気候変動・脱炭素

脱炭素社会とSDGsの関係とは?世界と日本の実情と取り組み事例

二酸化炭素を始めとする温室効果ガスは、温暖化の一因となっており、気候変動を及ぼして地球環境に悪影響を与えています。

2021年のIPCCの最新報告書によると、以下のことが示されています。

  • 海氷減少の原因の90%が人間活動によるもの
  • 近年の海面水位は1901~1971年と比べ3倍高まった
  • 2040年までにほぼ確実に地球の気温は1850~1900年の水準から1.5℃上昇する
  • 2050年までにほぼ確実に「ほとんど海氷のない時代」がくる

出典:「温暖化は人間が原因=IPCC報告「人類への赤信号」と国連事務総長」(IPCC)

温室効果ガスの削減は、世界規模における大きな課題といえるでしょう。

この気候変動のリスクに対応するため、2015年には世界的にパリ協定が採択されました。

その実現のため、日本では2020年に脱炭素(カーボンニュートラル)を目指す目標を宣言しています。

地球温暖化は、自然災害や農林水産業といった分野に影響を及ぼします。

解決を目指すには脱炭素の実現のほか、飢餓や貧困への対策などのあらゆる施策が必要です。

そのため、SDGs達成のアクションと併せて、包括的に対策をとっていくことが重要といえます。

今回は、そんな脱酸素とSDGs(持続可能な開発目標)にどんな関連があるのか、概要と取り組み事例を見ていきましょう。

【脱炭素×SDGs】地球環境をまもる!5つの開発目標

国際的な目標であるSDGs(持続可能な開発目標)と脱炭素は関連しています。

脱炭素とは何かということから、SDGsとの関係まで見ていきましょう。

脱炭素で地球環境を守ろう

脱炭素とは、人類の経済活動によって生じた温室効果ガスを全体として排出ゼロにすることです。

カーボンニュートラルともいわれます。

ここで言われる温室効果ガスとは、地球温暖化の原因となる、二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素、フロンガスなどを指します。

2020年、日本では「二酸化炭素の排出量を実質ゼロにする」ことが宣言されました。

これは温室効果ガスの排出量から、植林や森林管理などによる人為的な温室効果ガスの吸収量(除去量)を差し引いて、全体として実質的な排出をゼロにしようとする目標です。

ちなみに、二酸化炭素の排出を完全に0にすることはできません。

ある日地球から二酸化炭素が急になくなったとしたら、植物が育たず、そのための食物連鎖が絶えてしまいます。

そのため、「実質」ゼロという考え方をとっています。

“温室効果ガス排出の削減×植林の保全と強化”が必要

脱炭素達成のためには、温室効果ガスの排出量の削減、植林などによる吸収量の保全と強化を、あわせて進めていくことが重要です。

脱炭素がいわれるようになった理由は、工業化による温室効果ガスの排出によって温暖化が進み、急激な気候変動が起きているためです。

地球の平均気温は、1850〜1900年の工業化前と比べて、2017年時点で約1℃上昇しています。

このままのペースで工業化が進めば、さらなる地球規模の気温上昇が予測されますし、気候変動をより加速させるでしょう。

さらに、気候変動は豪雨や猛暑などのリスクを高めると指摘されています。

日本においては、経済活動や日常生活で発生する温室効果ガスは排出量の6割を占めていますので、国や企業任せにするのではなく、一人ひとりが意識して行動することが大切です。

出典:カーボンニュートラルとは(環境省)

脱炭素とSDGsはどう関係する?

【目標7】関連するターゲット

  • 環境に配慮した再生可能エネルギーを拡大させる
  • クリーンエネルギーの研究や技術を促進させる

【目標9】関連するターゲット

  • 資源利用効率の向上
  • クリーン技術や環境に配慮した技術拡大により持続可能性を向上させる

【目標12】関連するターゲット

  • 予防、削減、リサイクル、再利用により廃棄物を大幅に減少させる
  • 環境に配慮した管理により、大気、水、土壌への排出を大幅に削減する

【目標13】関連するターゲット

  • 気候変動の緩和・適応に関する教育・啓発・制度を改善する
  • 緑の気候基金を本格始動させる

脱炭素も、SDGsも、地球環境を守るためのアクションが必要です。

SDGsでは17の達成目標が掲げられていますが、その中でも脱炭素と関わりが深いのが、

の3つです。

また、先に取り上げた3つの目標以外にも、SDGsの各目標に脱炭素は関わっています。

たとえば、温暖化による気候変動がもたらす自然災害は、農業に大きく影響を及ぼします。

気温や降水パターンが変化すると、農作物の収穫量が変化するためです。

また、干ばつや洪水などがひとたび起これば、農業に必要な道具を失い、避難を余儀なくされるなどして、食糧難に陥ることもあります。

また、このような自然災害によって大きな被害を受けやすい人たちの多くは、資産基盤が安定していません。

農業で収入を得ていた場合は失業するケースが多く、長期的な飢餓と貧困の負の連鎖が起きてしまうのです。

SDGsの目標でいえば、

にも関係してきます。

目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」のターゲットである「資源利用効率の向上、クリーン技術や環境に配慮した技術・産業プロセス導入拡大によって持続可能性を向上させること」も温室効果ガスの排出削減に関連する内容です。

脱炭素への取り組み事例

脱炭素に関連して、日本では「エネルギーを化石燃料に依存している」「運送業の温室効果ガスの排出量が多い」といった問題があります。

このような問題について、国や企業ではどのような取り組みが行われているのか事例を見ていきましょう。

【世界】パリ協定と削減目標

1985年のフィラハ会議では二酸化炭素による温暖化が取り上げられるなど、地球温暖化は各国が注目してきた問題でしたが、具体的な削減目標は明確に示されてきませんでした。

地球温暖化の問題について議論が進められ、各国の具体的な目標数値が明らかになったのは、2015年にパリで開催され、合意に至ったパリ協定です。

全体的な目標として、工業化以前より地球の平均気温上昇を2℃より低く維持するとともに1.5℃上昇を抑える努力をすることが掲げられました。

日本は2030年に2013年比の26%の温室効果ガスの排出を削減することを目標にしています。

他国や他地域の目標は以下のとおりです。

(他国の目標の一部)

  • EU:2030年までに1990年比の40%の温室効果ガスの排出を削減
  • スイス:2030年までに1990年比の50%の温室効果ガスの排出を削減
  • アメリカ:2025年までに2005年比の26~28%の温室効果ガスの排出を削減
  • オーストラリア:2030年までに20050年比の6~28%の温室効果ガスの排出を削減
  • 中国:2030年までに2005年比の60~65%のGDPあたりの二酸化炭素の排出を削減

※2015年提出時の目標

出典:COP21の「パリ合意」に向けた、各国の温暖化対策目標案の提出状況(WWF JAPAN)

【自治体】省エネ・温室効果ガス削減の取り組み

2021年9月30日時点で、全国の464の自治体が「2050年までに二酸化炭素排出実質ゼロ」にすることを表明しています。

参照:2050年二酸化炭素排出実質ゼロに向けた取組等|環境省

自治体の取り組みとして多いのが、再生可能エネルギーである風力発電や太陽光発電を活用した温室効果ガスを排出しない発電、省エネルギー、次世代自動車の普及に関する取り組みです。

横浜市では、横浜市内の再エネ供給量の低さを補うために、東北など再エネ資源が豊富な遠隔都市と協力して再エネによるエネルギー供給を促す取り組みを行っています。

【企業】温室効果ガスの排出の削減

企業でも温室効果ガスの排出削減などに関する取り組みが行われています。

スターバックス

スターバックスで行われているのは、コーヒーに関連したカーボンニュートラルの実現です。

2030年までに、二酸化炭素、水、廃棄物を50%削減することを目標に、カーボンニュートラルな生豆(グリーンコーヒー)実現と、加工で使用する水の使用量50%の削減を発表しました。

独自のアプリを利用して土壌の状態を生産者と共有し分析によって必要なだけの農薬を使ったり、気候変動に強い種類を栽培したりすることで、農場における二酸化炭素の排出量削減を実現しています。

トヨタ自動車

トヨタ自動車においては、2035年までに世界の自社工場から排出される二酸化炭素を実質ゼロにするグリーンファクトリーを目指す目標を設定しました。

脱炭素に対応した新たな自動車の開発、二酸化炭素排出の多い塗装と鋳造工程の脱炭素に重点的に取り組んでいます。

竹中工務店

株式会社竹中工務店では、2050年までに脱炭素社会を実現するための長期目標とロードマップの作成が行われました。

【政府】あらゆる制度の実施/民間への投資

政府では、2020年、菅元首相の所信表明演説において、「2050年カーボンニュートラル宣言」が行われました。

  • 2030年度に2013年度よりも46%温室効果ガスを削減すること
  • 2050年までに温室効果ガスを実質ゼロにすること

を目指し、再生可能エネルギーを主力電源にする施策など、脱炭素社会実現に向けた取り組みが実施されています。

「脱炭素ポータル」では、国の脱炭素への取り組みが掲載されていますので、ぜひチェックしてみてください。

参照:脱炭素ポータル(環境省)

さらに、脱炭素を促進するため、脱炭素事業に取り組む民間事業者を支援する出資する制度も2021年に創設されました。

官民が連携して脱炭素社会を目指すことを目的としています。

このほか、政府では、温室効果ガスの排出量に応じて企業に課税する「炭素税」、搬出量上限を超過したときに、排出枠未満の排出量に留まった企業・国から枠を購入することで削減達成とする「排出量取引」など、排出に関する規制の検討も進められているところです。

関連記事:【世界と日本】温室効果ガス削減の取り組みと個人でできること

脱炭素に向けて個人で取り組めること

日本の二酸化炭素排出量約11億794万トンのうち、14.4%が家庭から排出されています。

出典:「2019年度(令和元年度)温室効果ガス排出量(確報値)について」(環境省)

他方、商業やサービス、事業所等からの排出量は17.4%のため、家庭から排出される二酸化炭素量は、企業の排出量と同程度の数値となります。

そのため、脱炭素の目標を達成するには家庭での脱炭素に向けた取り組みも重要です。

たとえば、以下のような取り組みができます。

  1. 公共交通機関を利用する
  2. 食品ロスを減らす
  3. こまめに電気を消す
  4. 省エネ家電を購入する
  5. 太陽光発電を取り入れる

自家用車ではなく電車やバスなどの公共交通機関、自転車を利用するのも良いでしょう。

買い物の前には在庫を確認して買いすぎを防ぐなど、食品ロスを減らすことも、廃棄物の焼却による二酸化炭素の排出を減らすことにつながります。

こまめに電気を消すなどの省エネ行動、省エネ商品を購入するなども、脱炭素につながる行動です。

まとめ

二酸化炭素をはじめとした温室効果ガスの排出を削減し、植林などの吸収を促すことで、温室効果ガスの排出を実質ゼロにすることを脱炭素(カーボンニュートラル)といいます。

世界規模の目標数値としては、パリ協定で「工業化以前より地球の平均気温上昇を2℃より低く維持する」「1.5℃上昇を抑える努力をする」ことが掲げられました。

また、日本は2030年に2013年比の26%の温室効果ガスの排出を削減することを目標にしています。

二酸化炭素は、産業部門、業務部門のほか、家庭部門などさまざまな分野から排出されています。

また、企業と家庭から出る二酸化炭素の総排出量は同程度です。

脱炭素の目標を達成するには、政府だけでなく、自治体、企業、個人それぞれが脱炭素社会を目指して行動していくことが大切でしょう。

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