【厳選9選】市場拡大中のグリーンテックとは?海外と日本の企業事例を紹介
持続可能な社会の実現が求められる昨今では、再生可能エネルギー・電気自動車・代替肉・バイオマスプラスチックなど、一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。
これらの開発に共通しているのが「グリーンテック」です。
グリーンテックは、社会問題の解決に寄与する技術として注目されています。
今回は、グリーンテックの意味や市場拡大している理由を解説します。
また海外と日本のグリーンテック企業もそれぞれ紹介します。
グリーンテックの価値や可能性を理解して、持続可能な社会の実現に貢献しましょう。
グリーンテックとは
グリーンテックとは、環境や資源に配慮したテクノロジー、またはサービスです。
持続可能な社会を実現することを目指すことから「クリーンテック」「環境技術」とも呼ばれます。
グリーンテックは、気候変動や食料生産など、さまざま社会問題の解決に欠かせません。
そのため、世界全体で積極的な開発や導入が行われています。
環境省も、2030年あるいは2050年までに持続可能な社会を実現するために、環境研究や技術開発を推進しています。
デメリットとしては、巨額な資金の調達と有能な人材確保が難しい点があげられるでしょう。
グリーンテックを普及させるためには、社会全体で支援することが必要です。
グリーンテックが注目される背景にあるもの
グリーンテックは、世界の投資家や起業家からも一目置かれています。
カーボンニュートラルへの寄与
2015年にパリ協定が採択されたことで、世界各国で2050年までにカーボンニュートラルの実現が急務となりました。
脱炭素社会に向けた対応が、国家や企業の競争力に直結する時代へと変わったのです。
カーボンニュートラルへ寄与するグリーンテックは、環境保護だけでなく、国や企業の持続可能な成長にも欠かせないでしょう。
投資額の増加
全世界のESG投資の合計額は、2020年に35.3兆ドルまで増加しています。
ESG投資とは、Environment(環境)・Social(社会)・Governance(ガバナンス)の頭文字をつなげたもので、適切な管理のもとで環境や社会に配慮した事業を行っている企業に投資することです。
さらに、市場調査会社Allied Market Researchのレポートによると、世界のグリーンテック市場規模は2019年に87億9000万ドル(約9581億円)と評価されました。
2027年までにはその額は約5.5倍に成長し、483億6000万ドル(約5兆2712億円)に達すると予測されています。
企業や政府に環境対応の成否が問われる今、グリーンテック市場がさらに拡大するといえるでしょう。
グリーンテックのビジネスモデル
グリーンテックを用いた事業には、幅広い分野が存在します。
グリーンテックの推進・普及に取り組む企業はそれぞれの強みを生かして、横断的に貢献しています。
では、具体的にどのようなビジネスモデルがあるのでしょうか。カテゴリー別に紹介します。
農業と食品
代替肉や培養肉、スマート農業など、農林水産業や食品産業におけるグリーンテックの開発が進んでいます。
持続可能な食料生産を目指すためには、環境や生態系を守りながら、食料を供給する仕組みの構築が必要です。
エネルギーと電力
再生可能エネルギーに関連する事業は、化学燃料の節約と脱炭素化に大きく貢献します。
再生可能エネルギーとは、太陽光・水力・風力・地熱・バイオマスなど、自然の力で電気を生み出す仕組みです。
環境への負荷を抑えながら電気を安定的に供給する事業は、社会全体で脱炭素化を実現する足がかりとなるでしょう。
化学工業
鉄鋼生産・セメント・コンクリート・プラスチックなどは、生活に欠かせないため衰退しにくい業界です。
しかし一方で、環境への負荷が大きいため、化石燃料から脱却しグリーンテックを導入することが強く推奨されます。
環境負荷を抑えた事例として、バイオプラスチックやセルロースナノファイバーなどが、あげられます。
また、水素やアンモニア由来の次世代エネルギーも注目されるビジネスモデルの一つです。
交通と物流
自動車産業にとって、化石燃料の消費と温室効果ガスの排出が大きな課題です。
世界全体で乗用車から離れ、他の公共交通機関や環境に配慮した新たな交通サービスへの切り替えが進んでいます。
よく知られた例としては、電気自動車やクリーン燃料があげられます。
最近では、グリーンスローモビリティ(時速20km未満で公道を走れる電動車を活用した小さな移動サービス)や次世代空モビリティ(ドローンや高度に自動化された航空輸送システムなど)、革新的な技術開発がより注目されるようになりました。
廃棄物とリサイクル
廃棄物を生まないリサイクル技術の開発や導入も重要な事業です。
廃棄物の削減は、脱炭素化につながります。
多くの業界で、リサイクル技術の導入が不可欠といえるでしょう。
海外のグリーンテック企業
ドイツやオランダなどの北欧諸国は、クリーンテックの先進国です。
アメリカも、日本よりもグリーンテックの市場が活発化しています。
海外のグリーンテック企業は、どんな事業を展開しているのでしょうか。
大気汚染を視覚化「Aclima(アクリマ)」
「Aclim」は、世界最先端の大気測定および分析プラットフォームを提供しています。
車両ベースのセンサーが、二酸化炭素やメタンなどの汚染物質の測定値を収集し、地域ごとの大気の健康状態を診断することで、気候変動による汚染を視覚化することに成功しました。
Aclimaのプラットフォームは、拠点をおくアメリカだけではなく、アイルランドやドイツなど、世界中に展開されています。
2023年には、TIME誌の「最も影響力のある企業 100 社」に選ばれました。
参考:Aclim
「Next Kraftwerke(ネクスト・クラフトヴェルケ)」
ドイツの「Next Kraftwerke(ネクスト・クラフトヴェルケ)」は、欧州最大規模のVPP事業者です。
VPP(バーチャルパワープラント)とは、仮想発電所を意味し、地域内に分散している複数の発電所を、ICT技術を活用してあたかもひとつの発電所であるかように統合する仕組みです。
これによって、多数の再生可能エネルギーを同時に制御したり、電力の需要を調整したりできるようになりました。
また、Next Kraftwerkeは、東北電力や大阪ガス、東芝ネクストクラフトベルケといった日本企業とも連携、合弁しています。
人工パーム油「C16Biosciences社」
アメリカ・ニューヨークに本社を構える「C16Biosciences社」は、特殊な酵母を加工させることでパーム油の代替品を開発することに成功しました。
今後は、スキンケア製品や化粧品分野での利用を予定しています。
パーム油はアブラヤシの果実から抽出されるものです。
パーム油の消費を抑えることは、森林伐採の抑制や生態系を保全することが期待できます。
植物由来の冷蔵・冷凍パッケージ「Vericool」
カリフォルニア州リバモアに拠点をおく「Vericool」は、世界で初めて植物由来の素材を用いたコールドチェーン用パッケージを開発しました。
コールドチェーン用パッケージとは、生鮮食品や医薬品を冷蔵もしくは冷凍輸送できるものです。
これまでは、発泡スチロールに氷やドライアイスを入れるのが主流でした。
Vericoolは、従来の保冷能力と価格競争力を保ちながら、100%リサイクルや堆肥化できる素材を提供しています。
参考:Vericool
食品の腐敗を防ぐ「mori」
アメリカの「mori」は、植物由来のシルクプロテインを活用して廃棄物削減に寄与しています。
食品の水分やビタミンを保つとともに菌の繁殖を防ぐタンパク質ベースの保護膜を開発しました。
これにより、食品の腐敗スピードを最大2倍遅らせることが可能になりました。
タンパク質ベースの保護膜は、天然のシルクから水と塩を用いてタンパク質を抽出しています。
使い捨てプラスチック・ワックス・防カビ剤・化学薬品の利用削減にも貢献しています。
参考:mori
日本発!グリーンテックのスタートアップ
国内にも、グリーンテックで革新的な事業を展開するスタートアップがあるのをご存知でしょうか。
未来の日本を支える4社の取り組みを紹介します。
Spiber株式会社
Spiberは、慶應義塾大学院生が在学中に立ち上げたバイオベンチャー企業です。
サトウキビとトウモロコシなどの植物からタンパク質繊維の素材を生産する「Brewed Protein(ブリュード・プロテイン)」を開発しました。
石油由来の原料を必要としないため、環境負荷の最小化が期待できます。
参考:Spiber
EF Polymer株式会社
EFポリマーは、インドで生まれ、沖縄に拠点を構える企業です。
EFポリマーとは、オレンジの皮などのこれまで捨てられてきた端材をアップサイクルした超吸収性ポリマーです。
素材は100%オーガニックで、有機JAS資材リストにも登録されました。
土に混ぜると土壌の水分吸水力が向上するため、使うだけで最大40%の節水と20%の肥料の節約が可能です。
水不足や肥料価格の高騰への解決に大きく寄与しているといえるでしょう。
つばめBHB
つばめBHBは、東京工業大学発のベンチャー企業です。
アンモニアを通して、エネルギーや食料問題を解決することを目指しています。
アンモニアは、エネルギーにも、様々な原料にも変わる資源です。
資源を持たない地域でも、資源を生み出せると注目されています。
参考:つばめBHB
京都フュージョニアリング株式会社
核融合発電の実現を目指す「京都フュージョニアリング」は、京都大学発のベンチャー企業です。
核融合エネルギーは、二酸化炭素を排出しません。
燃料には、海中にある重水素と三重水素を使用するため、海に囲まれた日本は燃料の輸入に頼る必要はありません。
永続的にエネルギーが循環する社会次世代エネルギーとして注目されています。
同社はアメリカで子会社を設立したり、イギリスの原子力公社と包括協定を結んだりするなど、世界へ向けて研究を進めています。
未来へ革新を起こす!グリーンテック
グリーンテックとは、環境や資源に配慮した技術やサービスのことです。
地球温暖化による気候変動、人口増加によって懸念される食料問題など、社会問題を解決するためには、グリーンテックは欠かせません。
エネルギー・化学工業・農業・交通・廃棄物など、幅広い分野での開発・導入が求められています。
グリーンテックは、環境だけではなく、私たちの生活も豊かにする技術といえます。
グリーンテックをこれからも発展させるためにも、まずはその価値を十分に理解することが大切です。
また、企業にとっては、商品やサービスを開発する際は価格や機能性に加えて、グリーンテックの有無も重要な要素となります。
グリーンテックを開発・導入しているかどうかで、今後の成長が大きく左右されるといっても過言ではないでしょう。
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