リサイクルとは|ペットボトルのリサイクル方法の事例と私たちにできること
「リサイクル」という言葉は、私たちの生活の中で当たり前のものになりました。
ここ30年ほどかけて、定着したといえる「リサイクル」について改めて考えてみましょう。
- 新聞を古紙回収に出すこと
- ペットボトルをコンビニの回収ボックスに入れること
こんな小さなアクションをすると「ちょっといいことをした気持ち」が得られますが、それらは具体的に何にリサイクルされているか考えたことはありますか。
この記事では、生活において目に付く機会の多いペットボトルを例にあげながら、ご紹介していきます。
また実は長い日本のリサイクルの歴史にも触れながら、今の私たちにできることを考えていきます。
改めて考えるリサイクルの意味とは?
リサイクルという言葉は、私たちの暮らしの中で当たり前になりました。
でも、ふと立ち止まって考えると、具体的にどんなことを意味するのか説明できますか。
改めて、「リサイクル」という言葉について考えてみましょう。
リサイクルという言葉の意味
リサイクルとは、ごみとして排出されたものを、そのまま捨てるのではなく、再度資源として活用することです。
使ったペットボトルは、そのままゴミとして処理してしまうと、埋め立て地に埋められて終わってしまいます。
でも、ペットボトルを再活用しようとリサイクルすることで、エネルギーの熱として再度使ったり、ほかのものを作る時の素材として使ったりできます。
地球上のゴミを少しでも減らすためにも、意識していきたいことが「リサイクル」です。
関連記事:【SDGs】ゴミ問題の現状は?解決に向けて実践したい6つのこと
リサイクル対象の品目とは
暮らしの中で、どのようなものをリサイクルしていますか?
ペットボトルや古紙は、回収場所で目に付くことも多いので、よく知られています。
でも、実はリサイクルできるものはたくさんあるんです。
- 紙(オフィスペーパーや新聞、牛乳パックなど)
- アルミニウム(アルミ缶など)
- ガラス(瓶や容器など)
- 電池(マンガン電池、アルカリ電池、ボタン電池など)
- ペットボトル(飲み物や調味料の容器など)
- 衣類(洋服や履物など)
- 食用油(レストランや家庭から出る使用済油など)
このようにリサイクルできる品目は多岐にわたりますが、どのアイテムをリサイクルに出したことがありますか?また、住んでいる地域の回収場所などを知っていますか?
もしもわからないものがあれば、さっそくチェックして、次からはゴミではなくリサイクルに回すようにしましょう。
リサイクル方法1:マテリアルリサイクル
リサイクルの方法で、一番わかりやすいのがこのマテリアルサイクルという方法です。
回収したリサイクル品を、再度モノとして使う方法です。
- 古紙回収で集めてきた新聞を、再生紙にして、トイレットペーパーにする場合
- ペットボトルを原料にして、もう一度ペットボトルにする場合
- アルミ缶を回収して、建物を作る時の鉄骨にする場合
このように集めてきたものを素材(マテリアル)として使うので、「マテリアルリサイクル」と言われます。
集めたものから、別のものを作るという過程は、イメージしやすいため、「リサイクル」といえばこのマテリアルサイクルをイメージする人が多いのではないでしょうか。
リサイクル方法2:ケミカルリサイクル
あまり知られていない「ケミカルリサイクル」とは、集めてきた資源を科学的(ケミカル)に分解することで、もう一度原料としてリサイクルする方法のことを指します。
- 回収したペットボトルをペレット状に分解したうえで、洋服に作り替える場合
- 廃プラスチックを溶かすことで、水素や二酸化炭素などの合成ガスを作りだす場合
- 家畜の糞尿を化学反応させることで、バイオガスを作り出し場合
元の素材とは全く違うものに作り替えることができるのが、このケミカルリサイクルの例です。
最近話題のバイオエネルギーもまさにこのケミカルリサイクルの手法を使います。
本来はゴミとして扱われてしまう産業廃棄物を、エネルギーに変えて再利用しようという仕組みです。
リサイクル方法3:サーマルサイクル
一般的にゴミは燃やすことで処理されますが、その時に発生する熱を回収して、再利用するのが「サーマルサイクル」です。
すべてのものをリサイクルできればいいですが、必ずしもうまくいくとは限りません。
ゴミとして処理しなければいけないものは、自治体における焼却炉にて燃やされます。
小学生の時に、社会科見学として焼却炉の見学に行ったという方も多いのではないでしょうか。
ごみを燃やすときに発生する熱を回収し、工場内の暖房に使ったり、近くの温水プールの運営に使ったりと再利用しています。
ペットボトルをリサイクルに出すとどうなるの?
コンビニやドラッグストアの入り口に「ペットボトル回収ボックス」がある景色は当たり前のものになりました。
あまりエコを意識していないという方でも、ペットボトルに関しては回収箱に捨てているのではないでしょうか。
そんな回収されたペットボトルは、どのようにリサイクルされているのでしょうか。
2021年日本におけるリサイクル率は86%
実は日本におけるペットボトルの回収率は、ほかの国と比較しても高い水準を維持しています。
PETボトルリサイクル推進協議会の発表した2022年版の報告書によると、「2021年のリサイクル率は86%」と目標の85%を上回っています。
回収率にいたっては、94%とかなり高い数字を叩き出しています。
同団体の発表によると、ヨーロッパのリサイクル率は42.7%、アメリカは前年までのデータしかありませんが18.0%です。
これらと比較すると、日本がどれだけ高い数値かがわかりますね。
参考文献:PETボトルリサイクル年次報告書|PETボトルリサイクル推進協議会
ペットボトルが別のものに作り替えられるケース
ペットボトルのリサイクル率・回収率ともに高い日本ですが、多くの場合はペットボトルは別のものに作り替えられています。
先にご紹介した「ケミカルルリサイクル」という手法が使われることが多いです。
コンビニなどの入り口などで回収されたペットボトルは、化学的な処置がされて全く違うものとして、再度世に出回っていることを、ご存じでしょうか。
- プラスチックシート(食品トレー、カップ麺の容器、プラスチック文具、事務用品など)
- 繊維(衣類、自動車や電車の内装材、インテリア、建築資材など)
- 成型品(排水管などの土木資材、輸送ケースなどの一般資材、文房具や園芸用品など)
回収されたペットボトルの3割は「プラスチックシート」と呼ばれる、プラスチック素材として再利用されています。
ペットボトルがペットボトルに再生されるケース
ペットボトルを他のものに作り替えるリサイクルが今でも主流ですが、ペットボトルを再度またペットボトルに作り替えるという「ボトルtoボトル」という方法が注目されています。
対象となるペットボトルは、飲み物が入っている容器だけではありません。
しょうゆやみりんなどが入っている容器まで対象です。
この方法では、集めたペットボトルに化学処理をして、小さな粒状のペレットにします。
それを、再度食品用のペットボトルに作り替えることができます。
以前は、再利用した素材を食品用に使うことが懸念されていましたが、日本でも2012年から承認された方法です。
期待されるボトルtoボトルのリサイクル方法
「ボトルtoボトル」は、2012年以降に始まった新しい取り組みです。
この10年間で4倍ほどまでに成長している方法ではありますが、まだ限定的というのが正直なところです。
ペットボトルは石油由来の資源を使って作られる製品です。
このままペットボトルを作り続けると、石油資源を使い続けることに繋がります。
だからこそ、既にペットボトルとして存在する素材を、もう一度ペットボトルにするという循環型のリサイクル方法が注目されています。
また、新しいペットボトルを石油から作るのと比較すると、二酸化炭素排出量が半分ほどで押さえられるというメリットもあります。
使う資源を少なく、排出する二酸化炭素の量も減らせるというメリットの多い方法は、これから増えていくと期待されています。
日本におけるリサイクルの歴史は意外と長い
リサイクルという言葉が当たり前のように定着したのは、平成以降の取り組みによってかもしれません。
しかし、リサイクルという概念については、実は歴史が長いということをご存じでしょうか。
奈良時代・平安時代からあるリサイクルの考え方
なんと日本におけるリサイクルの歴史は、奈良・平安時代まで遡るというのだから驚きです。
当時から、日本人にとって紙は貴重な資源でした。
使った紙をリサイクルして、再生するという技術を持っていたのです。
そのあと、江戸時代には、布を再利用する方法も編み出しています。
着なくなった服や布物をリサイクルしていたそうです。
そこから、明治・大正時代には「リサイクル業者」という産業が進みます。
それぞれの家庭や近隣家族で再利用していたところから、リサイクル屋さんが古紙や古布回収をし始めました。
「リサイクル」なんて英単語が広まる前から、日本人は限りある資源を大切にすることを知っていたのです。
戦後の大量消費・大量生産で崩れた意識
古くから続いている「再利用」の考え方が、ガタッと崩れたのは、やはり戦後の経済発展に伴い大量生産・大量消費が当たり前になった頃といえるでしょう。
どんどん作って、どんどん捨てるという、まさに「リサイクル」とは真逆の方向に向かって進んでしまいました。
さらにバブル期を経て、過剰包装が進んでいくなど、資源の使い過ぎに歯止めが利かなくなってしまいました。
1992年「地球温暖化」が世界の注目の的に
日本において、そして世界において「リサイクル」という考え方が広がったきっかけは、1992年のリオデジャネイロで開催された地球サミットでした。
このサミットにおいて「地球温暖化」という問題が大きく取り上げられました。
- 私たちの暮らしが地球を苦しめていること
- 地球上の資源は限りがあること
- このペースで使い込むと資源が枯渇すること
この点が全世界に向けて発信されたことをきっかけに、「リサイクル」という言葉が広がるようになりました。
2004年「3Rイニシアティブ」と「MOTTAINAI」
リオデジャネイロのサミットから10年ほど経った頃、日本のおいては当時の小泉政権のもと「3Rイニシアティブ」というキャンペーンが広げられました。
「3R」はあちこちで話題になりましたが、3つ覚えていますか。
「リデュース(ゴミそのものを減らす)」「リユース(何度もくり返し使う)」「リサイクル(資源として再利用する)」です。
また、このイニシアティブが話題になっているタイミングで、2014年にケニア出身の環境保護活動をされているワンガリ・マータイさんがノーベル賞を受賞しました。
その時に彼女が「MOTTAINAI(もったいない)」という言葉に感銘を受けた話をしてくれました。
これによって、日本の言葉である「もったいない」が海外に広がったとともに、日本人にとっても、改めて考えるキッカケとなりました。
リサイクルの流れを加速するために私たちができること
日本においては、2000年前半から少しずつ進められてきた「リサイクル」活動。時間はかかっていますが、それでも少しずつ生活の中で、ちょっとだけエコ意識が高まってきたり、「当たり前」にリサイクルしている品数が増えてきたり。
じわじわと広がっているといっても過言ではありません。
ここまで続けてきたリサイクルの取り組みに加えて、私たちが今できることとはどのようなことがあるのでしょうか。
少しでも長く使える商品を買うこと
「どんどん物を買って、いらなくなったら捨てればよい」という考え方は、過去のものになりつつあります。
また、「安ければいいや」と勢いで買い物をするのではなく、商品や会社について調べてから買い物をする「賢い買い物」に切り替える人が増えています。
- そもそも本当にそれを買う必要があるのかな?
- どんなところで、どんな思いで作られているのかな?
- どれだけ長く使える商品かな?
買い物をするときには「見た目」「値段」だけでなく、しっかりと吟味してから買いましょう。
そしてすぐにゴミになるような粗悪品は避けて、少しでも長く使える商品を選ぶようにしましょう。
捨てる前にリサイクルできないか考えること
いらなくなったからポイポイっと捨てていませんか。ゴミに出してしまうと、ものの命はそこで終わってしまいます。
自分にとってはいらないものでも、誰かにとってはほしいもの、まだ使えるものかもしれません。
何かいらないものを見つけて捨てようかなと思ったときは、少し考えてみるようにしましょう。
- 使い方を変えたり、アレンジをしたらもう少し使えないかな?
- 人に売ったり、譲ったりすることはできないかな?
- 本当に捨てる必要があるかな?
そもそも物を買った時点で「いいな」と思って買ったもののはず。
そうやって賢い買い物を続けていけば、むやみに捨てる必要はなくなります。
どうしても捨てる必要がある時は、ごみにしない方法を考えてみましょう。
リサイクル商品を購入すること
物を買うときはしっかりと考えて選びたいところですが、その際にリサイクル品や中古品も選択肢の一つに加えましょう。
日本においては「新しいものが良い」という考え方がまだまだ強いですが、ビンテージやアンティークの世界に目を向けてみると、古いものの良さがたくさんあります。
- たまにはデパートではなくリサイクル用品店に行ってみようかな?
- フリマアプリで中古品を売っている人はいないかな?
- 周りの友達から譲り受けられるものはないかな?
欧米には「Clothes Swapping(お洋服交換)」という言葉があります。
これは友達や地域住民同士で、着なくなった服を交換すること。
自分が飽きてしまった服でも、誰かにとってはお宝かもしれません。
このようなイベントを、友達と開催するのも楽しいのではないでしょうか。
リサイクルの循環を回して少しでも環境にやさしい暮らしに
「リサイクル」という言葉が世間に広まってきてから、30年ほど経ちました。
一時のブームで終わることなく、少しずつ進んでいるのが感じられる取り組みであり、自分自身の暮らしも少しずつ変わっているなと実感する人も多いのではないでしょうか。
もしくは、記事を読んでくださっている若い世代にとっては、ペットボトルをリサイクルするのは物心がついたころから当たり前だったかもしれません。
ペットボトルのリサイクル率は世界の中でも群を抜いて高い日本です。
でも、それに安心してはいけません。
まだまだリサイクルできる品目はありますし、そもそもペットボトルを使わない暮らしに向けて動いていく必要もあります。
リサイクルに関しては、個人の暮らしの中でも地球に対して働きかけのできる分野です。
是非、自分の暮らしの中で、ごみを減らすための工夫について、考えて、取り入れてみてください。
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