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P&G Japan 松下結妃さん|摂食障害当事者の「自分に合う良質なサポーターに出会えない」という課題に向けて【イノベーターインタビュー】

Innovator-Interviews イノベーターインタビュー

イノベーターインタビューシリーズ第1弾。

今回は、摂食障害当事者の医療体制の整備不足による「自分に合う良質なサポーターに出会えない」という課題解決のために活動されているP&G Japan/Senior HR Managerの松下結妃(まつしたゆいき)さん

  • 環境問題・社会問題の解決に取り組もうと思われたきっかけ
  • 事業の概要について
  • 新しく挑戦されようという方へ、アドバイス

についてお話を伺いました。

【プロフィール略歴】
P&G Japan Senior HR Manager 松下結妃(まつしたゆいき)。
早稲田大学大学院日本語教育研究科卒業後、新卒でP&G JapanにHRとして入社。学生時代の当事者体験から「自分のことは好きになれなくても、所属する組織のことは好きになれる人が増える」社会の実現に向けて、サイズ・ビジネスの異なる多様な組織において人事戦略の立案・実行を担当。特に障がい者雇用・活用に注力しており、組織におけるニューロダイバーシティの実現に向け、社内研修や精神・発達障がい学生の就職活動支援プログラムの運営を実施。副業として発達障がいの学生・若手社会人向けパーソナルキャリアコーチングや摂食障害の当事者向けサービスの起案を行っている。

きっかけは自身の摂食障害当事者体験

原体験は自身の摂食障害当事者体験です。

(高校2年生から社会人1年目まで約8年間の闘病を経て、現在は寛解しています。)

摂食障害とは、拒食・過食・過食嘔吐などの、食事に関連した異常行動が続く精神疾患で、寛解(克服)するまでに平均5~6年かかります。

摂食障害は、誰しもがなりうる可能性があるものの、医療整備が進んでいないことが課題となっています。

16歳~23歳女性における摂食障害の有病率は約13%という研究もありますが、同時に約半数の方は未受診という報告もあります。

実際には調査データより多くの方が苦しんでいる可能性が高いんです。

また、コロナ禍によって10代の相談件数も2020年から2021年にかけて、1.8倍になっています。

しかし、摂食障害専門の医療機関は全国で4件しかありません。

生活に密着して人のつながりを支える「食事」に関する疾患であり、理解されづらい症状であることから、私自身も誰にも相談することが出来ず、家族や友人との関係も壊れていったために闘病生活の孤独を感じていました。

同様に「言語や文化が異なる土地で生活する留学生」や「精神・発達障害の特性と共に生きる学生」など、目に見えない・人に理解されづらいことに悩まされる学生に当事者意識を感じ、学生時代から当事者への伴走や居場所づくりに取り組んできました。

卒業後は人事として上記のような環境形成や仕組みづくりに携わる他、組織への伴走に加えて個人への伴走を強化したいという考えからコーチング資格を取得、プロコーチとしても活動しています。

加えて、「自分の根本の問題意識である摂食障害にアプローチしたい」という気持ちが捨てきれず、現在は摂食障害の当事者をピアサポーターとして育成し、今苦しむ当事者と結びつけるプラットフォームの立ち上げを準備中です。

事業の概要|「この人になら話したい」と思えるサポーターに出会える安心安全なプラットフォーム

摂食障害当事者の「自分に合う+良質なサポーターに出会えない」という課題解決のため、①専門家監修のピアサポーター育成プログラム②サポーターの経験や人となりが見える化されたマッチングプラットフォームを立ち上げています。

平均5~6年と長期化する摂食障害治療では、当事者の治療モチベーションを維持するための「伴走者」の存在が鍵となります。

私自身、摂食障害当事者の克服した姿をロールモデルとして、何とか8年間の闘病生活を乗り切りました。

しかし現状、自助グループや個人のピアサポーターは独立して・クローズドに活動してしまっているため、

 

①ピアサポーターの均質化が難しい

②当事者は自分に合う自助グループや個人ピアサポーターの選定が出来ない

という課題があります。

現時点ではまだまだ実証実験段階ですが、今後は専門家による治療に加えて、もっと気軽に+安心して「この人になら話してみたい!」、そんな風に思える「摂食障害経験者の先輩」との出会いを提供し、治療のモチベーションを維持できる仕組みを作りたいです。

さらに将来的には、本プラットフォームの中で収集した情報を基に、医療連携や行政連携を深めて摂食障害に特化したヘルスケアアプリの設計などにつなげたいと思っています。

新しく挑戦されようという方へ、アドバイス

お金にならないから、ひとつのアプローチでは解決できないから、時間がかかるから、…様々な要因で課題が凝り固まって肥大化したものが「社会課題」だと思います。

だからこそ、一筋縄では絶対に解決できないし、即自的に大きなインパクトを出すことを諦めない姿勢と、腰を据え人生を掛けて変革を仕掛けていくという覚悟が必要なんだなと、諸先輩方を見ていても思います。

また、特にヘルスケアや福祉の領域では、自分が越境的に関わる場合(医療専門家ではないのにヘルスケアに手出しをする場合)、専門家との連携が必須だと思うのですが、

  • 専門家に見えない部分や当事者性に基づいたサービス設計にすること(=専門家の言いなりになりすぎないこと)
  • 専門家の意見を適切に捉えて改変し安全性を担保すること

のバランスがすごく難しいなあと日々悩んでます。

私は何かアドバイス何て言える立場でもなく、成功も何も出来ていないので、今何かをしようか迷っている人にとって、少しでも上手くいっていないもがく姿を反面教師的に+励まし的に伝えられたら、と思っています!

摂食障害で悩んでいる方へ

摂食障害は克服できるということを伝えたいです。

私自身8年間の闘病生活の中で、当時は治るわけない、現在の仕事(会社員としてフルタイムで働くこと)もできないと思っていました。

しかし、いろんな人の支えで摂食障害を克服できました。

そして自分の経験が次のだれかの希望に繋がることがわかりました。

希望を捨てないでほしい、病気と向き合い、克服してほしいです。

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