーです。
1960年代初頭のアメリカを舞台にした映画でありながら、フェミニズムだけでなく、現在のダイバーシティ&インクルージョンの視点からも描かれているのが特徴です。
参考: リクルートワークス研究所「『ドリーム』に学ぶ「キャリア自律」と「支援」の関係」
参考: MIHOシネマ「映画『ドリーム』のネタバレあらすじ結末と感想」
まとめ
フェミニズムは、社会的・政治的・経済的な男女平等を目指す運動であり、その歴史は第一波から第四波まで、その時期における大きな流れを通じて権利を獲得してきました。
日本でも法制度の整備は進んでいますが、実際の男女平等の達成にはまだ課題が残されています。
具体的には、男女間の賃金格差や育児に関する固定観念、ハラスメント問題など、多くの側面でさらなる改善が求められています。
この記事を読んでフェミニズムに関心を持たれた方は、ぜひ紹介した書籍や映画を通じて理解を深めてみてください。
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