格差・貧困・人権

障害者と関わりのあるSDGsの目標とは?目標達成に向けた取り組み

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障害を理由に不当な扱いを受けたり、機会を奪われたりすることで苦しむ人々は、未だに数多く存在します。

2021年12月、車いすの女性が鉄道を利用しようとして、乗車を断られたニュースが話題となりました。

国土交通省は障害者への配慮を求める法令の理念に反するとし、発端となったJR九州に再発防止に努めるよう指導しました。

「誰ひとり取り残さない」をテーマに掲げられたSDGsの目標には、障害者に関するものも多く含まれ、課題解決に向けた取り組みも活発化しつつあります。

では、具体的にSDGsで定められている目標の中で、障害者に関するものにはどのようなものがあるのでしょうか。

今回は、障害者に関するSDGsの目標や障害者が抱える課題、解決に向けて行われている取り組みの例を紹介します。

障害者に関係するSDGsの目標

まずは、SDGsの17ある目標のうち、障害者に関する目標とそのターゲット、目標が設定された背景を紹介します。

目標1「貧困をなくそう」

「きょうされん(旧称:共同作業所全国連絡会)」の調査によると、障害のある人の81.6%が、相対的貧困(※)とされる年収122万円以下で生活を送っているといわれています。

また、障害者の中には、フルタイムで働いているにもかかわらず、生活を維持することが困難もしくは生活保護支給額の水準にも満たない収入しか得られない「ワーキングプア」が多いことも特徴です。

ワーキングプアと呼ばれる人は、国税庁による平成26年度の「民間給与実態統計調査の結果」によると、全就労者の24.0%を占めています。

障害者のうち、ワーキングプアに該当する人は98.1%にも上ります。

出典:「障害のある人の地域生活実態調査の結果報告」(きょうされん)
出典:「平成26年分民間給与実態統計調査結果について」(国税庁)

SDGsのターゲット1.2では「2030年までに、各国の定義によってあらゆる次元の貧困状態にあるすべての年齢の男性や女性、子供の割合を半減させる」ことが達成目標となっています。

障害者の貧困は、就労者全体と比べても相対的に極端に多いことから、SDGsの「誰ひとり取り残さない」を実現するために欠かせない目標設定のひとつです。

(※)相対的貧困…所得中央値の一定割合以下の所得しか得られていないこと

目標4「質の高い教育をみんなに」

SDGsの目標4では「質の高い教育をみんなに」と題し、教育格差の是正が進められています。

障害者教育に関しては、特別支援学校からの大学進学率がわずか約1.7%と低い水準です。

出典:「令和3年度 学校基本調査」(文部科学省)

ターゲット4.5では「2030年までを目標に、教育におけるジェンダー格差をなくして、障害者や先住民、脆弱な立場にある子供などの脆弱層にいる人々に対して、あらゆるレベルの教育や職業訓練へ平等にアクセスできるように環境を整えること」を達成目標としています。

また、ターゲット4.aでは、「子供や障害、ジェンダーに配慮しながら教育施設を構築あるいは改良し、すべての人々にとって安全で非暴力的、包摂的、効果的な学習環境を提供できるようにすること」とされています。

算用数字のターゲットは具体的な達成目標を示し、アルファベットのターゲットでは、達成目標を実現するための具体的な手段が示されています。

このターゲットでは、子どもたちへの教育はもちろん、障害の有無や性差別のない学習環境の構築が求められているといえます。

関連記事:3億人以上が学校に通えていない現実|SDGs目標4「質の高い教育をみんなに」

目標8「働きがいも経済成長も」

SDGsの目標8では「働きがいも経済成長も」と題して、雇用や労働環境に関する課題解決に向けた取り組みが行われています。

障害者の労働に関連するデータとして、厚生労働省による「令和3年 障害者雇用状況の集計結果」では、障害者雇用数が59万7,786人となっており、年々増加傾向にあることがわかりました。

しかし、実雇用率は2.20%で、障害者雇用促進法で事業者に義務付けられている2.3%(民間企業)を達成した企業の割合は47.0%にとどまっています。

出典:「令和3年 障害者雇用状況の集計結果」(厚生労働省)

ターゲット8.5では「2030年までに若者や障害者を含むすべての人が、男性・女性問わず完全かつ生産的な雇用と働きがいのある人間らしい仕事に従事し、同一労働・同一賃金を達成すること」が目標として定められています。

障害者の雇用を促進するためには、経済成長に寄与できる形で、障害者、男性、女性を含め、あらゆる世代の人たちがともに働ける社会を実現する必要があります。

関連記事:SDGs目標8「働きがいも経済成長も」|日本と世界の現状と事例を紹介

目標10「人や国の不平等をなくそう」

SDGsの目標10では「人や国の不平等をなくそう」と題し、あらゆる不平等の是正に対する取り組みが進められています。

障害者に関連する不平等の例として、障害を理由に就職や職場で不利な扱いや差別を受けたり、店舗でのサービスなどを拒否されたりといった人権問題なども課題のひとつです。

ターゲット10.2では「2030年までに年齢や性別、障害、人種、民族、出自、宗教を問わず、また経済的地位やその他の状況に関わりなく、すべての人々の能力を強化し、社会的かつ経済的で政治的な包含を促進すること」が目標として定められています。

社会や経済、政治参画における差別や不平等をなくし、すべての人の意見が反映される政治や社会の実現を目指すことは、障害者の不平等是正にもつながるでしょう。

関連記事:SDGs目標10「人や国の不平等をなくそう」貧困や差別をなくすためにできること

目標11「住み続けられるまちづくりを」

SDGsの目標11では「住み続けられるまちづくりを」と題して、住環境や社会インフラ、ニーズを満たすさまざまなサービスの利用促進が図られています。

障害者が快適に暮らすためには、障害に応じた設備の整備や、介助者の負担軽減が欠かせません。

ターゲット11.2では「2030年までに脆弱な立場にある人々や女性、子供だけでなく、障害者や高齢者のニーズにとくに配慮しながら、公共交通機関の拡大などの交通安全性を改善し、すべての人々が安全・安価で、容易に利用できる持続可能な輸送システムへのアクセスを提供すること」が目標として定められています。

また、ターゲット11.7は「2030年までに女性や子供、高齢者、障害者を含め、すべての人々に安全かつ包摂的で、利用が容易な緑地や公共スペースへの普遍的かつ持続可能なアクセスを提供すること」が目標です。

どちらのターゲットも、公共サービスへのアクセスを安全かつ容易にすべての人が利用できるようにすることが、住み続けられるまちづくりの根幹であると示しています。

目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」

目標17では「パートナーシップで目標を達成しよう」と題し、国や地方自治体、民間企業などが協力し合うことの重要性を伝えています。

ターゲット17.18では「2020年までに後発開発途上国及び小島嶼開発途上国を含む、開発途上国に対する能力構築支援を強化すること、また、所得や性別、年齢、人種、民族、居住資格、障害、地理的位置及びその他の各国事情に関連する課題や事象に対して、特性別に質が高く、タイムリーで信頼性のある非集計型データの入手可能性を向上させること」が目標です。

集計されたデータは合計や平均値が算出された状態のものであるため、一部の数値が高いデータによって集計値が引き上げられてしまい、支援が必要な人々のデータが反映されにくい傾向があります。

非集計型データの入手は、こうした要支援層の潜在的ニーズを抽出し、障害者を含むさまざまなニーズや課題の解決策を打ち出すためのベースとなります。

施策の効果は出ているかなどの進捗状況を把握するためにも、非集計型データの収集によるモニタリングや抽出されたデータの共有が必要です。

SDGsの目標を達成するための取り組み

ここからは、障害者に関連する課題解決のために、SDGsで定められている目標達成に向けて、国主導で推進されている取り組みの例を紹介します。

【目標1、8】障害者雇用の推進

SDGsの目標1「貧困をなくそう」と目標8「働きがいも経済成長も」の達成に向けて国が行っている施策の例として、障害者雇用の推進が挙げられます。

2021年3月1日に改正された「障害者雇用促進法」では、民間企業の障害者法定雇用率が2.2%から2.3%へ引き上げられました。

これは、従業員数43.5人に対してひとりの障害者を雇用する必要がある割合です。

達成していない企業には、不足している障害者数ひとりに対して月額5万円の納付義務(常時雇用従業員100名以上の企業)があります。

障害者雇用を推進している企業に対しては、さまざまな助成金制度も設けられており、国主導で障害者雇用実現に向けた取り組みが推進されています。

【目標4】合理的配慮の提供や教員研修の改善

SDGsの目標4「質の高い教育をみんなに」達成に向けて、障害者教育の充実や教員研修の改善に向けた取り組みが行われています。

たとえば、障害者の特性に合わせた支援や合理的配慮、障害者教育に関する専門的な知識を有する教員や支援員の確保、教育研修の充実などです。

具体的には、障害者教育に必要な施設や設備の整備などが推進されています。

誰もが利用しやすい「ユニバーサルデザイン」を取り入れた設計もそのひとつです。

ユニバーサルデザインとは、障害の有無や年齢、性別、文化などにかかわらず、人々が利用しやすい都市や生活環境を提供するための考え方のことをいいます。

障害はそれぞれ個別に教育支援計画が必要になるため、個別の指導計画に対応できる柔軟な教育課程の編成や、教材などの配慮も必要になります。

また、教員研修や養成の改善も推進されており、支援員だけでなく、すべての教員が特別支援教育に関する基礎的な知識や技能を身に付けるための研修の実施も欠かせません。

国主導で障害者教育に関する指針を示すことで、各自治体や教育機関における活動のさらなる加速化を促しています。

【目標10】差別解消の推進

SDGsの目標10「人や国の不平等をなくそう」で定められている差別解消に向けた取り組みとして、国は2016年に「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」を制定しました。

この法律は、不当な差別的取り扱いの禁止や、それぞれの障害者に寄り添うための合理的配慮の提供などを含め、差別解消に向けた取り組みを推進するものです。

法律の制定を受けて、各自治体では相談窓口の設置や広域担当支援員の配置、障害者差別解消に向けて行った取り組みの開示などを行っています。

【目標11】バリアフリー化の推進

SDGsの目標11「パートナーシップで目標を達成しよう」達成に向けた取り組みとして、公共交通施設や建築物におけるバリアフリー化の推進が行われています。

例えば、以下のような事例があります。

【鉄道】

  • 多機能トイレ
  • 展示ブロック
  • 障害者対応券売機
  • 幅の広い改札口

【建造物】

  • エレベーター
  • 渡り廊下
  • スロープ

特に旅客施設や車両などのバリアフリー化は着実に進展しているといえます。

さらなるバリアフリー化を実現するために「心のバリアフリー」に関する施策や認知拡大にむけた取り組みも推進されています。

心のバリアフリーとは、あらゆる背景や心身の特性、考え方をもつ人が相互理解を深めて尊重し合い、支え合うことを指すものです。

心のバリアフリー化を実現するためには、国民の理解と協力が必要です。

障害者に対する理解を深め、共感や相互支援を促進するための研修や教材提供などが行われています。

まとめ

SDGsで定められている目標は、世界中にあるさまざまな課題の解決に向けた取り組みの「指針」となるものです。

環境、経済、格差是正、差別解消などに加えて、障害者に関連する課題の解決も進められています。

国や自治体の取り組みを知り、私たち自身も障害者が抱える課題に関する知識を身に付けていけば、障害の有無や性別、考え方の違いなどにとらわれない相互支援につながるでしょう。

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GREEN NOTE編集部

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