SDGsが目指す“男女平等”とは?実現に向けて私たちができること
SDGsの掲げる目標のひとつが男女平等です。
しかし、事実として男女平等が達成されていない場面は多くあります。
2018年、医科大など複数の大学で、女性の受験生に対して一律で減点するなどの措置を行ったことが判明しました。
文科省が行った調査によると、男女における合格率や浪人年数に大きく差があった大学は全国でも複数見受けられたとのことです。
そのうち、不適切と指摘した事案は10件にものぼりました。
このような、不平等な処遇はなぜ起きるのでしょうか?
男女平等社会の実現において、日本の抱える問題にはどんなものがあるのでしょうか?
また、男女平等という目標を達成すると、世界はどのように変わるのでしょうか?
本記事では、これらの疑問にお答えしつつ、私たちが個人として男女平等の実現に向けてできることを紹介します。
SDGsが目指す”男女平等”とは?
SDGsが目標5として掲げているのは、ジェンダー平等の実現です。
その目標実現のためには、男性や女性といった性別による差別や暴力をなくすことが求められます。
現在、世界では女性や女児への暴力、「女性だから」といった理由で教育を受けられない、希望の職種に就けないといった状況があります。
SDGsが目指す男女平等は、そのような性別による不平等をなくし、女性と男性が対等に権利・機会・責任を分かち合う社会を作ることを目標としています。
男女平等は何につながるの?
そもそも、なぜ男女平等を目標に掲げる必要があるのでしょうか?
SDGsが目指す男女平等で成し遂げられることをみていきましょう。
女性の人権を守るため
世界では、性差別によって苦しむ女性や女児が多くいる現状があります。
女性への性暴力も問題となっており、15~49歳までの女性の35%がパートナーやそれ以外の人からの性暴力を受けていると報告されています。
出典:「Global and regional estimates of violence against women」(WHO)
また、アフリカや中東、アジアの一部では女性の性欲をコントロールする、などといった考えから女性器の切除という慣習が残っており、それによる苦しみを受けている女性や女児が多くいるのも事実です。
国によっては女性の半数近くが18歳未満で結婚するため、教育や雇用、また社会に参加する機会が得られない女性が多くいます。
経済の成長と社会の発展のため
世界では十分な教育を受けることができないために、就職先が限られてしまっている女性が多くいます。
経済成長の拡大、そして社会開発の促進には女性と女児のエンパワーメントが不可欠とされており、それを可能にするのが教育です。
女性が十分な教育を受け、労働に全面的に参加ができるようになれば、多くの国で経済成長率は数%上昇するとみられています。
男女平等に関する日本の現状
ここまでで世界が男女平等を目指すべき理由を紹介しました。
一部の開発途上国などと比較すると、日本では「男女の格差はほとんどないのでは?」と考える人もいるかもしれません。
男女格差の現状を知るにあたって役立つのが「ジェンダーギャップ指数」です。
ジェンダーギャップ指数とは、政治・経済・教育・健康の4つの分野での男女の格差を比較した指数のことです。
1が完全平等で、数値が1に近づくほど男女平等であることを示しています。
2021年のジェンダーギャップ指数によると、世界156ヶ国のなかで日本は120位(ジェンダーギャップ指数0.656)です。
出典:「Global Gender Gap Report 2021」(世界経済フォーラム)
つまり、日本は世界のなかでも男女平等の達成度が低く、課題が多いことを示しています。
ここからは、日本の現状を政治・経済・教育・健康という4つの分野に分け、それぞれのジェンダーギャップについてみていきましょう。
【政治】政治家の担い手にジェンダーギャップがある
政治家の男女比を比較すると、日本では女性の数が大幅に少ないという課題があります。
先述の2021年のジェンダーギャップ指数によると、政治の分野だけでみると、男女平等を1とした場合、日本は0.061ととても低いのが現状です。
この数値は156ヶ国中147位となっており、日本では政治における女性の進出が世界的にみても遅れていることがわかります。
【経済】役員層にジェンダーギャップがある
労働力や企業の役員などの男女比を比較した経済面においても、日本ではジェンダーギャップが大きいのが実情です。
ジェンダーギャップ指数によると、経済における日本の男女の格差は0.604となっています。
つまり、企業の役員は男性の割合が大きいということです。
経済の場において、女性がリーダーになることができていないという現状があります。
【教育】進学率に差がある
2021年の「ジェンダーギャップ指数」によると、教育における日本の男女格差は0.983と1の完全平等にかなり近い数値になっています。
実際、日本において高校までの進学率に男女差はほぼありません。
しかし、大学や大学院などへの進学については、男性と比べて女性が低くなっており、男女で差が生じています。
特に理工系、医学、社会科学といった進路を選ぶ女性が少ないのが実情です。
【健康】特有の疾患に対する支援が必要
2021年のジェンダーギャップ指数では、健康における日本の男女格差は0.973となっています。
つまり、健康の分野においては男女比がほぼなく、平等であるといえるでしょう。
厚生労働省も女性の健康を促進するために以下のような取り組みを行っています。
- 毎年3月1日~8日を女性の健康週間と定める
- 子宮頸がんなど女性特有の疾患予防を促す
このような取り組みが、健康における男女平等に寄与しているといえるでしょう。
男女平等を実現するための取り組み
世界の国々と比較したときに、まだ男女の格差が大きい日本ですが、それを改善するための取り組みも行われています。
男女平等を実現するために、政府や企業がどのような努力を払っているのかみていきましょう。
女性活躍推進法の施行
女性が活躍しやすい社会づくりの実現を目指し、2015年8月に女性活躍推進法が成立し、翌年4月から施行されました。
この法案が施行された背景には、出産や育児などの事情によって働くことのできない女性が多かったことが挙げられます。
そして、この法案の施行により、従業員301名以上の大企業は、自社の女性活躍に関する情報を公開しなければならなくなりました。
また、2019年には女性活躍推進法が改正され、2022年4月より女性活躍に関する情報の公開が従業員101人以上の中小企業においても義務付けられることになっています。
女性が働きやすい職場づくり
男女平等を実現するために、育児休暇やリモートワークの導入など女性が働きやすい職場制度の構築に力を入れている企業が増えてきています。
たとえば、株式会社サイバーエージェントでは、女性が出産や育児を経ても働き続けられるように「macalon」という制度を整えています。
女性特有の体調不良時に取得できる「エフ休」、不妊治療のための通院や体調不良時に取得できる「妊活休暇」、妊娠に不安のある社員へのカウンセリング制度などが主な例です。
内閣府の男女共同参画では、女性応援ポータルサイトを設置するなどして女性のワークライフバランスの実現をサポートし、より多くの女性が活躍できる職場づくりを応援しています。
SDGsの男女平等の実現に向けて私たちができること
政府や企業の努力のほかに、私たち各自がSDGsの目指す男女平等の実現のためにできることはあります。
以下は個人として取り組める分野ですので、実践に向けて努力してみましょう。
家事を分担する
日本では、「男性は仕事をし、女性は家庭」という考え方が浸透しています。
もちろん、若い世代を中心にそうした考え方は「古い」という声があるのも事実ですが、家事は女性がやるものという考え方をもつ人が多いのが実情です。
男女平等実現のためには、まずは「男性が働き、女性が家事をするのが当たり前」という考え方を改めることからスタートしましょう。
そして、夫婦で仕事と家事を同じように分担してみるようおすすめします。
大切なのは、「夫が妻の家事を手伝う」という感覚ではなく、平等に分担することです。実際にやるべき家事を書き出すと、平等に分ける助けとなるでしょう。
女性の育児負担を減らす
育児に協力的な男性が増えてきたとはいえ、女性のほうが育児の負担は大きいのが現状です。
平成28年に行われた、6歳未満の子どもをもつ夫婦それぞれの家事関連時間の調査では、妻の1日の育児時間が3時間45分であるのに対して、夫が49分と大きな差があります。
出典:「平成28年社会生活基本調査」(総務省統計局)
つまり、働く女性は増えているとはいえ、家事や育児のほとんどを女性が行っていることが、女性の社会進出の妨げとなっているのです。
男女平等を目指すなら、男性も積極的に育児に関わり、女性の育児負担を減らすことが必要です。
また、日頃からシングルマザーへの支援や保育園の整備といったことについても関心をもつと、女性の育児への負担を改善するのに役立つでしょう。
まとめ
世界では、性差別により女性の人権が守られていないという現状があります。
経済の成長と社会の発展のためには、女性が十分な教育を受け、社会で活躍することが欠かせません。
SDGsが目指す男女平等の実現に向けて個人でできることからはじめてみましょう。
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