見た目が9割?SDGsに関わるルッキズム「外見至上主義」にある社会問題
「ルッキズム」という言葉をご存知でしょうか。
現在世界中で「ルッキズム(外見至上主義)」は差別を生んでしまう、間違った思想であると考えられています。
とはいえ、人の外見や見た目で人格判断はいけない事とは分かっていても、第一印象で相手を判断することは少なくありません。
現実社会では「美人は得しそう」「体重は軽い方がいい」と大多数の人が外見至上主義的な思考にあるといえるでしょう。
また、悪気がある訳ではなく純粋に褒めているつもりが相手を傷つけてしまい、差別を生んでしまうことがあります。
容姿について軽々しく評価してしまうことで相手を傷つけてしまうことがあることがあると自覚する必要があるでしょう。
この記事では「ルッキズム」について深掘りしてご説明いたします。
SDGsに関わるルッキズムとは?
ルッキズムとは、人の外見・身体的な特徴で人を判断することです。
1970年代のアメリカで肥満を理由に差別することに対しての抗議運動の時に使用されたことが始まりとされています。
ルッキズムの語源は、Looks(見た目・容姿)+ism(主義)を合わせもつ言葉で、美しい見た目をもつ人ほど、学校や職場の人間関係において強い影響力をもち優遇される状況を指し、容姿を理由として人を差別することです。
日本語では「面食い」という言葉が近いと思いますが、面食いとは容姿の良い人を好むことで、容姿のおとる人に対しての差別をすることではありません。
「外見至上主義」とも言われているように、外見が全てだと外見で人を判断することは間違いです。
「ルッキズム」の思想は、差別を生んでしまうことがあると認識することが大切です。
ルッキズムとSDGsの関係性
ルッキズムの問題は、SDGs目標10「人や国の不平等をなくそう」に差別を撤廃することも含まれています。
差別は性別・年齢・人種・民族・宗教など様々な理由で世界的に起きています。容姿が劣る人を蔑みの対象として揶揄することが起こりました。
東京五輪・パラリンピック開閉会式の企画演出者が日本のタレントを豚に見当てる提案をしていた問題をご存知でしょうか。
広告業界の真っ只中で活躍している方が、未だにこんな考えをしていることに呆れている方は多いと思います。
見た目で個人を判断し、侮辱するような問題がSNSを中心に話題となりました。
なぜルッキズムが起こるのか
ルッキズムが起こる原因は、人は「こうあるべきだと」いう間違った思想の押しつけによる偏見だと思います。
テレビ・YouTube・ネット配信・SNSなどの情報が頻繁に飛び交う現在では、美に対する基準がすべての人に影響を与えるようになりました。
日本では「肌がきれいであること」「体格がスリムであること」「脚が長いこと」などがいつの間にか美の基準となり、SNSでは自分の顔を加工した画像を利用し「いいね」やフォロワーを多くもらうことがステータスとなりつつあります。
自分の本来の顔を見せず、びっくりするような大きい目と透き通るような白肌、細くながい顎、すらっとした高い鼻などどう見ても加工している画像を当たり前のように投稿しています。
この美の基準が自分のためだけではなく、人を差別するための基準に知らず知らずになってしまうことが「ルッキズム」差別を生む要因ではないでしょうか。
美の追求は、人間の持つ生命力の一つだとも言えます。
男性も女性も輝いて生きていきたいと本能で美を意識して生活されており、どんな方でも自分らしい美しさがあります。
しかしその美の意識や追求が過度になると、自分を傷つけることも少なくありません。
過去にアメリカの有名音楽グループでカーペンターズというグループがあり、そのメンバーのカレン・カーペンターという方は摂食障害が原因で命をおとしました。
摂食障害になった原因は、メディアに「太っちょ」と書かれたことを気にしてダイエットを始めたこと。
摂食障害の前の体系は、身長約163センチ、体重66キロだったそうです。
一般的には障害を起こすほど太っているとは思えません。
しかし、一般人と違いメディアに取り上げられることも多い彼女は、必要以上に容姿を気にするように。
「絶対に痩せて無くてはいけない」
「体重が増えるなんてあってはならない」
と強く思い込んでしまい、ダイエット始め体重は41キロまで減ってしまいました。
やがて体調をくずし、無理なダイエットにより心不全でお亡くなりになりました。
過度の摂食障害と治療により、心臓にかなり負荷がかかった摂食障害からの心不全と言っても良いでしょう。
カレンの美しい歌声はわずか32歳の若さで失われました。
こういった美への過度の追求が自分や周りの人を傷つけることがあります。
人は誰しも美しい外見を求めてしまう
人はどうしても外見や見た目の美を求めてしまう本能があります。
人間の本能で人と人との第一印象が、そのあとの関係や評価・好感度におおきく影響を与えることも少なくありません。
第一印象で相手を評価してしまうことは、メラビアンの法則という研究で明らかになっており、出会ってからほんの数秒で相手を評価します。
初対面の方と出会って相手を判断する要素を調べた結果では、視覚からの情報が「55%」・聴覚からの情報が「38%」・言語からの情報が「7%」となっています。
このように会話して相手の考えをきかないと相手の事が分からないが、目から入る情報が人を判断する割合の半分を占めています。
この研究では、見た目が良くて感じのよい挨拶ができれば、相手に与える好感度はほぼ上昇するということも示されています。
この様に人間は外見・容姿で相手を判断してしまう生き物なのです。
- 見た目がいいから人気があり皆から好かれているのではないか
- あの人は筋肉がなさそうだから運動音痴なのではないか
と、真実を知る前に自分が思う印象で相手を評価してしまいます。
この人間の本能が知らず知らずのうちに、美しい外見を求めてしまう要因です。
日本人の容姿コンプレックスは世界一
日本人は世界一自分の見た目に自信がないという調査結果があります。
ユニリーバのビューティーケアブランド「ダヴ」に掲載された「少女たちの美と自己肯定感に関する世界調査(2017年)」では、日本の女性10代の93%が自分の容姿に「自信がない」と答えていて、次に中国が65%、イギリスが61%の順になっています。
とくに10代の日本人女性は美のプレッシャーを感じ、48%の人が自分の容姿に自信がないからやりたいことをあきらめたことがあると答えていました。
若い世代になるにつれ「すべての女性は美しいから自分自身も美しくなければいけない」など、美へのプレッシャーやコンプレックスを感じています。
さらに最近では整形手術が流行り、美しくなるために顔にメスを入れる若者が急増しています。
コロナ禍の2020年以降は小中学生の美容整形が増え、友達に容姿を指摘されたことがきっかけで手術を選択するケースも多いようです。
一度整形手術をすると今まで気にならなかった他の箇所も気になり始め、周りからは十分きれいになったと思う仕上がりであっても、本人は「もっときれいになりたい」「もっと整形が必要だ」と整形を繰り返す人も少なくありません。
整形依存症の根底には「醜形恐怖症」という心の病気があると言われています。
「醜形恐怖症」というのは、周囲の人はなにも感じていないのに、自分の外見や容姿に極度にとらわれ、自らを「醜い」と思い込み、日常生活に支障をきたす状態を指します。
日本人女性は十分に可愛く美しいのに、美への追求心が不安とストレスになっている人も多いでしょう。
SNSの無秩序な広告が偏見を加速させている
インターネットやSNSが発達した要因で、「ルッキズム」の概念が人の感情に根深くなりました。
スマホやデジカメで簡単に人物画像を発信できる様になり、「自分を他人に見せること」や「友人との楽しそうな写真」を公開することは日常となりました。
SNSの「いいね」をもらうために、カワイイ・カッコイイがその人の価値になり、容姿を良くしたいためにプリクラや写真アプリで加工する人も少なくありません。
明らかに自分の顔ではなくなった画像をアップしている人もいます。
容姿が良いことがSNSで絶賛され、加工では足りずに整形に走る方も出ています。
容姿が良いことが社会的に得をするという考えがルッキズムを生む一因だと思います。
ルッキズムを解決する方法
ルッキズムの解消をするには、客観的に自分を見つめなおすことが必要です。
流行に敏感になり今これが流行っているからこれじゃなきゃダメ、周りのみんながこうしているから私もこうするというような思想を見直すということが必要です。
例えばwebやテレビで「モデルの○○ちゃんのここがカワイイ」といって髪型やメイクを真似するようになります。
しかし年齢を重ねたり流行が過ぎさったりしたときに、なんであの時あんなダサい格好に夢中になっていたのかと思うことがあります。
流行りの外見が自分の価値観とあっていないと判断することがいかにダサいことなのか分かるとおもいます。
外見で情報を得ることは必要ですが、それを差別のものさしに当ててはならないと理解することが「ルッキズム」を解消することにつながると思います。
自分や他者を尊重しあう「アサーティブトレーニング」
ルッキズムを解消する方法のひとつで注目されている思想で「アサーティブトレーニング」という考え方があります。
このトレーニングをすることで、コンプレックスに対して客観的に考えることが出来るようになり他人からどう思われているかではなく、「どうしたいのか」また「どうなりたいのか」自分自身を見つめ直すきっかけになり、他人の意見の客観的に受け止められるようになります。
人間関係では互いの立場を考えて発言することにより、互いの摩擦を抑えて友好的関係を持つことができます。
「アサーティブトレーニング」では自己表現タイプを客観的に理解することから始めます。
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- 攻撃的な表現をするタイプ(アグレッシブ)
自己主張がはっきりしていて相手の意見を受け入れない言動をする傾向にある人で特に上下の関係では相手を支配しているような言動をする人。
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- バランスをとって表現するタイプ(アサーティブ)
状況に応じて互いの意見に聞く耳をもち、相手の意見に肯定的・否定的のどちらでも受容できるタイプで、自分の意見も素直に伝えることができる人。
アサーティブトレーニングで目指すタイプです。
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- 非主張的に表現するタイプ(ノンアサーティブ)
自己主張がうまくできなく、相手の意見を優先するタイプで協調性は高いものの自分の気持ちを表現できずにストレスを感じてしまう人。
以上の3つのタイプを客観的に自己分析して、人とのコミュニケーション向上をはかることが「アサーティブトレーニング」です。
参照:https://www.nsgk.co.jp/kojin/at
見た目での判断より相手の本質を知ろうとすることが大切
人間の本能で第一印象を大切にするあまり、相手を見た目だけで判断してしまい相手の本質が判断できないことがあります。
例えば、恋愛に関して最初は何とも思わなかった容姿も、長いお付き合いを重ねるうちに性格や相性が分かり互いに好感が持てるようになれば相手の容姿も内面も好きになるのではないでしょうか。
最初の判断より相手の本質を知ることが何より大切なことで、それができれば人間関係も向上していきます。
理不尽な外見差別のルッキズムで変わった社会
ルッキズムは外見だけで人を判断することですが、美しさや格好の良さで人間関係に強い影響をもつことで生まれる偏見や差別が社会問題になっています。
特に日本はルッキズムの塊のような国で、見た目を重視することがほとんどです。
そのような思考を改めなければなりませんし、本質を理解する社会にならなければいけません。
例えば、病院行く場合愛想のない強面なお医者さんより、カッコよく優しそうなお医者さんの方を選びがちですが、もし生死をかけた手術をする場合ではどうでしょうか?
容姿ではなく、能力でお医者さんを選ぶと思います。
容姿がいくら良くても手術において成功率10%のお医者さんよりも、見た目が悪いが成功率90%のお医者さんを選ぶのではないでしょうか。
これは容姿ではなくお医者さんの本質を見ることにつながります。
人は社会で多くの経験を積み重ねて、見た目だけではなく本質を見極める目を持つことが「ルッキズム」社会を解消してくれることになります。
ミスコンの廃止
地方自治体や一部の大学で行われていたミスコンテストの廃止が相次いでいます。
ミスコンが未婚の女性に限定した応募条件だったり、外見だけが審査の対象だったりとミスコンがルッキズムの象徴的な要因があるということで廃止が増えた理由です。
芸能人やタレントが美を競うオーディションは美が職業につながり、ミスコンでは公平制があることに意義があります。
SDGsの思想で不平等をなくそうという思想があり、その取り組みにあっていなく、行政や教育の現場で外見での順位付けは世のなかに不平等を生むきっかけになります。
女性や外見を蔑視するお笑いはもうウケない
芸人さんには容姿をネタにしてお笑いをとることはよくあることですが、笑いをとるために自分のコンプレックスを利用すると芸人本人は営業の成績が上がることでいいかもしれませんが、同じコンプレックスを持つ一般人はどうでしょう。
自分もそのように他人に自分のコンプレックスを笑いのネタにされているのではないかと考える人は少なくありません。
女性芸人の容姿が悪いことで人気を高めることは現在もありますが、女性芸人の有り方も変わっています。
自分の容姿を堂々と利用して美しいものと表現したり、独自のファッションをアピールしたりして活躍する女性芸人さんもいます。
外見をいじってのお笑いから、SNSやwebで自分をアピールする芸に変わりつつあります。
外見に囚われない社会になるには
外見的な美しさは美しさの一つであり、美しさは広いということを理解しなければなりません。
内面からでる美しさ、ありのままの美しさを理解することが大切です。
もちろん外的な美しさも大切ですが、偏った美しさに囚われないようにすることが「ルッキズム」的な社会から脱するポイントではないでしょうか。
ルッキズム的な教育をしないことも重要です。外見に囚われずにポジティブな子育てが未来の日本をつくります。
子供は大人の言うことに耳をすませます。
容姿に対しての親の発言がいつかその子供が大人になった時同じ発言をしてしまいます。
個人の価値が外見で決まってしまうという思想を与えないようにする教育が、未来の社会を変えSDGsにつながる行動ではないでしょうか。
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