日本の環境問題の取り組み・現状の課題を解説!コロナ禍による意識変化も
最近の日本人の環境問題に対する意識の変化から、日本の環境問題への取り組みと現状の課題・問題点まで、わかりやすく解説していきます。
また、本記事の後半では、2022年4月から施行された地球温暖化対策推進法の改正案についてもわかりやすく紹介しているので、日本の環境問題に対する最近の動きを知りたい人は、ぜひ参考にしてください。
日本人の環境問題への意識
日本国内での環境問題に対する取り組みに触れる前に、まずは、世界からみた日本の温暖化対策はどのように評価されているのか、最新の調査結果を見ていきましょう。
また、日本人の若者世代・大人世代を対象に調査した、環境問題に対する意識調査のデータも紹介します。
最近のコロナ禍における意識変化も、あわせて確認していきましょう。
世界的にみた日本の気候変動対策ランキング
はじめに、世界から見た日本の温暖化対策の評価ランキングについて紹介します。
国内でも、「世界各国と比べて、日本の温暖化対策は遅い・不十分だ」という声もたびたび聞こえますが、世界の目には、一体どのように見えているのでしょうか。
2021年11月、イギリス・グラスゴーで開催されたCOP26にて、ドイツの国際環境NGOのジャーマンウォッチが、世界の主要排出国の温暖化対策を総合的に採点・順位づけしたランキングを発表しました。
日本の順位は、64カ国中45位という結果で、昨年と同じ順位となり、残念な結果となりました。
これは決して高い評価ではなく、比較的下位といっても過言ではないでしょう。
同NGOによると、日本は、温室効果ガスの削減目標(2030年までにGHG排出量を2013年比で46%削減し、2050年までにネットゼロを目指すこと)については評価できるが、それを達成するための具体的な計画や方針がないことを問題点として挙げています。
ちなみに、同ランキングの1位から3位は、十分な気候変動対策ができている国・地域はないとして「該当国なし」という結果になりました。
第4位はデンマーク、第5位はスウェーデン、第6位はノルウェーとなり、上位3カ国は北欧諸国が占める結果となりました。
このランキング調査における具体的な比較項目などの詳細は、以下のページを参考にしてください。
参考:Climate Change Performance Index 2022|CCPI
コロナ禍で変化した環境問題への意識
続いて、国内の調査で大変興味深いデータがあったので引用します。
公益財団法人・旭硝子財団の調査(2021年8月)によると、約5割の人が環境問題への意識や行動において、前向きな変化あったという調査結果を発表しました。
調査対象は、全国の10代〜60代の男女1,092名(Z世代:18〜24歳520名、大人世代:25〜69歳572名)です。
「前向きな変化」のなかの一部の回答例を挙げると、上位は「食品ロスが出ないように気を付けるようになった」(16.3%)という結果となり、コロナ禍における飲食店での食品ロスのニュースがよく話題になったことが影響していると考えられます。
そのほか、
「自宅で植物や野菜を育てるようになった」(7.7%)
「通勤通学など自転車や徒歩で移動するようになった」(10.3%)
など、コロナ禍においておうち時間が増えたことや、ソーシャルディスタンスを意識する生活ならではの意識の変化が起きていることがわかりました。
特に、「通勤通学など自転車や徒歩で移動するようになった」と答えた人は、体力のある若者(Z世代)の割合が多く、2020年から2021年の推移をみても、圧倒的に増えていることがわかります。
一方で、本アンケートの回答で最も多かったのは
「使用する電力量が増えた」(28.6%)
となり、新型コロナによるおうち時間の増加は、環境にとってネガティブな影響も与えていることがわかります。
また、日本国内の環境問題で危機的だと思う項目は、1位は「気候変動」でした。
出典:「日本人の環境危機意識調査」|公益財団法人 旭硝子財団
GREEN NOTE(グリーンノート)のアプリで行ったアンケートでは、「サステナビリティについて最も関心の高い項目」に関しての「気候変動」という結果となりました。
下記記事で、アンケートの調査結果をまとめています。
関連記事:【市場調査レポート】サステナビリティに最も関心の高い項目は?の調査結果
「パリ協定」からみる日本の環境問題への取り組み
日本では実際のところ、環境問題に対してどのような取り組みをしているのでしょうか。
それを紐解くために、本記事では、2016年11月に発効された「パリ協定」を軸にした、昨今の日本の環境問題に対する取り組み例を紹介します。
そもそも、パリ協定とは、2015年にパリで開かれたCOP21で合意された協定で、2020年以降の温室効果ガスの排出削減などの気候変動問題に関する国際的な枠組みです。
パリ協定は、1997年に定められた「京都議定書」の後継となる枠組みですが、両者を比較すると、パリ協定では先進国だけでなく、中国やインドなどの発展途上国も含めたすべての参加国(187カ国・2019年12月時点)に温室効果ガスの削減義務があることが特徴です。
このパリ協定では、世界共通の長期目標として、以下を掲げています。
- 世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする
- 上記の目標を達成するために、できるかぎり早く世界の温室効果ガス排出量をピークアウトし、21世紀後半には、温室効果ガス排出量と(森林などによる)吸収量のバランスをとる
上記の目標を受けて、日本では温室効果ガスを「2030年度に2013年度比46%減」という高い目標を策定しました。
また、「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」のなかで、日本は以下の目標を掲げています。
- 「脱炭素社会」を最終的な到達点とし、今世紀後半までにできるだけ早く実現すること
- ビジネス主導の非連続なイノベーションを通じた「環境と成長の好循環」の実現
関連記事:パリ協定の概要とは|温室効果ガス削減目標とその背景
では、このようなビジョンを達成するために、日本ではどのような取り組みが行われているのでしょうか。
さらに詳しく解説していきます。
カーボンニュートラルの実現に向けた取り組み
カーボンニュートラルとは、大気中に排出される温室効果ガスから、森林などによる吸収量を差し引いた温室効果ガスが実質ゼロである状態(ネットゼロ)のことを指します。
2020年10月、日本政府では、2050年までにカーボンニュートラルを実現することを目標として明言しました。
そのために、まずは「2030年までにGHG全体で2013年度比46%の温室効果ガス削減を行うこと」を提言しています。
日本政府の具体的な取り組みとしては、「地球温暖化対策計画」の見直しや、「地球温暖化対策の推進に関する法律(温対法)」の改正により、国、地方公共団体、事業者、国民が、より一体となって連携を強めることで、脱炭素社会の実現のためのイノベーション・取り組みを国内で活発化させる狙いがあります。
関連記事:世界・日本の取り組み事例|SDGs目標7「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」
再生可能エネルギーの主力電源化に向けた取り組み
日本の脱炭素社会を実現するうえで欠かせないのが、供給電力の再生可能エネルギー化です。
日本では、2030年度の再生エネルギーの電源比率を22%〜24%以上にすることを目標として掲げています。
再生可能エネルギーとは、太陽光、風力、バイオマス、地熱、中小水力といった自然由来のエネルギーのことで、二酸化炭素を排出しないメリットがあります。
ただし、再生可能エネルギーには、自然由来ゆえのデメリットもあります。特に太陽光発電や風力発電では、天候や季節によって発電量が変わってしまうのは特筆すべき点です。
したがって、再生可能エネルギーを主力電源化するためには、電気需要に対する安定供給が常にできるように、火力発電などの出力調整ができるほかの発電方法とのバランスを加味しながら、そのときどきの状況に応じた最適なエネルギーミックスを実行することが課題といえます。
再生エネルギーを国内で普及させるための日本の取り組み例としては、2012年7月から経済産業省がはじめた「FIT制度(Feed-in Tariff)」が挙げられます。
FIT制度では、個人の住宅も含めて、再生可能エネルギーからつくられた電気を、電力会社が一定期間、一律の価格で買い取ることを国が保証する制度です。
以下の経済産業省のデータによると、実際にFIT制度が始まる前(2011年度)と始まった後(2018年度)を比較すると、再生エネルギーの比率が、10.4%から16.9%に増加していることがわかります。
このように、FIT制度は一般家庭も巻き込んで、日本のエネルギー自給率を高める狙いもあります。
地球温暖化対策推進法の改正による変化
では、最近の日本における環境問題への取り組みの進捗はどのようになっているのでしょうか。
ここでは、2021年5月に改正案が成立し、2022年4月から施行された地球温暖化対策推進法について、わかりやすく解説します。
地球温暖化対策推進法は、1997年のCOP3にて京都議定書が採択されたことを受けて、1998年に成立した法律で、これまで6回の改正が行われています。
今回の7回目となる改正では、2020年に菅義偉元首相が「2050年までにカーボンニュートラルを実現すること」を宣言したことが背景にあり、脱炭素社会実現のための基本方針が成立されることとなりました。
今回の地球温暖化対策推進法の改正には、大きく分けて3つのポイントがあります。
それぞれ、詳しくみていきましょう。
基本理念の新設
まず一つ目のポイントは、地球温暖化対策についての基本理念が新設された点です。
条文には「2050年までのカーボンニュートラルの実現」が明記されました。
さらに、それを達成するためには、「国民・国・地方公共団体・事業者・民間の団体等の密接な連携の下に行われなければならないものとする」という文言が記載されたことで、国民一人ひとりに与えられた目標として、これまで以上に個人の意識を底上げさせるような印象があります。
地方自治体に再生可能エネルギーの導入目標が義務付けられた
二つ目のポイントは、地方自治体ごとに再生可能エネルギーの導入目標を設定・開示するように義務付けられたことです。
従来の法律では、実行計画制度における実施目標の設定が義務付けられていなかったため、自治体レベルでの再生エネルギーの普及がなかなか進まない現状でした。
しかし、今回の改正で義務化されたことによって、地域レベルでの再生可能エネルギーの普及率の底上げが期待されています。
企業に温室効果ガス排出量のデータ開示が義務付けられた
三つ目のポイントは、企業に対して、温室効果ガスの排出量のデータ開示が義務付けられた点です。
従来では、開示請求がない限り、データをオープンにする必要性がありませんでしたが、今回の改正で、誰でも閲覧できるようなデータのオープン化が義務付けられました。
企業ごとに温室効果ガスの排出量データを可視化させることで、今後の脱炭素社会の実現に向けた具体的なロードマップの作成や、イノベーションの促進をより活発化させる狙いがあると考えられます。
一方で、今回の改正では、2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、すべての行動方針が定められたわけではないのも事実です。
例えば、2050年までの再生可能エネルギーを含めた国内の電源供給構成案など、具体的な計画が現状未定とされているものもあります。
企業や地方自治体が具体的な計画を立てて、脱炭素社会に向けて本格的に動き出すためには、国の具体的な計画やロードマップの開示が必須となるため、今後の日本政府がどのような方向に舵をとるのか、引き続き注視が必要です。
まとめ
本記事では、日本の環境問題について、若者世代から大人世代までの最近の意識の変化から、具体的な温暖化対策に対する法改正などをはじめとした、取り組み事例をまとめて紹介しました。
2050年の日本のカーボンニュートラルを実現するためには、国民一人ひとりが明確な意志を持って取り組む必要があります。
国や地方自治体、企業との連携を高めるためにも、まずは、日本政府による明確な行動計画やロードマップの提示が必須です。
私たちも、省エネやリサイクル活動への取り組みなど、自分たちのできるところから、今から意識を変えて参加していきましょう。
それでは、最後に本記事のポイントをおさらいしておきましょう。
- コロナ禍によって、食品ロスへの意識が高まったが、自宅に滞在する時間が増えたことで、消費電力や家庭ごみの量が増えた
- 2021年5月に地球温暖化対策推進法が改正されたことにより、地方自治体には再生可能エネルギーの導入目標の設定が、企業には温室効果ガスの排出量データの開示が義務付けられた
- 国際環境NGOのジャーマンウォッチによる評価にもあるように、日本の環境問題対策は、具体的な行動計画やロードマップが不明確であることが問題として挙げられる
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