脱炭素社会とは?地球温暖化の現状と世界の取り組み、私たち一人ひとりにできること
「脱炭素社会」という言葉ですが、いざ説明しようとすると言葉が出てこない…という方が多いのではないでしょうか。
この記事では、世界全体で一丸となって向かおうとしている「脱炭素社会」についてわかりやすくご説明した上で、待ったなしの状況に陥っている地球温暖化の現状を解説していきます。
その上で、私たちの生活をどのように切り替えていけばいいのか、一緒に考えていきましょう。
SDGsの目標13は「気候変動に具体的な対策を」
2015年に採択されたSDGs目標の中の13番は『気候変動に具体的な対策を』をテーマとし、気候変動やその影響を減らすための具体的な対策を考えて行動することを指針としています。
地球温暖化、気候変動などの言葉はよく耳にしますし、実際に日本で暮らしていても毎年のように自然災害が増えているのは痛感します。
- ゲリラ豪雨&それに伴う洪水
- 夏の猛暑日や熱帯夜の多さ
- 予期しないタイミングでの積雪
気候変動はどこか遠い国の話ではなく、地球全体で起きている問題であり、私たちの暮らしも脅かされ続けていくのは明らかです。
脱炭素社会とはなにか
最近耳にするようになった「脱炭素社会」とは二酸化炭素などの温室効果ガスの排出量と吸収量が、プラスマイナスゼロとなる社会を指します。
便利な社会を追求するあまり、人間は温室効果ガスを発生させ続けてきましたが、これからは排出量を減らしたり、吸収することに目を向ける必要があります。
地球温暖化の原因
地球温暖化の大きな原因は、私たちが排出している二酸化炭素です。
二酸化炭素が、地球をじんわりと覆うことで「温室効果ガス」と呼ばれる膜を作ります。
この膜がブランケットのような役割をしてしまい、地球の気温がどんどん温められ、毎年の最高気温が上がっているということです。
では、この二酸化炭素はどこから出てきているのでしょうか。
国ごとの排出量をランキングにすると、日本はどれくらいに位置しているかイメージできますか?
「全国地球温暖化防止活動推進センター」の発表している、2019年のデータによると、なんと日本は世界ラインキング5位とかなり上位にいることがわかります。
2019年世界の二酸化炭素排出量・国別排出割合
- 中国:29.5%
- アメリカ:14.1%
- インド:6.9%
- ロシア:4.9%
- 日本:3.2%
日本よりも上位国をみると、国土も人口も多い国が目立ちます。
そんな中で日本が5位に入ってしまっているというのは、見て見ぬふりできない状況ではないでしょうか。
温室効果ガス(二酸化炭素)が増えた原因は?
私たち人間が便利な生活を求め始め、産業革命が始まった18世紀頃から、じわじわと地球上の温室効果ガス濃度は上昇し始めました。
産業革命以前の1750年ころと比べると、約40%も増加しているという恐ろしいデータもあります。
二酸化炭素を主とする温室効果ガスが増えている理由は、さまざまです。
- 化石燃料の燃焼(交通期機関の燃料や、工場の燃料、電気の発電など)
- 工業型の畜産(森林破壊や動物の排出するゲップや糞尿などの腐敗)
- スプレー缶や冷蔵庫・エアコンの冷媒
- 森林破壊
温室効果ガスの排出量はどんどん増えている一方で、二酸化炭素を吸収してくれる森林破壊を進めているため、ますます排出量が増えているという悪循環に至っています。
世界の取り組みについて(世界規模の国際会議)
自然災害が増え、どんどん暑くなり、動物だけでなく人間も暮らしていくのが苦しくなってくるのが目前の今、世界はどのような取り組みに乗り出しているのでしょうか。
気候変動に関する国際連合枠組条約(UNFCCC)
1992年に開催された「環境と開発に関する国際連合会議」にて、地球温暖化に関する国際的なガイドラインが制定され、1994年発効されました。
毎年締結国会議(COP)が開催され、どのように地球温暖化対策に立ち向かうのかの議論が行われています。
京都議定書
2005年に発行された京都議定書は、温室効果ガスの排出量を国別に一定値削減することを課しました。
これを受けて、第一約束機関の2008~2012年の期間では、日本やヨーロッパ諸国は目標を達成。
ただし、温室効果ガスの排出量の多いTOP2である中国・アメリカが批准を拒否したことや、参加国は先進国に限ったことで、排出量3位のインドが含まれておらず、インパクトは限定的となっています。
パリ協定
京都議定書では先進国しか排出制限がかからなかったことを受け、2015年に参加国・地域を増やして結ばれたのが「パリ協定」です。
このパリ協定では主要排出国を含む多くの国が参加となりました。
これにより、世界の温室効果ガスの排出量約86%がカバーされ、世界が各国が一丸となって削減に向けて動き出しました。
日本の取り組みについて
2021年10月に「地球温暖化対策計画」が閣議決定されました。
ここで決定された大きなガイドラインは「2030年度において、温室効果ガス46%削減(2013年度比)を目指すこと、さらに50%の高みに向けて挑戦を続けること」とあります。
さらに、その先には「2050年カーボンニュートラル宣言」があり、今すぐにでもアクションを取らなければいけないほど厳しい目標を立てています。
さっそく脱酸素社会・カーボンニュートラルに向けて動き出すために、日本ではいろいろな取り組みが始まりつつあります。
具体的に見ていきましょう。
カーボンプライシングの導入
カーボンプライシングと呼ばれる新しい課税制度の導入が検討されています。
簡単に言うと「二酸化炭素を排出した税」と言えるでしょう。
- 地球温暖化対策税(排出量に応じて1トン当たりで計算して課税)
- 排出量取引(排出上限量を決めて、超えた分を罰金を科す制度)
- 国境調整措置(輸出入品の製造工程で発生する量によって、課税や免税)
このような税金制度を導入することで、どの企業も自社の二酸化炭素排出量を削減する取り組みが進むのではと期待されています。
エネルギーミックスの実現
「よりクリーンな電気を」をいうフレーズを聞くようになり、太陽光発電などの再生可能エネルギーへの注目が高まっています。
ただし、2021年時点でまだまだ天然ガス発電や石炭などの従来の二酸化炭素を排出する方法が約8割を占めているのが現状です。
これから先は風力発電や水素発電などのクリーンエネルギーの割合を増やしつつ、エネルギーミックスバランスをとっていくことが強く求められています。
ゼロカーボンシティの促進
脱炭素社会に向けて一歩先に進む「2050年までに二酸化炭素排出量実質ゼロ」を掲げる地方公共団体のことを「ゼロカーボンシティ」と呼びます。
それぞれの地域において、脱炭素社会に向けたアクションプランを制定し、行動することを宣言しています。
2023年6月末時点で、東京都・京都市・横浜市をはじめとする973の自治体がゼロカーボンシティ宣言をしています。
引用:環境省「地方公共団体における2050年二酸化炭素排出実質ゼロ表明の状況」
サンゴのモニタリングや移植・増殖
大気中の二酸化炭素を吸収してくれるのは森林だけではありません。
実は海の中にあるサンゴ礁も、木と同じように光合成をしながら二酸化炭素を吸収してくれます。
しかも、森林よりも吸収率が多いことまでわかっています。
しかし海水の温度が上昇していたり、海産物の乱獲などの影響で、サンゴ礁がどんどん傷んでいるのが現状です。
少しでも現状を食い止めるべく、沖縄などでのサンゴ礁の保護活動が進められています。
各企業(業界)の取り組み具体例
脱炭素社会に向けた取り組みは、決して一つの業界だけで達成できることではありません。
すべての産業がそれぞれのできる範囲での取り組みを、進め始めているところです。
自動車業界(トヨタなど)
二酸化炭素排出においてわかりやすいのは車業界です。
ガソリンを使って走る車は、移動するたびに二酸化炭素を吐き出しているからです。
経済産業省は「2030年半ばまでに国内の新車販売から、純粋なガソリンエンジン自動車をゼロにする」ことを計画しています。
これによってハイブリッド車や電気自動車の普及が加速される見込みです。
とはいえ、2021年時点で電気自動車は全車両販売のうちたったの1%、ハイブリッド車は約3割とまだまだガソリンモデルが主流です。
トヨタのプリウスや日産リーフ、ホンダのフィットなどのハイブリッド車は少しずつ街中でも見る機会が増えてきました。
そんな中で注目されているのがトヨタ車の発表した水素電池自動車のMIRAI。
都内を始め水素ステーションの設置も着々と進んでいて、これから先燃料電池自動車は増えていくのは間違いありません。
アパレル業界(パタゴニアなど)
実はアパレル業界は温室効果ガスの排出量が高い産業です。
素材となる繊維を作る過程から、色付けの工程などの工場にて温室効果ガスの排出が高いとされています。
またプラスチック排出量も高く、環境負荷の高い産業です。
そんな現状を受けて、アメリカのアウトドア用品ブランドであるパタゴニアは「カーボンニュートラルだけでは不十分」と宣言し、各種取り組みを推進しています。
- 石油を使わない素材への切り替え
- 再生可能天然素材やリサイクル素材への切り替え
- コットンなどの素材を育てつつ保護を進める
- 再生可能エネルギーへの移行を推進
- 環境損益計算をする
自然を愛するアウトドアブランドだからこそ、手広く活動を進めています。
このような企業から学べる点は多そうです。
そのほかの業界(Googleなど)
工場を構えて、煙突から二酸化炭素を排出しているような業界でなくても、カーボンニュートラルに向けた取り組みを進めている企業はたくさんあります。
たとえば、Googleはすべてのオフィスとデータセンターの電力を100%再生可能エネルギーに切り替えています。
このような取り組みは、どのような企業にも展開ができるため、パイロットケースとして注目されています。
私たち一人ひとりにできること
脱炭素社会に向けた一歩は、私たち個人にもアクションをとることができます。
むしろ、地球に住む責任を負っているとして、誰でも何かしらの一歩を踏み出す必要があるといえるでしょう。
- 節電や省エネ
- 無駄なものは買わず大量生産・大量消費を防ぐ
- 不要になったものはリユース・リサイクルしゴミを削減
- 自宅の電力を再生可能エネルギーに切り替える
- 公共交通機関を利用する
どれも長らくあちこちで言われている小さなことに感じられるかもしれませんが、このような小さな積み重ねが大きなうねりに繋がっていきます。
まずは、今日、何ができるかを考えてみましょう。
まとめ
脱炭素社会とは、カーボンニュートラルともいわれる「二酸化炭素の排出量」と「吸収量」をプラスマイナスでゼロにした社会のことを指します。
排出量をゼロにすることは難しいけれど、できるだけ削減していく。
その分、今まで軽視されていた「二酸化炭素の吸収量」の方に目を向けていく。
そのような考え方が、どのような業界の企業であっても、どこの地方自治体であっても、避けては通れない道となっています。
日本では「2030年」という大きな目標に向けて、急速にカーボンニュートラルに向けた取り組みが進みだしました。
その中で、自分には何ができるのか、どんな選択ができるのかを考えていきましょう。
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