世界で広がっている教育格差|その現状とSDGs達成への取り組み
「7歳になるタイミングでなんとなく小学校が始まり、6年通ったから卒業。そして春になったら中学校が始まる…」
そうやってあまり考えることなく、一定の年齢を迎えたことを理由に、教育を受けてきませんでしたか?
でも、実はこれってすごくありがたいことなんです。
日本に生まれたからこそ、受けることが出来た義務教育です。
この記事では、教育格差が生まれる原因や、どのような問題に繋がっていくのか。
そしてSDGsで掲げられている目標4「質の高い教育をみんなに」に向けて行われている活動をご紹介していきます。
世界に広がっている教育格差の問題とは
子供はある一定の年齢になったら学校に行くのが当たり前だと考えてしまいがちですが、世界に目を向けると必ずしもそうではありません。
そもそも教育格差の定義って何?
教育格差とは、名前の通り「その人が置かれる環境によって、受けられる教育に差が出て、不平等が生まれてしまうこと」 を指します。
先進国に生まれるか、発展途上国に生まれるかによっても、受けられる教育の水準は変わってしまいます。
また、同じ国内においても、都会に生まれるか田舎に生まれるかによっても、学校の質が異なることもあります。
世界中で広がっている教育格差ですが、 日本も例外ではありません。
世界の12人に1人が小学校に通えていない
学校教育の質云々の前に、世界には学校に通えない子供たちが沢山いる現状を数字から読み解いていきましょう。
教育・化学・文化面での国際協力を進めているUNESCO(ユネスコ)が2019年に発表した最新データを見ると、 世界の子供の8%にあたる約5,900万人が学校に通っていません。
つまり、12人に1人の子供が学校に行っていないということになります。
このうち、 半数はアフリカの地域の子供たち、そして南アジアの子供たちと続きます。
発展途上国が多く、比較的貧しい地域の子供たちと言えるでしょう。
世界の6人に1人が中学校に通えていない
ユネスコのデータによると、中学生になると学校に通っていない子供たちの数字はグッと悪化します。
2018年時点で、 世界の子供の16%にあたる約6,200万人が学校に通っていません。
これは6人に1人は学校生活を楽しんでいないということになります。
中学生とは、一般的には12~14歳頃を想定しますが、これくらいの年齢になると、学校よりも仕事の方を優先する家族が増えることが大きな原因と言えるでしょう。
教育格差の影響を受ける世界の子供に待ち受けること
世界に広がる教育格差によって、そもそも学校に行っていなかったり、学校に通っていても質の低い教育しか受けられい子供が沢山います。
そのような環境で幼少期・成長期を過ごした子供には、どのような影響が待ち受けているのでしょうか。
文字の読み書きさえ習得できない
幼少期に学校に行かずに過ごした子供は、最低限の読み書きが出来ずに大人になってしまいます。
日本にいると「自分の名前さえ書けない」という人に出会うことはないため、信じられないですよね。
でも2019年のデータによると、識字率は世界平均では86%ですが、 発展途上国では男性69%、女性54%と低くなります。
少しずつ改善しているとはいえ、地域によっては半数の人たちが読み書きができないといった現状はまだまだ広がっています。
スキルの必要とする仕事に就けない
読み書きや簡単な計算を学ぶことなく大人になってしまうと、将来就ける仕事が限られてしまいます。
単純作業が繰り返されるような仕事であったり、ハードな肉体労働にしか就けないケースも増えてしまいます。
このような仕事から得られる賃金は低いことが多く、 貧困のスパイラルから抜け出すのが難しくなります。
人との関わり方や道徳が学べない
子供が学校で学ぶことは教科書に載っていることだけではありません。
周りの生徒と相談したり協力するなどと言った、 人との関わりを学ぶという点もとても大きいです。
そのような経験をすることなく、いつの間にか大人の世界に放り込まれてしまった子供は、協力する姿勢や思いやりの心、道徳心などが欠如してしまうことも。
世界の教育格差が広がっている原因とは
子供は学校に行くと良いことは多くの人が理解していることではありますが、なぜ世界には教育格差が広がってしまうのでしょうか。
戦争や自然災害
学校にいけない子供たちは、戦争や紛争が絶えず行われているような地域に多いです。
また、定期的に自然災害に見舞われるエリアでも、安定した学校教育が受けられないことも。
また、度重なる避難や移民生活を強いられることで、定住することが難しかったり、 移住先での言葉の壁もはだかり、学校どころではないという子供たちもたくさんいます。
施設や教員不足
そもそも学校がなかったり、遠すぎたりして学校に通えないという子供もたくさんいます。
日本でも言えることですが、人が沢山集まる都市には学校があるけれど、農村部などの田舎に行くと学校の数がそもそも乏しいということはどの国でも起こっています。
またそのような辺鄙なエリアには、人手や教材などが不足していて、教育カリキュラムなどが存在していないことも多いです。
圧倒的な貧困
たとえ通える場所に学校が存在していたとしても、家が貧しいという理由で学校に通わない子供もいます。
貧しいからこそ、学校に行っている暇はなく、家族総出で仕事をしているような家庭はアフリカや南アジアにはたくさんいます。
いわゆる、児童労働と呼ばれる問題にもつながっています。
関連記事:【世界の10人に1人】貧困問題を抱えている現状とは?
社会的な考え方
子供があえて学校に通わない理由は、仕事だけではありません。
地域によっては「長男だけが学業を受ければいい」「女の子は家で家事手伝いが当たり前」といった場所もまだまだたくさんあります。
歴史的な背景もあるので急に変えることは難しいかもしれませんが、すべての子供が平等に学校に行けるような働きかけが必要と言えるでしょう。
SDGs目標4番「質の高い教育をみんなに」に向けて
先進国・発展途上国関係なく世界中で問題となっている教育格差の問題に向けて、どのような取り組みがなされているのでしょうか。
SDGs目標として掲げられる目標とは
2015年の国連サミットで採択されたSDGs(Sustainastrongle Development Goals)では、4番目に教育格差の問題が取り上げられています。
目標4番のテーマは『質の高い教育をみんなに』となっており、「すべての人に包摂的かつ公正な質の高い教育を確保し、生涯学習の機会を促進する」と掲げられています。
各国際団体やNGO団体などが取り組みを進めてきた世界の教育格差の問題ですが、SDGs目標が採択されたことをうけ、各国が一丸となって取り組もうという姿勢が強まったと言えるでしょう。
学校制度の導入
教育格差が広がっている理由の一つは、地域的な理由で学校があったり、そもそも存在しなかったりという不平等が広がっていることがあげられます。
この点を解消するべく、学校という建物を作ったり、カリキュラムや必要な物資、先生などを派遣する取り組みが進んでいます。
また学校は幼い子供だけが対象ではありません。
いわゆる幼少期に学校へ行けなかった人に対しても、門戸を開いて教育の機会を提供することが、SDGs目標にもある「障害学習の機会を促進する」という点に繋がります。
教育面での国際協力を進めるユネスコは「世界寺子屋運動」という活動を通じて、性別や宗教、年齢の垣根を超えた学びの機会を提供しています。
給食制度の導入
物理的に学校が存在していても、家業の手伝いや文化的な考え方から学校に行かせない両親がいるという現状に対しては、給食制度の導入という形で新しい取り組みが始まっています。
日本では学校給食は当たり前ですが、世界を見ると決してそうではありません。
学校に行くことで、子供が栄養豊富な食事がとれるとなると、単純に学びに行くだけとは異なり、快く送り出してくれる親が増えるそうです。
日本国内でも広がっている教育格差
「世界で教育格差が広がっている」と聞いても、日本は先進国だし関係ないでしょ?と感じる方もいるかもしれません。
しかし、教育格差の問題は着々と日本でも広がりつつあり、悪化しているという悲しい現状が広がっています。
地域的な問題
ご存知の通り、日本は出生率が低く、子供の数が着々と減ってきています。
すると、地域内の子供の数が確保できず、学校が廃校になるケースが増えています。
信じられないかもしれませんが、文部科学省のデータによると毎年約470校もの学校が廃校になっているそうです。
このような地域では、教員の数も足りてないことが多かったり、 運営することで精いっぱいで、質の高い教育に繋がっていないこともあります。
経済的な問題
更に、日本国内での経済格差も確実に広がっていて、悪化の道を辿っています。
同じ町に暮らしていても、親の年収によって受けられる教育の質が異なるという不平等が着実に広がっています。
公立の学校と私立の学校では学費が異なると同時に、受けられる教育の質が異なります。
さらに、学習塾に通ったり、お稽古に通ったりといったオプションも、経済的に苦しい家庭の家には手が出せない教育となってしまっています。
私たちができるアクション
世界に広がる教育格差の問題について、私たちにはどのようなことが出来るのでしょうか。
世界・日本の現状を理解する
まず大切なことは、なんとなく耳にしたことのある教育格差について、少し勉強を深めることです。
具体的にはどのようなことが問題となっているのか、そして自分はどの問題について関心があるのかを理解を深めましょう。
世界に向けて活動団体を支援する
世界の恵まれない地域に暮らす子供たちをサポートしたいと感じた場合には、国際団体やNGO団体への寄付や募金といったアクションを取ることができます。
チャリティイベントが開催されていたり、学習機会として学びの場を提供してくれている団体もあります。
自分にとって参加しやすい形を調べてみましょう。
地域に向けてボランティアなどに参加する
ご紹介してきた通り、教育格差の問題は遠い国だけでなく、私たちの住む日本でも広がっています。
手が届く範囲で何かアクションを起こしたいと感じた方は、地域で開催されている子供向けの学習支援活動を調べてみましょう。
放課後の時間帯を使って、勉強をサポートするようなボランティアなどは常に人材不足です。
世界の子供たちが教育格差の煽りを受けないために
学校に通うことで得られるメリットは、単純に読み書きを覚えたり、計算が出来るようになるといった教科書からの勉強だけではありません。
同世代の仲間たちとの触れ合いやケンカを通して、少しずつ心を成長させていく、とても重要な場です。
世界に目を向けると、残念ながらそのような教育の機会を受けられない子供がたくさんいます。
また、日本国内に目を向けても、同じ国に住んでいても受けられる教育の質が異なるという現状が広がっています。
SDGs4番に掲げられる「質の高い教育をみんなに」に向けて、自分は何が出来るのか考えてみませんか。
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