【2022年4月改正】女性活躍推進法とは?概要や効果をわかりやすく解説
「女性活躍推進法」が2015年9月に施行されました。
働きたい女性が活躍できる社会の実現を目的として作られた法律です。
2022年4月には改正が行われ、今までは「301人以上の労働者を常時雇用する事業主」が対象でしたが、「101人以上300人以下の事業主」も義務の対象になりました。
また、行動計画策定と女性活躍状況の情報報告も義務化されています。
今回は女性活躍推進法の概要や現状、2022年4月の改正内容について紹介します。
女性活躍推進法とは?
「女性活躍推進法」の正式名称は「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」です。
2015年9月4日に公布され、同日に施行されました。
女性活躍推進法には、以下の3つの基本原則があります。
- 女性に対する採用、昇進等の機会の積極的な提供及びその活用と、性別による固定的役割分担等を反映した職場慣行が及ぼす影響への配慮が行われること
- 職業生活と家庭生活との両立を図るために必要な環境の整備により、職業生活と家庭生活との円滑かつ継続的な両立を可能にすること
- 女性の職業生活と家庭生活との両立に関し、本人の意思が尊重されるべきこと
社会をより発展させるためには、女性本人の意思で働くこと、また、働きたいという女性の個性とスキルが発揮できる社会であることが必要です。
女性活躍推進法は10年間の時限立法
女性活躍推進法は2015年から10年間、2025年度までの時限立法とされています。
「時限立法」とは、一時的・臨時的な事態への対応のために期限を決めて制定された法律のことです。
条文には「2026年3月31日に女性活躍推進法は失効」と記されています。
しかし附則抄 第四条には以下のようにも記載されています。
政府は、この法律の施行後五年を経過した場合において、この法律による改正後の規定の施行の状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。
引用:「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(e-Gov法令検索)
そのため、2025年度の期限を過ぎても延長される可能性もあるでしょう。
優良企業の認定制度「えるぼし」
女性活躍推進法に基づく認定制度に「えるぼし」があります。
女性活躍推進への取り組みが優良であることを示し、厚生労働大臣から受ける認定です。
「えるぼし」の認定には5つの基準があります。
- 採用:女性の採用割合など
- 継続就業:女性の継続年数
- 労働時間等の働き方:残業や休日労働の時間数
- 管理職比率:女性の管理職比率
- 多様なキャリアコース:女性の正社員登用や再雇用などの実施
これらの5つの基準の達成度により1つ星~3つ星に分けられます。
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- 3つ星(3段階目):5つの基準すべてを満たしている
- 2つ星(2段階目):3つもしくは4つの基準を満たしている
- 1つ星(1段階目):1つもしくは2つの基準を満たしている
「えるぼし」には更にランクの高い「プラチナえるぼし」もあります。
えるぼしマークを表示することで女性社員の活躍を促進する企業であることが証明でき、求職者や取引先へのアピールにつなげることができます。
参考:「女性活躍推進法に基づくえるぼし認定 プラチナえるぼし認定のご案内」(厚生労働省)
「女性活躍推進法」成立の背景
女性活躍推進法の成立にはさまざまな理由があります。
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- 少子高齢化による人手不足の解消
- 働きたいのに育児や介護が理由で働けない女性が多い現状
- 新たなイノベーションの創出
- 先進国に比べて日本女性の社会進出が遅れている
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就職を希望しているものの、出産・育児や介護を理由に働いていない女性は就職希望者の3割以上に上ります。
また再雇用となっても、パートや派遣社員など非正規雇用となる場合の多さも問題です。
育休後に職場復帰しても、育児のために早退や休みが増えるため、簡単な業務しか与えられないという現状もあります。
女性が力を十分に発揮できていないという現実を解決し、さらに豊かな社会を実現するため、女性活躍推進法は制定されることとなりました。
2022年4月に女性活躍推進法が改正!対象が労働者101人以上の企業に拡大
2015年に施行された女性活躍推進法ですが、2022年4月に内容が改正されました。
2015年に制定された女性活躍推進法の対象は「常時雇用する労働者の数が301人以上の企業」で、300人以下の企業は努力義務とされていました。
しかし2022年4月1日からの改正では、対象が「常時雇用する労働者の数が101人以上の企業」となりました。
対象 | 努力義務 | |
2022年3月31日まで | 常時雇用の労働者301人以上 | 常時雇用の労働者300人以下 |
2022年4月1日以降 | 常時雇用の労働者101人以上 | 常時雇用の労働者100人以下 |
「常時雇用する労働者」とは、正社員やパート、アルバイトなどの名称では判断されず、以下のどちらかに当てはまる労働者を指します。
- 期間の定めなく雇用されている労働者
- 過去1年以上継続して雇用されている、もしくは1年以上の雇用が見込まれる労働者
「一般事業主行動計画の策定・届出」と「女性の活躍に関する情報公表」
女性活躍推進法の対象となる企業は「一般事業主行動計画の策定・届出」と「女性の活躍に関する情報公表」が義務付けられます。
「一般事業主行動計画の策定・届出」とは企業が自社の女性活躍状況を把握・分析し、結果を踏まえて行動計画を立てるものです。
行動計画には行動期間や具体的な目標数値を記載する必要があります。
「女性の活躍に関する情報公表」では、決められた項目の中から1項目以上を選び、就職者などに公表することです。
女性が活躍できる職場かどうかの判断基準になります。
行動計画を策定するとメリットがある
義務対象となった企業が行動計画を策定し届出を行うと、以下のメリットがあります。
- 公共調達で加点評価される:政府による総合評価策札方式または企画競争の調達で有利になる可能性がある
- 「働き方改革推進支援資金」特別税率で資金融資が受けられる:働き方改革を実施するために必要となる設備設置や運転資金として利用可能
「えるぼし」認定や「プラチナえるぼし」認定にも、一般事業主行動計画の策定・届出が必要です。
一般事業主行動計画の策定から取り組みまでの4ステップ
女性活躍推進法において重要となる一般事業主行動計画。
この行動計画の策定について解説します。
状況の把握から取り組みの実施までは全部で4ステップです。
- 自社の女性の活躍に関する状況の把握、課題分析
- 行動計画の策定、社内周知、公表
- 行動計画を策定した旨の届出
- 取組の実施、効果の測定
ステップ1. 自社の女性の活躍に関する状況の把握、課題分析
まずは自社における現状把握から行います。
以下の4項目は、必ず把握しなければいけない項目です。
- 採用した労働者のうち、女性労働者はどのくらいいるか
- 平均継続勤務年数の男女における差
- 管理職のうち女性が占める割合
- 労働者の各月の労働時間(平均残業時間など)
上記項目を把握し現状を理解した上で、どのような課題があってどのように改善すべきなのかを分析します。
ステップ2.一般事業主行動計画の策定、社内周知、公表
分析結果からわかった課題に対して行動計画を策定します。
行動計画と聞くと難しく感じるかもしれませんが、A4、1枚程度でも大丈夫です。
一般事業主行動計画には、以下の内容を盛り込む必要があります。
必要な内容 | 概要 |
計画期間 | 2025年度までの期間で、現状に応じて2~5年間に区切り、定期的な進捗検証を行いながら改定する |
1つ以上の目標数値 | 「女性正社員採用を10人から30人にする」「女性労働者の平均継続勤務年数を1年伸ばす」など具体的な数字で示す |
取組内容 | 目標数値を達成するためにどのような取り組みを行うのかを検討・決定する |
取組の実施期間 | 取組内容をいつ、どれだけの期間実施するのかを検討・決定する |
以下の資料も参考にしてください。
「行動計画策定かんたんガイド」(東京労働局)
「女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画を策定しましょう!」(厚生労働省)
ステップ3.一般事業主行動計画を策定した旨の届出
ステップ2で作成した一般事業主行動計画を、社内や外部に周知します。
自社が今度どのような目標でどのような取り組みを行うのかを社員に周知します。
誰でも確認できるよう、社内の掲示板やポータルに掲載しましょう。
一般事業主行動計画は社外にも周知する必要があります。
会社のホームページや厚生労働省が運営する「⼥性の活躍推進企業データベース」に掲載します。
社内外への周知だけでなく、都道府県労働局への届出も必要です。
様式は厚生労働省のホームページからダウンロードできるので、確認しましょう。
様式ダウンロード:厚生労働省HP
ステップ4.取組の実施、効果の測定
一般事業主行動計画の届出が終わったら、実際に取り組みます。
女性が働きやすい職場環境を作るには、効果を測定し、改善する必要があります。
また定期的に行動の見直しも必要です。
PDCA(計画・実行・評価・改善)を繰り返すことで、女性活躍の場は広まるでしょう。
また数値だけの計測だけでなく、社内アンケートや面談なども積極的に行い、顕在的問題も把握するよう努めましょう。
女性活躍推進法への取り組みに関する企業の現状
最後に、女性活躍の現状を見ていきましょう。
株式会社マイナビが2020年に行った調査によると、働く女性のうち約半数(48.5%)が非正規雇用で働いています。
男性の非正規雇用が16.8%に対し、女性は約3倍です。
また管理職に占める女性の割合は14.9%と2割にも満たない結果となりました。
就業者全体で占める女性の割合は44.2%なので男女に大きな差はありませんが、女性管理職の割合は依然として低い状況です。
参考:「女性活躍の現状(2021年)~女性のキャリア選択肢を増やすために~」(株式会社マイナビ)
しかし、女性活躍推進法の義務化や認知により、少しずつ女性活躍推進に取り組む企業は増えています。
「女性の活躍推進企業データベース」への登録企業は2022年4月時点で、データ公表企業が20,846社、行動計画公表企業は29,039社です。
登録企業数は徐々に増えており、今後も増加が予想されます。
参考:「女性の活躍推進企業データベース」(厚生労働省)
また「えるぼし」認定も取得する企業が増えています。
2020年9月末時点のえるぼし認定は1,134社、プラチナえるぼし認定は3社です。
求職者が応募企業を決める際の判断基準にえるぼし認定の有無を考慮する場合も増えており、これからの採用活動には欠かせない認定となりつつあります。
参考:「女性活躍推進企業認定「えるぼし・プラチナえるぼし認定」」(厚生労働省)
まとめ
女性活躍推進法の概要や背景、行動計画に関する流れなどを解説しました。
これからの時代、女性の活躍はますます重要となります。
それは人材不足の解消だけでなく、イノベーションの創出などのメリットもあります。
企業は女性活躍推進に取り組むことで、イメージアップや優秀な人材の確保につながるでしょう。
さらなる成長のために企業は行動計画の策定を、そして女性は企業がどのような取り組みをしているかを調べ、見極めることが大切です。
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