絶滅危惧種「トラ」の生態について|トラを守るSDGsの活動とは
トラといえば、動物園でライオンと並ぶネコ科最大の超大型動物として人気ですね。
起源はシベリアで、日本には野生では生息していません。
しかし、ファッションブランドのモチーフや野球の公式キャラクター、干支の一つにもなっているため、馴染みの深い動物ではないでしょうか。
しかし、動物園で飼育が定番となっているトラは、実は個体数が世界中でわずか約3900頭と少なく、「絶滅危惧種」に登録されている動物なのです。
SDGsが掲げる目標の中でも絶滅危惧種の保護は重要な要素で、トラも例外ではありません。
今回はそんなトラにスポットを当てて、なぜトラが絶滅危惧種になっているのか、そしてトラのために私達ができることについて詳しく解説していきます。
生態系の頂点に立つトラってどんな生き物?
黒い縞模様が特徴的なトラは、哺乳綱食肉目ネコ科ヒョウ属に分類される食肉類です。
現在野生のトラが生息しているのはアジアのみ。
インド亜大陸や、極東ロシアの針葉樹林、中国南部の亜熱帯~温帯の森林、スマトラの熱帯林などそれぞれの環境に適応した種類のトラが生息しています。
種類によって大きく異なりますが、頭胴長(体長)140〜280センチメートル。
体重90〜306kgで、尾長95〜119cmとメスよりもオスの方が大型になります。
トラは群れを形成せず、繁殖期以外は単独で生活をします。
行動範囲は獲物の量で変動し、個体密度の高い地域の場合はオスがメスとその子どもと一緒に行動して獲物を分け合うことも。
ロシアなどの広大な地域に生息する種類は、800〜1000 km²を移動すると言われています。
縄張りの中を頻繁に徘徊し、糞や爪跡を残す、肛門の臭腺からの分泌物を含む尿を木や岩、茂みにまくなどして縄張りを主張します。
トラの繁殖
トラは3〜4年で成獣となり、繁殖が可能となります。
繁殖期は地域によって異なり、ロシアのような北方では冬、インドでは雨季明け、インドネシアなどの熱帯地域では一年中繁殖を行います。
妊娠期間100日ほど、1回の妊娠で3〜4頭の子どもを出産します。
子育てはメスが行い、オスが直接関わることはほとんどありません。
生後4〜8週間ほど経つと母トラについて歩くようになり、生後1年半ほどまで母親から餌を与えられて生活します。
その後母親の縄張りを離れ、次第に自分の行動範囲を確保するため独立していきます。
トラの狩り
トラは小動物から大型動物まで捕食します。
週に一度大型動物を捕食すると足りると言われており、骨と皮になるまで時間をかけて食べ続けます。
また、トラは単独で狩りをします。
一晩の狩りで10〜20kmほどの距離を、獲物を探し歩きまわると言われていますが、狩りの成功率は悪く10回に1回ほどしか成功しません。
トラはライオンと同じく長距離を走ることが苦手なので獲物を見つけると茂みなどを利用し20mほどの距離まで近づきます。
トラの縞模様は、茂みに隠れる際に輪郭を消すカモフラージュの役割を果たしてくれます。
そして十分縮まったところで跳び出して獲物を襲いかかり、発達した前足と肩の筋肉、そして鋭いかぎ爪を使って獲物を抑え込み仕留めます。
絶滅危惧種「トラ」の実態
ほんの100年前までアジア全体に10万頭以上のトラが生息していましたが、現在その9割が数を減らし3900頭ほどとなりました。
このまま数を減らし続けると、近い将来絶滅の危機に瀕しています。
森林伐採による餌の草食動物の減少
森林が減少すると生息する動植物が減少し、トラが獲物を見つけることが困難となります。
餌を求めて家畜や人を襲うようになり、害獣として毒殺や銃殺されるケースも少なくありません。
トラの生息地は人口の増加や開発の拡大によって、100年間で9割以上失われました。
現在、トラが生息できる環境は人口の少ない地域や管理の行き届いた国立公園などの限られた地域しか残されていません。
絶滅危惧種指定レッドリストにトラが指定される
20世紀初頭と比較すると、約3%にまで減少したトラの個体数に危機感を抱いたのはいうまでもありません。
2010年寅年に、ロシアで開催された世界トラ保護会議「トラサミット」において、IUCN国際自然保護連合により、レッドリストへ指定されました。
そして、今までの保全活動の効果が不十分であるとして、生息域とされる13か国全ての政府は「トラ倍増計画(TX2)」に合意し、現在も取り組みをしているのです。
この計画では、3,200頭まで減少したトラを約6,000頭に増やす目標が掲げられています。
2023年となった今、一部の地域では個体数の増加傾向に転じた地域もあるものの、東南アジアでは今も減少傾向が続いており、近年のロシア侵攻もTX2に影を落としています。
参照:IUCNレッドリスト
トラに会える全国の動物園3つをご紹介
悲しいことに9亜種のうち、3亜種はすでに絶滅。
残る6亜種のトラはすべて絶滅の危機に瀕しています。
日本では現在9つのうち3つのトラ「アムールトラ」「スマトラトラ」「ベンガルトラ」を飼育・展示しています。
姫路セントラルパーク
「姫路セントラルパーク」は兵庫県姫路市にあるサファリパークを中心とした、動物園と遊園地を併設の関西を代表する大型レジャー施設です。
広大な敷地面積を要するサファリパークには草食動物から肉食獣まで190種類、1200頭もの動物が暮らしています。
野生動物たちが自然界で暮らす環境を再現した姫路セントラルパークのサファリ。
その魅力は動物本来の姿や表情を見られることです。
姫路セントラルパークには現在「ホワイトタイガー」「ベンガルトラ」が飼育されています。
サファリゾーンで暮らすベンガルトラは、自家用車やバスで回ることができ、広大な敷地でのびのびと暮らすトラを至近距離で観察することができます。
また、ホワイトタイガーに餌やりができる体験もあるので、間近にトラを観察したい方におすすめです。
公式サイト:https://www.central-park.co.jp/
上野動物園
「東京都恩賜上野動物園」は東京都上野にある人気の動物園です。
上野動物園の愛称で呼ばれており、飼育動物種類が日本一と言われています。
明治19(1886)年、世界巡業の途中で来日したイタリアのサーカス団のトラが日本で出産。
そのうち、オスメス2頭のトラをヒグマと交換し上野動物園にやってきました。
ネコ科の猛獣が動物園で飼育されるのは日本で初めてとされており、現在ではトラの中でも体が小さい「スマトラトラ」が4頭飼育されています。
公式サイト:https://www.tokyo-zoo.net/zoo/ueno/
王子動物園
「神戸市立王子動物園」は兵庫県神戸市灘区の王子公園内にある人気の動物園です。
王子動物園は約130種800点の動物を展示し、ジャイアントパンダとコアラを一緒に見ることができる日本で唯一の動物園です。
日本で初めてネコ科の動物の中では最大のアムールトラを飼育し、繁殖にも成功させました。
現在は雄と雌のアムールトラを飼育されており、繁殖にも力を入れています。
また、王子動物園ではアムールトラの保全に力を入れており、年に数回園内のホールにてアムールトラの保全のためには何が必要なのか、現地の状況を交えて講演が開かれています。
世界にたった3900頭!野生のトラが絶滅危惧種となった原因
獰猛なハンターとして無敵をも思わせるトラが絶滅の危機に瀕しているとは想像し難いものです。
トラは、諸説ありますが9種の「亜種」に分類されます。
そのうちの半分である4亜種「バリトラ」「カスピトラ」「ジャワトラ」「アモイトラ」は既に絶滅しました。
現在は5亜種「ベンガルトラ」「アムールトラ」「インドシナトラ」「スマトラトラ」「マレートラ」が生存していると確認されています。
現在、2017年時点で3900頭となったトラは、一体なぜ絶滅危惧種となったのでしょうか。
その原因には人間による乱獲の他、生息地の破壊も大きく関与しています。
生息地の森林や草原の破壊
トラは主に森林で生活をしています。
かつてトラの生息域はアジアに広く分布し、多様な環境に適応していました。
1940年からアジア各地で農地開発や国家プロジェクトによるダムの建設など、国家基盤整備事業により森林伐採が進み、トラの生息域に人里を増やした結果トラの食糧不足を招くことになったのはいうまでもありません。
トラと人との接触が増え、トラを駆除の対象とする機会が大きく増えることとなったのです。
また、生息域が分断されることにより、少ない個体数での交配が反復された結果、遺伝子の劣化に繋がり、繁殖数の低下が起こったとも考えられています。
森林伐採はトラだけでなく多くの動植物にも生息域を減少させ、各地で深刻な絶滅の危機に陥れるという、大きな影響をもたらしました。
密猟によって失われる命
トラは美しい縞模様の皮のために、見た目の美しさから上流階級の人々の権力の象徴として、毛皮や頭部の壁飾りなどの用途で狩猟されてきました。
インドでは1930年頃までトラ刈りが頻繁に行われていたと言われています。
植民地時代にイギリス人や上流階級の人々による狩りが多く行われ、当時は狩りに関する法律がなかったので多くのトラの命が奪われました。
現在はトラの狩猟を制限する法律が確立されましたが、価値の高いトラの皮や漢方薬の素材のために密猟が多発しています。
関連記事:密猟はなぜなくならない?絶滅危機の現状と私たちにできること
薬として需要
トラの体の各部分は、1000年以上前からアジアで薬や病気を治すお守りとして使われてきました。
現在でも漢方薬などの伝統的な薬の原料として、トラの骨や内蔵などの体の一部が高い値段で取引されています。
1970年以降アジアの急激な経済発展の結果、トラが使用されている漢方薬はアジアに留まらずヨーロッパやアメリカなど世界中に広がり、トラの生息数を減少させる主な要因となっています。
- 脳…吹き出物、にきび
- 眼球…癲癇(てんかん)
- ひげ…歯ブラシとして加工される
- 骨…体力回復、しびれ
- 雄の生殖器…強壮剤
- 尾…皮膚病
現在漢方薬などの原料として、トラの需要がどれほどあるのか明らかにはなっていません。
にもかかわらず1995年には115頭のベンガルトラが密猟され、今でも薬を目的とした密猟がトラを絶滅に追い込んでいるのです。
地球温暖化や環境汚染を防ぐための取り組みとは
地球温暖化や環境汚染に対する影響は、国や地域ごとに異なります。
しかし、生態系や人に与える影響が甚大であることについては世界共通の認識を持っています。
そして環境問題に対する取り組みは自国のためだけでなく、世界中への影響が懸念される事象のため世界で取り組む必要があります。
地球温暖化や環境汚染などによる食物連鎖への影響はとても大きく、人に与える影響も例外なく甚大なものです。
食物連鎖のバランスが崩れることにより、種の絶滅や異常繁殖など様々な問題を引き起こしかねません。
そして、それはトラに対しても大変関わりの深い事象です。
では、実際どのような対策を行うことが効果的なのでしょうか。
温室効果ガスの排出を長期的、継続的に減らす
今、世界では「パリ協定」をもとに、CO2などの温室効果ガス排出削減に全力で取り組んでいます。
「パリ協定」とは2016年11月に発効された、2020年以降の気候変動問題に対する国際的な枠組みです。
先進国・途上国関係なく159ヶ国・地域が合意した歴史的な枠組みとなっており、SDGsと密接な関係にあるのです。
特に目標13「気候変動に具体的な対策を」に深く関係しており、世界共通の長期目標は2℃低くすることを目標に設定されています。
また、各国でも5年ごとの削減目標を提出するよう義務化することで各国との意見交換や、プレッシャーなどにも効果的となりました。
しかし国家間で取り決めても、国だけでは解決できるものではありません。
パリ協定の内容やSDGsの目標を社会に落とし込み、削減に意欲的に取り組む人や企業が増えています。
残留性有機汚染物質の禁止や制限
残留性有機汚染物質とはダイオキシンやポリ塩化ビフェニル、排気ガスなどから発生する多環芳香族炭化水素などを指します。
これらは、4つの性質を持ちます。
- 自然分解されにくい
- 食物連鎖などで生物の体内に蓄積しやすい
- 長距離を移動して、極地などに蓄積しやすい
- 人の健康や生態系に対し有害性がある
生態ピラミッドの頂点に近ければ近いほど有害性がより蓄積されることとなり、深刻な問題となっているのです。
地球全体に関わる環境問題であることから2001年にストックホルム条約が採択され2004年に発効、現在では182ヶ国が締約しています。
ストックホルム条約では、残留性有機汚染物質の廃絶・削除を推し進めており、日本では2002年の締結に伴い、様々な法律で残留性有機汚染物質の製造禁止や規制を行っています。
地球環境を守るために私達ができることとは
地球環境を守るために私達ができることは、まずゴミを減らすことです。
3R(排出抑制、再利用、リサイクル)が提唱されて久しいですが、リサイクルは進んでいるものの排出抑制や再利用があまり進んでいないのが実情です。
ゴミが減るとゴミ処理業者・リサイクル業者が圧迫するのも一因だと考えられます。
喫緊で必要でないものは極力買わない、食品ロスの削減、家電などのリユース品の積極的使用やレンタルの推進など、私たち一人ひとりにできることはたくさんあります。
電力プランの見直し
電力プランの見直し、まずは電力会社の選択です。
2016年の電力自由化により、電力会社を自由に選択できるようになりました。
東京ガスやNURO光など自社の元々のサービスと請求を一本化できたり、ポイントや割引を受けられたりすることによるメリットが大きいです。
また、1人暮らしだったり家族子供2人だったりとさまざまな居住形態によってお得になる電力プランは異なるので、新電力会社のホームページなどでシミュレーションしてみてはいかがでしょうか。
冷蔵庫の整理
冷蔵庫は家庭での電気代消費ナンバーワンですので、冷蔵庫の電気代削減は最も必要です。
まず、詰め込みすぎないことです。
詰め込むことで冷気が循環しにくくなり、温度を下げるためにさらに電力を消費してしまいます。
またどこに何が置いてあるのかわからなくなることで、ドアを開けている時間が長くなってしまい電力を消費します。
このためタッパーなどで冷蔵庫内を整理して、肉魚や野菜などジャンルごとに位置を決めておくことをお勧めします。
エアコンの設定温度
環境省はエアコンの設定温度を夏28度、冬20度にすることを推奨しています。
外気温によって異なるため状況は一概に言えませんが温度をコロコロ変えることで電気代を消費してしまいます。
夏風邪、冬には乾燥による喉へのダメージもあるため、体調を見極めながら適切に設定することが必要です。
部屋を仕切ることで必要な寒気・暖気を最小限に抑えることもできます。
炊飯器で節電
保温はすぐに消し、冷凍・冷蔵保存することがお勧めです。保温することで電力を消費し、またご飯も固くなって美味しくなくなってしまうことになります。
タイマー機能を使用して効率的に炊飯し、保温時間をできるだけ短くするのも有効です。
どの家電にも言えることですが、使わないときもコンセントを差している時には電力を消費しているため、使用しないときはコンセントを抜きましょう。
洗濯機は効率よく使おう
洗濯機は効率的に使うことで電気代・水道代が削減され、温室効果ガスの削減につながります。
お風呂の残り湯を洗いに使用することで、水道代・電気代が削減されます。
風呂湯モードでホースから給水するタイプの洗濯機も増えています。
最近では乾燥機能が付いた洗濯機も多いですが乾燥機能を使用することで一定量電気代がかかるので、夏場などの天気の良い日は面倒でも外に干すことをお勧めします。
トラの絶滅から守るためにできるSDGs活動のまとめ
もしトラがいなくなれば、トラが捕食していた鹿やイノシシなどの大型草食動物が増加し、その地域の植物が食い荒らされてしまうでしょう。
するとその地域に生息していた昆虫や小動物など植物を餌とする動物がいなくなってしまいます。
それらに受粉などの運搬を頼っていた植物も数を減らしていきます。
生物と植物の生態系は複雑に結びついているので、トラがいなくなるだけでその地域の生態系が破壊される恐れがあります。
トラが健やかに生きていける環境を守ることは、そこで暮らす全ての生物が健やかに暮らせる広い生息地を守ることにも繋がります。
特定の動物を守ることでその土地に生きる他の生物も守ることができることができるので、私達ができることから始めてみませんか。
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