エシカルライフ

SDGsとプラスチックごみの関係を学ぼう!今からできる取り組みを紹介

2019年時点で、世界のプラスチックごみは20年間で倍以上に増えています。

2020年のプラスチック生産量は前年に比べて減ってはいるものの、コロナ禍によって家庭から排出されるプラスチックごみは増えています。

特に増えているのが不織布マスクのごみです。

不織布マスクは紙のような見た目から可燃ごみとして扱われることがありますが、プラスチック製です。

2020年には世界の年間製造量の3%にもおよぶ、約16億枚のマスクが海に流れ出たとの予測もあります。

また、容器包装プラスチック類は19年よりも10.5%増えたとのデータもあり、コロナ渦でのテイクアウトの普及によるごみの増加も懸念しなければなりません。

そこで今回は、プラスチックごみが地球にどのような影響を与えているか、SDGsとの関係性についても紹介します。

深刻化する「プラスチック問題」

実際に、プラスチックごみは世界にどのような影響を与えているのでしょうか。

プラスチックが及ぼす悪影響

プラスチックは、もともとゴムの木の樹液を原料として作られていましたが、現在は石油から大量生産できるようになっています。

そして、加工のしやすさや素材の安さから、私たちの暮らしの中に存在する身近な材料として、さまざまな製品に用いられるようになりました。

部屋の中を見渡せば、電化製品や台所用品、スマホやパソコン、文房具などほとんどのものにプラスチックが使用されているでしょう。

1950年以降に生産したプラスチック量は83億トン以上にものぼり、そのうち63億トン(約76%)が廃棄されています。

そのうち、リサイクルされているのは約16%程度。

24%は焼却され、残りは不法投棄(焼却)がされています。

出典:「プラスチックを取り巻く国内外の状況」(Plastics Smart)

プラスチックが燃焼すると、温室効果ガスが発生するため、ごみが増えるほど地球温暖化を促進させることになります。

日本は狭い国なので、埋め立て処分や焼却後の灰を埋めるための土地にも限りがあります。

今後20年で日本の埋め立て場や最終処分場は満杯になり、ごみを埋め立てられなくなるともいわれています。

そして、世界的に最も注目されているプラスチック問題が、次で詳しく説明する海洋汚染です。

特に問題なのは「海洋汚染」

海に捨てられたり流されたりしたごみは、長い間漂流します。

海岸に漁具やポリタンク、洗剤容器などが漂着しているのを、見たことがある人も多いでしょう。

この海洋プラスチックごみは、さまざまな側面から悪影響を及ぼしています。

代表的な問題が海洋環境への影響で、特にレジ袋などはエサと間違えて、海の生き物が飲み込みやすく、ウミガメを中心に多くの被害が出ています。

マイクロプラスチック」と呼ばれる細かく砕けた5ミリメートル以下のプラスチックごみは、小魚でも誤飲しやすく、食物連鎖によって最終的には人間の体内に蓄積されていきます。

プラスチックには「自然分解されない」という特色があります。

私たちの身近なプラスチック製品が分解される最大年数は以下のとおりです。

レジ袋 アルミ缶 ペットボトル 釣り糸
分解される年数 20年 200年 400年 600年

出典:「海洋プラスチック問題について」(WWF JAPAN)

世界経済フォーラム(2016)によると、「2050年には海洋プラスチック生産量が海洋全体の魚の量を上回る」との想定が発表されています。

海洋プラスチックごみの問題が深刻化しているのは、プラスチックそのものの性質も影響しているといえるでしょう。

出典:「The New Plastics Economy Rethinking the future of plastics」(世界経済フォーラム)

また、環境面以外には、漂流しているプラスチックごみが船舶航行への障害にもなっています。

さらに、漁獲量が減少したり、景観が損なわれたりと、観光や漁業などの海に関連のあるところでは全般的に悪影響があるのです。

当然ながら、沿岸地域に住む人たちにとっては、プラスチックごみが増えることで漂流物も多くなるため、不衛生で暮らしにくい環境となります。

関連記事:海洋汚染の本当の原因は?4割が食品包装のプラゴミ

プラスチック問題に関係する3つのSDGs目標

SDGsの中にもプラスチック問題が深く関係する目標が3つあります。

【目標3】すべての人に健康と福祉を

SDGsの目標3は、年齢に関係なく、すべての人たちが健康的な生活ができるようにして、福祉を推進していくことが目的です。

海洋プラスチックは、海洋資源の破壊になるだけではなく、海産物を食べる人間の健康にも影響するといわれています。

特にマイクロプラスチックは、海に流された排水などの有害な化学物質を吸着しやすく、海産資源をとおして、有害物質を人間が吸収することになるのです。

そのため、プラスチックごみを減らす取り組みは、安全な食品の確保にもつながり、健康な暮らしを続けるためにも重要です。

注目されている「生分解性プラスチック

プラスチック問題の解決に、近年「生分解性プラスチック」が注目されています。

生分解性プラスチックとは、微生物の働きによって水と二酸化炭素に分解されるプラスチックのことです。

生分解性プラスチックには、微生物系、化学合成系、天然系の3種類があります。

その多くは土壌環境での分解を想定されており、水中で分解できるのは微生物系のプラスチックのみで、ほかは水中で分解が起きにくい性質があります。

生分解性ひとつをとっても、分解能力を考慮したプラスチックを選ぶ必要があるでしょう。

日本においては、JBPA(日本バイオプラスチック協会)の「バイオマスプラ識別表示制度」などがあります。

環境省は、このような植物由来だったり分解され土に戻る性質を持っていたりする「バイオプラスチック」の普及に向け、2022年度以降に認証制度を設けるとしています。

ヨーロッパではTUV AUSTRIA社の海洋生分解認証「OK biodegradable MARINE」などの認証制度があります。

【目標12】つくる責任つかう責任

SDGs目標12では、生産と消費活動が今後も続けられるようにバランスを整えて、良いサイクルを確保し、地球に負担の少ない生活を目指すことが目的です。

私たちの生活に欠かせないプラスチックは、限りある地球の資源から作られています。

次世代にも必要なエネルギーや自然環境を残すためには、資源の無駄遣いや過剰生産をなくさなければなりません。

特に日本は、世界各国と比べてリサイクル率が低い現状があります。

2018年のリサイクル率を見ると、ドイツ、スロベニア、オーストリア、オランダ、ベルギーといった国々ではリサイクル率が50%を超えているにもかかわらず、日本は19.9%と、低い割合で留まっています。

出典:「一般廃棄物の排出及び処理状況等(平成30年度)について」(環境省)
出典:「Recycling rate of municipal waste」(Eurostat)

日本のリサイクル率が低い理由のひとつに、ごみ処理方法が挙げられます。

日本では、廃棄物は焼却されることがほとんどで、ごみの資源化が進んでいません。

また、プラスチック製品のほとんどが複合樹脂だったり、添加物が含まれていたり、汚れていたりすることで、リサイクルが難しいといった理由も挙げられます。

日本のリサイクル方法:サーマルリサイクル

日本のリサイクルのほとんどは、焼却時に発生するエネルギーを発電などに利用する「サーマルリサイクル」です。

海外ではサーマルリサイクルはリサイクルとみなされていないことも、リサイクル率が低い原因となっています。

リサイクル率を高めるには、以下のような取り組みが必要です。

  • 「3R」の実施
  • 同じ材質を集める
  • 包装容器はラベルを剥がして洗って捨てる
  • プラスチック利用の削減
  • 生ごみの堆肥化
  • 廃棄物集積所の整備
  • 不法投棄の監視体制の整備

【目標14】海の豊かさをまもろう

SDGs目標14は、海と海産物などの資源を今後も守りながら、生活に必要な範囲で利用し続けることを目的としています。

世界で最も生産されているプラスチック製品は容器包装です。

特に日本は食品などを必要以上に包む「過剰包装」が多く、人口一人あたりのプラスチック容器包装廃棄量はアメリカに次いで日本が世界で2番目に多くなっています。

出典:「SINGLE-USE PLASTICS」(UNEP)

また、コンビニの普及が進んでいることからも、国内で流通しているレジ袋は年間400億枚にものぼるとされています。

ペットボトルにおいては、年間出荷量が227億本にも達します。

海洋プラスチックが増えると水質悪化や海の生き物の命に影響するため、将来的に豊かな海を残すためにはプラスチックごみを減らさなければなりません。

出典:「プラスチックを取り巻く国内外の状況」(環境省)

2019年5月、スイスで開催された国連環境計画(UNEP)の会議で、プラスチック廃棄物の輸出を制限する条約の改正案に日本を含む180カ国近くが合意しました。

日本は、リサイクル処理にかかる費用を捻出できないなどの理由から、廃プラスチックをリサイクルとして海外に輸出していました。

その量は、年間約150万トンにもおよびます。

しかし、主な輸出国だった中国が輸入を停止したことや、今回の改正で輸入国の同意がなければ輸出できなくなったことから、日本にある大量のプラスチック廃棄物が行き場を失っています。

今はタイやマレーシア、ベトナムなどアジア諸国に輸出していますが、回収と分離の収支が合わない、焼却によるCO2排出など、日本の廃棄物処理には多くの課題が残されています。

これらの課題の解決には、プラスチック使用量の削減や、効率的な活用が重要です。

【SDGs・プラスチックごみ削減】国と企業の取り組み

プラスチック削減に向けて、国と企業が行っている取り組みについて解説します。

レジ袋有料化

レジ袋有料化は、プラスチックごみ削減に向けた代表的な国の取り組みで、「レジ袋の必要性の見直し」や「過剰なプラスチック利用の削減」が目的です。

2020年7月に取り組みがスタートして、レジ袋の代わりにエコバックを持参するよう、さまざまな呼びかけが行われてきました。

現在では、レジ袋が有料であることが当たり前になり、エコバックの活用も、多くの人に浸透しているようです。

関連記事:レジ袋有料化のメリットとは?「本当に効果があるの?」の疑問に迫る!

顧客用容器包装のリサイクル

生産量が多い容器の包装に対しては、多くの企業で、削減への取り組みが進められています。

また、カップなどの容器も含めてプラスチック製品の場合でも、リサイクルやリユースできるような工夫がされています。

企業によっては、製品の設計段階からリサイクル可能なデザインを目指し、消費者へリサイクルする旨を分かりやすく伝えて使用後の回収と再資源化につなげる努力をしているところもあるのです。

P&Gジャパン合同会社では、詰め替え用パウチのパッケージを、リサイクルしやすい素材に変える取り組みをしています。

従来のパウチはその特徴によりリサイクルが難しく、そのほとんどが焼却廃棄されていました。

そこに目を付け、ポリエチレンベースのフィルム素材を用いたパウチを開発。従来と比較して約60%の削減が成功したそうです。

バイオプラスチック容器の導入

バイオプラスチックとは、植物由来の「バイオマスプラスチック」と、微生物によって分解される「生分解性プラスチック」の総称です。

石油を原料としないプラスチックや、自然に分解されるプラスチックを使用することで、地球資源への負担が軽減でき、焼却処理で発生する温室効果ガスも減らせます。

そのため、現在では多くの企業でバイオプラスチック容器の導入が開始されており、環境に優しい製品を目にする機会も増えました。

株式会社カネカでは、水中でも生分解が可能なポリマー「Green Planet®」を開発。

世界初、PHBH(微生物系の生分解性プラスチック)の工業化に成功しています。

現在、株式会社セブン-イレブン・ジャパン、株式会社資生堂、株式会社伊藤園など、多くの企業でカネカの生分解性ポリマーが導入されています。

【SDGs・プラスチックごみ削減】一人ひとりができる取り組み

プラスチックごみ削減のために一人ひとりができる取り組みについて解説します。

エコバック・マイボトル・マイストローを持参する

レジ袋の代わりにエコバックを持参する人は増えていますが、ほかにもマイボトルやマイストローを活用することで、ペットボトルなどの身近なプラスチックごみの削減につながります。

最近ではマイストローが注目されるようになり、店舗で提供している商品に導入されていたり、販売を開始したりする企業が増えました。

株式会社スターバックスでは、2021年3月からシリコンゴムを使用したマイストローの販売を開始しました。

また、紙ストローへの切り替えやタンブラー・マグカップの販売もしており、プラスチックごみを減らすための取り組みを積極的におこなっています。

詰め替えできる製品を選ぶ

詰め替えできる製品は洗剤やシャンプー、調味料など豊富な種類が企業側から提供されています。

ボトルなどの容器に入っている通常の製品と比べて、詰め替えタイプはプラスチックごみの削減だけでなく購入コストも抑えられて一石二鳥です。

プラスチックごみの分別を徹底する

リサイクルのためには、プラスチック製品やペットボトルなどの分別が重要です。

ボトル容器やビニール袋などの容器包装プラスチックは、汚れたものや分別不適物があると資源としてリサイクルすることができません。

汚れを洗い流してから出しましょう。

また、プラスチックでもストローや歯ブラシなどの容器包装ではないものは、普通ごみとして回収されます。

ごみの出し方は自治体によって異なります。自治体のルールにしたがって分別しましょう。

リサイクル率が増えるほど、海洋プラスチックや、焼却処理されるプラスチックが減らせます。

認証を受けたプラスチック製品を購入する

日本国内でのバイオマス由来製品の認証制度は、「バイオマスプラマーク」(JBPA)「バイオマスマーク」(JORA)が運用されています。

生分解性プラスチックの認証制度には、「グリーンプラマーク」(JBPA)があります。

また、国際的には、海水中での生分解性を証明する認証「OK biodegradable MARINE」があります。

環境に配慮された製品であることが一目で分かるため、マークが付いているものを選んで購入するだけで、取り組みに貢献できます。

まとめ

プラスチックのリサイクルには一定の技術が必要です。

複合樹脂でできていたり、汚れがあったり、異素材のものが混ざっている場合にはリサイクルができません。

そのためのコストを捻出する余裕がないことから、日本はごみの焼却大国と言われています。

また、廃プラスチックのほとんどを他国へ輸出し、処理しています。

ただし、ごみの焼却には大気汚染の問題が絡んでくるほか、ごみの輸出にもいくつかの規制がかけられるようになりました。

現在、日本でもレジ袋有料化をはじめとした、さまざまな取り組みが実施されていますが、全体のプラスチック廃棄量に対する影響は少ないのが事実です。

今後は、リサイクル率を高めるための工夫や、そもそもの使用量を減らす取り組みが重要になるでしょう。

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