グリーンテック

【企業事例あり】GX(グリーントランスフォーメーション)とは?意味や国内の動きを解説」

温室効果ガスの排出量削減やカーボンニュートラルを目指す取り組みや改革を指す「GX(グリーントランスフォーメーション)」。

政府や企業による環境への取り組みなどで、耳にする機会が増えました。

2023年12月、日本政府はGXの実現に向け、数年にわたって大規模な予算を投じる投資戦略を策定。

GXを促進する動きをしています。

本記事では、GXの概要やGX推進に向けた日本国内の動きを詳しく解説します。

GXに取り組む企業事例も紹介しますので、参考にしてみてください。

GX(グリーントランスフォーメーション)とは?

GX(グリーントランスフォーメーション)は「Green Transformation」の略称で、脱炭素社会やカーボンニュートラルの実現に向けた取り組み・改革を指す言葉です。

地球温暖化は、CO2などの温室効果ガスの排出を原因とし、世界中で海面上昇や干ばつ、生態系の消失などを引き起こすだけでなく、私たちの生活や経済にも影響を与えています。

気候変動などの問題を解決し、持続可能な社会を実現するためには、GXの取り組みが重要です。

現在、120以上の国・地域が「2050年カーボンニュートラル」という目標を掲げて、さまざまな取り組みを行っています。

日本は2010年10月に、カーボンニュートラルを目指すことを宣言しました。

このような動きも、GX推進の背景にあります。

経済産業省が定義する「GX(グリーントランスフォーメーション)」

「GX」を最初に使用したのは、経済産業省といわれています。

経済産業省が2022年に発表した「GXリーグ基本構想」で登場しました。

「GXリーグ」とは、GXに取り組む企業や同じくGXに取り組む企業群や官・学と協働する場です。

GXリーグ基本構想は、GXリーグの世界観や取り組む内容、スケジュールなどの基本的な指針を示すために策定されました。
参考:経済産業省「GXリーグ基本構想」

GXリーグ基本構想において、政府はGXを以下のように定義しています。

“2050年カーボンニュートラルや、2030年の国としての温室効果ガス排出削減目標の達成に向けた取組を経済の成長の機会と捉え、排出削減と産業競争力の向上の実現に向けて、経済社会システム全体の変革がGXです。”
引用:経済産業省「GXリーグ基本構想」

GXリーグは「リーダーシップ」をコンセプトとし、2050年のあるべき社会をリードする企業の集合体を目指しています。

「GX(グリーントランスフォーメーション)」とSDGs・ESGとの関連性

GXは、SDGsESGとも関連が深い言葉です。

「SDGs」は、持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)を指し、2030年までに持続可能でより良い社会を目指すために定められた17の目標です。

気候変動や飢餓、生物多様性の保護、ジェンダー平等など世界にあるさまざまな問題の解決を目指しています。

参考:外務省「SDGsとは?」

「ESG」は、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)の頭文字を取った言葉です。

ESGに考慮した経営は「ESG経営」と呼ばれ、環境や社会問題に注目が集まる今、ESG経営を行う企業が評価されつつあります。

SDGsは持続可能な社会を実現するための目標であり、ESGはSDGs達成の行動(方法)です。

そしてGXは、環境問題改善への企業による取り組みであるため、ESGの一部といえます。

「グリーンテック」との違い

GXと似た言葉に「グリーンテック」があります。

グリーンテックは「クリーンテック」と呼ばれることもあります。

グリーンテックは、環境問題解決のための技術や製品の総称です。

再生可能エネルギーや省エネルギー技術、環境負荷の低い交通手段などの分野があります。

「2050年カーボンニュートラル」を達成するための手段として、世界中で注目を集めました。

GXは環境問題解決のための社会システムの変革を指し、グリーンテックは具体的な技術や製品を指します。

どちらの言葉も、環境問題の解決を目指す点は同じといえるでしょう。

グリーンテックについては、以下の記事で詳しく解説しています。

参考:グリーンテックとは?持続可能な社会の実現を目指すテクノロジーについて

GX(グリーントランスフォーメーション)推進に向けた日本国内の動き

日本国内では、政府を中心にGXへの積極的な取り組みが呼びかけられています。

具体的にどのような動きがあったのかを紹介します。

  • 政府による「GX実行会議」の実施
  • GX関連2法の成立
  • GX(グリーントランスフォーメーション)に関する補助金制度

政府による「GX実行会議」の実施

「GX実行会議」は、GX実行に向けた施策の検討を目的とした会議です。

2022年7月に第1回GX実行会議が開催され、2023年12月までに全10回行われています。

内閣総理大臣を議長とし、内閣官房長官や外務大臣、財務大臣、環境大臣をはじめ、企業や大学教授、日本経済団体連合会の会長、労働組合連合会の会長などの有識者が出席しています。

GX実行会議において「GX実現に向けた基本方針」の検討が進められ、2023年2月に閣議決定されました。

のちに説明する「GX関連2法」も、同会議で検討されました。

参考:内閣官房「GX実行会議」

「GX関連2法」の成立

「GX関連2法」は、「GX推進法」と「GX脱炭素電源法」の2法を指します。

GX推進法は2023年5月12日に成立、GX脱炭素電源法は同年5月31日に参院本会議で可決されました。

「GX推進法」の正式名称は「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律」で、政府の脱炭素戦略が盛り込まれています。

官民合わせて、10年間で150兆円以上の脱炭素投資を進め、国内企業間の競争や経済成長などを目指しています。

参考:内閣官房「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律案【GX推進法】の概要」

「GX脱炭素電源法」の正式名称は「脱炭素社会の実現に向けた電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律」。

再生可能エネルギーなどの脱炭素電源の利用を促進しながら、安全確保を大前提とした原子力発電の活用と廃炉の推進を目指します。

参考:内閣官房「脱炭素社会の実現に向けた電気供給体制の確立を図るための電気事業法等(※)の一部を改正する法律案【GX脱炭素電源法】の概要」

GX(グリーントランスフォーメーション)に関する補助金制度

GXを推進するため、政府はさまざまな補助金などの支援制度を設けています。

その中から、一部の制度を紹介します。

  • グリーンイノベーション基金事業:2050年カーボンニュートラルの実現に向け、目標にコミットする企業に対し研究開発・実証から社会実装まで10年間支援する制度
  • クリーンエネルギー自動車導入促進補助金:電気自動車(EV)や燃料電池自動車(FCV)の購入費用を一部補助する制度
  • 地域脱炭素の推進のための交付金:積極的に脱炭素に取り組む地方公共団体などに対し「地域脱炭素移行・再エネ推進交付金」などの支援を行う制度
  • 省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費:工場や事業場におけるエネルギー消費効率の高い設備への更新などを支援する制度

参考:
経済産業省「グリーンイノベーション基金事業の基本方針(概要)」
経済産業省「クリーンエネルギー自動車導入促進補助金」
環境省「地域脱炭素の推進のための交付金」
資源エネルギー庁「省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費」

政府は多くの企業や地方自治体、地方公共団体などがGXに取り組めるよう、補助金制度などにより支援しています。

GX(グリーントランスフォーメーション)の企業事例

最後に、GXに取り組む国内外4企業の事例を紹介します。

  • トヨタ自動車
  • ENEOS
  • エプソン販売
  • Microsoft Corporation(マイクロソフト)

トヨタ自動車

トヨタ自動車では、2015年から「トヨタ環境チャレンジ2050」に取り組んでいます。

「もっといいクルマ」「もっといいモノづくり」「いい町・いい社会」の3つの領域において、以下の6つのチャレンジを掲げています。

  1. 新車CO2ゼロチャレンジ
  2. ライフサイクルCO2ゼロチャレンジ
  3. 工場CO2ゼロチャレンジ
  4. 水環境インパクト最小化チャレンジ
  5. 循環型社会・システム構築チャレンジ
  6. 人と自然が共生する未来づくりへのチャレンジ

「トヨタ環境チャレンジ2050」は気候変動や資源枯渇などの環境問題に対し、車の持つマイナス要因をゼロに近づけ、社会にプラスの要因をもたらすことを目指しています。
参考:トヨタ自動車「トヨタ自動車、『トヨタ環境チャレンジ2050』を発表」

2022年7月からトヨタ純正カーナビシステムでは、燃料消費量を考慮した省エネルート案内が配信されています。

これにより、2022年度には16.583tの温室効果ガス削減に成功しました。

他にも素材のリサイクルや工場などでの再生可能エネルギーの利用にも積極的に取り組んでいます。

参考:トヨタ自動車「Sustainability Data Book」

ENEOS

ENEOSは、2040年度までの自社排出分のカーボンニュートラル実現を目標に掲げています。

2022年5月には国内外の動向を踏まえた「カーボンニュートラル基本計画」を発表、2023年5月に再度新しい計画を策定・発表しました。

計画では2030年度までに、温室効果ガスを2013年度対比46%削減するとしています。

2022年度には、2009年度対比428万tのCO2削減を達成しました。

製油所や製造所などでの省エネルギー推進、再生可能エネルギーの導入などのほか、ENEOSはジェット燃料やガソリンなどの化石燃料の代替となる燃料の開発にも取り組んでいます。

参考:ENEOSホールディングス「環境」

セイコーエプソン

セイコーエプソンでは、2050年にカーボンマイナスと地下資源消費ゼロを目指す「環境ビジョン2050」を2008年に策定、2021年に改定しています。

アクションには「商品・サービスやサプライチェーンにおける環境負荷の低減」「オープンで独創的なイノベーションによる循環型経済の牽引と産業構造の革新」「国際的な環境保全活動への貢献」を掲げ、2020年から2030年までの10年間で1,000億円の費用投下も予定しています。
参考:EPSON「エプソン、『環境ビジョン2050』を改定」

また、エプソングループのエプソン販売では2022年4月からDX推進部グリーンモデル推進というGXに特化した部署を新設。

顧客へのヒアリングに基づき環境配慮型協業システムを構築し、環境負荷の削減を目指します。
参考:EPSON「持続可能な世界をオフィスからつくる」

Microsoft Corporation(マイクロソフト)

アメリカのMicrosoftは2020年1月、「カーボンネガティブを2030年までに実現する」と表明しました。

カーボンネガティブとは、温室効果ガスの排出量が自然の吸収量より下回っている状態です。

カーボンニュートラルよりも、脱炭素化を進めたものといえるでしょう。

目標達成に向け、同社は自社事業のカーボンネガティブだけでなく、顧客のカーボンネガティブを支援するクラウドサービス「Microsoft Sustainability Calculator」や「Cloud for Sustainability」などの提供を開始。

企業活動により排出される温室効果ガスを計測したり、取り組みの進捗状況をレポートにしたりできます。

参考:Microsoft「2030 年までにカーボンネガティブを実現」

まとめ

世界的な目標であるカーボンニュートラルや脱炭素社会の実現に向け、重視されているGX(グリーントランスフォーメーション)。

政府によるGX実行会議の実施や、補助金などの制度の拡大により、今後GXへの認知が広まることが予想されます。

企業はGXへの理解を深め、環境負荷削減のために具体的にどのくらい何ができるのかを考えることから始めてみましょう。

少しでも多くの企業がGXに取り組めば、より良い社会の実現に大きく近づくはずです。

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