今すぐ実践!個人・企業・地域で進めるSDGsの取り組みアイデア

昨今見聞きする機会が増えたSDGsですが、「SDGsは国や企業が取り組むもので、自分には関係ない」と思ってはいませんか?
SDGsの達成に求められているのは国や企業といったスケールの大きい話ではなく、実は私たち一人ひとりの行動です。毎日の暮らしの中で簡単にできる取り組みは意外と多いものです。
そこで本記事では、個人単位でのSDGsの取り組みから、企業や地域の事例まで分かりやすく紹介します。地球の未来を守るために、今からすぐにできることを始めましょう。
SDGsとは?基本と目的を分かりやすく解説
SDGs(エスディージーズ)とは「Sustainable Development Goals」の頭文字を取った言葉で、日本語では「持続可能な開発目標」と訳されます。2030年までに世界全体で達成すべき目標として、2015年の国連サミットで採択されました。
SDGsのキーワードは、「leave no one behind(誰一人取り残さない)」です。先進国・発展途上国関係なく世界中の国々が協力し、貧困や紛争、気候変動、教育といったさまざまな問題を解決しようとする取り組みです。
誰一人置き去りにされることなく、地球上のすべての人が幸せに暮らせる社会の実現を目指す取り組みこそがSDGsなのです。
参考:外務省|SDGsとは?
SDGs(持続可能な開発目標)とは何か
SDGsで着目すべきは「持続可能」の部分でしょう。持続可能とはいい換えれば、「何かをし続けられる」ことです。
どんなに優れた対策を講じても、一過性のもので継続できなければ意味がありません。世界中で起きている課題に向き合い、世界の国々や人々が一丸となって取り組みながら、未来の人たちが安心して暮らせるようバトンをつないでいくことが必要です。
なぜ今SDGsの取り組みが重要なのか
昨今、気候変動による気温の上昇や異常気象、発展途上国を中心とした貧困や教育格差などの問題が顕在化しています。
例えば、中央太平洋に位置するツバルは平均海抜が2mほどしかなく、このまま温暖化が進めば沈んでしまう国です。詳しくは、以下の記事で紹介しています。
関連記事:「温暖化で沈む国ツバル」の真相は?島国が直面する温暖化の影響とは
2024年時点で深刻な貧困を抱える人々の割合は全世界で11億人にも上り、そのうち40%が紛争地域など危険な国で暮らしていると明らかになりました。こうした問題を解決するには、私たち一人ひとりが当事者意識をもち、SDGsを意識した行動を実践する必要があります。
参考: United Nations Development Programme|多次元貧困層は11億人、うち約5億人は紛争下で生存に苦闘
17の目標と169のターゲット
SDGsには、全部で以下17個の大きな目標があります。
- 目標1:貧困をなくそう
- 目標2:飢餓をゼロに
- 目標3:すべての人に健康と福祉を
- 目標4:質の高い教育をみんなに
- 目標5:ジェンダー平等を実現しよう
- 目標6:安全な水とトイレを世界中に
- 目標7:エネルギーをみんなに そしてクリーンに
- 目標8:働きがいも経済成長も
- 目標9:産業と技術革新の基盤をつくろう
- 目標10:人や国の不平等をなくそう
- 目標11:住み続けられるまちづくりを
- 目標12:つくる責任 つかう責任
- 目標13:気候変動に具体的な対策を
- 目標14:海の豊かさを守ろう
- 目標15:陸の豊かさも守ろう
- 目標16:平和と公正をすべての人に
- 目標17:パートナーシップで目標を達成しよう
17それぞれの目標はさらに169個の細かいターゲットに分けられ、より具体的な行動規範を示しています。例えば目標1の「貧困をなくそう」には、「極度の貧困を終わらせる:2030 年までに、現在1⽇1.25 ドル未満で⽣活する⼈々と定義されている極度の貧困をあらゆる場所で終わらせる」といったターゲットがあります。
参考:環境省|すべての企業が持続的に発展するために - 持続可能な開発目標(S D G s エスディージーズ )活用ガイド -
5つの「P」
SDGsの17の目標を「P」から始まる下記の5つのキーワードに分類すると、相互の関係性がよりイメージしやすくなります。
キーワード | 内容 | 該当するSDGs目標 |
---|---|---|
1. People(人間) | すべての人の人権を尊重し、平等に潜在能力を発揮できるようにする。 貧困と飢餓を終わらせ、ジェンダー平等を達成する。 すべての人に教育、水と衛生、健康的な生活を保障する。 |
目標1、2、3、4、5、6 |
2. Planet(地球) | 責任ある消費と生産の実施、天然資源の持続可能な管理、気候変動への対応を通して、地球を守る。 | 目標7、8、9、10、11 |
3. Prosperity(豊かさ) | すべての人が豊かで充実した生活を送れるようにする。 自然と共存し、経済、社会、技術を進展させる。 |
目標12、13、14、15 |
4. Peace(平和) | 平和かつ公正で、すべての人が受け入れられる世界を目指す。 | 目標16 |
5. Partnership(パートナーシップ) | 国連機関、政府、民間、市民など多様な関係者が協力する。 | 目標17 |
SDGsは「経済」「社会」「環境」の3つの側面でバランスのとれた、持続可能な開発目標です。
今すぐできる!個人で始めるSDGsの取り組み
SDGsを達成するためには、一個人の小さな心がけが重要です。例えば、電気や水を大切に使う、食べ物を無駄にしないなど、簡単な取り組みが多くあります。
今からすぐに始められる具体的な取り組み例を見てみましょう。
節電・節水を意識しよう
電気や水を使いすぎると資源の無駄使いになるのはもちろん、地球温暖化の原因にもなります。電気はイメージしやすいですが、水をくみ上げる際のポンプ使用や水の浄化、下水処理など、水の利用にも多くのエネルギーを要しています。
節電の取り組みとしては、使っていない部屋や廊下の電気を消す、冷房は温度を高く設定し扇風機を活用する、冷蔵庫に物を詰め込みすぎないといったものがあります。
節水の取り組みとしては、手洗いや歯磨きの際に水を出しっぱなしにしない、節水シャワーヘッドへ交換する、ふろ水を洗濯に利用するなどの工夫ができるでしょう。
エコバッグやマイボトルを持参してプラスチックごみを減らそう
世界では、毎年約800万トンのプラスチックごみが海に流出しているとのデータがあります。特に問題なのが、紫外線や波の影響で細かく粉砕されたマイクロプラスチック(5ミリ以下の微細なプラスチック)です。マイクロプラスチックは回収が困難なうえに、魚が飲み込んでしまうと食物連鎖により化学物質が濃縮していくため、人体への影響も懸念されています。
そこで、まずはプラスチックを減らすことを意識しましょう。買い物にはエコバッグを持って行く、マイボトルを持参しペットボトル飲料は極力買わないなどの取り組みが挙げられます。
食品ロスを防ぐ買い方・食べ方をしよう
環境省のデータによると、2022年度の日本の食品ロス量は年間472万トンにも上ります。これは1人あたり、お茶わん1杯分のごはんを毎日捨てていることと同義です。
世界では約24億人、つまり3人に1人は安定して食事ができていません。
食品の製造にあたっては、製造・輸送・販売の過程でCO2が排出されます。472万トンの食品ロス分を生産するために排出されたCO2は、なんと約1,046万トンにもなるのです。
食品ロスを減らすことは食糧不均衡(※)の解消とCO2排出量の削減に直結します。食品を買いすぎない、食べる量だけ料理する、すぐに食べるものは賞味期限が近い商品から選んで買う(商品棚の手前から取る)、冷凍保存をするなど、食品ロスを減らす取り組みを始めましょう。
食糧不均衡(※):世界で十分な食料が生産されているにもかかわらず、一部の地域では飢餓が発生し、別の地域では過剰な食料が廃棄するといった分配が均衡でない状態
参考:環境省|我が国の食品ロスの発生量の推計値(令和4年度)の公表について
参考:環境省|ecojin「もったいない」だけじゃない、食品ロスと環境問題
ごみの正しい分別でリサイクルに貢献しよう
近年、家庭から出る資源ごみの回収ができる場所が増えてきました。例えば、スーパーではペットボトルや空き缶、食品トレー、卵パック、牛乳パック、家電量販店では使用済みの家電や電池、インクカートリッジといったものがリサイクルされています。これらを活用すれば、廃棄されることなく再利用できます。
ごみを出す際には、市区町村ごとに決められたごみの分別ルールをしっかり守ることが大切です。分別ルールに従っていない資源ごみは、リサイクルされずに可燃ごみとして処理されることもあります。ごみの正しい分別はリサイクル率を高め、持続可能な社会をつくることに貢献します。
企業やお店でのSDGs取り組み事例
昨今、多くの企業がSDGsに取り組んでいます。企業がSDGsに取り組むことは、社会課題の解決はもちろん企業ブランドの価値向上にもつながるでしょう。
再生可能エネルギーの利用、環境に優しい素材を使う、フェアトレード商品に注力するなど、企業ごとの工夫が見られます。こうした企業の取り組みを知ることで、商品やサービスを購入する際に地球に優しい商品や企業を選ぶ指標にできます。
各企業の取り組みを見てみましょう。
再生可能エネルギーの導入によるCO2削減
近年、RE100(※)に参加する企業が増えています。例えば、リコーは2017年4月に日本企業で初めてRE100に参加しました。同社は事業で使用する電力の再生可能エネルギー比率を、2030年までに50%にする目標を掲げています。
2020年よりRE100に参加したキリンビールは、同年より順次再生可能エネルギーの導入を進めており、2024年1月より全工場・全営業拠点での購入電力を再生可能エネルギー100%にしています。
RE100(※):事業活動で消費するエネルギーを100%再生可能エネルギーで調達することを目標とする国際的イニシアチブ
参考:リコー|リコー、再生可能エネルギー使用率の2030年度目標を50%に引き上げ
参考:KIRIN|人の営みと共存する自然資本の課題解決により、未来にポジティブなインパクトを生み出すキリングループの統合的アプローチ
環境に優しい商品やサービスの導入
無印良品では、化粧品ボトルに使用済みペットボトルを使う、陳列用のハンガーやフックを再生紙に切り替えるなどの取り組みを行っています。同社は、2020年にプラスチック袋を廃止して紙袋に切り替えました。2022年には紙袋を有料化し、マイバックの利用を呼びかけています。
海洋プラスチックごみの問題は前半で触れましたが、こうした問題に取り組むのがパイロットコーポレーションです。同社は海洋プラスチックごみからリサイクルされた再生樹脂を使用した油性ボールペンを開発しました。ボールペンの機能性はそのままに、海洋プラスチックごみの削減を推進する国内初の取り組みです。
参考:PILOT|スーパーグリップG オーシャンプラスチック
フェアトレード商品を取り入れて国際貢献
フェアトレードとは、発展途上国の原料や製品を適正価格で購入することにより、立場の弱い生産者や労働者を守る貿易の仕組みです。
フェアトレード専門ブランドである「ピープルツリー」を運営するフェアトレードカンパニーは、環境負荷の少ない自然素材を用いた商品の企画開発や販売を手がけています。
こうした商品を選ぶことで、遠く離れた日本からでも途上国の人々の生活をサポートできます。衣類や雑貨、食料品までありとあらゆるものがそろっているので、ぜひサイトをのぞいてみてください。
国内を始め、海外企業が取り組むSDGsの事例は以下の記事でも紹介しています。ぜひ併せてご一読ください。
関連記事:国内&海外企業が行うSDGsの面白い取り組み15選
自治体・地域におけるSDGsの取り組み
自治体や地域住民が協力し住みやすいまちづくりに取り組むことも重要です。
みなさんがお住まいの地域でも、SDGsに関する取り組みが行われているかもしれません。自治体や地域での取り組み事例を見てみましょう。
地産地消による地域貢献
地域でとれた農産物をその地域で消費する地産地消は、輸送にかかるエネルギーを減らせるだけでなく、生産者と消費者の結びつきが強まるなど、地域活性化にもつながる取り組みです。
香川県の山間地域に位置する東かがわ市五名地区は、高齢化や鳥獣被害から地区の存続が危ぶまれていました。
そこで地元の有志が集まり、行政や香川大学の協力を得ながら地産地消の推進やイベントの企画を行っています。地元でとれた農産物や地域住民が捕獲したイノシシ肉などを販売するほか、郷土料理を提供するイベントなどを実施しています。その結果、県内はもちろん県外からも多くの人が足を運ぶまでになりました。
オーバーツーリズムの改善と観光客の分散化
岐阜県飛騨地方に位置する白川郷は、1995 年にユネスコ世界遺産に登録されたことで知名度が上昇し、国内外から毎年多くの観光客が訪れています。
特にライトアップ・イベント時には、住民数が600人ほどの地域に7,000〜8,000人もの観光客が訪れ、大渋滞や住民が地域に入れない問題が発生していました。このような状況を踏まえ、2019 年よりライトアップ・イベントは事前予約制となりました。
同県では白川郷以外の観光地へも観光客を分散させるべく、観光マップやWebサイトの作成、プロモーション強化に尽力しています。
参考:岐阜県庁|世界に選ばれる持続可能な観光の全県拡大と周遊化
子どもたち向けに循環型社会を体験できるワークショップを実施
女性向け月額制ファッションレンタルサービス「air Closet」を展開するエアークローゼットは奈良県生駒市と連携し、循環型社会を身近に体験できるワークショップを実施しました。
市内の公立小学校にて特別授業を実施し、児童から回収した洋服をショッピングモールで無償配布するものです。
家庭から手放される洋服は年間約75万トンにも及び、うち約50万トンが廃棄されています。同社の取り組みは、ワークショップを通じて子どもたちが衣服を取り巻く環境問題を実感できる貴重な場となったことでしょう。
参考:地方創生SDGs官民連携プラットフォーム|サーキュラーファッションを体験してSDGsの理解・浸透を推進
みんなで参加!SDGsの取り組みを広げよう
SDGsを達成するために大切なのは、みんなで協力することです。SNSでの情報発信、家庭や職場・学校での行動、地域イベントへの参加などが、周りの人にも良い影響を与えていくでしょう。
SDGsの輪を広げるためにできる取り組みを紹介します。
SNSで情報発信!小さな行動が社会を変える
SNSが身近になった今、自分のSDGs活動をSNS上で発信する人が増えています。例えば、お気に入りのマイボトルや環境に優しい商品の写真を投稿したり、フードロスや家庭ごみを減らすアイデアをシェアしたりするなど、取り組みは多岐に渡ります。「#SDGs」「#エコ」「#エシカル」といったハッシュタグが多く使われているので、検索してみてはいかがでしょうか。
SNSは、自分が知らない人にまで影響を与えられる強力なツールです。「いいな」と思う発信には進んで「いいね!」を付けたり、拡散したりすることで多くの人の目に留まり、SDGの取り組みを広めるきっかけになります。
SDGsイベントやキャンペーンへの参加
各地で行われているSDGs関連のイベントやキャンペーンに参加するのもおすすめです。「地域名 SDGs イベント」などと検索すれば、お住まいの地域で開催されるSDGsイベントを検索できます。都心部では週末に多くのSDGs関連イベントを開催しているので、お出かけの際に調べてみるのも良いでしょう。
例えば、関西SDGsプラットフォーム事務局では、SDGsに関する関西エリアのイベントをカレンダー形式で公表しています。
気になるイベントがあったら、ぜひ家族や友人を誘って参加してみてください。
まとめ
SDGsの基本や目的、個人・企業・地域自治体におけるSDGsの取り組みを紹介しました。SDGsは私たちの住む地域社会や、もっといえば地球を守るための世界共通の目標です。国や企業だけでなく、私たち一人ひとりの小さな行動が大きな力になります。
SNSでの情報発信やイベントへの参加を通じて、SDGsの輪を広げましょう。節電・節水、エコバッグ・マイボトルの利用、ごみの正しい分別など、小さなことでも続けることが大切です。「自分一人が何かしても変わらない」ではなく、「自分にもできることがある」という意識をもち、今日からSDGsに取り組んでみましょう。
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