フードマイレージとは?日本における問題点や求められる取り組み、企業の事例も紹介

私たちが普段の食事で楽しんでいる食料が、どれだけ遠い場所から運ばれてきたものか、考えたことはありますか?
フードマイレージとは、食料が生産地から輸入国に輸送される距離に、食料の重量を掛け合わせた指標です。
値が高いほど、輸送に伴う食料の安全性のリスクやCO2排出量が増加するとされています。
現在、日本のフードマイレージは世界トップクラスです。輸入食品への依存度は高くなっています。
しかし、地元で生産された食料を消費する「地産地消」の取り組みや、食品ロスの削減を進めることで、輸入食品への依存度は改善可能です。
本記事ではフードマイレージの解説や現状とともに、私たちにできることや企業での取り組みを詳しく紹介します。
フードマイレージとは
フードマイレージは、食料の輸送にかかる環境への負荷を表した指標です。
食料輸送に伴うCO2の排出量や環境負荷の指標、地球環境への影響を示しています。
この概念は1994年にイギリスで「フードマイルズ運動」が提唱され、日本では2001年に農林水産省によって導入されました。
各国のフードマイレージは算出可能なため、国際比較ができる数値としても注目されています。
参考:珠洲たのしい授業の会「フードマイレージで見る日本の食」
フードマイレージが求められる背景
フードマイレージは、食料輸送に関わるCO2の排出量や環境負荷を数値化したものです。食料の生産地から食卓までの距離が長いほど高くなり、地球環境への影響が増してしまいます。
それだけでなく、食料の長距離輸送は移動ルートを追跡することが難しくなったり、食料の鮮度や安全性が低下したりするリスクが増える要因にもなりかねません。
近年、環境保全や食の安全性に対する意識が高まっているため、フードマイレージは食に関するさまざまな指標としても注目されている概念です。
参考:ノウキナビブログ「食料の輸送に伴う環境負荷の指標、フードマイレージとは?」
参考:Project Design「フードマイレージとは何か?私たちにできることと、企業の取り組み事例」
参考:チバニアン兼業農学校「フードマイレージが教える持続可能な食生活」
フードマイレージが小さいことのメリット
食料の輸送距離が短いと、フードマイレージは小さくなります。つまり、CO2排出量が少なく環境への負荷が軽減されるのです。
環境省のデータによると、もし地元産の食料を選んだ場合、CO2の排出量は約400分の1ほど削減できるとされています。
また、地元で生産された食料や旬のものを選ぶことで食料自給率の向上に貢献し、持続可能な食料需給にも寄与します。
以上の観点から、フードマイレージの小さいことは環境保全だけでなく、地域経済や食料自給率の向上にも良い影響を与える指標です。
参考:朝日新聞デジタル SDGsACTION「フードマイレージとは? 世界との比較や日本の課題を徹底解説!」
フードマイレージの計算方法
フードマイレージの計算方法は、以下の数式によって算出されます。
フードマイレージ = 食料の輸送量(t)× 輸送距離(km)
単位は、「t・km(トン・キロメートル)」で表されます。
計算例を見てみましょう。
仮に、
10tの食料を70km輸送する場合:10 × 70 = 700 t・km
5tの食料を3000km離れた場所から輸送する場合:5 × 3000 = 15,000t・km
となります。
さらに、CO2排出量を計算する場合は、フードマイレージに輸送方法ごとのCO2排出係数をかけます。
CO2排出量 = フードマイレージ(t・km)× 各輸送方法のCO2排出係数(g/t・km)
この場合の単位は「g(グラム)」です。
フードマイレージは、食料輸送に伴うCO2排出量も可視化できます。
フードマイレージにおける日本の現状と問題点
日本のフードマイレージはどうでしょうか。ここでは、現状と問題点を解説します。
日本のフードマイレージは世界トップクラス
日本のフードマイレージは世界1位で、2000年時点日本の年間フードマイレージは約9,000億t・kmとなっています。
この数値はアメリカと韓国の約3倍、イギリスとドイツの約4倍、フランスの約9倍で、他国と比較して著しく高い水準です。
高い水準の背景として、日本の食料自給率は40%で多くの食料を海外からの輸入に依存しているからです。
また、主な輸入先としてはアメリカ、カナダなど遠距離にある国からのため、輸送距離が長いだけでなく、環境への負荷も大きくなっています。
参考:COCOCOLOR EARTH「フードマイレージとは?減らすには?日本のランキングや計算方法を解説」
問題点①:食料自給率が低い
日本の食料自給率(カロリーベース)は約40%です。主要国の中で最も低く、約60%を輸入に頼っています。主要先進国の中で最低水準です。
2021年における主要先進国の食料自給率は、以下の通りです。
- オーストラリア:233%
- カナダ:204%
- フランス:121%
- アメリカ:104%
- イギリス:58%
日本の食料自給率は戦後から現在までに大きく低下しており、要因はいくつかあります。
- 地理的要因
- 食生活の変化
- 畜産物の飼料の問題
- 農業離れ
日本は国土が狭く、山が多いため平地が少ない国です。農地面積が限られており、国土の約12%しか農地として利用できません。
この数値は、アメリカ(約40%)やカナダ(約60%)と比べて極端に少なくなっています。
また、戦後の食生活が洋風化へと進み、米の消費量が減少する一方、肉類や油脂類の消費が増加しています。
畜産物の国産飼料の自給率は25%で、その他は輸入に頼っている状況です。
飼料の価格も近年上昇していましたが、コロナ禍やウクライナ侵攻により飼料がさらに減少し、価格も高騰しています。
他にも、農業人口の減少や高齢化により、国内の農業生産力が低下していることも挙げられます。
これらの複合的な要因がフードマイレージを世界トップクラスに押し上げた要因です。
参考:SMART AGRI「日本の「食料自給率」はなぜ低いのか? 問題点と解決策を考える 【2023年度データ更新】」
参考:一般社団法人産業環境管理協会 資源・リサイクル促進センター「日本の食料自給率と食料輸入先」
参考:Hibiki「【設立2周年記念対談:前編】日本の食料自給率と食品ロス問題を、語る、考える。」
参考:Reiwa「日本の飼料自給率は約25%!自給率向上を目指す取り組みなどを紹介」
問題点②:島国のため移動距離が長くなる
日本の輸入食品の平均輸送距離は約15,000kmで、これは東京からアフリカ大陸南端のケープタウンまでの距離にほぼ等しい状況です。
欧米各国の平均輸送距離は、日本の20〜40%の水準にとどまっています。多くの欧米各国は、陸続きの国々から食料を輸入できるからです。
しかし、日本は遠方のアメリカやカナダ、オーストラリアからの輸入が多く、これらの国々からのフードマイレージは全体の約80%となっています。
このような長距離輸送により、日本のフードマイレージは世界トップクラスになってしまったのです。
参考:農林水産政策研究所「食料の総輸入量・距離(フード・マイレージ)とその環境に及ぼす負荷に関する考察」
フードマイレージを減らすためにできること
日本のフードマイレージを削減するために、何をしたらいいのでしょうか。
ここではフードマイレージを減らすために、私たちにできることを紹介します。
方法①:地産地消を意識する
地産地消(ちさんちしょう)とは、地元で生産された農林水産物をその地域で消費することを指します。
フードマイレージを削減するために、地産地消は非常に効果的な方法です。
地産地消は地域の生産者と消費者を結びつけ、地域経済の活性化や食料自給率の向上を目指すものです。
地産地消で輸送距離が大幅に短くなり、CO2排出量も削減されるためフードマイレージの削減に貢献します。
地産地消を実践する方法として、以下の方法があります。
- 地元の産直所や道の駅の利用
- スーパーマーケットでの地元産コーナーの活用
- 学校給食での提供
地産地消を意識することで環境への影響を軽減するだけでなく、経済の活性化や食の安全性向上にもつながります。
参考:X-MINING「地産地消とは?メリットやSDGsとの関わりについて」
参考:ロカポ「『地産地消』とは?分かりやすく解説 行政の取り組みもご紹介」
方法②:食品ロスを削減する
食材の使い切りや適切な保存をすることで、廃棄される食料が減少するためフードマイレージの低減につながります。
食品ロスを削減する方法として、以下の方法があります。
- 冷蔵庫の在庫確認
- 必要な分だけ購入する
- 保存方法の工夫
買い物の前に冷蔵庫の中身を確認し、必要な分だけ購入するようにしましょう。
使い切れる量や食べ切れるだけの量を購入し、過剰な購入を控えるのもおすすめです。ばら売りや量り売りを利用するのも良いでしょう。
使い切れない食材は、小分けにして冷凍保存するなど工夫するのも一つの手です。食材に適した保存方法を実践し、鮮度を保つようにしましょう。
これらの方法を日常生活に取り入れることで、食品ロスを削減できるだけでなくフードマイレージの削減にも貢献できます。
参考:SDGsコンパス「食品ロスを削減しよう!個人で今すぐできる取り組み14選」
参考:独立行政法人 農畜産業振興機構「食品ロスの伝道師として」
フードマイレージ削減に取り組む企業の事例
フードマイレージの削減のために、企業も取り組みを始めています。
ここでは、実際の企業の取り組みを紹介します。
セブン&アイ・ホールディングス
セブンイレブンでは地域密着の事業を展開し、地域の工場で地元産食料を使用した商品を製造することでフードマイレージの削減に貢献しています。
食品ロス削減のために、フレッシュフードの値下げ販売(エコだ値)を実施し、おにぎりやお弁当などの販売期限が近い商品の値下げ販売をしています。
他にも素材や製造工程、温度管理を見直し、オリジナルデイリー商品の消費期限を延長しました。
1994年から導入したエコ物流システムでは、販売期限切れ商品を飼料や肥料などに再利用する食品リサイクルに取り組んでいます。
これらの取り組みにより、セブン&アイ・ホールディングスはフードマイレージの削減と持続可能な社会の実現を目指しています。
参考:セブンイレブン・ジャパン「お客様とともに食品ロス削減」
参考:セブンイレブン・ジャパン「商品の鮮度を伸ばして食品ロスを削減」
参考:セブンイレブン・ジャパン「「エコ物流」を活用した食品リサイクルを推進」
ニチレイ
ニチレイでは、機器メーカーと共同で鶏肉加工品のAI選別技術を開発し、鶏肉加工品の製品廃棄削減率を約50%達成しています。
また、パッケージや容器包装の見直しによるプラスチック削減を進め、対象7アイテムで約200t強の削減を実現させました。
さらにCO2排出量削減のために、2050年までにカーボンニュートラルを達成する目標を掲げ、大型低温物流倉庫や食品工場でのエネルギー効率の向上などを進めています。
ニチレイでは「持続可能な食の調達と循環型社会の実現」を企業にとっての重要課題と位置付け、フードマイレージの削減と持続可能な食品産業の実現を目指しています。
参考:ニチレイフーズ「機器メーカーと共同で鶏肉加工品のAI選別技術を開発。同技術導入後、フードロス80%削減を目指す」
参考:ニチレイフーズ「環境」
フードマイレージ削減のために、できることから始めてみよう
フードマイレージの削減は、環境負荷の低減や持続可能な社会の実現に重要な課題です。
日本は食料自給率が低く輸入食品に依存しているため、フードマイレージが高くなっています。
しかし、私たち一人ひとりの行動で改善することは可能です。まずは、地元で生産された食料を選び「地産地消」を意識しましょう。
また食品ロスを減らすため、必要な分だけ購入し、余った食材を無駄にしない工夫も大切です。
企業の取り組みも参考にしながら、自分にできる具体的な行動を始めてみましょう。
『GREEN NOTE(グリーンノート)』は環境・社会課題をわかりやすく伝え、もっと身近に、そしてアクションに繋げていくメディアです。SDGs・サステナブル・ESG・エシカルなどについての情報や私たちにできるアクションを発信していきます!