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かくれフードロスとは?アストラフードプランのSDGsな取り組みを解説

最近、コンビニエンスストアやスーパーマーケットで「フードロス削減」への取り組みをよく見かけるようになりました。

個人でも、食べ残しがないよう努めている方も多いのではないでしょうか。

しかし、フードロスとしてカウントされていない食材が食品工場や生産地で大量に廃棄されています。

その量は、フードロスの4倍ともいわれています。

今回は、この「かくれフードロス」の削減に取り組む企業「アストラフードプラン」を紹介するとともに、その企業が食品業界から注目される理由をまとめました。

あまり知られていない「かくれフードロス」の問題や解決方法を探っていきましょう。

フードロス削減に挑む!アストラフードプラン

アストラフードプラン(ASTRA FOOD PLAN)は、フードロス削減に取り組むフードテックベンチャーです。

野菜の芯や皮、ヘタなど、廃棄される食材を栄養価の高いパウダーへ加工する「過熱蒸煎機」を開発・販売しています。

過熱蒸煎機とは、数百度の高温スチームで食材を殺菌乾燥する装置で、食材への加熱時間はわずか5〜10秒です。

この短時間の加熱によって、食材の酸化抑制や栄養価の損失、風味の劣化を防ぐことに成功しました。

現在は、食品メーカーとパートナーシップを結んで、生産したパウダーの用途開発に取り組んでいます。

パウダーは、食材によっては旨味成分や栄養価が増加することもわかっており、加工食品、サプリメント、機能性食品などの製造にも役立ちます。

アストラフードプランは、食品工場や生産者などが抱える廃棄予定の食材を付加価値のある食材へとアップサイクルする、新たなビジネスモデルを構築しました。

アストラフードプランが注目される3つの理由

アストラフードプランの事業は、環境や健康面において社会問題を解決できると注目されています。

具体的な理由を以下にまとめました。

理由1:かくれフードロスを削減できる

過熱蒸煎機は、かくれフードロスの削減に大きく貢献しています。

かくれフードロスとは、アストラフードプランが問題を顕在化するために造った言葉です。

一般的に知られているフードロスとは、コンビニエンスストアやスーパーマーケット、家庭などで本来食べられるにもかかわらず廃棄される食材のことです。

一方、かくれフードロスは、市場に出回る前に廃棄されてしまう規格外農産物や、食品工場で生じる皮やヘタなどの未利用農作物を指します。

かくれフードロスの量は年間2000万トンであり、一般的なフードロスの約4倍といわれています。

不可食部のアップサイクルができる過熱蒸煎機は、廃棄される食材の削減が可能です。

食の循環型モデルを構築できる点で、高い関心が寄せられています。

理由2:人の健康的な食生活に寄与する

過熱蒸煎機で風味や栄養価の減少を抑えながら製造されるパウダーは、健康面でのメリットが大きいといわれています。

食材によっては旨味成分の増加、ビタミン E・β-カロテン・葉酸などの栄養価の向上も報告されています。

パウダーは加工しやすいため、さまざまな場面で取り入れられているのが特徴です。

忙しいビジネスパーソンや野菜嫌いの子どもなど、幅広い世代の健康的な食生活を支える存在になるのではないでしょうか。

理由3:もったいないがビジネスチャンスになる

過熱蒸煎機は、「もったいない」を「おいしい」に変換できる機械といえます。

多くの食品工場が抱えるかくれフードロスは、産業廃棄物として処理するだけでも費用がかかります。

なかには年間数億円も費やしている企業もあるほどです。

しかし、過熱蒸煎機は、廃棄予定の食材をすばやくおいしく付加価値のある食材に加工できます。

大金を払って捨てている食材をパウダーにすることで、コスト削減と新規事業開拓を同時に実現できるのです。

アストラフードの事業は、多くの企業の問題解決に役立つでしょう。
​​
このように、アストラフードはこれまで廃棄されてきた食材をアップサイクルすることで、社会問題の解決に努めています。

SDGsの目標で考えると、「9.産業と技術革新の基盤を作ろう」「12.つくる責任、つかう責任」に貢献しているといえます。

続いて、アストラフードプランの具体的な取り組みを紹介します。

取り組み①吉野家とポンパドウルとの共同開発

アストラフードプランは、吉野家の生産過程で生まれる玉ねぎの端材を、玉ねぎパウダーにするプロジェクトに取り組んでいます。

野家の野菜加工工場では、牛丼用の玉ねぎ端材が1日700kg、年間では約250トン発生しています。

玉ねぎの成分は動物にとって中毒症状を起こすことがあるため、飼料としてリサイクルできません。

そのため、これまでは廃棄されていましたが、過熱蒸煎機を使用することで、新たな食材として活用することに成功しました。

このプロジェクトに加わったのが、「野菜パンを作りたい」というニーズを持つ株式会社ポンパドウルです。

ポンパドウルのパン生地に野家の玉ねぎパウダーを練り込んだ新商品を開発し、2023年2月2日より、共同開発で生まれたオニオンブレッドが発売開始されました。

これは、アストラフードプランのパウダーを使用し、初めて販売された商品です。

玉ねぎパウダーは、フライドオニオンの代用品としてスープやサラダにトッピングしたり、ハンバーグに練り込んだりなど、さまざまな料理に活用できます。

今後の活躍が期待されます。

参考:ASTRA FOOD PLAN|吉野家とポンパドウルと共同プロジェクト
参考:アップサイクルで食品ロス削減~パウダー加工で新たな食材へ~ ASTRA FOOD PLAN(アストラ・フード・プラン)株式会社​​

取り組み②自治体やJAグループとの連携

画像引用:JAいるま野

埼玉県富士見市に本社を置くアストラフードプランは、県や市、JAグループと連携しながら、「埼玉食のサーキュラーエコノミープロジェクト」にも尽力しています。

JAいるま野が地元の生産者から規格外農産物や余剰農産物などを買い取り、過熱蒸煎機を通してパウダーへとリサイクルしています。

女子栄養大学と日本薬科大学の学生が、そのパウダーを原料としたパンやケーキを飲食店と共同で開発しました。

2024年2月から、富士見市を含む県内7カ所の飲食店で期間限定メニューとして販売されています。

また、富士見市内の小中学校の給食では、アストラフードプランのパウダーを使用した「にんじんパン」が提供され、食育の機会となりました。

東京都に隣接する埼玉県には食品工場が多く存在します。

地域参加型の事例は、地産地消に特化した食の循環型モデルといえるでしょう。

参考:JAいるま野|アストラフードプラン報告会

参考:PR TIMES|ASTRA FOOD PLAN、「埼玉 食のサーキュラーエコノミープロジェクト」始動

取り組み③「AFPラボ」を設立

2022年9月、アストラフードプランは、過熱蒸煎機のショールーム兼テストルームとなる「AFPラボ」を本社の敷地内に設立しました。

オープンから1カ月で6社の企業がテストを実施したことからも、高い注目度がうかがえます。

AFPラボでは、企業からリサイクルしたい食材を預かり、パウダーのサンプルを製造します。

さまざまな食材の乾燥・殺菌テストができるため、機械の導入を検討する企業がより具体的なイメージを持てるようになりました。

過熱蒸煎機の高い汎用性や、高品質な仕上がりに対する驚きの声が多く聞かれます。

環境だけでなく、企業にもやさしい取り組みといえるでしょう。

過熱蒸煎機を導入する企業が増えることで、かくれフードロスが削減されるとともに、アストラフードプランのパウダーを使用した商品が増えることが期待されます。

参考:PR TIMES|フードテックベンチャーのASTRA FOOD PLAN、『過熱蒸煎機』のショールーム兼テストルームとなる「AFPラボ」を埼玉県富士見市に設立

取り組み④ 群馬県で実証実験を開始

2024年3月、アストラフードプランは群馬県が実施する令和6年度「ぐんまAgri×NETSUGEN共創実証事業」に採択されました。

オリーブ農園を経営する農業のスタートアップや秋間梅林観光協会などと連携し、群馬県のかくれフードロスの削減を目指します。

首都圏への重要な農産物供給地である群馬県では、多種多様な作物を生産している一方で、規格外農作物や端材などが多く発生しています。

埼玉県での取り組みで得たノウハウが、群馬県でも生かされるのではないでしょうか。

参考:PR TIMES|ASTRA FOOD PLAN、群馬県で実証実験を開始。オリーブ農園と連携し、年間数万トンの「かくれフードロス」削減を目指す。

かくれフードロスをゼロに

アストラフードプランが過熱蒸煎機を開発したことで、これまで廃棄されていた食材を価値ある食材へアップサイクルできるようになりました。

フードロスの4倍の廃棄量といわれる「かくれフードロス」を減らすことは、地球環境への負担も大幅に削減できるといえるでしょう。

しかし、これは一社で達成できる問題ではありません。

食品工場や食品メーカー、商品を購入する消費者の協力が不可欠です。

アストラフードプランを中心に食の循環型モデルを構築するためには、より多くの企業や自治体がかくれフードロスの現状を受け止め、過熱蒸煎機に関心を持つことが必要です。

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