格差・貧困・人権

ウェルビーイングを簡単に解説!5つの要素や注目される理由とは?

最近、耳にする機会の増えた「ウェルビーイング」という言葉。

ポジティブなイメージはあっても、意味や注目される背景、重要な要素などを理解するのは難しいかもしれません。

ウェルビーイングとは、心身の健康や社会的に充実した状態を指す概念です。

ウェルビーイングは経営などでも重要視されており、世界中で関心が高まっています。

この記事では、ウェルビーイングの概要を簡単にわかりやすく説明するとともに、ウェルビーイングに欠かせない5つの要素や注目される理由についても解説します。

ウェルビーイングとは?

ウェルビーイング(Well-being)とは、心身・社会の各領域において良好な状態にあることを指す概念

「Well(良い)」と「Being(状態)」を組み合わせて作られた言葉です。

1946年に61カ国の代表により署名され、1951年に日本で公布された世界保健機関(WHO)憲章の前文において、ウェルビーイングは以下のように説明されています。

 

“Health is a state of complete physical, mental and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity.(健康とは、病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあることをいいます。)”
引用:日本WHO協会「世界保健機関(WHO)憲章とは」

 

ウェルビーイングと幸福(Happiness)・福祉(wellfare)の違い

ウェルビーイングと似た言葉に「幸福(Happiness)」や「福祉(wellfare)」があり、どちらの言葉も良好な状態であることは同じですが、幸せの範囲が異なります。

「幸福(Happiness)」と「福祉(wellfare)」は以下のように説明されています。

  • 幸福(Happiness):満ち足りていること。不平や不満がなく、楽しいこと。
  • 福祉(wellfare):よりよく生きようとする生活態度のこと。身体が健やかであること。

「幸福」は瞬間的な意味合いを持ちますが、「ウェルビーイング」は持続的な意味合いがあるといえます。

また「福祉」は社会的・身体的な幸せのニュアンスが強い言葉です。

ウェルビーイングとSDGsの関係性

ウェルビーイングは、SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)にも使われています。

SDGs目標3「すべての人に健康と福祉を」の英語訳は「Good health and well-being」です。

ここではウェルビーイングが「福祉」の意味で使用されています。

SDGsは2030年を期限としており、地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを掲げています。

SDGsの最終目標は、地球環境が守られ、貧困や格差がなく、すべての人が平和で豊かな暮らしができる世界の実現です。

つまり、SDGsの目指す世界が「ウェルビーイング」なのです。

SDGs目標3「すべての人に健康と福祉を」を詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
参考:SDGs目標3「すべての人に健康と福祉を」|世界の現状とできること

ウェルビーイングが注目されるようになった背景とは?

SDGsにも使用されている「ウェルビーイング」ですが、世界中に注目されるようになった背景には、3つの出来事があります。

  • 世界経済フォーラム(ダボス会議)
  • OECD(経済協力開発機構)「教育2030」
  • ウェルビーイング・エコノミー

世界経済フォーラム(ダボス会議)

2021年に開催された世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)のテーマは「グレート・リセット」。

グレート・リセットとは、より良い世界のために、金融や社会システムなどをすべてリセットして再構築することを意味します。

新型コロナウイルスによるパンデミック、それによる経済格差の拡大などが人々の幸福に影響をもたらしていることや、地球温暖化などの気候変動が危機的状況にあることなどから、グレート・リセットの必要性が訴えられました。

また、世界経済フォーラムの創設者である会長のクラウス・シュワブ氏は、「世界の社会経済システムを、人々のウェルビーイングを中心としたシステムに考え直すべきだ」と述べています。

OECD(経済協力開発機構)の「教育2030」

OECD(経済協力開発機構)は、ヨーロッパの国々を中心に、日本・アメリカを含めた38カ国が加盟する国際機関です。

国際マクロ経済動向や貿易、開発援助のほか、持続可能な開発やガバナンスなどについて、加盟国間の分析・検討を行っています。

「教育2030」はOECDが2015年に立ち上げたプロジェクトです。

2030年の社会を見通して、近未来の教育について世界に提言しています。

教育2030の序文には、以下のように記載されています。

 

“単に自分が良い仕事や高い収入を得ることだけでなく,友人や家族,コミュニティや地球全体のウェルビーイングのことを考えられなければならないのである。”

また、ビジョンには以下のように書かれています。

 

”全ての学習者が,一人の人間として全人的に成長し,その潜在能力を引き出し,個人,コミュニティ,そして地球のウェルビーイングの上に築かれる,私たちの未来の形成に携わっていくことができるように支えていく責務がある。”
引用:OECD「2030プロジェクトについて」

2030年の教育では、ウェルビーイングを考慮する必要がある、としています。

ウェルビーイング・エコノミー

「ウェルビーイング・エコノミー」の登場も、ウェルビーイングへの注目を後押ししています。

ウェルビーイング・エコノミーとは、社会や自然界に経済活動が組み込まれていると理解している経済です。

2018年に設立されたWellbeing Economy Alliance(WEAll)という団体が提唱する概念で、単なる経済成長ではなく、人間と生態系の幸福を尊重して社会経済を再設計するとしています。

WEAllには現在、400以上の組織や個人が参加しています。

参考:Wellbeing Economy Alliance

ウェルビーイングの5つの要素

ウェルビーイングは、5つの要素によって構成されているといわれています。

要素にはさまざまなものがありますが、広く知られているのは以下の2つです。

  • 「PERMA(パーマ)の法則」の5つの要素
  • 「ギャラップ社」の5つの要素

それぞれの要素を説明します。

「PERMA(パーマ)の法則」の5つの要素

「PERMA(パーマ)の法則」は、アメリカの心理学者であるマーティン・セリグマン氏が提唱した、ウェルビービングを高めるための5つの要素を指す法則です。

  • P:Positive Emotion(ポジティブな感情)
  • E:Engagement(物事への積極的な関わり)
  • R:Relationship(良好な人間関係)
  • M:Meaning and Purpose(意味と目的)
  • A:Achievemnt / Accomplishment(目標達成)

セリグマン氏はポジティブ心理学の推進者であり、「PERMAの法則」はその分野で研究されてきました。

この5つの要素を追求することで、人々はより充実した人生を送ることができるとしています。

「ギャラップ社」の5つの要素

ギャラップ社は、アメリカでウェルビーイングに関する調査を行っている企業です。

世界150カ国を対象とした調査の結果、同社はウェルビーイングの要素は以下の5つだと結論づけています。

  • Career well-being:仕事のウェルビーイング
  • Social well-being:人間関係のウェルビーイング
  • Financial well-being:経済的なウェルビーイング
  • Physical well-being:心身的なウェルビーイング
  • Community well-being:地域社会や所属している団体のウェルビーイング

さまざまな人生経験や仕事、人間関係、経済などにおいて、前向きな感情を抱いたり、達成感を感じたりすることで、人々はウェルビーイングな状態になれるとしています。

「経営・ビジネス」におけるウェルビーイング

ウェルビーイングは、人々がより良く生きるために重要な概念です。

社経営においても、ウェルビーイングへの取り組みが推奨されています。

「ウェルビーイング経営」とは、従業員が心的・身体的・社会的に満たされた状態になるよう、会社組織を整えていく経営方法です。

ウェルビーイング経営では、メンタルヘルスや生活習慣病の予防など、社員の健康だけに焦点を当てるのではなく、働くモチベーションや目標達成も重要視します。

ウェルビーイングが経営にもたらすメリット

ウェルビーイング経営が会社にもたらすメリットは、大きく分けて3つ挙げられます。

  • 従業員のモチベーション・満足度の向上
  • 従業員の離職率低下、優秀な人材の確保
  • 生産性・品質・顧客満足度の向上

働きやすい職場は従業員のストレスを軽減させ、仕事に対するモチベーションや従業員満足度が高まります。

業務改善や効率化にも積極的に取り組むようになるため、人件費削減など企業にとってコストカットにもつながります。

良好な人間関係は、従業員の離職率低下にも効果的です。

また職場環境が整うことで、社内の雰囲気も良くなります。

ウェルビーイング経営は企業のブランドイメージや価値を高めるため、優秀な人材を確保しやすくなるでしょう。

結果として、生産性や品質が向上し、顧客満足度の向上につながります。

ウェルビーイング経営はステークホルダーの幸せを目指す経営であり、これからの経済活動に必要不可欠だといえます。

ウェルビーイング経営に取り組む際のポイント

ウェルビーイング経営を取り入れる場合は、次のポイントを押さえましょう。

  • ビジョンや目標の共有
  • 労働環境を見直し、従業員の健康を図る
  • 「何がウェルビーイングなのか」を検討し続ける

自社のビジョンや短長期的な目標を共有することで、従業員は目指す方向が明確になり、連帯感が生まれます。

結果として帰属意識の向上にもつながります。

精神的・心身的な健康のためには、労働環境の改善が必要不可欠です。

長時間労働の削減はもちろん、多様性に合わせた働き方の提案や、育児休暇の取りやすさなどを見直してみましょう。

時代によってウェルビーイングの定義は変わってきます。

最初に決めたルールをそのまま継続するのではなく、時代や個人の変化に気を配り、柔軟に対応していくことが重要です。

まとめ

精神的・身体的・社会的に満たされた状態を指す「ウェルビーイング」

個人だけの問題でなく、教育や会社経営においても積極的に取り入れるべき概念といえるでしょう。

ウェルビーイングは世界中で注目されており、日本でも今後ますます耳にする機会は増えると考えられます。

しかし現在、日本の幸福度ランキングは低く、国連が公表した「世界幸福度ランキング2022」では先進国のなかで最低となる54位でした。

日本に住む人々がウェルビーイングであるためには、政府や企業など、日本社会全体での取り組みが必要でしょう。

私たちが自信を持って幸せに生きるために、ウェルビーイングの考え方を理解することが大切です。

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