SDGs目標10「人や国の不平等をなくそう」貧困や差別をなくすためにできること
「不平等」という単語を聞いて、みなさんは何を想像しますか。
お金や性別、宗教、人種、民族など、あらゆるものが原因となっている差別や不平等が世の中には多く存在しています。
近年では2020年にアメリカで起こった「Black Lives Matter」も、警察官による黒人に対しての残虐行為がきっかけとなった人種差別に対しての抗議活動でした。
全ての人が生まれや性別、宗教などに関係なく平等に生活できることを目標としたのが、SDGs10番目の目標である「人や国の不平等をなくそう」です。
本記事では、SDGs10番目の「人や国の不平等をなくそう」について解説していくと共に、国や企業の取り組みや私たちが今からできることを紹介していきます。
SDGsとは一体何?
テレビやニュースなどで「SDGs」という言葉を耳にする機会が多く、知っている方も多いと思いますが、今一度SDGsについて簡単におさらいしておきましょう。
持続可能な開発目標(SDGs)、通称「グローバル・ゴールズ」は、貧困に終止符を打ち、地球を保護し、すべての人が平和と豊かさを享受できるようにすることを目指す普遍的な行動を呼びかけています。
参照: 国連開発計画(UNDP)
SDGsは2000年に国連サミットで採択されたミレニアム開発目標の成功をベースとして、新たに取り組むべき課題を追加し、2015年の国連サミットで採択されました。
SDGsは17の目標と、17の目標を達成するためのターゲットによって構成されています。
17の目標の中には差別や貧困のことだけでなく、地球環境や健康などの項目もあり、先進国と発展途上国が一体となって取り組んでいくべき地球規模の課題が挙げられています。
各国が手を取り合って取り組んでいくことが何よりも重要であると言えます。
SDGs10番目の目標「人や国の不平等をなくそう」について
ここからは具体的に、SDGs10番目の目標「人や国の不平等をなくそう」について見ていきましょう。
「人や国の不平等をなくそう」は、7つのターゲットと3つの方法によって構成されています。
詳細は以下の通りです。
10-1 | 2030年までに、各国のなかで所得の低いほうから40%の人びとの所得の増え方が、国全体の平均を上回るようにして、そのペースを保つ。
※所得:お給料など働いて得るお金や、持っている資産からの収入など。 |
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10-2 | 2030年までに、年齢、性別、障がい、人種、民族、生まれ、宗教、経済状態などにかかわらず、すべての人が、能力を高め、社会的、経済的、政治的に取り残されないようにすすめる。 |
10-3 | 差別的な法律、政策やならわしをなくし、適切な法律や政策、行動をすすめることなどによって、人びとが平等な機会(チャンス)をもてるようにし、人びとが得る結果(たとえば所得など)についての格差を減らす。 |
10-4 | 財政、賃金、社会保障などに関する政策をとることによって、だんだんと、より大きな平等を達成していく。 |
10-5 | 世界の金融市場と金融機関に対するルールと、ルールが守られているか監視するシステムをより良いものにして、ルールが、よりしっかりと実行されるようにする。 |
10-6 | 世界経済や金融制度について何か決めるときに、開発途上国の参加や発言を増やすことによって、より効果的で、信頼できる、だれもが納得することのできる制度を作る。 |
10-7 | 計画にもとづいてよく管理された移住に関する政策を実施するなどして、混乱がなく安全で、手続きにしたがい責任ある形の移住や人びとの移動をすすめる。 |
10-a | 開発途上国、特にもっとも開発が遅れている国ぐにに対して、世界貿易機関(WTO)協定にしたがって、貿易において、特別な、先進国と異なる扱い※をする。
※先進国に安く輸出したり、国内産業を守るために輸入品に高い関税をかけるなど |
10-b | もっとも開発が遅れている国や、アフリカ諸国、開発途上の小さい島国、内陸の開発途上国などの、もっとも資金を必要とする国ぐにへ、それらの国の計画にそって、政府開発援助※や直接投資などの資金が流れるようにする。
※政府開発援助(ODA):先進国の政府などが、開発途上国の経済や社会の発展、福祉の向上に役立つために、資金・技術を提供すること。 |
10-c | 2030年までに、移住労働者※が、自分の国にお金を送る時にかかる費用が「送る金額の3%」より低くなるようにし、「送る金額の5%」を超えるような費用がかかる送金方法をなくす。
※移住労働者:開発途上国から出稼ぎに出ている人など、母国をはなれて外国に出て働いている人 |
- ※「10-1」のように数字で示されているものは、それぞれの項目の達成目標を示しています。
- ※「10-a」のようにアルファベットで示されているものは、実現のための方法を示しています。
参照:https://www.unicef.or.jp/kodomo/sdgs/17goals/10-inequalities/
まず目標を達成するための7つのターゲットを具体的に見てみると、お金に関連することから政治や制度、移動に関することまで幅広くターゲットが定められています。
上記のことからも不平等をなくすためには、所得を上げるだけでなく、政治や制度などの改革が必要であることが分かります。
誰もが同じ環境の中で、活動できることがいかに重要であるかを読み取ることもできます。
また目標を実現するための3つの方法では、国に対しての資金援助や制度面の優遇に止まらず、移住労働者が送金する際の費用まで記載されています。
マクロの視点だけではなく、ミクロの視点からも不平等をなくすために取り組んでいこうとする意思表示を受け取ることができるのではないでしょうか。
日本は世界各国と比較すると、経済や政治などの格差が少ない環境だと言えるでしょう。
しかし、日本国内にも格差が存在していることは間違いありません。
そのため格差や不平等などは、一見途上国がメインとなっている問題と捉えてしまいがちですが、日本国内でも起きている身近な問題として、向き合っていくことが重要です。
世界で起きている不平等や格差を知ろう
現在、世界では多くの不平等や格差が起きています。
ここでは具体的に、世界でどのような不平等や格差が起きているかを見ていきます。以下の項目で分けていきます。
- 所得
- 性別
- 社会保障
所得格差について
年々所得格差が広がっており、富を持っている人がさらに富を持ち、貧しい人がさらに貧しくなってしまう構造ができています。
2017年度のデータでは、世界人口の最も裕福な1%の人が所有する資産が、世界全体の資産の約33%に相当することを示しました。
一方で最も貧しい世界人口の25%が所有する資産は、世界全体のわずか10%程度にしか過ぎないことも示しました。
また2018年度のデータでは、1日1.9ドル未満で暮らすと定義されている極貧層の割合は、世界人口の約8.6%を占めているという結果が出ています。
加えて1日1.9ドルよりわずかに上回る金額で暮らしている人も10億人近くいることから、貧富の格差が激しいことが分かります。
参照:https://www.unic.or.jp/files/GSDR2019.pdf
お金がないことにより、十分な食事が取れなかったり、学校に行くことができなかったり、病気になっても病院に行けなかったりと、様々な困難が生じています。
学校に行けないことによる教育機会の喪失や、病気によって労働に制限が出てしまうと、収入の良い仕事に就くことが難しくなります。
その結果、貧困の連鎖が続いてしまいます。所得の格差をなくすことがいかに重要なのかということを理解できるのではないでしょうか。
関連記事:【世界の10人に1人】貧困問題を抱えている現状とは?
性別による不平等について
性別によっても多くの不平等が起きています。ここでは女子教育を取り上げていきます。
2018年のデータでは、世界全体では5人に1人の子ども(約17歳の子どもまでを対象)が学校に通えていません。
男女別に見てみると、世界全体では学校に通えていない男の子が17.2%、学校に通えていない女の子が18.5%とおおよそ同等の数値を示しています。
しかしサブサハラ以南のアフリカ地域では、学校に通えていない男の子が29.6%に対して、学校に通えていない女の子が35.1%と大きく差が開いています。
特にアフリカ地域では、女の子が教育の機会を持てないケースが起きていて、主な原因として以下の3つが挙げられます。
- 貧困
- 児童婚と出産
- 教育環境
その他にも通学路が危険であることや学校に女子トイレが無いことも原因となっているだけでなく、例えば南スーダンでは生理用品が手に入らないことにより、月経中の女の子は学校に行くことが難しいケースなどもあります。
年々男女間の格差はなくなってきてはいますが、一部地域ではまだまだ解決すべき男女間の格差に関する問題が数多くあります。
関連記事:世界で広がっている教育格差|その現状とSDGs達成への取り組み
社会保証の格差について
社会保障は病気や怪我、失業、高齢などの様々な要因によって十分な収入が得られない人達を支える重要な役割を担っています。
日本では当たり前となっている年金や保険、生活保障などの制度が無い国が数多くあります。
2018年度のデータによると、180の国や地域の内、法律で整備されている子どもや家族を守るための社会保障制度が無い国は、調査対象全体の40%に及ぶ72か国もありました。
参照:Towards universal social protection for children: Achieving SDG 1.3
一部の国や地域では、法律に基づいていない社会保障制度を備えていると言われていますが、十分な保証ではない可能性が高いでしょう。
すなわち、半分近くの人々は何か起こっても社会が支えてくれない環境下で暮らしていることを示しています。
社会保障制度は安心して暮らすために必要なのはもちろんですが、格差や貧困を防ぐ意味合いも持っていることから、早急に整備する必要があると言えます。
「人や国の不平等をなくそう」を実現するための取り組み
「人や国の不平等をなくそう」を実現するために行われている取り組みを紹介します。
様々な角度から不平等や格差をなくすための取り組みが行われているので、気になる取り組みを行っている自治体や団体などがありましたら、詳細を公式サイトやSNSなどで確認してみましょう。
あなたが知っている企業や団体も「人や国の不平等をなくそう」実現に向けて、素晴らしい取り組みを行っています。
フェアトレード
発展途上国は資源があり、人件費が安いことなどが理由となり、先進国に食料や製品など多くのものを輸出しています。
しかし先進国に安く買ってもらうために、生産者や労働者に対して十分な給料の支払いや、労働・生産環境が整えられていなかったりと多くの問題を抱えています。
立場の弱い発展途上国の生産者や労働者を守るために、「フェアトレード」が近年盛んに行われるようになりました。
発展途上国の食料や製品などを適正価格で継続的に購入することによって、生産者や労働者の自立を目指しています。
フェアトレードを広げていくことによって、先進国と発展途上国間での格差や経営者と労働者間での格差の是正が期待できます。
国際フェアトレードラベル機構によって、国際フェアトレード基準が定められています。
フェアトレード基準は多岐に渡って定められていますが、根底となるのは以下の3つの基準です。
社会的基準
- フェアトレード最低価格の保証
- フェアトレードプレミアムの支払い
- 長期的な取引の促進
- 必要に応じた前払いの保証など
環境的基準
- 安全な労働環境
- 民主的な運営
- 差別の禁止
- 児童労働・強制労働の禁止など
経済的基準
- 農薬・薬品の使用削減と適正使用
- 有機栽培の推奨
- 土壌・水源・生物多様性の保全
- 遺伝子組み換え品の禁止など
参照:https://www.fairtrade-jp.org/about_fairtrade/intl_standard.php
フェアトレード製品の市場規模は年々大きくなってきているので、今後さらにフェアトレードが広がっていくことが予想されます。
同性婚
LGBTQのように性的マイノリティの立場の人は、これまで差別・偏見を多く受けてきました。
しかし性的マイノリティの人達の不平等を無くそうといった観点から、近年では同性婚を認める国が多く出てきています。
現在以下の国では、法律上で同性婚が認められています。
地域 | 国名 |
---|---|
ヨーロッパ | オランダ、ベルギー、スペイン、ノルウェー、スウェーデン、ポルトガル、アイスランド、デンマーク、フランス、イギリス、ルクセンブルク、アイルランド、フィンランド、マルタ、ドイツ、オーストリア |
アジア | 台湾 |
オセアニア | ニュージーランド、オーストラリア |
北中米 | カナダ、メキシコ |
中南米 | アルゼンチン、ブラジル、ウルグアイ、コロンビア、エクアドル、コスタリカ、チリ |
アフリカ | 南アフリカ |
※地域別に同性婚が開始された順に記載しています。
参照:https://www.marriageforall.jp/marriage-equality/world/
地域別に見ると、ヨーロッパでは同性婚を認めている国が多いです。
一方でアジアやアフリカでは、同性婚はまだまだ認められていないと言えます。
日本について具体的に見てみると、日本は法律で同性婚を認めていない代わりに「パートナーシップ制度」を設けています。
パートナーシップ制度は、2015年に渋谷区と世田谷区で同性のパートナーを認めたのを皮切りに、現在200以上の自治体で実施されています。
参照:https://www.marriageforall.jp/marriage-equality/japan/
日本でも徐々にLGBTQに対する不平等が是正されてきていると言えます。
企業の取り組み 三井不動産グループの事例
企業による人や国の不平等をなくす取り組みの例として、三井不動産グループの事例を紹介します。
三井不動産グループでは、以下の取り組みを行っています。
三井不動産グループの取り組み内容 | 概要 |
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「チャレンジドセンター」設置 | 障がい者の雇用促進や職場体験の受け入れのため、各部から定型作業を集約・実施 |
シニア雇用 | 豊富な知識・経験を有するシニア世代においてより安定的かつ安心して働くことへの意欲の高まりを受け、60歳から65歳への定年延長を実施 |
接客ロールプレイングコンテスト・全力応対コンテストの開催 | 商業施設・ホテルにおける接客・サービスの質を高めるための「接客ロールプレイングコンテスト全国大会」「全力応対コンテスト」を毎年開催 |
多言語表示対応・祈祷室設置 | 商業施設に4ヶ国語翻訳に対応したシステムとサービススタッフ、お祈りが必要な方のためにプレイヤールームを導入 |
参照:https://www.mitsuifudosan.co.jp/corporate/esg_csr/sdgs/case/17goals.html
以上の取り組みを通して、健常者・障がい者・外国人など全ての人が活躍できる環境を生み出しています。
特に「チャレンジドセンター」のように障がい者雇用を促進する取り組みを行っている企業はまだまだ少ないと言えるので、良い見本になる取り組みと考えられます。
人や国の不平等をなくすために私たちにできること
SDGs10番目の目標「人や国不平等をなくそう」を実現するために、私たちにできることを紹介します。
多くの人が日々の行動を少しだけ変えることによって、世界で起きている貧困や差別などの不平等に関する問題の解決に繋がっていきます。
私たちにできることは以下の通りです。
- 無駄遣いをやめる
- 寄付・募金をする
- ボランティア・イベントに参加する
無駄遣いをやめる
本記事序盤で記載したように、世界には貧困で苦しんでいる人が多くいます。
私たちが日々消費している食料や資源の多くは、発展途上国から来ていて、私たちが必要もないのに食料や商品を買ってしまうと、困っている人たちの食料や資源が無くなってしまうことにも繋がります。
そのため「必要な時に必要な分だけ買う」ことを徹底することが大切です。
加えて安いからといった理由で商品を選ぶのではなく、上記で紹介した「フェアトレード商品」を選ぶことも効果的です。
フェアトレード商品を購入すれば、いつもの生活を変えることなく、人や国不平等をなくす取り組みに参加できます。
下記記事では、身近なフェアトレード商品を紹介しています。
フェアトレード商品とは?できることや問題点をわかりやすく解説
寄付・募金をする
寄付や募金をすることも、不平等をなくすために重要な方法の1つです。
あなたの寄付金が食料や日用品などの形になって、必要な人の元に届きます。
例えば国際協力NGOのワールド・ビジョン・ジャパンでは、1口1,000円から寄付することが可能です。
寄付金の使途を選べるので、あなたが納得のいく寄付金の使い方をしてもらうことが可能です。
またワールド・ビジョン・ジャパンのような認定を受けている団体に対する寄付は、税金控除などの優遇措置の対象にもなっているので、社会貢献だけでなくご自身にとっても大きなメリットがあると言えます。
参照:https://www.worldvision.jp/donate/
詳細については、寄付を考えている団体の公式サイトをご確認ください。
ボランティア・イベントに参加する
貧困や差別などの不平等問題に関するイベントに参加してみることや、実際にイベントのボランティアを行うことも効果的と言えます。
イベントを通して、貧困や差別などの不平等問題に対する知識が深まったり、実際に社会的マイノリティの方と交流する機会もあるでしょう。
実際の交流や体験を通してしか学べないことや、感じられないことも多くあります。
実際に学んだことや感じたことを家族や友人に伝え広めることも重要です。
1人でも多くの人が、貧困や差別などの不平等問題に対しての関心を高めるためのきっかけ作りの役割をあなたが担いましょう。
また外国人や異文化に対する偏見をなくすという意味では、国際交流に参加するのも効果的です。
外国人は地域でも言葉の壁などもあり、取り残されてしまう傾向にあります。
外国人に対しての理解を深めて、誰もが安心して暮らせる地域作りに繋げることも重要です。
まとめ
本記事では、SDGs10番目の目標「人や国不平等をなくそう」について解説し、世界で起こっている問題や私たちにできることなどを紹介しました。
世界規模の問題だけでなく、私たちの身近な周りでも不平等に関する問題は起きています。
何よりも大事なことは、不平等に関する問題への関心を高めて、常にアンテナを張っておくことではないでしょうか。
そして困っている人がいたら、ぜひ助けの手を差し伸べてあげましょう。
あなたが一歩生み出すことによって、救われる人がきっといます。
本記事で紹介した取り組みをあなたの無理がない範囲で実践してみてください。
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