少しずつ進むダイバーシティ経営とは?改めて考えるメリットと注意点
メリットや注意点について考えてみましょう。
ダイバーシティ経営とは?
ダイバーシティ経営という言葉は、10年ほど前に誕生したこともあり「どこかで聞いたことがある」という印象の方が多くなっているのではないでしょうか。
では、具体的にどのようなことを意味するのかを説明できますか。
経済産業省によるダイバーシティ経営の定義
日本において「ダイバーシティ経営」という言葉が広がるようになったのは、2010年頃からです。
経済産業省を筆頭に、これからの日本において「ダイバーシティ経営が必要不可欠だ」と推進されるようになりました。
そんな経済産業省による「ダイバーシティ経営」とは「多様な人材を活かし、その能力が最大限発揮できる機会を提供することで、イノベーションを生み出し、価値創造につなげている経営」とあります。
今まで日本においては「日本人」「主に男性」と似たようなプロフィールの人たちが一緒に仕事をすることが多くありましたが、この点に関して見直しをしましょうというのがダイバーシティ経営の第一歩です。
ダイバーシティってどういうこと?
ダイバーシティというカタカナが少しわかりにくいですが、経済産業省によると 「多様な人材」とは、性別、年齢、人種や国籍、障がいの有無、性的指向、宗教・信条、価値観などの多様性だけでなく、キャリアや経験、働き方などの多様性も含みます。
「能力」には、多様な人材それぞれの持つ潜在的な能力や特性なども含みます。
ダイバーシティ経営と聞くと、「女性が活躍できるように」、「外国人の雇用を増やす」といった点が目立ちます。
しかし、本当の意味でのダイバーシティ実現には、女性・外国人などの見た目の違いだけが対象ではありません。
目に見えない「心の中のこと=宗教や大切にしていること」なども、それぞれ違うことを理解し、認め合う必要があります。
ダイバーシティとインクルージョンの違いは?
「ダイバーシティ=多様性」という言葉と同じころから、「インクルージョン」という言葉もあちこちで耳にするようになってきました。
インクルージョンとは、日本語にすると「包括・一体性」と言った意味を持ちます。
これもまた聞き慣れないカタカナ語なので分かりにくいですが、それぞれ異なる個性を持った人たちを「お互い理解し合いながら、一丸となって」というような意味で使われることが多いです。
求められるのはダイバーシティ&インクルージョン
「ダイバーシティ」と「インクルージョン」。
あまり聞き慣れない二つの言葉が独り歩きしている感がありますが、ダイバーシティ経営において重要なのは「ダイバーシティ&インクルージョン」の両方です。
まずは、企業における人材の「ダイバーシティ=多様化」を進める必要があるという点。
ただし、ダイバーシティだけに着目してしまうと、女性社員や外国人スタッフの数を増やすといった「形だけの対応」になってしまいます。
そんな時に大切なのが「インクルージョン=お互いを尊重して、一丸となる」というポイントです。
考え方や仕事の進め方などが異なるという背景をお互いが尊重できるからこそ、それぞれの個性を生かし、アイディアを出し合い、チームとして成長していくことが可能となります。
ダイバーシティ経営を進めるべき意義とは?
日本において、すでに10年以上話題になっている「ダイバーシティ経営」ですが、そもそもなぜダイバーシティ経営が求められているのでしょうか。
改めて考えてみましょう。
メリット1:優秀な人材を見つけるため
日本では「新卒一括採用」という仕組みが長く定着していて、新卒以外の人材探しに力を入れられていなかったという点があります。
もちろん若い働き手を雇うということも大切ですが、他社で経験を積んだ中途採用や、海外から異なる強みをもった外国人人材の採用は、まだあまり積極的でなかったといえるでしょう。
ゼロからすべてを教える必要のある新卒だけでなく、経験値やスキルを持った優秀な人へのアクセスを増やすためにも、ダイバーシティ経営の考え方を取り入れることは意味があります。
メリット2:優秀な人材の離職率を減らすため
令和の時代においても相変わらず「一つの会社に40年働き続ける」という文化が日本には根付いています。
すべての社員が同じ時間にオフィスに向かい、同じ空間で働くというスタイルは、コロナ禍の対応で少し崩れましたが、それでもやはり「当たり前」なのではないでしょうか。
すると、何らかの理由(自身の体調や、出産・育児、親の介護など)で、「当たり前」が出来なくなった人は、肩身の狭い思いをしながら時短などで働くか、仕事を辞めるしかありませんでした。
せっかくの優秀な人材が、一時の事情により退職してしまうというのはとてももったいないことです。
働き方のダイバーシティを受け入れることで、優秀な人材の離職率を下げることにも繋がります。
メリット3:ビジネスチャンスを拡げるため
一つの企業の中でずっと働いていると、社員同士の考え方が似通ってきてしまうものです。
その結果、斬新なアイディアが生まれなくなったり、なんとなく「守り」に入った仕事スタイルになってしまうことが多いです。
ダイバーシティ経営を進めることで、人種や国籍、年齢が異なる人たちが定期的にチームに新しく入ってくるようになると、新しい発想が生まれたり、考え付かなかったようなビジネスチャンスに繋がることもあります。
メリット4:企業の効率・生産性UPのため
一つの会社に40年勤めあげるスタイルだと、確かに社内のルールなどは徹底して身に付くかもしれません。
その一方で「今までこうやってきたから」というような、惰性で続いている雑務が永遠に受け継がれていたり、場合によっては良くない風習が「当たり前」として広がっていることも。
定期的に新しい人材が社内に加わることで、仕事のスタイルに対してメスを入れることができます。
また、別の会社での効率的な方法などをもたらしてくれるなど、仕事の効率や生産性UPに繋がります。
メリット5:社外からの評価UPのため
比較的大きな企業においては、採用プロセスの変更など人事面での切り替えが進んできています。
このような企業は、会社の体質をどんどん改善しようと試みていると評価され、社外、とくに投資家からポジティブな評価を受けることに繋がります。
避けては通れない、会社のダイバーシティ化に対して、いまだに躊躇している会社と、積極的に取り組み始めている会社があれば、後者の方が魅力的に見えますよね。
日本においてダイバーシティ経営が必要なワケ
ダイバーシティ経営が会社にとって大切というをご紹介してきました。
では、特に日本の企業において、取り組む必要があるのはなぜなのでしょうか。
世界のグローバル化が進んでいるから
言わずもがなですが、世界のグローバル化は着々と進んでいます。
スマホですぐに地球の裏側のニュースも見られるし、コロナ禍で外国人観光客が減っているとはいえ、飛行機に乗ればどこへでも行ける時代です。
そんな中で、「一つの企業で40年働いている日本人(しかも、主に男性が多い)」だけが働く会社は、アイディアの発想力やプロジェクトの推進力などの競争力をつけることは難しくなってきています。
幅広い人たちの声を聴き、国内に限定することなく幅広いマーケットに、果敢に攻めていく必要がある時代です。
消費者側のニーズも幅広くなっているから
日本だけがマーケットという会社であっても、消費者側のニーズがどんどんと多様化してきていることを実感しているのではないでしょうか。
お客さんの中には、人種や国籍、宗教などが異なる方々も着実に増えてきています。
同じ日本人であっても、「日本人だから」と一括りにはできない時代です。
だからこそ、会社側も「似たような人たち」を集めるのではなく、より多くの声が社内からも聞こえてくるような環境作りが必要です。
少子高齢化が進んでいるから
日本は少子高齢化が進んでいることで、残念ながら人口が減るのは避けられない事態に陥っています。
つまりは、日本だけを相手に仕事をしていては、どんどん顧客が減ってしまうということです。
これから先、企業として競争力をつけて生き残っていくには、日本だけを見て仕事をしていてはいけません。
海外マーケットも視野にいれながら、仕事を広げていくにあたり、多様な仕事経験を持った優秀な人たちをチームに加えていくことは、必要不可欠と言えるでしょう。
ダイバーシティ経営を進める上での注意点とは?
ダイバーシティ経営が大切なのはわかった!と思っても、明日から現場に取り入れられるという簡単なものではありません。
ダイバーシティ経営を進める上で、注意したいポイントをご紹介します。
新しい経営方針への混乱や誤解
「ダイバーシティ経営」「ダイバーシティ&インクルージョン」という言葉だけが独り歩きしてしまい、経営陣、人事、現場側の全体が混乱に陥るケースが多いです。
まずは、マネジメント層がしっかりと「求める新しい経営方針」を練り上げ、しっかりとしたイメージを持つことが大切です。
場合によっては、過去の考え方と摩擦が生まれることもあります。
そんな時にこそ、「新しい経営方針」を明確にしておくことで、現場側の混乱時に指針となります。
勤務環境や新評価方法への対応遅れ
大きな方針が打ち出されるも、制度上何も変わっていない…というのでは、「形だけダイバーシティ」に陥ってしまいます。
従来の採用プロセスとは異なる採用方法を検討したり、より柔軟な働き方に対応できるような勤務体系に切り替えるなど、大きなてこ入れが必要となることも多いです。
しかし、制度や仕組みが変わらずして、ダイバーシティは成り立ちません。
社員の理解不足による形だけダイバーシティ
「ダイバーシティって女性の活躍の場を広げるってことでしょ?」など、ダイバーシティ経営への理解が進んでいないケースも多いです。
「女性」「外国人」にフォーカスが当たりがちですが、ダイバーシティ経営はそれだけではありません。
マネジメント層が理解を深めるのはもちろんのこと、社員全員が研修などで目的やメリットを理解する必要があります。
一人一人が「自分にも関係すること」として理解しない限り、「誰かのためのダイバーシティ」という他人事感は払拭できません。
企業ごとに導入レベルが異なる現状
推進が進められ始めて10年以上経つ「ダイバーシティ経営」ですが、依然として積極的に広がっているとは言えない現状があります。
一般社団法人日本能率協会が2021年に実施した調査によると、『従業員規模別の比較として、大企業において、「女性リーダーの育成」や「ダイバーシティの理解」の比率が中堅・中小企業よりも高めになっているという結果も見られました。』とあります。
大企業の方が投資家へのアピールもあり、積極的に女性管理職やLGBTQ+や障がいのある方々の雇用が進んでいるということです。
それはそれで喜ばしいことではありますが、中小企業の方でも進んでいかないことには、相変わらず「一部の企業がやっているダイバーシティ経営」という印象が続いてしまいます。
次の10年でどのようにより多くの企業に広がっていくのかがカギと言えるかもしれません。
引用:『日本企業の経営課題2021』 調査結果速報【第7弾】 研修・人材育成において重視しているテーマ|日本能率協会のプレスリリース (prtimes.jp)
ダイバーシティ経営は日本企業が避けて通れない道
「ダイバーシティ経営」とは、経済産業省の定義によると「多様な人材を活かし、その能力が最大限発揮できる機会を提供することで、イノベーションを生み出し、価値創造につなげている経営」のことを指します。
今までの似たような人たちが、40年間同じ会社で働き続けるというスタイルは、グローバル化や顧客のニーズの広がりなどによって揺らぎ始めています。
日本企業が、厳しい社会で生き残っていくためにも、そしてより活躍の場を広げるためにも「ダイバーシティ経営」は避けては通れない道と言えるでしょう。
現時点では大企業の方から取り組みが進み始めているという状況ですが、これから先は中小企業であっても、積極的に取り組む姿勢が求められています。
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