スーパーエルニーニョで異常気象が日常化する!?私たちにできる備えとは
2023年から続いているエルニーニョ現象が、温暖化の影響も受け異常なレベルに達し、スーパーエルニーニョ現象に拡大しています。
2024年には、2月にもかかわらず25℃を超える記録的な暖冬となったかと思えば、豪雪による甚大な被害を受けた地域もありました。
本記事ではスーパーエルニーニョ現象とはどのような異常気象なのか、私たちの生活に与える悪影響とともに解説します。
普段から講じておくべき対策や、温暖化対策のために一人ひとりができることについても紹介します。
「異常」気象を「日常化」させないためにも、今地球で何が起きているのか把握しましょう。
スーパーエルニーニョ現象とは?
スーパーエルニーニョ現象について説明する前に、エルニーニョ現象とはどのような異常気象か説明しましょう。
エルニーニョ現象とは、平年より高い赤道太平洋東部の海面水温が、1年以上継続する現象です。
逆に、同海域で海面水温が平年より低い状態が続く現象はラニーニャ現象と呼ばれます。
スーパーエルニーニョ現象は、東側と西側の水温差が極端に大きい状態です。
スーパーエルニーニョ現象が発生すると、異常気象が頻繁に起こるといわれています。
海洋や大気に関する調査や研究を行っているアメリカ海洋大気庁(NOAA)の気候予測センターによると、2023年11月~2024年1月の太平洋地域の海面水温は、平年より2℃高かったとのことです。
この水準を突破したことは過去に6回だけなので、非常に強いエルニーニョ現象が発生していることが分かるでしょう。
参考:CNN|世界の異常気象に関係、「スーパーエルニーニョ」続く
エルニーニョ現象はどのようにして起こるのか
エルニーニョ現象の発生には、太平洋を東から西に向かって吹く貿易風と呼ばれる風が影響しています。
通常は貿易風が暖かい海水を東から西へと押し込んでいるので、太平洋西側の水温が高い状態です。
しかし、何らかの影響で貿易風が弱まることがあります。
貿易風が弱まると、西側に押し込まれていた暖かい海水が東側に戻ってしまうのです。
すると今度は太平洋東側の水温が高くなり、西側の海は暖かい水がなくなるので寒くなります。
この状態がエルニーニョ現象です。
通常は、エルニーニョ現象が発生した翌年の2~3月頃になると、赤道太平洋東部の水温が下がり始め、やがてエルニーニョ現象は終息します。
エルニーニョ現象発生時の日本の気候の特徴
エルニーニョ現象が起きているときは、日本の気候、特に夏と冬に顕著な特徴が現れます。
【夏の特徴】
- 気温は低く、日照時間も少ない
- 降水量が多い
- 梅雨入りが早く、梅雨明けは遅い
【冬の特徴】
- 気温は高く、日照時間は少ない
- 降水量が多い
2023年の冬はエルニーニョ現象の影響を受けたため、暖冬になりました。
地球の海面水温は上昇の一途をたどっている
JAXAは、2002年から地球の海面水温に関するデータを公表しています。
これによると、「2002年から2011年の10年」と「2012年から2022年の10年」を比較した際、海面水温が明らかに上昇していることが分かります。
特に2023年は、観測開始以来過去最高の海面水温を記録しました。
日本周辺の海域に着目してみると、東北・北海道沖の海面水温は5℃以上も高い状態です。
2023年の北海道札幌市の記録的な猛暑は、記憶にも新しいでしょう。
このままの勢いで海の温度が上昇すると、海面自体も上昇します。
2100年には日本が沈没するとの予測もあるほどです。
関連記事:海面上昇は地球温暖化が原因!2100年に日本は沈む?
参考:JAXA|気候変動2023 第1回:海面水温の上昇とエルニーニョ現象
海面水温の上昇により脅かされる生態系
海面水温の上昇は、さまざまな生態系に影響を及ぼします。
餌自体の減少はもちろん、適切な水温を求めて魚が生息地を変えることにより、その魚を捕食していた哺乳類も食料不足に陥ってしまいます。
自然界は食物連鎖で成り立っているので、ひとつの生態系が乱れると全体に影響が及んでしまうのです。
日本の水族館でも人気のあるケープペンギンは、絶滅が危惧されています。
近い将来、水族館から姿を消してしまうかもしれません。
関連記事:ペンギンが絶滅危惧種に認定!15年後には居なくなる?襲いかかる驚異と我々にできること
ホッキョクグマも、絶滅が危惧されるレッドリストに指定されました。
餌となるアザラシの減少で食料不足に陥ったホッキョクグマが、人を襲うニュースも報道されています。
昨今、日本でも熊による人への被害が急増していますが、こうしたニュースはますます増えていくでしょう。
スーパーエルニーニョ現象が私たちの生活に与える影響
エルニーニョ現象自体は温暖化が深刻化する以前から発生しており、温暖化が直接の原因ではありません。
問題なのは、温暖化の影響で海水の温度そのものが上昇していることが原因で、一般的なエルニーニョ現象ではなく異常なエルニーニョ現象(スーパーエルニーニョ現象)が起きていることです。
スーパーエルニーニョ現象は、私たちの生活にどのような影響を与えるのでしょうか。
異常気象による災害
スーパーエルニーニョ現象による1つ目の影響は、異常気象が発生しやすくなることです。
アメリカ海洋大気庁(NOAA)の気候解折センター(CPC)によると、エルニーニョ現象が起きている間は、異常気象の発生件数が世界中で増加することが分かっています。
具体的な過去事例としては、通常は雨が降らない南米西部の砂漠地帯で雨が降り、エクアドルでは記録的な大雨による洪水が発生しました。
一方で、大雨がよく降るインドネシアやフィリピンなどの東南アジア諸国では雨が降らず、干ばつが発生しました。
洪水・熱波・干ばつによる山火事など、異常気象による被害が世界各地で発生しています。
日本では、梅雨期に記録的豪雨が観測される事例がたびたび発生しています。
また、スーパーエルニーニョ現象と温暖化による海水温度の上昇は、豪雪の原因にもなります。
エルニーニョ現象下における日本の冬は基本的に暖冬傾向ですが、寒気がシベリアから日本海へ移動してくると、寒気が日本列島を通過する際に温められ、大量の水蒸気が発生します。
この水蒸気が北日本や日本海側に大量の雪を降らせ、記録的豪雪の原因となるのです。
農作物の不作
スーパーエルニーニョ現象による2つ目の影響は、農作物の不作です。
エルニーニョ現象がもたらす日本の冷夏や長引く梅雨は、農作物の収穫量減少を招きます。
夏にエルニーニョ現象が発生した場合、地域によってばらつきがあるものの、冷害による水稲生育の阻害リスクが高まります。
このリスクは東北地方で1.7倍、全国では2.1倍程度高くなるといわれています。
また、エルニーニョ現象による暖冬も、農家を悩ませます。
冬に旬を迎える野菜や果物は、一定の低い温度により栄養が増したり、色づきがよくなったりするものもあります。
しかし、暖冬によって気温が高い状態が続くと、生育不良になったり、病害虫の被害を受けやすくなったりします。
参考:岩舘康哉(岩手県農業研究センター)|夏季のエルニーニョ現象の発生が水稲の作況に及ぼす影響
水産業への影響
エルニーニョ現象は、水産業にもダメージを与えます。
これがスーパーエルニーニョ現象による3つ目の影響です。
水温の変化に伴って漁獲地も変わってしまうため、各地の漁獲高が大きく変化すると予想されます。
また、冷水を好む魚は水温の上昇により北上し、やがて日本近海から姿を消してしまうでしょう。
観光産業の衰退
スーパーエルニーニョ現象による4つ目の影響は、観光産業の衰退です。
四季がある日本では、季節を活かした活動や体験を提供するサービス業が多く存在します。
例えば、冬はスキー場や雪まつり・かまくら、夏はプール・海水浴場・花火大会など。
特定の季節にのみ営業できる観光産業は、スーパーエルニーニョ現象の影響で季節が乱れたり、気温が急上昇・急低下したりすることで営業が困難になってしまいます。
雪まつりや凍結した池を利用したスケート施設などは、暖冬で気温が高ければ営業できません。
スーパーエルニーニョ現象の発生によって営業利益が急落し、廃業に追い込まれる可能性もあります。
スーパーエルニーニョ現象が示唆する「地球沸騰化」
2023年7月は、観測史上最も暑い月となりました。国連の事務総長であるアントニオ・グテーレス氏はこの報告を受け、「地球温暖化の時代は終わり、地球沸騰化の時代が到来した」と語り、危機感をあらわにしています。
スーパーエルニーニョ現象は、まさに「地球沸騰化」を示唆しているといえるでしょう。
本来であれば、エルニーニョ現象によって日本は冷夏になるはずです。
しかし、2023年はエルニーニョ現象が起きていたにもかかわらず、記録的猛暑が発生しました。
2023年は11月や12月でも20℃を超える日があり、「秋」がなかったことが印象的でした。
2024年2月にも夏日を観測するなど、もはや四季も狂い始めています。
さらに、1年程度で終わるはずのエルニーニョ現象が2年ほど続く年もありました。
これまでは、ある程度気候の予想ができていたエルニーニョ現象も、昨今は予測不可能な状況に陥っています。
参考:国連広報センターブログ|「地球沸騰化の時代」の気候アクション
スーパーエルニーニョ現象への対策は?今すぐできる3つのこと
エルニーニョ現象がもたらす異常気象による被害は、とどまることを知りません。
世界中どの地域に住んでいても、いつ災害が降りかかるか分からないのです。
ここからは、今日からすぐにできる以下3つの対策を紹介します。
- 災害発生時を見据えた備蓄を行う
- 災害時の対応について家族で話し合う
- 個人でもできる温暖化対策を行う
災害を見据えた備蓄を行う
みなさんのご家庭では、水や食料・避難所生活に必要な物資の備えはできていますか?
2011年3月11日に発生した東日本大震災は、多くの犠牲者を出しました。改めて、防災の必要性や普段からの備蓄が大切なことを実感したことでしょう。
しかし、あれから10年以上が経ったことで、意識が薄れてきた人もいるのではないでしょうか。
ここで、内閣府が2022年9月に行った「防災に関する世論調査」の概要を紹介します。
地震対策に関する質問には、以下のような回答が得られました(※複数回答可)。
- 食料・飲料水、日用品、医薬品などを準備している:40.8%
- 停電時に作動する足元灯や懐中電灯などを準備している:54.2%
- 特に対策は取っていない:13.9%
注目したいのは、食料や飲料水・生活物資を準備している回答が多い一方で、「特に対策は取っていない」と答えた人の数値です。
改めて、災害時の備蓄について考えましょう。
災害用持ち出し袋を用意し、最低3日分、できれば1週間分の食料・飲料水を備蓄しておきましょう。
半年に1回ほどは中身を確認し、賞味期限間近のものは入れ替えたり、買い足したりするなどの対応も忘れずに。
参考:内閣府|「防災に関する世論調査」
参考:環境省|ecojin「猛暑や大雨によって起こる災害にどう備える? 気候変動の観点から、防災について考えてみよう」
災害時の対応について家族で話し合う
災害時に家族間でどのように連絡を取り合うか、最寄りの避難所や避難経路の確認はできていますか?
内閣府が2022年9月に行った「防災に関する世論調査」では、「自然災害への対処などを家族や身近な人と話し合ったことがある」と回答した人は61.4%(ない:36.9%)でした。
「ない」と回答した人が4割近くもいることに驚きます。
特に離れて暮らす家族がいる場合、安否確認をどのように行うか、しっかり話し合っておくべきでしょう。
個人でもできる温暖化対策を行う
エルニーニョ現象がもたらす災害に備えることも大切ですが、私たち一人ひとりが温暖化対策を意識して行うことも大切です。
日頃から以下のようなアクションを意識し、積極的に取り入れていきましょう。
- 不要な電気はこまめに消す
- エアコンの温度設定を見直す
- 使わない電気製品はコンセントからプラグを抜く
- 車の使用を控え、電車・バス・自転車を利用する
- 買い物にはマイバッグを持参する
- 環境に配慮した製品を購入する
- リデュース・リユース・リペア・リサイクルする
以下、国際連合広報センターのページでは、「個人でできる10の行動」が紹介されています。
1つ1つは小さなアクションでも、みんなで取り組めば大きな変化が生まれるでしょう。
プリントアウトすれば小冊子として持ち歩くこともできるので、常に携帯して行動を習慣化させましょう!
まとめ
今回は、スーパーエルニーニョ現象の概要から、私たちの生活に与える悪影響と対策について紹介しました。
このままでは、異常気象が恒常化してしまう日もそう遠くありません。
そうなる前に、今こそ地球からのSOSに耳を傾けるべきです。
一人ひとりがこの異常事態をしっかりと受け止め、今日からでもできる温暖化対策にひたむきに取り組んでいくことが「地球沸騰化」を止めるカギになるでしょう。
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