ダイバーシティ

【国際比較】クオータ制とは?メリットやデメリットを解説!

多様性やジェンダーレスが重要視される現代において、女性の社会進出は欠かせません。

最近の日本でも、男性の育児休暇が増え、少しずつ女性が働きやすい社会への歩みが進んでいます。

近年、国会議員や管理職におけるジェンダー・ギャップを解消するために、「クオータ制」が世界的に注目を集めています。

ジェンダー・ギャップ指数が高い国々では、クオータ制が広く採用されている傾向です。

とはいえ、「クオータ制ってそもそも何?」と疑問に思う方もいるのではないでしょうか。

今回は、クオータ制の意味やメリット・デメリットについてわかりやすく解説します。

また、政治と企業における導入事例を世界観点でまとめました。

クオータ制と女性の社会参画がどのようにつながるのか、詳しく見ていきましょう。

クオータ制とは

クオータ制は割当制の一つです。

社会的格差を減少させるために、少数派にも参加の機会を確保するポジティブ・アクションを意味します。

その代表例が政治分野におけるクオータ制です。

この制度では、女性に対して議席や候補者などの一定数を割り当て、議会における男女格差の解消を目指しています。

2017年時点で、約120カ国で実施されています。

出典:男女共同参画局:調査研究等:用語解説

クオータ制のメリット

それでは、クオータ制を導入することでどのようなメリットがあるのでしょうか。

①女性の社会的活躍が増える

性別に関係なく人材を採用することは、女性の社会参画の促進が期待できるでしょう。

実際にクオータ制を導入した国では、女性の国会議員や管理職が増加し、その成果が報告されています。

例えば、クオータ制を初めて導入したノルウェーは、世界的に見ても女性の社会参画が高く評価されています。

2023年6月21日、世界経済フォーラム(World Economic Forum:WEF)が発表した「Global Gender Gap Reprt 2023」によると、ノルウェーのジェンダー・ギャップ指数は146カ国中第2位です。

経済・教育・医療・政治の4分野において男女の格差が少ないと評価されました。

一方、政治分野に関してクオータ制を導入していない日本の順位は146カ国中125位であり、諸外国と比べて非常に低い結果となっています。

クオータ制の導入は、女性が活躍する機会を増やす後押しになるといえるのではないでしょうか。

日本における女性の社会参画について詳しく知りたい方は、こちらの記事がおすすめです。
関連記事:【2022年4月改正】女性活躍推進法とは?概要や効果をわかりやすく解説

参考:Global Gender Gap Report 2023 | 世界経済フォーラム (weforum.org)

②女性の声が反映されやすくなる

性別が偏っていると、思考や意見も似た傾向になり、新しいアイデアも生まれにくくなります。

しかし、女性の国会議員や管理職が増加すれば、世の中の女性の悩みや願望を代弁してくれる期待が生まれます。

その結果、これまで少数派とされてきた人たちが組織に加わることで、政策や事業に女性の視点がより反映されやすくなるでしょう。

クオータ制は多様な価値観に大きく関係しています。

クオータ制のデメリット

クオータ制は女性の社会進出に欠かせないものの、現状には懸念すべき点も存在します。

デメリットは以下のとおりです。

①男性への差別が起こりうる

クオータ制では、女性の採用を優遇して男性が不利な立場になることが懸念されます。

政治や企業がクオータ制を実現する際、男性よりも女性が優先的に採用される可能性も考えられます。

性別の格差をなくすことは大切ですが、クオータ制の実現ばかりに焦点を当てるのは望ましくありません。

性別に関わらず、個々の才能を評価することも重要です。

②リスク管理が必要になる

女性議員や女性管理職が、出産や育児で休暇を取得する場合、組織のトップが不在であっても、組織が円滑に運営できるようにリスク管理が必要です。

十分な余裕をもって、人材育成や組織力の向上など、リスク管理が求められます。

現在は、男性も育児休暇を積極的に取得する傾向があり、復職しやすい環境づくりはどの組織においても欠かせません。

クオータ制に関係なく、必要なリスク管理といえるでしょう。

【政治編】クオータ制の導入事例

まずは政治分野において、クオータ制を導入している国をまとめました。

女性議員比率とともに、事例を詳しく見ていきましょう。

ノルウェー

女性の社会参画が進んでいるノルウェーですが、1970年の国会議員に占める女性の割合はわずか9.3%でした。

しかし、25年後の1995年には39.4%までに上昇しています。

この変化の背景には、1970年代から1990年代にかけて国会議員選挙においてクオータ制の導入が進んだことが挙げられます。

スウェーデン

2023年1月1日時点でのスウェーデンの衆議院女性議員比率は、46.6%です。

半数近くが女性であり、性別による社会的格差が非常に少ないといえます。

スウェーデンの国会議員選挙では、1990年代から2010年にかけて、社会民主党・左翼党・環境党・穏健党はクオータ制を導入しました。

この20年間でクオータ制の導入が加速したことが、ジェンダーフリーな政治につながっています。

半数近くを女性議員が占めているため、女性議員の提案や世の中の女性の声も政策に反映されやすい傾向です。

フランス

フランスの国会議員に占める女性の割合は、1970年はたったの2.1%で、1990年代中頃まで10%を切っていました。

しかし、2023年1月1日時点では37.8 %を記録しています。

ここ20年間で女性の国会議員が3倍近くに増加した理由は、クオータ制を法的に導入したためです。

2000年には、選挙の候補者を男女同数とすることを定める法律が施行されました。

法的なクオータ制の導入が、女性の活躍を後押しした成功例といえます。

ドイツ

ドイツで初めてクオータ制が導入されたのは1986年です。

最初に緑の党がクオータ制を導入したあと、ほかの政党もこれに続き、クオータ制が定着しました。

1985年頃から2000年までの15年間で、国会議員に占める女性の割合が3倍に増加しています。

この数値だけ見ても、クオータ制は政界におけるジェンダー・ギャップに大きな影響を与えているといえます。

クオータ制導入前のドイツでは、女性の国会議員は1割以下で、2023年1月1日時点では、35.1%となりました。

参考:平成23年版男女共同参画白書 | 内閣府男女共同参画局 (gender.go.jp)
参考:平成22年度男女共同参画社会の形成の状況・平成23年度男女共同参画社会の形成の促進施策

【企業編】クオータ制の導入事例

世界の国々では、企業における管理職や取締役において女性を積極的に採用する動きが拡大しています。

特にヨーロッパの企業ではクオータ制の導入が進んでおり、実施できなかった場合にはペナルティが発生することもあります。

具体的な導入事例を国ごとにまとめました。

ノルウェー

企業役員への女性のクオータ制導入も、ノルウェーが先陣を切りました。

対象となる企業は、すべての株式企業としているのは世界でも珍しいケースといえます。

取締役の人数に応じた割り当ては以下のとおりです。

  • 取締役が2~3名の場合は、取締役に男女両方が含まれること
  • 取締役が4~5名の場合は、一方の性が2名を下回らないこと
  • 取締役が6~8名の場合は、一方の性が3名を下回らないこと
  • 取締役が9名の場合は、一方の性が4名を下回らないこと
  • 取締役が10名以上の場合は、男女双方がそれぞれ40%以上とすること

企業が実行できない場合は、企業名の公表や企業の解散などのペナルティが課せられます。

国と企業が協力して女性の社会参画に取り組む事例といえるでしょう。

アイスランド

女性管理職を強化するアイスランドでは、2010年にジェンダー・クオータ制を制定しました。

割り当ての内容は、2013年9月1日までに男女それぞれ40%以上とするものです。

ただし、対象となる企業はすべてではありません。該当する企業は以下のとおりです。

  • 従業員50人以上、かつ取締役3人以上の国営企業
  • 株式企業

資金や人材に余裕がある企業から実践していくケースといえます。

フランス

フランスでは、2011年に取締役に関するクオータ制度が導入されました。

また、2021年12月には、ジェンダー・ギャップをなくすために新たな法案が可決され、クオータ制の普及を推進しています。

新たに定められた内容は以下のとおりです。

  • 従業員1,000人以上の企業を対象とする
  • 管理職に占める女性の割合を「2027年までに30%」、「2030年までに40%」を達成すること
  • 達成できない場合は罰金あり

段階的にクオータ制を導入し、女性の社会参画を促進しています。

アメリカ

アメリカでは、企業役員のクオータ制が法律で定められているわけではありません。

ただし、証券取引所であるナスダックやカリフォルニア州など、各州において導入が進められています。

ナスダックでは、2022年8月から順次、すべての上場企業を対象に取り組みを実施しています。

具体的な取り組み内容は以下のとおりです。

  • 取締役について女性から少なくとも1人の選任
  • 取締役について情報開示

これらを達成できない場合は、企業は弁明責任を負うことになります。

また、カリフォルニア州では、2018年に取締役へのクオータ制を導入しました。

国単位でなくとも、クオータ制を導入した事例といえるでしょう。

参考:平成23年版男女共同参画白書 | 内閣府男女共同参画局 (gender.go.jp)
参考:「共同参画」2022年6月号 | 内閣府男女共同参画局 (gender.go.jp)
参考:【2023年更新】世界一ジェンダー平等の国=アイスランドのお話 | NHK・SDGs 未来へ17アクション

注意!大学の「クオーター制」とは別物

ここで、間違えやすい「クオーター制」についても確認しておきましょう。

クオーター制とは、大学の4学期制を指します。「前期」「後期」で区切られた授業期間を、さらにそれぞれ前半・後半の2つの期間に分割したものです。

「第1ターム」「第2ターム」「第3ターム」「第4ターム」などと呼ばれます。

授業を短期間で集中的に受講することで、教育効果の向上が期待される一方、学生がボランティアや留学に挑戦しやすくなります。

「クオータ制」と「クオーター制」の名前はよく似ていますが意味は異なり、混同しやすいので注意が必要です。

出典:広島大学|クオーター制の導入

日本にもクオータ制の必要性が問われている

諸外国と比べると、日本のジェンダー・ギャップ指数は非常に低いといえます。

これは女性の社会参画に課題があることを示唆しています。

そのため、政治や経済分野において、女性が活躍しやすい環境や制度を整えていくことが必要です。

ジェンダー・ギャップが比較的少ない海外の事例を見ると、クオータ制を導入しているケースが多い傾向です。

特に、政治分野では、クオータ制を取り入れる政党が増えるほど、女性の参画率が上昇しています。

クオータ制の導入で女性の社会進出への課題が完全に解決するわけではありません。

しかし、ジェンダーレスや人材の多様化を促進する手段となり得ます。

女性の声が反映された政策や事業が増加すれば、より持続可能な社会の実現に近づくでしょう。

GREEN NOTE
GREEN NOTE編集部

『GREEN NOTE(グリーンノート)』は環境・社会課題をわかりやすく伝え、もっと身近に、そしてアクションに繋げていくメディアです。SDGs・サステナブル・ESG・エシカルなどについての情報や私たちにできるアクションを発信していきます!

みんなで紡ぐサステナブル

一人ひとりの小さなアクションの積み重ねで
サステナブルを実現していく。
まずはたくさんの人に知ってもらうことから一緒に始めてみませんか?

SNSでシェアする
クリップボードにコピーしました

知ってほしい「GREEN NOTE」の
大切にしていること

サステナビリティとSDGsが
すぐわかるニュースメディア
  • 分かりやすく
    伝える
  • もっと
    身近に
  • アクション
    に繋げる
GREEN NOTE
(グリーンノート)アプリ

GREEN NOTEスマホアプリでエシカル・サステナブルをアクションに変えていきませんか?

  • ◎サステナビリティ/ SDGsに関する国内・海外の最新動向および話題のニュース情報を厳選して毎日お届け!
  • ◎あなたの声を企業に届けよう!大手企業との共創プロジェクトに参加できる!
  • ◎プロジェクトへの参加でポイントをGET!貯まったポイントをサステナブルな特典に交換しよう!
スマホ版のGREEN NOTEアプリの画像
GREEN NOTE APP
Contact
  • 記事掲載についての
    お問い合わせ

    GREEN NOTEへの記事掲載をご検討の方は
    こちらよりご連絡ください。

  • 消費者リサーチ
    についてのお問い合わせ

    「エシカル・サステナブル関心層への消費者リサーチ」について
    のお問い合わせはこちらよりご連絡ください。