生物多様性

森林破壊が与える影響とは?いま私たちにできること

いま、地球上では恐ろしいスピードで森林破壊が進んでいます。2019年には、1分間におよそサッカーコート30面分にも相当する森林が失われました。

樹木をはじめとする植物には二酸化炭素を吸収し、水と空気を浄化する重要な役割があります。

森林が減少し続ければ人間や動物に多大な影響を及ぼし、すべての生物の生息が危機に陥ります。

私たちはこれ以上の森林破壊を食い止める努力を早急に行わなくてはいけません。

この記事では森林破壊の現状や影響、世界の取り組みやできることを解説していきます。

森林破壊について具体的に学ぶことで、森林破壊を食い止める取り組みを今日からでも行うことが可能です。

自分たちに何ができるのかを考えるきっかけとしてください。

森林破壊の現状

世界の森林面積は、1990から2020年の30年間で1億7800万haも消失しました。

これは日本の国土面積の約5倍に相当します。

なぜこれほど広大な面積で森林は失われているのでしょうか。

原因はさまざまにありますが、ポイントとなるいくつかの原因を解説します。

土地利用の転換

世界の人口増加に伴い、農地や牧場などに土地を利用転換するために森林が開拓されています。

また利益優先主義の企業開発によるレジャー地やゴルフ場建設のための森林破壊も多く行われています。

森林火災

森林火災の原因は人為的なものと自然発生的なものがありますが、近年は気候変動による降雨減少や気温上昇のため、地域によっては非常に森林火災が発生しやすくなったと言われています。

2019年のオーストラリアの森林火災は、甚大な被害を及ぼし、広大な森林が失われ多くの動物たちを死に追いやりました。

違法伐採・焼畑農業

違法伐採は国が定めた法に違反する伐採ですが、利益を求める違法業者が後をたたず、大量の森林の伐採を行っています。

また焼畑農業に関しては、東南アジアの非伝統の焼畑農業が問題視されており、本来の焼畑農業の方法ではない自然回復の追いつかないスピードで伐採・焼却するため、多くの森林が失われています。

森林破壊が与える影響とは?

森林破壊が与えるさまざまな影響について、以下の3つにポイントを置きながら解説していきます。

  • 地球環境への影響
  • 動物への影響
  • 人類 への影響

地球環境への影響

出典:気候変動適応情報プラットフォーム「熱帯林のはたらきと、火災などが及ぼす影響」

森林は地球の環境や生物にとって重要な役割を多く担っています。

植物は光合成を行うときに、二酸化炭素を吸収し酸素を排出しますが、特に熱帯雨林は、大気から多くの二酸化炭素を吸収し有機物を循環させています。

二酸化炭素を吸収し蓄積する森林が減少することは、地球温暖化をさらに加速させることになりかねません。

植物には、大気の汚染物質を浄化する機能もあるため、森林破壊が進めば大気の汚染が進み酸性雨も増加するでしょう。

また森林は川を通じて、海ともつながっています。

昔から「豊かな森が海を豊かにする」と言われてきました。

森の栄養素が海に流れ込み、沿岸部の生態系を豊かに育むからです。

森林破壊が進むことは、海の環境にも多大なダメージを与えます。

動物への影響

豊かな森林は多くの生物の命を育みます。

森林が破壊されることは多くの生物の減少や絶滅を招きます。

現在地球上では1年間に約4万種の生物が絶滅していると言われており、これは地球の歴史始まって以来の危機的状況です。

森林には多くの植物が生育し、その植物を住処とし果実を餌とする多くの動物や昆虫が生息しています。

これらの生物たちは多様な食物連鎖のなかで、密接な関係を築いており、それらを保全するのに森林は重要な役割を担っているのです。

熱帯雨林は地球上の全生物の80%近くが生息しています。

現在のスピードで熱帯雨林の消失が進んでしまうと今後30年間で300万から600万種の生物が絶滅する可能性があると言われています。

出典:環境省「世界の森林を守るために」

出典:国立環境研究所「森林破壊が野生生物種の減少に及ぼす影響の機構に関する研究」

下記記事では、森林破壊が動物に与える影響について解説しています。

森林破壊が動物に与える影響と森を守る取り組み

人類への影響

森林破壊は人類にも大きな影響を及ぼします。

そのひとつは未知の病原体による疫病や感染症の拡大の危機です。

森林が破壊されることで、本来森林の奥深くにいるはずの未知のウィルスや細菌が出現します。

それらが動物を経由し人が接触することで、新たな病気が蔓延する可能性があります。

動物由来の感染症の拡大には森林破壊が深く関わっていることを認識しなくてはいけません。

また貧困にあえぐ途上国では、森林資源をめぐる紛争も多く起こっています。

東南アジア諸国の豊かな森林資源は世界中の国で利用されるため、利益をめぐり各国で紛争が勃発しており、利権をめぐって民族紛争まで起きる状況です。

森林破壊による食糧危機にも目を向けなくてはいけません。

森林伐採により、農地や牧場が増えることで食料は増産されるように感じますが、本来農地は休耕期間に土壌の力を再生することで次の農産物を育成します。

しかし慢性的に食糧が不足している地域は土地が回復する前に次の農作を行うため、どんどん土は衰え、ろくに農産物は収穫されません。

そのため、新たに農地を作り森林を破壊する…という悪循環に陥っているのです。

世界的にそのような事態が拡大すれば、食糧生産できる土地がなくなる恐れもあるのです。

そもそも住まいや食べるものを森に頼り、生活する人々の存在もあります。

森林破壊はこのような人たちの生活を身勝手に奪っていることを認識しなくてはいけません。

出典:WWF「今日、森林破壊を止めるためにできること」

森林破壊に対する世界の取り組み

ここからは森林破壊を食い止めるために、世界でどのような取り組みが行われているのかを見ていきましょう。

2021年にはCOP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)がイギリスのグラスゴーで開催され、「グラスゴー気候合意」が採択されました。

「パリ協定」に基づいた気候変動対策についてさまざまな論点がまとめられたのです。

世界の森林対策として「森林・土地利用に関するグラスゴー・リーダーズ宣言」では以下の6つの内容に共同で取り組むことが示されました。

  1. 森林及びその他の陸域生態系の保全とその回復を加速
  2. 持続可能な開発や持続可能な生産・消費を促進し、森林減少や土地劣化を引き起こさない貿易や開発政策を促進
  3. 収益性の高い持続可能な農業開発や森林の多面的価値の認識などを通じ、脆弱性の軽減、農村の強靭化や生活向上の実現
  4. 持続可能な農業にインセンティブを与え、食料保障を促進し、環境に役立つ農業政策・プログラムを実施し、必要に応じて再設計
  5. 持続可能な農業、持続可能な森林経営、森林の保全と回復を可能にするための官民の多様な資金源からの資金・投資を大幅に増加
  6. 森林の損失・劣化を好転させるための国際的な目標と、その実現に必要な資金の整合を促進

出典:林野庁「森林・林業分野の国際的取組」

SDGs目標15のターゲット

国連の提唱するSDGsでは、森林破壊問題に関連したターゲットが設定されています。

SDGs目標15「陸の豊かさも守ろう」です。

「陸域生態系の保護、回復、持続可能な利用の推進、持続可能な森林の経営、砂漠化への対処、ならびに土地の劣化の阻止・回復及び生物多様性の損失を阻止する」がテーマであり、12個のターゲットで構成されています。

森林破壊を食い止めるための努力や目標が具体的に示されています。

UNCEDでの森林原則声明

「森林原則声明」は1992年ブラジルで開催された環境に関する初の大規模な国際会議「UNCED(国連環境開発会議)」で採択されました。

「森林原則声明」の前文には「森林問題は、持続可能な基礎の上に立った社会・経済発展への権利を含む環境と開発の全ての問題及び機会と関連する」とあり、森林の保全に対して取り組むべき15項目の内容が規定されています。

ただしこの声明は先進国と途上国において意見の相違があったため、最終的には法的拘束力のない権威ある声明文に落ち着いています。

出典:林野庁「森林・林業分野の国際的取組」

持続可能なパーム油のための円卓会議RSPO

パーム油は、西アフリカ原産のアプラヤシの実からとれる世界で最も消費されている植物油です。

安価で用途が多彩なため、パーム油の需要は1990年代から急速に高まりました。

それに伴いパーム農園の開発が拡大し、森林伐採や生物多様性の消失、強制労働などの人権侵害が社会問題として指摘されるようになりました。

RSPOは正式名称「Roundtable on Sustainable Palm Oil」の略。

パーム油に関わるさまざまな問題の解決を目指し、持続可能なパーム油の生産と利用を促進することを目的とした非営利組織です。

「カルビー」や「LION」など、日本の企業もRSPO認証パーム油の使用を進めています。

森林破壊を止めるために今からできること

森林破壊を食い止めるために、今からでも私たちにできることがあります。

ここでは以下の3つの具体的な方法をご紹介していきます。

  • 紙の消費量を減らす
  • 森林認証マークがついた商品を選ぶ
  • エコマークのついた商品を選ぶ

紙の消費量を減らす

ティッシュペーパーをはじめとして私たちの生活には、紙を多く使用します。

しかし以下のような点に気を付けることで紙の使用量を減らすことが可能です。

このような身近な取り組みも森林保全に貢献します。

  • 紙コップや紙皿などの使い捨てを減らす
  • 再生紙を積極的に利用する
  • 過剰包装をしてもらわずにマイバッグを使う
  • 割り箸の消費量を減らすためにマイ箸を持ち歩く

紙製品の使用については、他にも見直せる部分がないか、ぜひ考えてみましょう。

森林認証マークがついた商品を選ぶ

違法伐採された木材や木材製品を買わないことや、木材を購入するときには、環境負荷の数ない製品を購入することも大切です。

政府が制定したグリーン購入法では、木材や木材製品の「合法性」や「持続可能性」を確認するために以下の3つのガイドラインが定められています。

  1. 森林認証(PEFC、FSC、SGEC等)により証明を確認する方法
  2. 業界団体の認定を受けた事業者が証明する方法
  3. 事業者独自の取組により証明する方法

エコマークのついた商品を選ぶ

日常生活で使用するトイレットペーパーやコピー用紙はエコマークの付いたものを選びましょう。

エコマークは国際標準化機構の規格ISOに準拠して運営されているもので、商品のライフサイクル全般に渡り、環境負荷が少なく環境保全に役立つと認定された商品につくラベルです。

古紙パルプ配合率100%の商品などに付与されています。

多くのエコマーク商品はグリーン購入法の「判断の基準」を満たしているため、エコマークがついた商品を積極的に購入することで、森林保全に貢献ができます。

下記記事で、エシカル消費のために知っておきたいマークを紹介しています。

【厳選14選】エシカル消費のマークや商品を解説!

まとめ

森林破壊の現状と地球環境や人類に及ぼすさまざまな影響。そして世界で行われている取り組みと私たちにできることを解説しました。

これほどまでに森林破壊が進んでいることに驚き、落胆した人も多いのではないでしょうか。

しかし私たちは今日からでも森林保全についての取り組みを行うことができます。

ご紹介した通り身近に取り組めることはたくさんあります。

一人一人の小さな一歩が森林保全への大きな力となるでしょう。

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