ESG

ワークライフバランスとは?企業の取り組みをわかりやすく解説

近年、リモートワークや男性育休など、新しい働き方や生き方が誕生しました。

その背景には、仕事もプライベートも充実させたいという思いがあるといえるでしょう。

だれもが自分らしく働くために欠かせないのが、「ワークライフバランス」です。

とはいえ、「ワークライフバランスとは?」「ワークライフバランスは古いのでは?」と、疑問に思う方もいるかもしれません。

この記事では、ワークライフバランスをわかりやすく解説します。

さらに、具体的な企業の取り組みもまとめました。

ワークライフバランスとは

ワークライフバランスとは、仕事と生活が調和した状態のことです。

簡単にいうと、仕事もプライベートも充実した働き方や生き方を意味します。

柔軟な働き方を重視していますが、プライベートを最優先するという意味ではありません。

育児や介護、勉強など、個人のライフスタイルを尊重した働き方を目指しています。

そもそも、ワークライフバランスにつながる考え方は、1980年代後半のアメリカで誕生しました。

背景には、女性の社会進出や従業員の心身の健康を重視する動きが、活発になったことがあるといえます。

日本では、1990年代以降から注目されるようになりました。

当時の主流であった、「長時間労働が美徳」「会社のために生きる」などの働き方を見直す動きが強まったのです。

政府も、ワークライフバランスを積極的に推進しています。

平成19年12月に、「ワーク・ライフ・バランス推進官民トップ会議」において、「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」及び「仕事と生活の調和推進のための行動指針」を策定しました。

少子化や人材不足を抱える日本社会において、多様な働き方を選択できる社会の実現は、より一層必要とされるのではないでしょうか。

出典:内閣府|仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)レポート2020
出典:内閣府|仕事と生活の調和とは(定義)

ワークライフバランスの5大メリット

では、ワークライフバランスを重視すると、どのようなメリットがあるのでしょうか。

①多様な働き方を実現できる

育児や介護が必要な時期になると、フルタイム労働や残業、定時出勤などが難しくなります。

能力や意欲があるにもかかわらず、性別や年齢などによって、働きづらさが生じる課題がありました。

しかし、フレックス制度やリモート勤務のような、柔軟な働き方を取り入れれば、誰もがやりがいをもって働ける社会が実現できるのです。

事例:「【取材】ギークスメンバーに聞く『産休育休ガイドブック』とは?|長く働き続けるための取り組み」をくわしく読む

②女性の社会進出を支援できる

産休や育休など、子育てに奮闘する女性をサポートする制度を充実させることで、ジェンダー平等の社会実現を期待できます。

世界からみると、日本女性の社会進出には大きな課題が残っています。

2023年のジェンダー・ギャップ指数をみてみましょう。

日本の順位は、146か国中125位。

健康や教育は世界トップクラスである一方で、政治や経済の水準が低いのです。

ワークライフバランスは、女性が生き生きと働く社会の実現に欠かせません。

こちらの記事も参考にしてください。
「産休育休はいつから?子育てにやさしい企業事例8選」をくわしく読む

出典:内閣府|男女共同参画に関する国際的な指数

③生産性が上がる

ワークライフバランスを実現させるためには、長時間労働を抜本的になくすことが必要不可欠です。

業務改善を実施することで、生産性の向上も見込めます。

また、多様な生き方をする社員が集まることで、新しいアイデアの切り口が生まれ、企業パフォーマンスの質も上がるといえるでしょう。

④働く意欲が上がり、離職率が下がる

仕事と生活のバランスがとれた職場は、ライフスタイルの変化があっても働きやすくなります。

経済的に自立した状態なので、家族や友人と過ごす時間、または自己啓発の時間を大切にできます。

生活の充実感が増すとともに、心身の健康が保持されるため、働くモチベーションにもつながるといえるでしょう。

結果的に、定着率の向上につながり、人材確保ができるのです。

⑤企業イメージが上がる

ワークライフバランスを推進すれば、企業のイメージアップにつながるといえるでしょう。

ワークライフバランスを重視した経営は、SDGsの目標である「5.ジェンダー平等を実現しよう」や「8.働きがいも経済成長も」に貢献できます。

サステナビリティの質や企業評価が上がることで、資金調達や優秀な人材も確保しやすくなるのです。

「ワークライフバランスは古い」との声もある

ワークライフバランスは、企業側と労働者側にメリットがあることが分かりました。その一方で、「ワークライフバランスは古い」との声も上がっています。

「ワークライフバランスが古い」と言われる理由

ワークライフバランスを実現すべく、多くの企業や団体が働き方改革を実施しました。

けれども、手段だけが重視され、社内では残業しないが、持ち帰って残業するという矛盾が生まれた企業もあったのです。

表面的な解決ではなく、目的に合った抜本的な改革が欠かせません。

またワークライフバランスには、仕事優先かプライベート優先か、どちらかを選ぶものだと捉えられやすい弱点があります。

そのため、「ワークライフバランスを重視しても、公私ともに充実しないのでは」という意見が生まれてしまうのです。

多様な働き方の新時代

近年では、従業員が主体的にワークライフバランスを実現させる「ワークライフマネジメント」という考えも注目されています。

また、仕事とプライベートを区別せず統合させた「ワークライフインテグレーション」という概念も誕生しました。

リゾート地や観光地などで、リモートで働く「ワーケーション」もその一つ。

「ワークライフインテグレーション」の拡充はハードルが高いですが、新しい選択肢として理解しておくことが大切なのではないでしょうか。

ワークライフバランスを実践!企業の取り組み4選

ワークライフバランスを充実させるために、企業はどのような取り組みをしているのでしょうか。4つの企業事例をまとめました。

①サイボウズ

サイボウズは、「100人いたら100通りの働き方」があってよいという考えのもと、多様な働き方に挑んでいます。

社員からリアルな声を聞きながら、組織や評価制度を改善しました。さらに

  • 在宅勤務
  • 副(復)業
  • 育児休暇
  • バーチャルオフィス
  • ビデオ会議

など、ワークライフバランスに配慮した制度や社内コミュニケーションを活性化する施策も実施しました。

その結果、2005年は離職率が28%だったにもかかわらず、2012年以降は5%以下になったのです。

社員に寄り添った制度が、大きな効果をもたらしたといえるでしょう。

出典:サイボウズ|多様な働き方へのチャレンジ

②資生堂

資生堂は、ジェンダーギャップの解消を目指し、女性支援に注力しています。

2017年には、事業所内保育所を充実させるために、「KODOMOLOGY株式会社」を設立。

保育事業を開始しました。他企業の事業所内保育所の設立支援や運営も受託しています。

事業所内保育所の一つである「カンガルーム汐留」では、男性社員に向けた育児トレーニングも実施。

父親の育児スキルを高めることで、女性支援を後押ししています。

出典:資生堂|ジェンダー平等

③サントリー

サントリーは、従業員一人ひとりが能力を十分に発揮できるよう、働きやすい環境づくりに努めています。

生産性を高めるために、働き方を抜本的に改革しています。

2010年以降、時間と場所の制約を廃止。

フレックス勤務やテレワーク勤務を拡大し、フレキシブルな働き方の実現を目指しています。

また、仕事と生活のバランスを保てるよう、育児や介護をサポートする制度も導入しました。

育児支援としては、産休や育休だけではなく、「キッズサポート休暇」「ベビーシッターサービス」などがあります。

介護支援としては、「特別休暇」「ホームヘルパー利用補助」などが取得できます。

手厚いサポートが、働きやすい職場を作り上げているといえるでしょう。

出典:サントリー|ワークライフバランスの推進

④ワコール

ワコールは、生き生きと働き、充実した生き方ができるように多様な働き方を導入しています。

  • テレワーク
  • 自己啓発長期休職制度(海外ボランティア、留学、大学院など)
  • 配偶者帯同休職制度(勤務地が異なるパートナーとの結婚や配偶者の転勤を考慮)
  • 副業制度

自分らしく、キャリア形成できるような制度が充実しています。

そのため、外部からも高く評価されています。

従業員の健康管理を重視した経営が評価され、「健康経営銘柄」に6年連続で選定。

また、子育てサポート企業として「プラチナくるみん」の認定も受けました。

出典:ワコール|働き方&ワークライフバランス

ワークライフバランスを重視した自分らしい働き方を

ワークライフバランスとは、仕事とプライベートのバランスがとれた状態を意味します。

かつては、「会社のために生きる」という考えが良しとされてきました。

しかし、今日では、「自分の人生の一部に会社がある」という生き方が重要です。

だれもが自分らしく働ける社会を実現させるには、企業のサポートが欠かせません。

しかし、個人にも、ワークライフバランスを推進する責任があります。

働く自由度が高まる一方で、自分のキャリアへの責任が大きくなるからです。

「どういう人生を送りたいのか」「自分にとって大切にすべきものは何か」など、自分の生き方や働き方と常に向き合うことが大切といえるでしょう。

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