ジェンダーバイアスとは?意味や身近な例を紹介【あなたは大丈夫?】
2021年2月、東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗会長が「女性のいる会議は時間がかかる」と発言したことが問題視され、辞任に至ったことは記憶に新しいでしょう。
世間のジェンダーバイアスに対する関心は高まりつつあります。
私たち一人ひとりも、無意識に差別や偏見を含んだ言動をしないよう、正しい知識を身に付けることが大切です。
この記事ではジェンダーバイアスとは何か、ジェンダーバイアスの具体例を交えながら紹介していきます。
ジェンダーバイアスってどういう意味?
「ジェンダーバイアス」という言葉がよく聞かれるようになってきましたが、どのような意味があるのでしょうか。
ジェンダーとジェンダーバイアスの意味を解説していきます。
ジェンダーとは「社会的・文化的に作られる性別」
ジェンダー(gender)とは、生物学的な性別(sex)とは違い、社会的・文化的に形成される性別のことです。
世の中には「女性らしさ」「男性らしさ」など、性別によってあるべき姿が社会的に決められてしまうことが多くあります。
ジェンダーは生物学的な性別のように生まれながらもっているものではなく、家庭や学校、社会などとのかかわりのなかで形成されていくものを指します。
ジェンダーバイアスとは「ジェンダーにもとづく偏見や差別」
ジェンダーバイアスとは、「男性はこうあるべき」「女性はこうあるべき」といった社会的または文化的につくられた性差による差別や偏見のことです。
性別によって役割や行動を期待されたり、容姿を評価されたりと、社会のいたるところにジェンダーバイアスは存在しています。
性別による偏見や固定観念は社会に根深く残っていて、多くの人が自身のジェンダーバイアスに気づいていません。
ジェンダーバイアスは何が問題?
ジェンダーバイアスがあることで世の中にどのような問題が起こるのでしょうか。
ジェンダーバイアスによって生じる2つの問題を取り上げます。
問題1:個人としての能力や個性が生かされない
ジェンダーバイアスは、個人の能力が十分に活かされない問題を生じさせます。
「責任ある仕事は男性がすべき」「保育士や看護師は女性の仕事」などのジェンダーバイアスが、個人の可能性や仕事の選択肢を狭めてしまうためです。
個人の能力や個性が活かせないのは、社会にとっても大きな損失になるでしょう。
現状、日本では、ジェンダーバイアスによって男女の就学や就業に不平等が存在しており、個人の自己実現の大きな妨げになっています。
持続可能な社会の実現に向けて解決していくべき課題です。
私たち一人ひとり、そして社会全体に、性別や年齢などの属性で判断せず、個々のパーソナリティやポテンシャルを認める努力が求められます。
問題2:生きづらい社会を作る一因になる
男性らしさや女性らしさを、人から、あるいは社会から押し付けられることで生きづらさを感じる人は多くいます。
生きづらさの要因のひとつになっているのが、「男性は常に仕事を優先すべき」「育児や介護は女性がメインで行うべき」といった無意識の偏見です。
こうした偏見は、職場などにおけるハラスメントの原因になります。
たとえば、女性だけにお茶くみや受付対応をさせたり、育児休暇を取得した男性の評価を下げたりといったことです。
また、性別を「男性と女性」に二分する考え方は、男性にも女性にも当てはまらない性のあり方を排除することにもつながります。
生きづらい社会が形成されてしまうこともジェンダーバイアスの問題です。
あなたは大丈夫?身近なジェンダーバイアスの例
ジェンダーバイアスは性差からくる偏見や差別だと説明しましたが、具体的にどのような言動がジェンダーバイアスになってしまうのでしょうか。
- 家庭
- 子育て
- 職場
- 恋愛
の4つの場面に分けてジェンダーバイアスの例を見ていきましょう。
家庭編:「ご主人はイクメンですね」
「ご主人はイクメンですね」の中でジェンダーバイアスがかかっているのは、「ご主人」と「イクメン」です。
「主人」は配偶者を表す言葉ですが、「他人を従属させている人」という意味があり、女性が男性に仕えているような表現となっています。
ほかにも夫を表す言葉には「旦那」「亭主」、妻を表す言葉には「嫁」「家内」「女房」など、女性の立場が男性よりも低くなるような表現が数多くあります。
また、「イクメン」もジェンダーバイアスのかかった言葉です。
「イクメン」という言葉には、男性の育児を特別視し、「育児は女性がするべき」といった偏見が含まれています。
子育て編:「男の子は泣かない!」「女の子はお手伝い」
「男の子だから~」「女の子だから~」といった言葉を日常でつい口にしてはいませんか。
「男の子は泣かない!」や「強いね、さすが男の子」など、男の子だからといった発言にはジェンダーバイアスがかかっています。
「男性は強くあるべき」という偏見を子どもに植え付けてしまいます。
「いいお嫁さん、いいお母さんになるようにお手伝いをしてね」といった女の子に対する発言もジェンダーバイアスがかかった発言です。
子どもに「家事は女性がするもの」、さらには「女性は結婚して子どもを産むべき」という価値観の押し付けにもなってしまうでしょう。
このような偏ったジェンダー意識を幼い頃から根付かせることは、自分自身や他人を傷つけたり苦しめたりすることにつながります。
職場編:「管理職の多くが男性」
日本において、女性の活躍は社会にとって大切だという認識が高まり、議論されることも増えてきました。
一方で、いまだに重要な役割は男性が担うべきと考える人は多いです。
これには、これまでの男性中心の文化や組織が背景にあります。
内閣府の男女共同参画白書令和3年版によると、100人以上を常時雇用する企業のうち、2020年における女性管理職の割合は、係長級で21.3%、課長級で11.5%、部長級で8.5%であることがわかりました。
上場企業における役員の割合はさらに低く、2020年は6.2%となっています。
女性管理職や女性役員の割合は近年上昇傾向にあるものの、諸外国と比べるとまだまだ女性の占める割合は低いです。
参考:「第2節 企業における女性の参画」(男女共同参画局)
民間だけでなく国会議員においても女性の比率が少ないことが問題として提起されています。
2021年の衆議院選挙においては、当選した議員のうち、女性議員の割合はわずか9.7%にとどまりました。
女性議員の比率は、国際順位で見ると190ヶ国中168位で、こちらも女性の比率が諸外国と比べてかなり低いことがわかります。
参考:「女性の国会議員(衆議院)比率が9.7%に後退」(立憲民主党)
恋愛編:「女子力高いね」「デート代は男性が払うべき」
「女子力高いね」という発言や「デート代は男性が払うべき」という考えもジェンダーバイアスがかかっています。
「女子力」という言葉は、家事の能力の高さや美容への関心の高さ、気配りの細やかさなど、主に「女性らしさ」を表す言葉としてよく使われる言葉だからです。
家事能力や美容への関心、気配りは、決して女性だけが持ち合わせるものではありません。
女子力という言葉には、男性目線で女性に担ってほしい役割などへの期待が含まれてしまうこともあります。
褒め言葉としても使われる女子力ですが、女性への期待や決めつけのような表現にもなります。
「デート代は男性が払うべき」といった男性に対する役割への期待もジェンダーバイアスがかかっています。
ジェンダーバイアスは、異性に対する偏見や決めつけだけではなく、同性や自分自身に対しても存在します。
内閣府の調査によると「デート代は男性が払うべき」といった考えをもっている人は、女性が22.1%に対して、男性が37.3%と男性の方が多いことがわかりました。
参考:「令和3年度 性別による無意識の思い込み」(男女共同参画局)
自身が「男性らしく」「女性らしく」あるためにと、生きづらさを感じている人も少なくないでしょう。
ジェンダーバイアスをなくすために
2021年の世界経済フォーラムで公表された各国の男女格差を測るジェンダーギャップ指数の日本の順位は、156ヶ国中120位でした。
先進国では最低レベルの男女格差が存在していることがわかります。
参考:「「共同参画」2021年5月号」(男女共同参画局)
日本でジェンダーギャップ指数が低いのは、無意識のジェンダーバイアスもひとつの原因です。
ジェンダーバイアスのかかった言葉を悪気なく使用することによって、人を傷つけたり、あるいは傷つけられたり、苦しんでいる人は多くいます。
無意識のジェンダーバイアスをなくすためには、まずはジェンダーバイアスが何かを理解し、意識することが大切です。
性別にかかわらず、誰もが活躍できる社会を目指して、まずは身近なところから自身や周囲の人の意識や行動を変えていきましょう。
下記記事ではジェンダー平等への取り組みについて紹介していますので、合わせて読んでみてください。
まとめ
「男性はこうあるべき」「女性はこうあるべき」などと、社会や文化により形成された性差による差別や偏見をジェンダーバイアスといいます。
ジェンダーバイアスは、普段の会話で当たり前のように発する言葉のなかにも潜んでいる可能性があります。
それぞれが個々の能力を発揮し生きやすい社会にしていくには、無意識のジェンダーバイアスを知ることが大切です。
まずは自分自身に対して性役割の意識がないかを確かめましょう。
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