安全な水を守る取り組みは世界中に広がっている!一人ひとりができること
温暖化や砂漠化などの影響によって、世界各国で安全な水の確保に関する課題が問題視されています。
ケニアやシリアなどでは、水不足による飢饉や不景気だけではなく、水資源を争いの種とした紛争も発生しています。
さらにイエメンでは、紛争による影響で都市の水道が破壊され、安全な水の確保がほとんど不可能になりました。
その結果、水不足による公衆衛生のリスクが高まり、コレラなどの感染症を引き起こしたといわれています。
電気やガス、食糧、暖房設備のほか、安全な水が確保できず、雨水や雪、川の水などを沸かして使用しているところもあります。
では、水道設備が発達している近代社会で、なぜ水不足が起き、安全な水を確保できない国や地域が発生するのでしょうか。
今回は、世界における水不足の原因や課題、解消に向けて進められている取り組みの例について紹介します。
安全な水への取り組みとは?世界には水不足の問題がある
安全な水へのアクセスを容易にするために、世界ではさまざまな取り組みが行われています。
しかし、水不足に悩む国や地域があるのも現状です。
安全な水を確保するために、私たちはどのような取り組みをするべきなのでしょうか。
まずは、世界における水不足の現状や課題、解決に向けて進められている取り組みについて紹介します。
SDGsの安全な水への取り組み
世界中のあらゆる地域の人が安全な水へ容易にアクセスできるように進めていくために意識すべき目標は、SDGsです。
とくに、SDGsの目標6では「安全な水とトイレを世界中に」を目標に掲げており、取り組み内容は安全な水の確保や設備の整備、水資源に関するものまでさまざまです。
SDGsの目標6には、2030年までに誰もが安全な水が飲めるようにすること、水源の管理や水資源利用の効率化など、8つのターゲットが盛り込まれています。
具体的には、開発途上国の安全な水や衛生に関する国家間の支援促進、水と衛生管理向上のために地域参加を促すなどがあります。
取り組みの理由や水資源の悩み
世界規模でさまざまな水の安全性に関する取り組みが行われている背景には、世界的な水不足の深刻化があります。
要因としては、人口増加や気候変動、紛争、環境汚染などが挙げられ、是正を急がなければさらなる水不足の深刻化に拍車をかける事態となるでしょう。
JICA(独立行政法人 国際協力機構)によると「2030年には水需要量に対して水資源量が40%不足する」との予測もあります。
また、2020年時点で安全な水へのアクセスが困難な人は、世界中で約20億人いるとの指摘もあり、とくに都市部ではなく地方部での深刻化が顕著です。
出典:「持続可能な水資源の確保と水供給」(独立行政法人 国際協力機構)
開発途上国が抱える水に関する課題には「汚染された水による病気」「子どもの水汲みによる児童労働の慢性化や教育機会の損失」などがあります。
つまり、安全な水へのアクセスが困難になることは、健康被害の発生による疾病の蔓延や教育機会の損失による貧困の連鎖などを生む原因になるのです。
世界中で安全な水の確保をすべての人に行き届くよう進められている取り組みには、健康で安全な暮らしの維持や貧困の連鎖を断ち切る狙いもあるといえるでしょう。
安全な水への取り組みにはどのような活動があるの?
世界中で安全な水の確保に向けてさまざまな取り組みが行われていますが、日本国内ではどのような活動が行われているのでしょうか。
ここからは、国内の安全な水への取り組みや活動を行っている団体や企業を紹介します。
独立行政法人国際協力機構(JICA)
独立行政法人国際協力機構(JICA)では「地域の水問題を解決する実践的統合水資源管理」の活動を行っています。
活動を通じて、2030年までに10以上の地域で水不足や関連する水問題の解決を目指しており、科学的データの蓄積や責任主体の育成などが取り組みの一例です。
また「水道事業体成長支援(都市水道)」も行っており、水道事業体の成長を促進させるための課題解決や業態改善も目指しています。
効率の良い水道事業運営の構築、事業運営に必要な収入源や投資の確保など、水道事業としての運営や経営改善にも積極的です。
水道事業体成長支援では、2030年までに10万人以上の人材育成と3,000万人以上の給水人口の増加を目指して活動を進めています。
株式会社LIXIL
株式会社LIXILの安全な水への取り組み「みんなにトイレをプロジェクト」では、同社のシャワートイレ1台購入ごとに途上国へのトイレ(SATO)寄付を行う活動に取り組み、40万台にのぼる寄付実現につながっています。
また、ユニセフとのパートナーシップ「MAKE A SPLASH!」を通じて、シャワートイレの売上の一部を寄付し、安全かつ衛生的なトイレを設置するためのインフラ整備や衛生教育などに活用されました。
こうした活動が評価され、第2回ジャパンSDGsアワードではSDGs副本部長(外務大臣)賞を受賞しました。
「MAKE A SPLASH!」では、株式会社LIXIL以外にもさまざまな企業や著名人も参画しており、世界中の衛生課題解決に日々取り組んでいます。
安全な水や水資源を守る取り組みで私たちができることは?
安全な水や水資源を守る取り組みは、国や自治体、団体、企業だけでなく、私たち個人にもできることがあります。
とくに先進国へはテクノロジーを使用したアクションが求められており、私たち一人ひとりが知識を身に付けることが欠かせません。
では、具体的にどのような方法で安全な水の確保や水資源を守る取り組みに協力していけば良いのでしょうか。
ここからは、水問題の解決につながる技術や、個人でもできるアクションについて解説します。
高い日本の水資源技術
日本の水資源技術は、世界でも高水準です。
代表的なものとして、海水淡水化技術や下水の浄化処理技術、生物浄化法(EPS)などがあり、これらの技術は世界の水問題改善にも貢献しています。
日本の高い水資源技術を世界に広げるため、海外に専門家を派遣するなどして積極的に技術面での支援も行っています。
また、海外から研修員の受け入れや、現地調査、資金面での支援なども行っており、世界保健機構(WHO)などと連携しながら、世界に広める活動を進めています。
私たちは、日々の暮らしの中で高い水道技術を利用しており、技術に頼るだけでなく技術を活用した節水や水資源の保全に目を向ける必要があります。
水資源を守る水の3R
水資源を守るためには「水の入口」である森の手入れが重要です。
森を手入れして森林保全に努めることで、雨や雪がきれいな地下水となって流れるためです。
森林には貯水機能があり、洪水の抑止や渇水による水不足を防ぐ役割も担っています。
しかし、森林が蓄えられる水の量には限度があり、限りある水資源を有効活用するためには、大量に水を消費する工場などでの節水も大切です。
節水には、使う水を減らす「リデュース」、繰り返して使う「リユース」、再利用する「リサイクル」の「水の3R」が重要です。
一人ひとりができる取組み
水を守るための取り組みは、私たち一人ひとりが個人でも自分のこととして課題に向き合い、生活することも大切です。
たとえば、以下のような取り組みが有効です。
- 食器や調理器具について油を拭き取る
- 企業へ団体への寄付活動をおこなう
- 節水グッズを活用する
食器や調理器具についた油を拭き取って流しに流さないように注意することであれば、個人でも取り入れられます。
安全な水への取り組みをしている企業や団体の活動に寄付し、その企業が販売している商品やサービスを購入するのも支援につながるでしょう。
そのほか、身近な節水グッズを活用するのも節水に効果的です。
100円均一などで購入できる広範囲に水が広がる「スイング蛇口」や、お風呂の保温に使用できる「アルミ保温シート」などがあります。
また、お掃除グッズでは、ペットボトルにつけて散水量を抑えながら掃除ができるブラシなども販売されているので積極的に活用してみましょう。
節水は、環境保全につながるうえに水道光熱費の節約にもつながります。
まずは身近なところから、少しずつできることをはじめてみてはいかがでしょうか。
まとめ
安全な水を確保し、持続可能な水資源の利用を推進するためには、私たち一人ひとりが関心をもつことが大切です。
身近な節水や環境対策を生活の中に取り入れながら、企業や団体、国の施策を支援していきましょう。
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