干ばつや砂漠化の原因とは?世界と日本の取り組みとできること
干ばつが長引くと砂漠化が進むおそれがあり、現在世界中で深刻化しています。
2022年3月には、アフリカ北東部で歴史的な干ばつが起こり、2000万人が食糧危機に陥りました。
農作物は枯れ、家畜も生きられず、人々は生活の危機に瀕しています。
今回は、そんな干ばつが起こる原因について解説し、世界や日本の対策と取り組みも紹介します。
干ばつや砂漠化が起きる2つの原因
干ばつとは、数ヶ月~数年など長期間雨の降らない日が続き、水不足になっている状態をいいます。
また、砂漠化は「乾燥地で起こる土地の劣化」を指します。
生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学-政策プラットフォーム(IPBES)によって、「緊急かつ強調した行動を取らない限り土地劣化は悪化する」という報告がされるなど、現在は世界的な重要課題となっています。
出典:「砂漠化する地球-その現状と日本の役割-」(環境省)
干ばつや砂漠化が起きる要因は「気候的要因」と「人為的要因」のふたつに分けられます。
まずは、干ばつや砂漠化が起きるふたつの要因についてそれぞれを理解しましょう。
気候的要因
気候変動など、地球規模での気候の変化が起因しているケースです。
空気中の二酸化炭素が増加したことによる地球温暖化や森林の減少、海水温の変化などが指摘されていますが、具体的なメカニズムについては分かっていません。
気候的要因による砂漠化の代表例は「サハラ砂漠」です。
サハラ砂漠南部では1930年から数年おきに干ばつが発生し、1985年までの間に降水量も少なくなりました。
これまでも気候変動によって草木のある時期と雨が降らない乾燥の時期が繰り返されてきたと考えられています。
メリーランド大学の国立科学財団(NSF)の研究では、1920年から2013年にかけて、サハラ砂漠の平均面積が16%増加したとの結果が得られています。
出典:「New study finds world’s largest desert, the Sahara, has grown by 10 percent since 1920」(National Science Foundaction)
人為的要因
砂漠化の要因の大きな割合を占めるのが人間の生産活動です。
伐採して農地を拡大したり、家畜を飼いすぎたりすることで、多くの地域では森林や動物のエサとなる草木も減少しています。
特にアフリカやアジアの乾燥地域では、畜産も収入源のひとつとなっていますが、生産エリアを拡大することで土地の劣化が進む可能性が示唆されています。
また、このような地域では、周辺の水源から水を引き込む灌漑農業(かんがいのうぎょう)が行われることも多いです。
このとき、地下に含まれている塩分が畑に流れ出るケースもあり、農作物や周囲の草木に悪影響を与えます。
また、経済発展を目的としたインフラ開発や鉱山開発が、土地の劣化につながることも多いです。
例えば、鉱山開発においては、鉱石を採掘した跡地に空洞ができ、地表が陥没する現象が起きやすくなります。
また、鉱山廃棄物に含まれる有害物質により、土地汚染につながることもあります。
干ばつや砂漠化の根本課題は「悪循環」する仕組みにある
次に、干ばつや砂漠化が発生する仕組みから、根本的な課題について考えてみましょう。
砂漠化による悪影響がさらに事態を加速させる
砂漠化は、その土地の植物や土壌生物の多様性を損ないます。
乾燥地においては、植生は食料や燃料になるほか、家畜の餌にもなるため、非常に重要です。
そのため、多様性が損なわれることによって、人間の生活環境に大きな影響を与えてしまうのです。
特に、砂漠化は乾燥地帯の開発途上国などで発生していることが多く、そのほとんどが経済的に乏しいエリアです。
生態系が崩れて農作物の収穫量が減ると、より貧困問題が深刻になります。
途上国では農業で生計を立てている家庭も多いため、土地の劣化は収入や食料に直接的な影響を与えるでしょう。
水不足や食糧不足などが発生すると、残っている資源をめぐって紛争が起こる危険性も高まります。
紛争が起きれば、人々はその国や地域で生活できなくなるかもしれません。
一方、土地を開拓しようとすると自然資源を過剰に消費することになり、更なる土地の劣化や生態系の喪失を引き起こしてしまうのです。
このように、砂漠化がひとたび起こると、社会問題と環境問題をより深刻化させる仕組みになっているのです。
人為的要因は負の副産物という側面がある
砂漠化の人為的要因は、人口増加や市場経済の発展によって起こっています。
国連の報告によると、2011年時点での世界人口は70億人ですが、2050年には97億人にまで増加すると予想されています。
出典:「人口と開発」(国際連合広報センター)
人口が増えれば生活するための土地が必要となり、生産する食料も増やさなければなりません。
森林を伐採して、都市化したり農地にしたりする必要もあるでしょう。
経済発展は本来望ましいことですが、人類が安全で快適な生活を確保するほどに、土壌や植生の劣化が進んでしまいます。
先進国においては途上国への開発支援も重要ですが、一方で、環境負荷を軽減させるための施策も求められているといえます。
干ばつや砂漠化を防ぐための各国の取り組み
干ばつや砂漠化に対して、世界と日本が行っている取り組みを紹介します。
世界各国で「砂漠化対処条約」が締結
砂漠化が進むアフリカ諸国などの開発途上国に対して、先進国による資金援助や技術協力について定めたものが「砂漠化対処条約」です。
1998年に日本も条約に加盟し、2021年には197ヶ国の国と地域に加えてEUが批准しています。
この条約によって、国際的に協力し合って解決することを目的に、砂漠化対処の計画や取り組みの報告も義務づけられました。
世界で干ばつに対して実施している取り組みとしては、「灌漑農業」が代表的です。
塩害の被害を防ぐよう、灌漑末端水路の改修や排水路の整備なども行っています。
カリフォルニア州では、巨大なダム群で雨水を貯水し、700kmもの水路で導水することで耕地の灌漑化に成功しました。
ダムを建設するなど灌漑農業の設備を整えることで、降水量の少ない地域や一時的に干ばつが起こるエリアでも、作物の生産や種類を増やすことができると考えられています。
日本も先進国として協力
日本も砂漠化対処条約を受け、先進国として砂漠化対処、干ばつの緩和に向けた計画・戦略を実施しています。
環境省では、2012~2015年にモンゴル国ゴビ地域において、移動性が高い地域の持続可能な放牧地利用手法の検討を行いました。
具体的には、以下の施策を実行しています。
- 牧民の参加を得た放牧地利用計画の策定
- 牧民によるデルスの管理
- 郡間協定の締結
2004~2007年にはアフリカの砂漠化に対して、技術提供と現地の伝統的知識の融合による持続可能な対策検討などを実施しました。
1995年に建設した地下ダムの機能性を高めることを目的に、現地住民へ維持管理の知識や技術、ノウハウを提供するための施策です。
この施策では、現地の意思決定方法を活用しながら、住民が獲得したいと考える技術の習得や定着の支援を行いました。
また、NGOでもアフリカ、中国、モンゴルなどで緑化活動を積極的に行っています。
日本における水供給の課題
日本においても水供給の課題があることを認識しておきましょう。
現在、日本は水不足の状況に陥っています。
日本は河川の勾配が急で、雨水がすぐに海に流れやすい特徴があり、水不足になりやすい地形といわれています。
さらに、生活用水の使用量が増加傾向にあり、平均気温の上昇などによって降水日数が減っていることから、決して油断できる状況ではありません。
特に、震災などが発生すると水不足が深刻化しやすく、2011年の東日本大震災でミネラルウォーターの需要が急増しました。
国内のミネラルウォーターが不足した場合、海外輸入に頼らなければなりません。
しかし、フランスでは干ばつと気候変動で水源が枯渇し、「ボルヴィック」が日本での販売が終了になった事例があります。
こうした国内の水不足問題への対応も急務となり、2014年には「水循環基本法」が施行されました。
地球では、雨が川や海、地下に流れた後、再び蒸気となって雨雲になるという循環が絶え間なく行われています。
この水の一連の流れを正常化させることを目指した基本施策が定められています。
国では、水循環基本計画に基づき、健全な水循環のための流域マネジメントを行う施策を「流域水循環計画」として公表しています。
福島県のうつくしま「水との共生プラン」もそのひとつです。
本プランでは、「水にふれ、水に学び、水とともに生きる」の理念のもと、次のような施策を策定しています。
- 森林や農地の保全、整備の推進
- 水源や地下水保全対策の推進
- 生活排水や工場排水対策の推進
- 緊急時における円滑や水融通の仕組みづくり
- 水管理体制の構築
地域や個人、団体問わず協力して水循環を維持することを目指しています。
まとめ
干ばつや砂漠化の主な原因は、人の生産活動によるものです。
特に途上国などの貧しい地域で発生しやすく、悪循環が起こりやすいことから改善が難しい側面もあります。
今後はさらに人口が増えると予想されていることから、より問題が深刻化するおそれもあるでしょう。
世界の問題を解決するためには、私たち一人ひとり節水や水の無駄遣いをしないように心がけることが大切です。
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