日本の貧困問題の現状|私たちにできる取り組みは?
私たちが子どもの頃から何度も耳にしてきた「貧困」という単語。
ひと昔前までは発展途上国で起きている問題と捉えている人が多かったのではないでしょうか。
しかし、バブル崩壊以降長引く不景気や物価の上昇に加えて、新型コロナウイルスの影響により日本国内での貧困問題は急速に拡大しています。
貧困問題は私たちのすぐ近くにある問題であり、解決へ向けて行政や多くの団体などが取り組んでいます。
近年耳にする機会が多い「SDGs」でも、17の目標のうち1番目に書かれているのが「貧困をなくそう」です。
本記事では、日本の貧困問題の現状や貧困問題への取り組みに加えて、私たちができることも紹介していきます。
貧困の定義
まず始めに世界全体の貧困の定義を見てみましょう。
世界銀行による貧困の定義は、1日あたり1.90ドル以下で生活している層を極度の貧困と定義しています。
2015年時点での世界の貧困率は10%(7億3400万人)であり、2030年までに極度の貧困層を世界全体の3%までに減らすことを目標としています。
参照:「世界の貧困に関するデータ」(世界銀行)
さらに詳しく見ていくと、貧困には以下の2種類があります。
絶対的貧困:国や地域に関係なく、生きていく上で最低限の生活水準が満たされない状態
相対的貧困:国や地域の水準の中で大多数よりも貧しい状態
上記の世界銀行が定義する貧困は、絶対的貧困を指しています。
世界の貧困
2015年度の世界の地域別貧困率は以下のとおりです。
地域 | 貧困率 |
東アジア・太洋州地域 | 2.32% |
ヨーロッパ・中央アジア地域 | 1.47% |
ラテンアメリカ・カリブ海地域 | 4.13% |
中央・北アフリカ地域 | 5.01% |
その他高所得地域 | 0.68% |
南アジア地域 | 調査地域が限られているためデータ無し |
サブサハラ・アフリカ地域 | 41.10% |
参照:「世界の貧困に関するデータ」(世界銀行)
上記のデータからもわかるように、世界の貧困はアフリカ地域に集中しています。また、南アジア地域は調査環境が整っていないことから、貧困層が多いことが考えられます。
地域によって偏りはあるものの、貧困層は各地域に一定層存在しています。貧困問題は、世界全体で解決していかなければなりません。
日本の貧困
次に日本の貧困について見ていきましょう。前述したとおり貧困には2種類あり、日本で問題になっているのは相対的貧困です。
日本における貧困層は、「等価可処分所得の中央値の半分以下で生活している人々」と定義されています。
2018年度を例に見てみると、等価可処分所得の中央値は248万円となっており、貧困層と定義されるのは124万円未満の等価可処分所得で生活している人々です。
OECDのデータによると、2018年度は日本の人口の15.7%が相対的貧困層に該当するといわれています。
参照:「Poverty rate」(OECD)
相対的貧困という観点で見ると、日本にも貧困で苦しんでいる人たちが多くいることがわかります。
子どもの貧困
子どもの貧困問題は、ニュースで耳にする機会も多いでしょう。
日本の0歳~17歳に絞った子どもの貧困率を見てみると、14.0%と高い水準を示しており、子どもの約7人に1人が貧困に苦しんでいます。
参照:「Poverty rate」(OECD)
新型コロナウイルスの流行によって仕事を失ったり、学校閉鎖やオンライン授業などの影響で子どもの面倒を見るためにフルタイムからパートタイムに変えざるを得なかったり、親の収入減少は子どもの生活に直結します。
それらの現状を考えると、今日本では子どもの貧困が深刻化していることが伺えます。
貧困問題への取り組み
日本が抱えている貧困問題を解決するために、どのような取り組みが行われているのでしょうか。
行政、企業、NGO・NPOそれぞれの取り組みを紹介していきます。
行政の取り組み
貧困問題解決へ向けて行政が行っている取り組みの代表的な例として、生活保護が挙げられます。
生活保護とは、生活に困窮している方に対して、困窮度合いに応じて必要な保護を行い、健康で文化的な最低限度の生活を保証するとともに、自立を促すための制度です。
支給される額は地域や収入、世帯人数によって変わります。また、働いていても最低基準の収入を満たしていなければ、生活保護の申請は可能です。
ニュースなどで生活保護の不正受給問題が報道されることもあり、生活保護に対してネガティブなイメージをもっている方もいるかもしれません。しかし、生活保護は貧困で苦しんでいる方々のセーフティーネットとしての役割があり、重要な支援制度です。
企業の取り組み
多くの企業において、貧困問題解決へ向けた支援をさまざまな角度から行っています。一例として、株式会社ジモティーが行っている取り組みを取り上げます。
ジモティーは不用品の売買や自分が住んでいる地域の様々な情報発信などの総合掲示板サービスサイトです。
ジモティーが行った調査によって、日本のひとり親世帯の約半分(約65万世帯)がサービスを利用していることが確認できたことをきっかけに、CSR活動としてひとり親支援の継続的な活動を実施することを決めました。
2018年には企業からの協賛でもらった支援物資をジモティーの公式サイト上に掲載し、ひとり親家庭を優先に物品の受け渡し会を開催し、ひとり親家庭の支援を行いました。
参照:「SDGsに関する取り組みについて」(株式会社ジモティー)
日本に限らず、世界の貧困問題解決に向けて取り組んでいる企業も多くあります。
貧困問題をはじめとした社会問題に対する企業の取り組みは、各企業の公式サイトから確認できます。
NGO・NPOの取り組み
貧困問題に関して取り組んでいるNGOやNPOは多く、行政や企業とは異なる第三者的な立場から貧困問題解決へ向けた支援を行っています。
一例として、特定非営利法人Learning for Allが行っている取り組みを紹介します。
Learning for Allでは子どもの貧困問題に特化した支援を行っています。その中のひとつが、子ども食堂の運営です。
子どもの成長には健康的な食事が欠かせません。Learning for Allでは、貧困や家庭の事情によって満足な食事が取れない子どもたちに向けた食事提供を行っています。
小学1年生~高校3年生が対象となっており、最大で週5日間の食事の提供を受けられます。
Learning for Allのような支援を行っているNGOやNPO団体は数多くあり、各団体の個性や特色を活かした支援を行っています。
参照:「LFAの活動」(特定非営利法人Learning for All)
貧困問題において私たちができることは?
貧困問題は規模の大きさから、私たち個人ができることはないと思ってしまいがちです。しかし、貧困問題解決に向けて私たちにできることは数多くあります。
一緒にできることの例を見ていきましょう。
1.寄付をする
私たちが最も簡単にできる、貧困問題解決へ向けた方法として、寄付があります。直接アクションを起こすことが難しい人でも、寄付であれば簡単に行えます。
特に、貧困問題に取り組んでいるNGOやNPOは、支援者による寄付が活動資金となっている場合が多くあります。
支援者の寄付なくして、支援団体の活動は成り立ちません。少額から支援できる仕組みを取っている団体も多いので、気になる団体を見つけたら寄付をしてみましょう。
日本では欧米諸国と比較すると、寄付文化が根付いていないといわれています。寄付を通して、貧困問題解決に向けた支援の一歩を踏み出しましょう。
2.寄付付き商品を購入する
寄付をする余裕がない場合や、寄付をしたい団体が見つからない場合などは、普段の生活に支援を取り入れるのもひとつの方法です。
たとえば、寄付付き商品を購入することも立派な支援方法です。
寄付付き商品の一例として、アウトドアメーカーのモンベルの寄付付きTシャツがあります。
Tシャツの種類によって売上金の寄付先が異なるので、自分の寄付したいTシャツを選ぶのも良いですし、欲しいTシャツを購入した結果が寄付につながることもあるでしょう。
普段の生活の中にも寄付をするチャンスは多くあります。
参照:「寄付つき商品」(株式会社モンベル)
3.ボランティアをする
貧困問題に取り組んでいるNGOやNPOでは、ボランティアスタッフを募集していることがあります。
直接現場に立って支援することによって、貧困問題の実情を肌で実感するだけでなく、心を強く突き動かされることもあるでしょう。
また、ボランティアを通して新たな出会いや様々な交流が生まれることも多く、ボランティアを受ける側だけでなく、ボランティアをする側にとっても活動の影響は大きいと考えられます。
気になる取り組みを行っている団体を見つけたら、積極的にボランティア活動に参加してみましょう。
4.不要なものはリサイクルに出す
自宅にある不要なものは、捨ててしまう人が多いと思います。
捨ててしまうとゴミとして処分されてしまいますが、リサイクルに出すことによって、欲しい人の手に渡ります。
リサイクル品は通常の物よりも安価で購入できるだけでなく、ゴミそのものを減らすことにもつながります。
加えてSDGsの目標である
1.貧困をなくそう
12.つくる責任つかう責任
上記ふたつの目標達成に向けて、貢献することにつながります。
不要な物をゴミ箱に捨てる前に、一度リサイクルできるか考えてみましょう。
5.節電・節エネルギーを行う
地球温暖化や資源不足などによって、電気やガス、ガソリン代などが日々高騰しています。
エネルギーの無駄使いをすることで、エネルギー供給量のひっ迫の原因となり、電気代やガソリン代などの高騰を早める要因となります。
エネルギーは私たちが文化的で最低限度の生活を送る上で欠かせないものです。
そのため、日頃から電気を使ったらすぐに消す、近い距離は車ではなく徒歩や自転車を利用するなど、節電・節エネルギーを意識しましょう
まとめ
今回は日本の貧困問題について、私たちができることを含めて紹介しました。
日本国内でも貧困の問題は深刻化しており、貧困を発展途上国の問題と捉える時代は終わりました。日本国内の貧困問題解決に向けて、私たち個人で取り組めることも数多くあります。
まずはあなたにとって取り組みやすい方法から、貧困問題に対する支援を始めてみませんか。一人ひとりの行動が、未来を変えることにつながります。
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